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(略)企業が成長を続けるためには、労働者が生産したものを最終的には消費者である労
働者に買ってもらう必要がある。企業が労働者をタダ同然で雇用すれば、生産は増えても
商品の販売市場は拡大しないからだ。
その意味で、労働者が経済的に豊かになるのと企業が成長することは矛盾しない。より高
い賃金を労働者に支払い、生産性の上昇分を還元して労働者の購買力と消費意欲を高め
て市場の飛躍的な拡大に成功したのが「20世紀フォーディズム」である。
当初は収奪の対象にすぎなかった労働者が、同時に消費者であることに企業が気づいた
とき、両者の蜜月の時代が始まった。しかし、その蜜月もグローバル化のなかで再び危機
に陥っている。国境を越えた多国籍企業の活動によって、生産者である労働者と購入者で
ある消費者が分裂し始めているからだ。
かつての閉鎖的な国民経済とは異なり、グローバルな経済では必ずしも労働者と消費者
が一致する保証はない。むしろ多国籍企業は戦略的に両者を分断し、より安く生産し、よ
り高く販売することで利益を拡大していると言える。
グローバル経済で労働者と消費者の分断が可能になったのは、モノを生産せず労働者=
消費者を必要とせずにマネーだけを拡大再生産するバーチャルな金融市場がインターネッ
ト上に誕生したからだ。
しかしこのバーチャルな金融市場には世界経済を混乱させる要因が潜んでいる。それはモ
ノの生産とは無関係に、異常に膨らんだり急速に縮んだりする投機マネーの存在である。
その影響を最も深刻に受けるのが、危険をヘッジできない弱者である。筆者が弱者に注目
するのは、そこに経済の矛盾が集中しているからであり、矛盾を放置したままでは、企業
成長も世界経済の発展も行き詰まってしまう恐れがあるからだ。
(以上、日本経済新聞 URLリンク(www.nikkei.co.jp) 3/11付記事 大機小機 より)