08/04/23 20:26:26 MalFaKYg0
現代の有力な思想のうちで第一位を占めるのは、次のようなものである。
すなわち、教育は、人間を改良し、かつ人間を平等化するにも、
確実な効果をあげることができる、というのである。
この主張は、単にくりかえし唱道されたという事実だけで、
ついに群衆の信念と意見の間接原因で、遂に、民主主義の
最もゆるぎない教義の一つとなってしまった。
今日、この教義に修正を加えるのは、難しかろう。
あたかも、かつて教会の教義を修正するのが、困難であったように。
しかし、多くの他の点におけると同様に、この点についても、民主主義
思想は、心理学や経験の教える事実とは、大いに食い違っている。
ハーバート・スペンサーをはじめ、幾人かの優れた哲学者たちとしては、
教育が人間をいっそう道徳的にもいつそう幸福にもせず、人間の遺伝的な
情欲や本能を改めず、しかも指導を誤れば、教育が有益となるよりも
むしろ大いに有害となりかねないことを示すのは、困難なことではなかった。
統計家たちがこの見解を裏書きしてくれた。
彼等によれば、犯罪は、教育の普及、いや少なくともある種の教育の普及
とともに増加し、また社会に対する最悪の敵である無政府主義者たちは、
諸学校の優等生のうちから出るという。
ギュスターヴ・ル・ボン 『群集心理』