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過労が脳下垂体を破壊 大阪市大チーム、ラットで確認
極度の過労によって、脳の中心部にある内分泌器官、脳下垂体の細胞が次々と死滅していることを、
大阪市立大の研究チームがラットによる実験でつかんだ。これまでは過労は生体の機能が落ちるだけと
みられていたが、実際は生命維持の中心器官の一つが破壊されていることを初めて立証した。
熊本市で15日から始まる日本疲労学会で報告する。
厚生労働省によると06年度の脳・心疾患で死亡した「過労死者」は147人。
研究チームは過労を早く見つける「過労マーカー」の開発に役立つと期待している。
大阪市立大の木山博資(ひろし)教授(解剖学)らは、ラットの飼育箱の底に1センチ強の
深さに水を張り、5日間観察した。ラットは体が水にぬれるのをとても嫌う性質があり、
昼夜問わず動き回って、立ったまま数分うとうとする程度しか眠れなくなる。徹夜で働く人間と、
ほぼ同じ状態だ。
このような状態のラットの脳下垂体を調べると、3日目に細胞が変形。5日目になると細胞が
死滅し始め、下垂体の中葉と呼ばれる部分がスポンジ状になっていた。
下垂体中葉には、脳の神経核A14という部分から神経伝達物質ドーパミンが供給されている。
疲労がつのるにつれて、A14のドーパミン生産能力が減り、下垂体の死滅細胞が増えていた。
実験後、飼育箱から水を抜くと、ラットはすぐに睡眠をとり、半日後には活動を再開した。
しかし、下垂体が元の状態に戻るには数日間かかった。早めの休養が重要であることを示している。
疲労に詳しい木谷照夫・大阪大名誉教授は「過労がホルモンの司令塔ともいえる器官にダメージを
与えているのは重大な問題だ。過労死がホルモンなど内分泌系の乱れと関係している可能性を示す
貴重なデータといえる」と話している。
朝日新聞 asahi.com(2008年02月12日)
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