08/02/12 18:27:59 0
(>>1のつづき)
―ほんわかムードの描写がある一方で、斧を振り下ろして殺したりと残酷なシーンも出てきますね?
吉田 そういうシーンだけ取ってしまえば、たしかに残虐だと思います。また、かわいい女の子が
豹変して恐ろしい事件を起こすという「落差」が、この作品の特徴の一つだともいえます。
でも、それだけではない。作品の根底に流れているテーマは、殺人肯定とは全く違うと思うんです。
実は、この作品を貫いているのは、「真実の絆」を探していくというテーマなんですよ。
―それはどういうことですか?
吉田 物語に登場する少年や少女は、それぞれ複雑な事情を抱えています。村の因習の中に
どっぷり浸かっている神社の巫女さんの女の子とか、地域社会でがんじがらめになっている子とか
ほかの地域で事件を起こしてしまって引っ越してきた子とか。だけど学校では、そういう事情を
仲間に言わないで、表面上だけ楽しく付き合おうとする。
そういう上辺だけの友達関係があるきっかけで崩れて、疑心暗鬼になって殺し合うみたいな話に
なっていくんですが、そんな中で、お互いが自分をさらけ出していくことで「真実の絆」とは何かを
探っていく。「本当のつき合い」とはどういうものか、というのを模索していく。そういう物語なんです。
だから、この「ひぐらしのなく頃に」は、1980年代ごろから顕在化してきた地域社会の崩壊とか、
親子関係の断絶、さらに2000年代に入って顕著になったネット社会での疎外感とかをうまく
取り入れている作品だと思うんですよね。
―たしかに作品の全体を通してみれば、そのようなテーマ性を感じるとることができるのかも
しれませんが、アニメの場合は、最初から最後まで見るとは限りませんよね?
吉田 そこがテレビアニメというコンテンツのむずかしいところですね。テレビアニメは、
ゲームや漫画と違って「買う」という行為なしに受動的に見ることができてしまう。公共の電波を
通じて、誰でも無料で視聴できる。すでにゲームで「ひぐらし」に馴染んでいる人達ならともかく、
そういう耐性がないところでいきなり見た人は、やはり衝撃があったんじゃないかと思いますね。
(>>13-20につづく)