08/08/11 23:45:25 3eW+sw7+
かわいそうな象1
上野の動物園は、桜の花盛りです。風にぱっと散る花。
お日様に光り輝いて咲く花。
お花見の人たちがどっと押し寄せて、動物園は、砂埃を巻き上げて混み合っていました。
象の檻の前の広場では、今、2頭の象が、芸当の真っ最中です。
長い鼻を、天に向けて、日の丸の旗を振ったり、カラランランと鈴を振り鳴らしたり、
よたよたと、丸太渡りをしたりして、大勢の見物人を、わあわあと喜ばせています。
その賑やかな広場から、少し離れた所に、一つの石のお墓があります。
あまり気の付く人はありませんが、動物園で死んだ動物たちを、お祭りしてあるお墓です。
お天気の良い日は、いつも、暖かそうに、お日様の光を浴びています。
ある日。
動物園の人が、その石のお墓をしみじみと撫で回して、
わたくしに、哀しい象の物語を聞かせてくれました。
今、動物園には、三頭の象がいます。
名前を、インデラ、ジャンポー、メナムといいます。
けれども、その前にも、やはり三頭の象がいました。
名前を、ジョン、トンキー、ワンリーといいました。
その頃、日本は、アメリカと戦争をしていました。
戦争がだんだん激しくなって、東京の街には、毎日毎晩、
爆弾が雨のように振り落とされてきました。
その爆弾が、もしも、動物園に落ちたら、どうなることでしょう。
檻が壊されて、恐ろしい動物たちが街へ暴れ出したら、大変なことになります。
そこで、ライオンも、トラも、ヒョウも、クマも大蛇も、
毒を飲ませて殺したのです。