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俳優の池部良さんが若い助監督のKに連れられ、渋谷の小汚い店ではじめてギョーザを食
べたのは昭和26年である。戦中、中国大陸の前線でKの父の命を店の主人が救ってくれた。
お礼にギョーザをはやらせたいというKの話を聞き聞き、口に放り込んだ。
「どうして世の中にこんな旨(うま)いものがあったのか」と池部さんは随筆『天丼はまぐり鮨
(すし)ぎょうざ』に書いている。Kが材料を説明したそうだ。豚、ニラ、白菜、ネギ、ちびっと
しょうゆ、ごま油。「これ以上、凝った材料を使うと中国北方の悠久の大地に産れた歴史と
雰囲気を失う」。よりによって殺虫剤入りとは。
中国製冷凍ギョーザを食べた人の不調の訴えは日々増え続けている。それはそうだろう。
ギョーザは今や、はやり廃りを超えた国民食だ。最初に中毒症状が起きてから1カ月以上、
同じ製品が売られていたのだから。その間、危険を知り得る立場の人は、自分や家族が食
べる冷凍食品を点検しなかったのだろうか。
なぜ殺虫剤が混入したか。なぜチェックできなかったか。なぜかくも公表が遅れたか―。
すべてが検証されねば困る。池部さんは「一口に口に入れてよ。一口に頬張(ほおば)ると、
悠久の味が口中に広がり、ぎょうざの栄光が味わえる」と教えられたという。それもこれも
安全あってこそである。