08/04/20 22:19:01 0
・バスから降り立った101人は、同じ紺色の背広に赤い野球帽をかぶっていた。
高原レタス生産量日本一を誇る長野県川上村に、そんな一行が到着した。
全員が中国東北部・吉林省の農民だ。今月下旬までに計615人。これから11月まで、人口4800人の
村に仮住まいし、農業研修生として信州野菜を育てる。
「お母さん、おはようございます」。到着の翌朝、レタス農家の女性(62)に、楊光さん(23)と王凰竜さん
(21)があいさつした。覚えたての日本語だ。
驚いたことに今年の2人はいきなり日本名を名乗った。「片岡と呼んでください」と楊さん。王さんも
「私は佐藤です」。中国の送り出し機関が、日本人が呼びやすいよう今年から研修生一人ひとりに
日本名をあてがったという。曲さんは谷口さんに、宋さんは新美さんになった。
研修生は1農家2人まで。楊さんと王さんの住まいは改装したカラオケボックスだ。4畳半大にベッド
二つと小机が並び、プレハブの台所兼食堂もある。「少し狭いけど、電化製品もひと通りそろっていて
快適」と楊さん。
2人とも実家はトウモロコシ農家で、年収は1万元(約15万円)ほど。地元当局の出稼ぎ奨励広告を
見て、7カ月働くだけで年収の4倍と知り、長野行きを決めた。
研修生に支払われる手当は月々8万5千円。時給換算すると約530円。長野県の最低賃金669円以下
だが、7カ月で帰国する彼ら研修生には最低賃金法は適用されず、合法的な額だ。ほかに受け入れ
農家は、研修生の渡航費や光熱費、米代も負担する。
20年ほど前まで、農繁期の川上村には若い日本人があふれた。日当6500円に残業代を含め
1万円、3食付きで宿泊代もタダ―。そんな募集広告を「フロムA」など求人誌に載せれば、
大学生や高校生が押しかけた。
それが十数年前から、働き手不足に陥った。農家の伊藤嘉武さん(63)は「求人を出しても日本人が
集まらねえ。来ても3日ともたずに逃げ出すようになった」と嘆く。腰をかがめての植え付け、未明から
始まる収穫、重い箱の運搬。実入りはよくても、きつい仕事が嫌われるようになった。 (>>2-10につづく)
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