08/11/19 21:10:19 ZRpr5Rlt0
朝起きると、もう女の姿は消えていた。俺はとりあえずシャ
ワーを浴びた。風呂から出てコンタクトを付けると、テーブ
ルの上に手紙があるのに気が付いた。おそらく女が連絡先や
これからのことを書いているに違いないと思ったが、内容は
俺にとって残酷だった。女はその年の春にお見合いをして来
月には結婚が決まっているらしかった。相手は老舗ホテルの
御曹司で全く知らない相手ではないらしい。この女のホテル
は値段も立地も中途半端だったせいか、あまり経営は芳しく
ないようだ。だから彼女の結婚には家族のこれからも懸かっ
ていた。だからもう会えないと女の言い訳は長々と書いてあ
った。
しかしイケメンの俺はこんなこと慣れっこだった。こんな時
女は、俺が奪いにくるのを待っているもんだ。
と言いたいが、実際には動揺して部屋をぐるぐる回りながら
服を着ていた。しかし、本当に女は俺を待っている可能性も
確かにあると俺は判断した。女が俺を待っているなら、チェ
ックアウトを狙ってフロントにいるはずだ。俺は女がフロン
トにいたらそのまま連れ去ろうと決めた。いなかったらただ
何事もなかったようにホテルを出るだけだ。そう覚悟を決め
て荷物をまとめ部屋を出た。
日刊 トビトビ馬馬 『裏の世界の住人』より抜粋 閑話9
お色気編