09/03/01 21:45:45 fdMQtgDO0
流れを読まずにちょっと真面目に坂本龍一の音楽を一通り聴いた
感想を書いてみる。教授はよく「どこにも所属しない/したくない」
と言う一方で、正規の音楽教育を受けていないミュージシャンを珍品扱い
(一発芸扱い)する態度を取る。音楽教育を受けていない「大衆」がパトロン
じゃあ、まともな音楽は評価されないとも言う。では、正規の音楽教育を受けて
いる音大出系列の人々に、教授の音楽が評価されるか(武光徹のように)、
というと、非常に難しい。書法的に斬新なものは何も生み出していないからだ。
一方で「大衆(山下邦彦がその象徴だ)」は、教授を「世界のサカモト」として神格化
してはくれるが、親しみやすいメロディーと激しいビートと十九世紀的な和声進行が無いと
まともに反応しない。だから結局最初に書いたような引き裂かれ・屈折した教授の態度が
現れる。坂本龍一の美点は、メジャーデビュー作の「アイランズ・オブ・ウッズ」から
続く系列、具体音を含めた音色に対する卓抜な感覚にあるのであって、『out of noise』も
その視点から見れば、決して「薄く」もなければ「劣化」もしていないのだが、
YMOから入った、未だにHASYMOの「ライオット・イン・ラゴス」で盛り上がっているような、
自認ラディカル・エリート・リスナーには物足りなく聴こえるというわけでしょう。