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>>1の続き
野口 2006年10月13日、いつものように彼らがナンパ・ラ峠を越えようとしたとき、一行に向けて
中国警備当局が銃を発射した。近くにいたヨーロッパの登山家が一部始終を撮影し、その
映像がユーチューブを通じて世界に流れ、弾圧の現状が知られるところとなりました。私も
映像を見ましたが、ほんとうに驚きましたね。行列の先頭の人が撃たれて倒れたら、普通の
人は逃げるでしょう。しかし、彼らはまったく動じない。さらにパーンと撃たれ、次の人が
倒れても、整然と歩いている。チベット人の覚悟を見た気がしました。
山際 彼らはチベットからの難民ではないのですか。
野口 あのルートは有名で、交易する人も、難民も、同じ道を歩くんです。真相ははっきり
わからない。にもかかわらず『朝日新聞』は、チベット人が中国警備隊に危害を
加えようとしたから、正当防衛で撃った、と報道した。その後、清掃活動のためにエベレストに
足を運びましたが、ベースキャンプで大変な人数の「公安」を見掛けました。僕らが清掃で何を
拾っているかも調べに来ましたし、アメリカ人が「フリー・チベット(チベット解放)」と看板に
書いただけで逮捕したり、という厳しさでした。
じつは今年の春も、チベット側で清掃活動をする予定だったんです。ところがオリンピックの
前だから、ゴミのあるところを写すな、と条件が付いた。それならやる意味がないので、
ネパール側から山に登る準備をいま進めているところです。
山際 中国に対するチベット人の本心を、野口さんはお聞きになったことがありますか。
野口 表面的にはなかなかわかりませんが、親しくなると本音を語りますね。ダライ・ラマが
インドに亡命したあとに、中国が認可したパンチェン・ラマというお坊さんがいます。チベット
仏教ではダライ・ラマに次ぐ高僧ですが、チベット人は彼を傀儡だ、と思っている。象徴は
必要ですから、とりあえず認めてはいますけど。今回の暴動について中国政府は、
ダライ・ラマが裏で糸を引いている、といっています。しかし本人は否定しています。
私はダライ・ラマの言い分が正しい、と思う。もしほんとうに彼が「戦え!」といえば、
あの程度では済みません。一億玉砕のようなことが起きるでしょう。