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433 名前:名無しさん@八周年[] 投稿日:2008/01/04(金) 05:08:25 ID:zTEkZri90
村上春樹風だとこうなるかな。
「一日独裁者?」
僕は目の前の十子が何を言ったのかよく分からなくて思わず聞き返した。
「よく分からないんだけど、それは一日だけの独裁者ってこと?」
「そうよ」
十子は当たり前じゃないのという風に目を輝かせながら頷いた。
「それは一日警察署長みたいな、なにかのキャンペーンなの?」
「そんなんじゃないわ。本物の独裁者よ。
わたしが一日独裁者になれば拉致や薬害や原爆や戦争も全部なくすことが出来るの。
お金だって心配ないわ。わたしにはいろんな友達がいてみんなお金を喜んで出してくれるから」
「君がそう命令するの?」
「そうよ。独裁者だからなんでも命令出来るの」
僕はダンボールを束ねたみたいにやたらと分厚い読みかけの朝日新聞を閉じて、
ゆっくりとため息をついた。
「なるほど。君がそういうことを考えているってのは分かったんだけど、
現実としてはいろいろと難しいと思うよ。
その一日が過ぎてしまったあとにはいろんな未解決の問題が山積みになっているわけだし。
だいいち独裁なんていうシステムが一日だけで済むとは思えないんだけれど。
翌日には新しい一日独裁者が君の出した命令を全部取り消してしまうかもしれない」
「何言ってるの? そんなのは側近が片付けるから大丈夫に決まってるじゃない」
僕はやれやれと思って、十子の顔をまじまじと眺めた。
僕は大学の時に何度も聞かされたセクトの連中の演説を思い出していた。
ようは彼らや十子に一番必要なものは理想でも理論でもなく簡単な想像力なのだ。