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・卒業式の君が代斉唱で起立しなかったからといって、定年退職した都立高校の教職員らの再雇用を
拒むのは、裁量を逸脱、乱用したもので違法だ。東京地裁がこう判断し、13人に計2700万円の
賠償を支払うよう東京都に命じた。
東京では国旗・国歌への強制ぶりが際立ち、抵抗する教職員が次々に処分されている。こうした
処分に対する訴訟も相次ぎ、今回の判決はそのひとつだ。
国歌斉唱で起立しなかったことは、ほかの教職員や来賓には不快かもしれないが、積極的に式典を
妨害するものではなく、再雇用を拒否するほどのものか疑問だ。これが判決の論理である。
私たちは社説で、「処分をしてまで国歌や国旗を強制するのは行き過ぎだ」と主張してきた。
様々な歴史を背負っている日の丸や君が代を国旗・国歌として定着させるには、自然なかたちで
進めるのが望ましいと考えるからだ。今回の判決は都教委の強制ぶりを戒めたもので、評価したい。
今回の裁判でもう一つの論点は、校長の職務命令は、思想・良心の自由を保障した憲法に
違反するかどうかだった。判決は合憲とした。
この点については、東京地裁の別の裁判長が06年、都教委の通達や指導を違憲と判断した。
その当否は別として、裁判官によっても分かれているほど判断が難しい問題を、教育の場で一方的に
押しつけるのは好ましくない。
今回の判決を機に、都教委には改めて再考を求めたい。
都教委の強硬姿勢が際立ったのは03年、入学式や卒業式での国旗掲揚や国歌斉唱のやり方を
細かく示す通達を出してからだ。
教職員は君が代斉唱の時に、踏み絵を迫られる。立って歌っているかどうかを確認するため、
校長だけでなく、都教委の職員が目を光らせる。
こんな光景が毎年繰り返された結果、残ったのは、ぎすぎすした息苦しい雰囲気である。子どもたちの
門出を祝い、新しい子どもたちを迎える場としては、およそふさわしくない。
あまりに行き過ぎた介入は教育そのものを壊してしまう。今年も卒業式や入学式の季節が近づいて
いるだけに、都教委にはそろそろ目を覚ましてもらいたい。(一部略)
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