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【書評】
法政大名誉教授・川成洋が読む『毒殺 暗殺国家ロシアの真実』(アルカディ・ワクスベルク著)
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本書によると、革命直後のソ連において、目的のために手段を選ばないという恥ずべき原則を確立したレーニンは、
ルビヤンカに毒物を研究する秘密の「生物培養特務室」を1921年に創建。ソ連の科学を総動員して、殺戮(さつりく)
を自然死のように思わせる毒物を開発した。その材質や体内注入方法は実に多種多様であった。死因ならびに毒物タイプ
の確定を困難にするためである。やがて「正体不明な毒殺」つまり、呼吸器系を狙って殺す方法、放射性物質による毒殺
へと進展していく。
間断なきテロと欺瞞(ぎまん)で構築されたソ連の独裁政権をレーニンから禅譲されたスターリンは、政治的敵意は
もとより、病理的憎悪、嗜虐性、復讐(ふくしゅう)欲、脅迫偏執症などに突き動かされたためか、ますます国家テロを
エスカレートしていく。彼の比類なき残虐性のために、国内外の政敵や良識派知識人はもちろんのこと、あろうことか、
レーニン、その妻クルーブスカヤも、犠牲になったといわれている。また、毒物開発の実験台にはロシア人囚人を筆頭に、
第二次大戦直後にシベリア各地に強制抑留された元日本兵や元ドイツ兵などもいた。