水泳の試合の入場at SWIM
水泳の試合の入場 - 暇つぶし2ch39:
18/02/25 23:17:57.25 3XYtBtT6.net
 ただの力任せなら痛いだけだが、すべすべした褐色の肌の質感の奥にプリプリした太ももの肉の弾力があるため刺激は
極上の部類である。しかも太ももは先ほどの交合や、睾丸愛撫への興奮で伝い落ちた愛液でぬめっている。
(しかも……武元、汗、かいてる)
 少年が一番背徳感を覚えたのはそこだ。一連の流れと、今の上下動でしっとり潤ってきている「汗」に自分のシンボルが
触れるのが何よりいやらしく思えてドキドキした。愛液とか、先走りが太ももを濡らしているのは秘事限定の現象と割り切れ
るが、「汗」という、スポーツ少女ならごくごく日常的にかいている物が、己の陰部をひた濡らし潤滑の快楽をもたらしている
という事実が……心(しん)を穿つ。
同じ感想に到ったのか。うるかの表情がとろけ始める。胸の上で、裸の「元・女友達」が切なげに息を荒げているさまは
唯我ならずとも興奮するであろう。日焼け跡の、生白い鎖骨を何となく撫でる。「んっ」、軽く目を瞑ったうるかはペニスを
咥え込んだ太ももにいっそう力を込める。ただでさえ代謝の高い少女の全身が熱くなっているのを唯我は感じた。肉剣を
を圧迫する足はもう夏場の車体外装ほどの熱がある。火照っているのはうるかだけではない。
「熱いの、成幸のが熱いの。あたしの足の間でコチコチで、ヒリヒリで、……ぴくぴくしてる……」
「お前の足も……気持ちいい。すべすべしてて弾力があって、締め付けも、いい」
 ほんと? 嬉しい……。褒められた少女は咲(わら)い、献身の度合いを深めていく。健康的な足の上下動が速くなった。
腕立て伏せと似た姿勢で太ももに埋没したペニスを速く的確に摩擦できるのは体を鍛えているうるかならではの愛撫であ
ろう。汗と愛液と先走りですっかり滑った太ももがヌルヌルと肉棒を擦りあげる。睾丸愛撫でずっと刺激を求めていた少年
のシンボルは30秒と持たなかった。
「で、出るッ、出る…………!」
「うん。出して、楽に、なって……!」
 耐えただけあり量は初夜最大だった。翌朝事後処理に当たっていたうるかはベッドから2mは離れた場所に白濁が落
ちているのを見つけ真っ赤になる。それほどの噴出だった。びゅるびゅるっと勢いよく吹き出した精液が褐色の太ももに
どろどろと蟠った。「あ、あああ」。8度目の射精なのがウソのような軽やかな感触に唯我は呻く。愛撫によってすっきりと
した睾丸は放出にかけてむしろ最盛期に到りつつある。
(足に……あたしの足に、びゅーって、びゅーって……)
 うるかが昂ぶった理由はそこだけではない。少年の屹立はいまだ衰える気配がない。太ももを離せばバネ仕掛けのように
腹へ戻りそして再びめり込むだろう。
(すごい、成幸、すごい……)
 少女の雌の本能が疼き始めたのはこの頃だ。褐色の細い肢体は何の許諾を得ないまま動いた。唯我に覆いかぶさった
まま、彼の踵方面へ全身を少しだけ後退させ─…
 足と足の付け根の間に、ペニスを、挟んだ。
「ちょ、武元! 俺いま出したばっかで敏感……」
 うろたえる少年の顔もトロけ始めた人魚姫にとっては(可愛い……)と思わせるスパイスでしかない。彼へ「騎(の)っている」
という実感も、フィジカルに於いては攻勢的な少女の側面を膨らませる。

「うるかって……呼んで?」
 少年の顎に手をかけるのは先ほどの乳首いじりへの他愛ない仕返しだ。甘ったるい水気でライトパープルにまで希釈さ
れた瞳を、窓からの月光できらきらと瞬かせながら、嫣然たる笑みの形に軽く細め、『下の名前』という唯我の困りそうな話
題を押し付ける。奥ゆかしい少女だから寧ろコレが改元にも匹敵する二人称変更の決め手となることを恐れているが、
しかし同時に、結ばれてなお反射的に名字を呼ぶ朴念仁を困らせたくもあった。男は刺激で女を支配するが、女は機微で、
だ。果たして少年は蠱惑の少女に射すくめられ、停止した。ちょっと右にローリングするだけで容易く組み伏せられるはずの
腹上のうるかに愛撫1つできぬまま固まった。
 好機とばかり人魚姫、更に追撃。
「8回で……満足…………?」
 太ももの間のペニスの感触にぴくぴくと反応しながらも、うっとりと笑いかける少女は面頬の客観的な破壊力に気付かない。
唯我の瞳に映る彼女は艶やかな黒髪を汗でべっとりと張りつけ、息を荒げ、『誘惑的な女友達』の眼光を妖しく灯らせている。
少年の心の臓はまたズキっときた。

40:
18/02/25 23:18:29.40 3XYtBtT6.net
「お、お願い、します……」
 眼鏡の下をぽっと染めて俯く唯我。
「うん。いっぱい気持ちよく……するかんね」
 人魚姫は優しく微笑み艶やかに跳ねた。少年の言葉が終わらぬうちに生殖器付近へ咥え込んだペニスをくねくねと愛撫
した。今度は腕立て伏せの要領ではない。上半身を少年の体と密着させた状態で、腰だけをくねらせる。上下だけではない。
左右にもだ。明らかに雰囲気の変わったグラインドに「もっと、ゆっくり……」と唯我は歯を食い縛るが「だーめ」と甘く囁くう
るかはむしろ動きを速めていく。日焼け跡が生々しいヒップがくねる。
「んっ」

41:
18/02/25 23:18:53.08 3XYtBtT6.net
 クレバスにペニスが触れると少女は眉をひそめたが、スジに沿って肉棒が摩擦されるよう腰の角度を変えるや水音も
露骨にくちゃくちゃと愛撫する。(エロい……)。息を荒げ、半笑いで生殖器同士を摩擦させる少女に唯我も止まれなくなっ
た。
「すまん。武元」
「えっ? きゃ!」
 突然ペニスを持ち角度を変えんとした少年にうるかは正気を取り戻す。(入れる!? このカッコで!?) 騎乗位への
変更を察した少女の中で今度は貞淑さが大きくなった。少年の、手を、持つ。「凶器」を急勾配から直上の淫裂めがけ直角
に無理やり変えている手を。
(熱い……。入り口に成幸の熱いのが……)
 実感すると淫蕩な硝子体が眼球の中に満ちてくるようだった。眉を顰め、目を半開きにしてか細く震える。誘惑の波が
あった。体はとっくの昔から、唯我であれば何でも受け入れる準備ができている。だが心は違う。割れ目に触れる亀頭の
熱く湿った感触に昂ぶりながらも、口ではそれ以上の進入を、拒むのだ。

42:
18/02/25 23:19:09.68 3XYtBtT6.net
「だ、だめ……! 挿れるの、まだ2回目で……2回目からもう上とか、上とか……恥ずかしい、から、恥ずかしすぎるから」
(2回目で……上……)
 自分のセリフで唯我が認識し生唾を飲み込んだとも知らず、うるかは必死な拒否を続ける。
「今度なら、慣れてきたあとなら、シて……シて欲しいけど……、だめ、今夜は初夜で、挿れるのは2回目だから、上、2回
目から上なんて、だめぇえ」
 既視感。言い募るうるかは先ほどこんな出来事があったとハっとする。この流れはまさか。まさかである。
「駄目だ」
 唯我の先端がうるかの入り口に軽くだが埋まりこむ。「や、やあああ」。恥ずかしさで顔を背け逃げようとする少女だが、
動きは声音同様いきおいを失くした。分け入りつつある質量への淫らな期待が理性に愚劣な鈍麻を与えているのをうるか
は是認したが、やはり清純な少女、羞恥心という最後の砦に縋って抵抗する。

43:
18/02/25 23:19:17.07 3XYtBtT6.net
「逆、なら、あたしが、下、あたしが下なら、いいから、このまま、このままひっくり返って、シて、シて欲しくて……、上はだめ、
恥ずかしい……あたし動き始めると止まれない、から……成幸にやらしい女ってヒかれたくないから……だめ、だめなの。
慣れて、自制できるようになってからじゃないと、恥ずかしい、恥ずかしいよぉ」
 どんどん存在感を増してくる異物感の中、赤面かつ潰れがちな不等号の目で懇願するうるかだが、唯我はその顎をくいっ
と掴み、
「慣れてなくて、戸惑って、驚いたり叫んだりするお前が、見たい。きっとスッゲェ可愛いから……見たい」
 初々しさこそ目当てだと言ってのける。息を荒げながらも鋭い眼光は衰えない彼の言葉に、うるかは(……っ)と混乱し、
例の癖で妙な翻案を施した。
「だ、だめえ、俺は熟れきらぬ青い果実をもぐのが好きなのさとか怖いこといっちゃだめえ!」
 と歌舞伎の見得のような珍妙な制止で涙ながらに訴えるが、果たせるかな、そういうズレた愛らしさが膣口に宛がわれた
亀頭を上向きに貫くための原動力となった。
 ペニスは、埋没した。唯我に跨った姿勢のうるかの中へ杭(わた)った。
「かっ!?」
 奇妙な声をあげ目を白黒させるうるか。メリメリと産道を押し拡げてやってくる灼熱に甲走った声を止められない。
「あ!! あーーー! だめ、入ってきちゃう、あたしが上の状態で、太いの、入れちゃ、だめなのに、だめなのに…………!」

44:
18/02/25 23:20:14.48 3XYtBtT6.net
 攻勢はここに明確な逆転を遂げた。少女の引き締まった臀部に痕がつくほど強引に指を立てた唯我は素股の仕返しとば
かり腰を突き上げる。四つん這いだった人魚姫の細い肢体がガクンと跳ね上がり、一瞬だが膝立ちになった。ベーシックな
騎乗位の姿勢になったのに気付いた彼女は「や、いや、恥ずかしい、恥ずかしいい」と戦慄き腰を浮かして逃げようとするが、
しかし掴まれる肩。がしりと伸びてきた唯我の腕はモンスター映画における画面外からの襲撃のような勢いでうるかを元の
四つん這いの姿勢へ引き戻す。結合は依然として、継続中。状況を知ったうるかは巨大な恥じらいにただ悶える。
「やっ、やあああン。やめてこのカッコ、恥ずかしい、恥ずかしい、からぁ……」
 意外にがっしりしている少年の胸板に頬を擦り付けるようしつつ懇願するが、すっかり騰(あ)がった少年はややサディス
ティックに切り返す。

45:
18/02/25 23:20:36.43 3XYtBtT6.net
「さっきとそう変わらないだろ?」
「ちち、違うの、擦ってるだけのと、入れられてるのとじゃ、全然、全然、違う、違うからあ」
 うるかは泣いて首を振り許しを乞うが、痛みや苦しさを訴えていないのなら大丈夫だろうと唯我は速度を速める。腰の
上の少女をひたすらに揺さぶる。うるかは逃げようと腰を浮かすが、そのたび尻ごとぐいっと引き寄せられ喘ぐ。それでも
よほど恥ずかしいのだろう。唯我が腰を引くたび健気にも逃げようとする。その仕草じたい男の欲情を駆り立てるものだが、
うるかの災難は、更に劣情を誘う体の持ち主であったことだ。
 鎖骨から胸に到る日焼け跡がますます紅潮の度合いを強めているのが唯我のより深い獣性をそそって仕方ない。
「あっ」
 離脱の余波で唯我の上体との密着を解いた乳房が揉まれる。「やだ、ただでさえ恥ずかしいのに、おっぱい、おっぱいまで
いじめないでえ」。先ほどの好色そうな女友達はどこへやら。無力な子猫のように甘え泣くうるかがますます愛しくなった唯我は
両手で乳首を愛撫する。強く抓るのではなく、触れるか触れないかの繊細なタッチでピンピンと撥ねる。

46:
18/02/25 23:20:51.52 3XYtBtT6.net
「んっv んっv
 ぎゅっと目を瞑るうるかの声はくぐもっているが、末尾にハートマークをつけてもいいほどに甘く甘くとろけている。
 結合部が重力で補強されているぶん両腕の自由が効くのが騎乗位だ。浮き気味の四つん這いで覆いかぶさっている少
女の胸にいたずらしながら、腰の力だけで彼女を突く唯我。
「だめ、恥ずかしいのに、このカッコ恥ずかしいのに、気持ちいい、気持ちいいよぉ」
 うるかの腰はいつしか動いている。ぎこちないが唯我をより深く迎え入れられるよう動いている。切なげな形相で瞳を歪め、
戸惑いながら、しかし大きな快楽に対する貪婪さもうっすら滲ませながら、腰を動かしている。
 唯我は(こ、こーいうときの鉄板って確か)と何事か脳裏で検索する。大人しいが、少女を胸の上で揺さぶっている状況と
あってはやや言動も攻撃的にならざるを得ない。
「こ、腰を動かすとか、は、は、恥ずかしがってる割には積極的、ダナ!」
 後半ややぎこちないのは、(やっぱあまり責めすぎるとダメか、武元泣かせたくは……)と思い直したからである。
「だめ、だめえ、そんな優しいこと言うのだめえ」
(優しいか!? あ、いや、語調全体で真情バレバレ!?)

47:
18/02/25 23:21:06.98 3XYtBtT6.net
 などという突っ込みは、双眸から涙を流し大口開けて喘ぐ淫らな少女の顔つきに流される。
(それ、に……!)
 中途半端な言葉攻めをした瞬間、うるかの中の肉ヒレが露骨にきゅうきゅうと反応したのが初夜真っ最中の少年には
大変刺激的だった。恐ろしく気持ちのいい締め付けだった。一瞬だけの反応だったが、明らかに少女は目覚め始めている。
 肉体を変質させるのはいつだってひどい情欲だ。それが、熾(おこ)った。
「だめっ、だめなのぉ、あたし成幸、好き、好き、だからあ、上になると、好きにしてよくなると、腰、腰が、動いて、動かしたく
ないのに、恥ずかしいのに、勝手に、勝手に、動いてぇ……」
(……エロすぎです、武元さん)
 くっちゃくっちゃと露骨な水音を立てながら腰を上下させ、日焼け跡も艶かしい乳房を隠すところなく揺らしているうるかに
唯我は呆れながらも……生唾を呑む。
「そ、そんなに俺のこと、好き……か?」
 本当はもっと強い調子で言って躾けたかったのに、予想外の相手の淫猥さに遠慮がちな問いになる。
「好きなの、好きぃ、成幸の、成幸の、おちんちん、自分で、色んな角度から、味わい、味わいたいのぉ」
(だ か ら)

48:
18/02/25 23:21:26.38 3XYtBtT6.net
 もはやうるかに羞恥はない。いや、羞恥がなくなると本能的に察知していたからこそあれほど騎乗位を拒んでいたのだろう。
芯こそ楚々としているが、もともと活発な少女なのだ、リミッターが外れると性欲一色になるらしい。
 唯我の枷も、外れた。このまま行けば体力で勝るうるかの攻勢一方になるという打算もまた働いた。
「もうそろそろ行くぞ、行くぞ……」
「あっあっあっ!! いい、凄い、逞しい、逞しっいい」
 激しく突き始めた唯我にうるかの姿勢が崩れる。胸から離脱した手は再び尻をむんずと掴む。荒ぶる律動に成す術なく
黒髪を揺らすうるかは唯我の胸に顔を突っ伏したが、すぐさま従順な使命感で彼を見上げる。表情(カオ)は見せたいし、
見たいのだ。
「出して、9回目、出してぇえ、好きなの、成幸のねちゃちゃしたの、好kんぶっ!?」
 嬌声はキスで遮られた。もはやどっちから舌を絡めたか分からない。よく噛み切らなかったなというぐらいの激しい上下動が
10秒ほど続いたあと、「んん゛ーーーー!!」熱い脈動が体内で炸裂したのを感じたうるかは瞳孔を見開いた。唇を塞がれて
いるため声が潰されるのが却って淫猥だった。零距離におけるその息遣いはまだ挿入2回目の半童貞には些か刺激が強
すぎる。「出るッ、まだ出る……ッ」ぶるっと震えギュっと目を閉じた少年の眼前でうるかのくぐもった絶叫がまた上がる。
 ややあって。
 唯我の唇から剥がれた人魚姫はそのままぐったりうな垂れ、
「熱い、熱いよ成幸。すごい、まだ全然、全然、衰えてない……」
 どこか正気うすい法悦の笑顔で息せきながらそう告げた。
 ここでやっと初夜が終わった。
 のであれば良かったが、そうでないから高校生の性欲は恐ろしい。

49:
18/02/25 23:21:46.67 3XYtBtT6.net
 褐色の膝小僧が胸の傍までいくほどに足を曲げられている。少女は更に、膝の後ろに両手を回した。
「えと、こっちのが、入れやすい……かな……?」
 褐色の頬を紅くして視線を逸らしながら、おずおずと聞くうるかの格好は─…
 M字開脚、である。秘部がいっそうむき出しになる体勢を、少女は自分で選択した。正常位ラウンド2がスッポ抜けで中座
したので、再発防止という訳である。
(こ れ は)
 唯我の精神の眼鏡にヒビが入る。少し前までは御しがたいお転婆だと思っていた少女があまりに従順な痴態を曝け出した
のが、彼ならずとも驚くだろう。
「も、もー! 早くしてよね成幸! こ、このカッコ、実は結構恥ずかしいんだかんね!」
 瞳をツンツンと尖らせながら赤面で、あわあわと抗議してくる様も少年にとっては高ポイントである。
 唯我はしばし少女のむくれ面に見惚れていたが、

50:
18/02/25 23:22:02.67 3XYtBtT6.net
「武元ぉ!」
 殆ど強姦魔のような勢いで貫くや、「あっ」と舌ッ足らずな声漏らすうるかの両足首をむんずと掴み……正常位で狂ったよう
に腰を動かす。ペニスが抜けたことそれ自体は失敗だったが、結果からいえば睾丸愛撫や騎乗位といった、より興奮をかき
たてるシチューエーションの増える役には立った。射精9回という未曾有を得てなお少年の剛直は猛々しい。
「はっ、はうう、やん、凄っ、速い、成幸の逞しいのが、逞しいのが、速っ、あぅぅぅン」
 足をまっすぐ伸ばしていた先ほどの正常位と違い、唯我はうるかの足の角度をも変更する権利を得た。視覚的にもM字開
脚は淫靡である。足首を強引に外側へ引く。いっそう恥辱的な恰好になったうるかがひどい恥じらいを浮かべるが古今相手
の羞恥で鎮静した男などいない。むしろ彼女の足首は持ち上げられた。同時に膝立ちになった少年は、無理やり浮かしたうる
かの腰へ「上から」激しく突きこみ始める。
「やあああん。成幸の体重があ、体重があ」
 ばじゅばじゅという凄まじい水音を奏でながら抜き差しされ少女の胎内を掻き乱す。
 かと思えば今度は彼女を降ろし、両太ももを無造作に持つと、内側に内側にググっと密着させる。のみならずつま先が
天井を指すほど両足を高く掲げる。
「ぁっ、だめ、だめなのそれ、足ッ、揃えられると成幸の太いのが、気持ち、いいっ」
 骨盤の動きのせいでいっそう強く感じられる、そう哀訴する少女はいっそうの嗜虐心を駆り立てるものだ。太ももが、交差
した。させられた。「あああっ、やめっ、それ強い、太い、太いよぉ」。体が柔らかいが故の災難めいた快美─少年がそうい
う要素に欲情した以上、災難というより人災だが─に涙ぐみながら頭(かぶり)を振るうるかはいよいよもって艶かしい。
 人魚姫の体はとうとうくの字に折りたたまれた。
「すげ。さすが武元。膝小僧がシーツに付くとか」
 肩付近の、である。仰向けの体勢でそれはなかなか凄かろう。

51:
18/02/25 23:22:21.33 3XYtBtT6.net
「んーっ、んーっ」
 足を目いっぱい畳まれたうるか。唯我の追撃は止まらない。彼は上体を少女めがけ曲げた。乳房が潰されるほどに2人は
密着した。手が、どちらからともなく相手のそれに絡まった。唯我の右手がうるかの左手と繋がれば次はもう片方と瞬く間に
恋人繋ぎが完成し(はぅわ。憧れてたけど今の状況じゃ何だかえっちだよう)とうるかは驚く。
 実際、両手は攻城の支点となった。ぎゅっと握る少女の両手を支えに少年は突く、衝く、撞く。
「おくっ、おくにまた、あ! あーーっ!! あーーーっ!」
 力強いストロークに喘ぐ唇が塞がれる。「ん゛んー!」。驚いて大きな瞳をまろくするうるかだが騎乗位の時の復習とばかり
すぐ順応。自分から舌を熱烈に差し込んで唯我の口中を愛撫する。下にありながら唾液を送り込んでくる媚態に燃えた少
年に、
「やっ……」
 更に前髪を強引にかきあげられ、額の髪の生え際に何度も何度もキスされる。結合部からの激しい揺さぶりはやまぬ。
「ふぁうンン、ふっ、ふっ、あうううう」
 額を、熱い息で蹂躙され、唯我の唾液でべちゃべちゃにされる刺激は想定外だが、それ単体ならうるかは何とか耐えら
れた。だがいつの間にやら恋人繋ぎを解除した手によって頭をひっきりなしに撫でられているのだけは耐えられない。足を
くの字にされる淫靡な蹂躙の中で、慈しむように愛おしむように、優しい手つきで撫でられているのが
(こんなの、こんなの、嬉しすぎて死んじゃうよぉ)
 いつしかうるかの双眸からは涙の筋がいくつも溢れ、多幸感はあらゆる刺激を快美として受け止める。
 足が、放された。ほっと一息ついた少女は新たな刺激に背筋を粟立たせる。
「だから、おっぱい、だめなの、だめええええ」

52:
18/02/25 23:22:36.26 3XYtBtT6.net
 忘れた頃に揉みしだかれる双丘の懐かしい快楽に子猫のような声が上がる。
 唯我は半分しか受諾しない。右手だけでヒョイヒョイと肉付きのいい太ももをM字開脚へ直すと、向かって右のそれ
に指をめりこませ支点とした。左手の方は相変わらず乳房を揉んでいる。激しさは、ない、むしろもどかしさで身もだえさ
せるため、じれったいほどゆっくり、ゆっくりと揉みこむ。
「あっ。また、乳首が」
「触られるたび下の方がきゅうっとなるよなお前」
 え!? という形相をうるかはし、
「そ、そんなことまで観察しちゃ……イヤ…………。恥ずかしい……」
 とだけ困りきった様子で告げた。不随意の領域まであげつらわれると、色々どうしようもないと言いたいらしい。
(組み伏せられると大和撫子だよなお前)
 唯我は呆れたが、些細な言葉攻めにすら心から恥らう少女が、うるかが、いっそう愛おしくなった。
 もう打算は「最後の1つ」以外何も無い。唯我は可愛い少女をいじめたい一心の全速全力で腰を使う。肉と肉のぶつかり
合う凄まじい音がする。揺れ動く乳房は頂点が桜色の残影を描くほど揺れに揺れた。
「いい、いい、凄い、あっ、だめ、なんかヘン、ヘンっ、あ!? あああああああああああ!!」
 包皮がまくられた。真珠からの強い刺激はさすがに初夜ゆえ絶頂までは導かなかったが、うるかの感受性をそちらめが
け一段押し上げるには充分だ。
「あ、あああ、あああああ」

53:
18/02/25 23:22:58.23 3XYtBtT6.net
 反射的に背中をバウンドさせた少女。双眸の焦点は合っていない。舌を突き出し、おとがいを仰け反らせた人魚姫は、
半ば喪神状態でぐったりと横たわり息をつく。それほどの刺激だ、しばしば目覚めの兆しを見せていた少女の秘所はここに
本格的な活性を帯びる。蠢動に過ぎなかった淫らなヒレの締め上げが唯我の分身を恣意的ないやらしさでニュルニュルと
歓待する。刺激。うるかの痴態。多方面から調剤された爆薬は男性さえも快美の彼方へ吹き飛ばす。
「た、たけもと、そろそろ、外に……!」
「え!? なんで、あたしまだ、あっ、女の子の日、まだ、一度も、なのにぃ……」
(だからってずっと来ないって訳が……! 今日の刺激が「できる」きっかけにだって……!)
 騎乗位における放出ですっきりしたせいか、やや慎重な構えに移った唯我であったが、もくろみは。
 褐色のすらりとした両足の絡みつきによって阻まれる。動きこそ艶かしいが、いかにも肉食で攻囲的な蟹挟みではない。
綿あめの糸が一重二重と丁寧に掛かっていくようないじらしさがあった。
(あああ、当たるんだ、こういう時、当たるんだ)
 くるぶし。少女のくるぶしが自分の腰骨にコツリと当たったという些細な事実に、少年は驚き、興奮する。
 てか足ちっちゃ! 少年は両目を戯画的なナルト渦にしてうろたえる。
 粘膜ばかりに集中していた所へのくるぶしは、ヤバい。『教本』にない出来事にゃ秀才は、弱い。
(だが乳首! さっきみたいにいじれば足だって緩むはz─…)
 唯我は直後実感する! 結局最後に勝つのは『天才』であると! 秀才は負けるのだと!
「なりゆき」
 淫核への衝撃でぽーっとしたうるかに戦略はない。あるのは少年への愛だけだ。

54:
18/02/25 23:23:17.33 3XYtBtT6.net
「ほしいの……。なりゆきの……せーえき…………初夜だからこそ……ほしいの……。全部ほしいの、ちょうだぁい……」
(破 壊 力 !)
 うっとりとした、白痴めいたうわ言だが、心から欲しいとせがむ美少女の姿は、唯我の愛への天才は、まったく以ってトドメ
だった。
「あああもうどうとでもなれー!! 後は後、今は今だーー!!」
 後先考えなくなった若い雄は寝そべるうるかの両肩の傍に手を置くと、正に獣が犯すような勢いで腰を振りたくる。放出
の為だけにいたいけな少女の肉襞を使うのは途轍もなく快楽で、だから限界も訪れる。火照りに火照った運動不足の体
から汗の飛沫を舞い散らしながら少年は告げる。顎から一滴しずくが落ち、日焼け跡の乳房で砕け散った。
「出る、武元、出るッ…………」
「凄い、またおっきく……あっあっあっ、凄いの、このまま、びゅーっとして、沢山、出してぇ」
「出る、出る出る出る、あッ、あああああ」
 10度目でも依然おとろえを見せぬ量と勢いが少女の体内を吹き荒れた。虚脱の呻きを漏らしたきり何度か震えた少年は
またも崩れ、うるかの胸へ。
「あー。俺、なんかお前に受け止められてばっかだな……」
「いいのぉ。おっこちてくる成幸の重さも、好きぃ」
 うるかはまだ別乾坤の桃源郷にあるらしい。焦点の合わぬ目で舌ッ足らずの声を上げている。(エロいけど……可愛い)。
少年は見とれたが放出後のどこまでも冷然とした部分は(もし朝になっても戻らなかったら……)と青くもなる。

55:
18/02/25 23:23:36.50 3XYtBtT6.net
 ここからしばらく実用性のない著述が続く。
『次』をすぐ求められる場合、「脈絡はないが」でページ内検索するとすぐ飛べる。

56:
18/02/25 23:24:01.11 3XYtBtT6.net
 2人が付き合う事になった詳細はもちろんあるが、この手の物語においてバックボーンは概ね読み飛ばされる傾向にある
ため多くは述べない。
 とにかく付き合う以上、性的な一線に目は向いた、向かざるを得ない。唯我とうるかが他の生徒達と違ったのは「行為」を
受験と同じ次元に設定した所である。期日を、定めた。普通ならそれは「安全日」となるが、どういう訳かうるか、高三にも
なって未だ生理が来ていないという。”できない”子が多い界隈において、新たな”できない”が発生した。
(なんでまた? 水泳でよく体冷やすから……か?)
 とは、気恥ずかしげなうるかに秘密を打ち明けられたさい唯我が抱いた感想であるが医学的には、どうか。
 とにかく不可解だった。そうであろう、うるかのスタイルで初潮すらまだと言われて誰が納得できよう。
 もちろん唯我も男だから、そういう件を打ち明けられた瞬間、妊娠の可能性のなさにホッとした部分はある。が、根は誠実
だから、首をもたげかけた男の勝手を恥ずべき思いで蹴散らした。
「その、病院とかで……診てもらったりは」
 彼ほど検診の重要性を痛感している男はいない。5年前に父を病気で亡くした少年だ、検診と早期発見は信奉している。
 といった感傷は迂愚なむきのあるうるかとて、会話さえ重ねれば付き合いの長さで分かってくる。
「あー、体質? イデンがどうとかって。血とか色々調べたけど、ビョーキとかじゃないから」
 と、いつものサバサバした様子で後頭部かきつつ答えた。「ビョーキ」にやや力を込めたのは、いまひとつのニュアンスが
あるからだ。当時の2人は行為を控えていた。交接による感染を警戒するのは受験生としても当然だ。何よりクリーンな体
であることをうるかの乙女心は叫びたいほど訴えたかった。

57:
18/02/25 23:24:42.32 3XYtBtT6.net
((早い方が、いい))
 初体験の期日である。なるほど男にしてみれば生理の件は都合がいいが、まごついていれば「来かねない」。うるかは
それで唯我が幻滅するのではないかとひたすら肝を冷やした。唯我は唯我で少年だ。
 初陣最後はやはり陣中、深くでという思いは確かにある。
 だが惜しむらくは城は平城、背後にいつ氾濫するとも知れぬ河川すら負っている。討ち入りは急務だろう。
 ともかく付き合うことにした2人は、10日後を期限と定めた。期限に必ず『成せる』よう、受験生らしい計画性で準備を進め
た。初夜、武元家にうるか1人だけだったのも数々の根回しあらばこそだ。
 ……。この辺りもやはり読み飛ばされる傾向であり、述べる意義はないのかも知れない。

58:
18/02/25 23:25:06.47 3XYtBtT6.net
 だがここを省くと『あの2人の、そういうこと』には成り得ないのだ。彼らの行為を、俯瞰的で映像的な淡々たる描写の連な
りで述べることはもちろん可能ではあるが、しかし情緒はない。著述を行うものは、フィクションであろうとノンフィクションであ
ろうと、その脳を強く占めた情景を気に召す文型へ整えるまで決して止まれぬ、一種執拗的な性格を有している。盗聴器も
高かったし、少なくてもこの著述における主眼は「情緒」なのだ。著述する者が愛してやまぬ唯我と武元うるかという少
年少女の情緒を紡ぐため、この著述は開始されたのだ。それがフィクションであるかノンフィクションであるかは、もうお気づ
きであろうから言及しない。
 ともかく。2人。
「受験生なら行為は後にしろ、合格してからにしろ」。正論だ。だが繰り返しになるが「生理」という期日の定めなき期限を
控えていた以上、たたでさえ甘い衝動へ傾きがちな少年少女は性急に動かざるを得なかった。

59:
18/02/25 23:25:38.83 3XYtBtT6.net
 彼らが特殊だったのは、行為を、疑いもなく受験と行為を同列に考えていた点である。
 彼らは、課した。自らに課した。『期日』までに設定した成績を出せないのであればこの話はお流れ、と。
 色事が受験に影響を及ばさぬよう死力を尽くして勉強した結果。
 唯我は師匠と理珠の『得意分野』において、あと4~5点で勝てる点数を一度叩きだした。
 うるかは唯我謹製の模試で60点台後半から70点台前半を安定してキープできるようになった。最初一桁台だったこと
を思えば躍進といえよう。
 しかし初心な2人であるから、条件を達成しても、期日までは色々と悶々していた。堅実な者は、好きな相手とのまぐわい
にすら悩むものだ。「このタイミングでいいのか」「妊娠は……」「社会に出てからのがいいのではないか」などなど悩みに
悩む。もちろん生物としては「したい」。したいが、したくないというジレンマをずっと彼らは持ち続けた。
 余談だがその当時、2人の間に流れる微妙な空気を察し、「ああまた唯我君とうるかちゃん何か問題抱えているなあ」と
三本線目V字口で胃をキリキリさせていた少女がいた。
 黝(あおぐろ)い髪の古橋文乃である。彼女に対し唯我とうるか、意外きわまる償いをする羽目になるが……詳細は後段に
譲られるであろう。

60:
18/02/25 23:26:48.25 3XYtBtT6.net
「したいが、したくない」。インド哲学のようなややこしい男女の機微はマリッジブルーどころか殺人計画のような様相を帯びて
いた。
 激しさを叩きつけねば昇華できぬ強い感情を抱きながら、叩きつければ現状の一切合財が破壊されると直感し、踏み出
せずにいる複雑な状態。
 たかが交合というなかれ、高校生にとっての初体験とは巨大なのだ。
 真剣に愛し合えば愛し合うほど、一線の超距が関係を根底から崩すのではないかと……常に悩む、
 両名の付き合いが些か長すぎたのもマズい。中学以来の知己という立場が本格的な男女の関係への発展を迷わせた
のだ。
 唯我にとってうるかは、つい最近までただの女友達だった。
 恋愛対象ではなかった者を、高三から発生したうるか怒涛のアプローチで恋愛対象にした速成振りが、なんとなく無理して
「身内」をそういう目で見ているような感じがして、だから戸惑う。
 うるかにとって唯我は中学時代からずっと恋焦がれた存在だ。
 付き合えるようになったのは幸福だが、されど交合とは1つのピークである。ピークを迎えたものは衰えていくのが世の
常だ。そういう瓦解を、うるかは、怖れた。付き合いが長い分、自分の欠点など知られ尽くしているのだと心から思った。
そういう存在が、「ピーク」ですら成果を出せなかった場合、フラれるよねと自虐的なうるかは勝手に思った。

61:
18/02/25 23:27:33.68 3XYtBtT6.net
 しかも唯我の周りには魅力的な女性が沢山いる。自分が飽きられた時、悪夢のようなタイミングで理珠たちの誰かが致
命的なアプローチを働くのではないかと、端的にいえば、ビビり倒した。
 なのにそうやって葛藤すれば葛藤するほど、相手がそれに足る、大事な、とても魅力的な人物に思えてくるから若さは
困る。
 結局、期日は「頑張ったんだし、キスぐらいなら」という及び腰な両名のファーストキス(様子からするとどうやら唯我の方
は『偶発事象や緊急避難ではない、真に自ら進んで』するという意味での、ファーストキスらしかった)からあれよあれよと
火がついて、前章がごとき顛末となった。
「あはは、おいしいお菓子を前につまみ食いだけで止まる訳ありませんー」とは体重計を怖がる文系少女であるなら当然求
められるせせら笑い。
 初夜に視点を戻す。
 最初の交合を終えた後。ひとしきりのキスの、後。
 引き抜いた後でもある。2人は同じシーツの上に並んで寝転がっていた。
 間には30cmほどの距離。密着してイチャイチャしたくもあるが、放出10度の後である、休憩したいし、照れもある。

62:
18/02/25 23:27:50.97 3XYtBtT6.net
(えらいこと、言っちゃった)
 うるか。正気を取り戻した彼女はズーンと固まっていた。やらかした、としか言えぬ笑いを凍りつかせていた。法悦の極み
のなか叫ぶように子種をせがんだ記憶は確かにある。忘我ゆえ完全には覚えていないが、少年への愛を残余なく呻き散ら
してしまったという感覚だけは残っている。恥ずかしさのあまり少女はぎゅっと目を瞑る。慣例で、仕草は自然と乙女じみる。
この時はいまだ火照る頬に両手を当てた。
(見れない。成幸のカオが見れない。あんなことばっか口走りすぎちゃうとか、えっちな娘(こ)通り越してインランだよう。ヒ、
ヒいてないよね成幸!? だいたい初めてであんな乱れちゃうとかどーなん? いや違う、きっと成幸が……上手、だったか
らだ。あ、あたしはそんな、インランとかないんだかんね。そ、そーだそーだ。ちゅ、中学高校とあんなウダウダやって告白で
きなかったあたしがインランなわけ……)
「武元」
「だからあたしはインランじゃないってばーー! 凄く気持ちよかったけど、成幸がうまいってだけなんだからーーー!!」
 怒ったのか、褒めているのか。とにかく呼びかけに過剰反応した少女は><でポカポカと少年を叩く。
「落ち着けって武元! あ、ああいう場面じゃ誰だってああなるんだから、気にすんな!」
「で、でもでも! 成幸のこと考えてシてた時はああならなかったもん!」
 あー。とんでもない言葉に唯我は固まった。聞かなかったことにするが、少女の方は、
「むむむっ、胸の方だかんね! し、下の方は、なんか怖くて……あまりさわれなかったし……」
 といわなくてもいいことをいった。後はいつものパターンだ。数分後うるかは後悔して頭抱えてぶるぶる悶えていた。
「……自爆すんのは勝手だが、人が気ぃ使って流してる時ぐらい流せよ」
 少年はやや不機嫌そうに瞳を細めた。ゆらい初めての相手にすべきではない言葉の荒さだが、うるかには中学以来ずっと
こういう口ぶりなのだ、今さら治しようもない。
「な、成幸は、どーなん」
 いつの間にか頭巾の如くシーツを被っていたうるかは、片目だけをちらりと覗かせ「あたしで……シたの?」と問うた。
「お前なあ」。唯我はちょっと頬を赤らめながら気まずそうに答える。「それ、俺が同じことしてたって白状しない限り、絶対
納得しねぇパターンだろ。つうかここで強めに「ねえよ」って言っちまったらお前ぜったい傷つくけどいいのか?」
(そーでしたぁ)
 少女は頭巾(シーツ)を投げ出しズズンと落ち込む。青紫の縦線が10本ばかり褐色の顔の右半分を覆った。
 オカズにされてなかったという事実があれば「あたし魅力ないんかなあ」と落ち込むのが自分だと気付いた少女は、
「あ、あはは、今のナシ! さっきのでちょっとヘンになってるんかなあ、忘れて!」
 空笑いを打って誤魔化す。直視したくないことをこうやって回避してきたのは自分の悪い癖だなあと人魚姫は思うが、染み
付いた習慣は、そうやすやすと直せない。
「……したよ」
「え?」
 ぽつりと呟く唯我に大きな瞳をぱしぱしさせるうるか。
「だから、お前で、したことあんだよ。悪いか。あ! つ、付き合うようになってからだぞ、本当だぞ!」
「な、なんでまたそーいうことを……?」
「なんで!? お前がそれ言う!? ボタン開けて胸元見せたりとか、目の前で足丸出しで寝たりとか、スマホの操作ミスって裸
見せるとか、そーいうことばっかお前してきただろ!」
(あー。最後のだけだなあ、事故なの。他は完全に故意だ、ごめん成幸……)
「あとラーメン!」
「ラララ、ラーメン!? 倒れた後の奢りの!? 何でアレで!? あたし普通に食べてただけじゃん!? 」
「……色々艶かしかったんだよ! そりゃすまないとは思ったけど、ウチ貧乏なんだよ! 本とか買えない環境であんなスッゲェ
刺激きたら、そのっ、仕方ないだろ!」

63:
18/02/25 23:28:08.88 3XYtBtT6.net
 ぱああ。うるかは輝く笑みを浮かべた。
「いや、ズリネタにされてその顔はねえだろ」
「えへへ。そうだねー。えへへ」
 少女はまた咲(わら)った。余談だが「咲」、中国ではもっぱら「わらう」の意で使われている。故に『武井咲(えみ)』)。開花
の意で使われるのは「茹でる」同様、日本独自の用法だが神代記のような古い書物では「咲(わら)う」で使われている。文学
作品における有名な使用者は、司馬遼太郎先生の『城塞』は冬ノ陣の項冒頭の淀君であろうか。
 余談が過ぎた。
 うるかはちょっと甘えモードになった。30cmの距離をずずいっと詰めて唯我にすり寄る。
(あたしで……するとか、変な形だし、恥ずかしいけど……でもその時だけは、あたしに、一番一生懸命になってくれてたって
こと、だよね)
 あまり細かいことは考えられないうるかだから、そう思う。
「てかー、なんでスマホ活用せんだんー? 時代はいまデジタルだよー?」
 嬉しくなるといかにもギャルっぽい演技で唯我をからかいたくなる。
「俺が電子機器ダメって知った上で聞いてるだろお前。だいたいアレ、家族共用だし……「使える」のもフロん時ぐらいだし。
でもあれ電話がかかってくんだぜ、家族共用だから。ヒヤっとしたなあ。おっぱじめようかって時、母さんの勤務先にコール
鳴らされたときは……」
 家には唯我のアドレス帳を勝手に覗き見る悪魔もいる。いかなデジタル音痴の唯我でも履歴バレぐらいは警戒する。
「だからその、あたし、で……?」
 どきどきと期待を込めて唯我を見つめるうるかに「あんだけアプローチされりゃあな」と少年はバツ悪げにそっぽ向いた。
「あ、ところであたしが初めてって分かったのなんで?」
 それは挿入直前、唯我が放った言葉である。仔細が明かされるまえに怒涛の動乱へ突入したためうるかはずっと理由を
聞きそびれていた。
「あたし隠してたつもりだよ? だから、く、口とか、胸とかで、オトナらしさのエンシュツっていうの? 慣れてる感じを出した
つもりなのに、けっこう……練習したのに、もしかしてその……気持ちよく、なかった?」
「……スッゲエ良かったけど」。両名の視線は期せずして少女の体のあちこちに付着する白濁に行く。栗の花の匂いが鼻腔
をくすぐり、2人は決まり悪げに頬を染め、黙る。
「お前いろいろぎこちなかっただろ]
「ぎこちなさめー」
 少女は無心で呟いた。怒りを表明したらしいがどうも脈絡がない。
 とにかく、唯我がなぜうるかの経験の無さに気付いたのか。
「お前……告白、の時、俺のこと中学時代から好きだったって言って……くれたろ」
「うん、言った。言ったね。えへへ」
「だったらぎこちなかったのは久々なせいじゃない。まさか小学校のころ既にってのはお前の性格上ないだろ絶対」
「確かにそうだけど……たったそれだけで見抜くなんて……」
 探偵みたいな唯我カッコいいようとポワポワする少女であった。
(うー、でも)
 シーツに目を落としたうるかは困ったという顔をした。汚れが、ひどい。破瓜の血や愛液、白濁や汗、涎に涙といったシミ
が到るところ点々とこびりついている。
(どーしよコレ。流石にママに任せるわけには……)


 そっから更に2回したのが金曜日の夜。

64:
18/02/25 23:28:26.42 3XYtBtT6.net
 翌日。土曜。昼。武元家、洗濯機前。
「珍しいわねあんたがシーツ洗濯するなんて」
「そ! そりゃもう高三だし!? 一人ぐらしに向かってぼちぼちヨコウエンシューしてく時期だし!?」
 ゆうべ家に居なかった母の問いにギクリとしたうるかは上ずった声を漏らす。追求は覚悟していたがどういう訳か何もこ
ない。(やりすごせた……)と安堵したうるかは洗濯槽の中のシーツに手を伸ばす。脱水さえも完了したそれは濯(すす)が
れきった洗剤特有の爽やかな匂いを漂わせている。淫らな匂いはない、バレない。安心と共に、湿り気でやや青白く透き通
った布団の布を持ったうるかは、せっせかせっせか。手を動かす。
 彼女の母はぼんやりと様子を見る。ゆうべ家に居た唯一の─そしてここ1週間、ママは金曜夜に外泊するよね絶対す
るよねと何かと聞いてきた─家族の、普段ならば、絶対ありえない挙措を母はしばらく眺めるともなく眺め続け
「うるか。生理きたらちゃんと言うのよ。色々買うから」
 ちょっとからかうように、告げた。少女はつんのめり、露骨に四肢を踊らせた。
「色々」に避妊具が含まれているのを直感するに到った訳だが、この辺のなまぐさい機微は母娘でないとちょっと分からない。
「なななっ、なんでそっちに話がトぶかなー!?」
「変? 自立が近いならそろそろかなーって思うのは普通でしょ?」
「そ! そりゃ、来たらちゃんと言うし、報告するけど! じゅ、準備ぐらいしてるから! い、いざって時すぐ対応できるよう
準備してるから、あまりこの話題ひっぱらないで頼むから!」
 はいはい。うるかの母は立ち去った。

 火曜日。更衣室。
「水泳バカが3日も練習休むとか」
「土日はともかく月曜放課後に法事って……。ねー?」
 久しぶりの部活で、川瀬隊員と海原隊員にニヤつかれた。余りに女性的な傷ゆえに休んだのを知ってるぞと言わんばかり
のニヤつきだった。
 水曜日。図書室。
(ううう。どうしてあちこちにバレるかなー。そんでタンコブまだ痛いし。どんだけあたし全力で頭ずがずがしてたんだ)
 三人娘合同の勉強会でうるかは頭を抱え俯いていた。どんより紫した顔で「うぅ、ズキズキする」と呻いた。
「大丈夫? 保健室で氷貰って冷やす?」
 親友の優しげな申し出だけが救いだなあと人魚姫は思いつつ「うん頼むよ文乃っち」と快諾。眠り姫は任せてと席を立ち
廊下へと出ていく。「……?」、彼女に反応したのは親指姫。
(…………)
 理珠はシャーペンを顎に当てたままじっと考える。「なぜこの登場人物はこういう言動をしたのだろう」が分からない時の
もどかしい感情があった。が、感情について未分化な理珠だからクッキリとした明文化が出来ない。
(えっと、えっと)

65:
18/02/25 23:28:47.93 3XYtBtT6.net
 牧歌的なまでに瞳と輪郭を円くして、理珠はいっしょうけんめい、考える。

 数分後。
「どうしたの武元うるか頭なんて抱えて。もしかして頭痛? 良かったら頭痛薬貰ってきてあげるけど。え、違う? タンコブ?
それプールで打ったせいなら精密検査した方がいいんじゃないの? した? ちなみに原因はプールじゃなくベッド……? 
……。珍しいわね、あなた寝相いいのに」
 ぶらっとやって来た関城紗和子その人以下敬称略がふと疑念に染まった瞬間、うるかは顔いちめん真赤にした。
(さわちんはさわちんで無自覚にガンガン来るのが怖いよう)
 関城さんならぬ責譲さん……などという諧謔は文乃でもなければギャグにさえならぬであろう。「譲」の一般的な字義は
「列に切れ目を入れ、自分より前の位置に相手を招く」であるが、同時に「敢えて割り込ませ、挟撃する」という意もあり、
それがゆえ常用表外では「譲(せ)める」と読む。
 うるかは、挟撃の渦中に陥る。理珠が不意に発言したのだ。
「あの。武も……うるかさん。関城さんの方が正しいのでは」
「(ギャー! リズりんまで追撃してきたよー! やめてあたしのタンコブの原因これ以上さぐるのやめてーー!)
 胸中、画鋲2つ踏んだドーモ君のような形相で慄くうるかであったが、次の言葉にはちょっと目を丸くした。
「どうして文乃は気付けたのですか? なぜ何も聞かず氷という正解を導けたのですか?」
 理珠はただ、無表情を純粋な疑問に染めて問う。タンコブについて言っているらしい。
「なぜってそりゃ……文乃っちのカンサツリョクは鋭いし? あたしの微妙な動きとかから気付いたんでしょ多分」
 唯我以外にはまったく無頓着な人魚姫はあまり気にしないが、「いやいや待ちなさいよ」と紗和子が待ったをかける。
「え? なに? まさか古橋文乃は何も聞かず一発であなたのタンコブに気付いたってこと? 後頭部の、しかも髪に隠れ
ているコブに? 普段なら必ずやってる問いかけなしで……? パっと見、普通の頭痛にしか見えなかったのに、最初から
氷を? 血行不良に基づく頭痛ならむしろ悪化しかねないのに、頭痛薬じゃなく、氷……?」
 そーだけど。それがどうしたのと非常に戯画的な表情でのほほんとするうるかに紗和子は少し考える。
 最近のうるかと唯我が相手を見る度ひどく緊張していたのは知っている。「ぎくしゃく」ではない。緊張だ。そして今のうるか
は何だか肌がツヤツヤしている。紗和子はそれに気付いた瞬間、有名な騙し絵が壺から横顔になった時のような切り替わり
をもうるかに感じた。
(なんかやたら綺麗になってないこのコ)
 理珠一本の紗和子ですら「どきっ」とする色香があった。唯我との緊張のあと色っぽくなった少女……1つではないか、
答えなど。その解は寝相しとやかなる少女がベッドでタンコブを作るかという疑問すら紐とく。
(つつっ、つまり行為の最中で……!?)
 冷めているようで男女の機微に年相応の関心アリなのが紗和子だ。衝撃の推測にやや下卑た赤面─断っておくが
中傷ではない。げへげへと臆面も崩れること出来るのが彼女最大の魅力なのだ─でニヤケながらも困惑する白衣の
少女。もっとも根は怜悧だから(いやいや事故よね事故のはず、唯我成幸の性格的に暴力はないし)と考えるが─…
 問題は。
                                           いま
(古橋文乃。彼女が武元うるかのタンコブに気づいたのって……本当に今日なの?)
 ガチの観察力で気付いただけと紗和子は思いたいが

66:
18/02/25 23:29:00.74 3XYtBtT6.net
(まさか何かの拍子で現場目撃してたりしないでしょうね……? たたっ例えば初めての夜、どっちかの家に向かう途中の
どっちかを雑踏で目撃して、ただならぬ様子が気になって尾行したら……的な)
 紗和子は知らないが、幕末、そういう事例があった。片貝某という長州藩士が、仲間の幕府方への内通を顛末上記が如く
で知ってしまい、消されたという。
 果たして、文乃は、どうか。

67:
18/02/25 23:29:29.11 3XYtBtT6.net
 さて唯我。初夜かれは武元家に宿泊した恰好になるが、家族に対してはどう繕ったか?
「今週も金曜は小林の家に泊まるから。勉強で合宿すっから」
 男友達を使ったアリバイという、秀才が聞いて呆れるほど陳腐な事前策をこの男は敢行していた。
(1ヶ月前から毎週金曜は本当に小林ん家泊まるようにしてたから怪しまれない筈!)
 初夜当日に関しては小林少年に「頼む! 何も言わず今日もお前の家泊まってるってことにしてくれ!」と手を合わせ頭
をさげた。察しのいい親友はそれだけで「電話きたら今は寝てるって言っとけばいいんだね」と快諾してくれた。
 ところが水曜日─うるかのタンコブについて紗和子が不安を覚え始めた日の夜─、花枝は息子たる唯我にちょっと
ニヤついた表情で
「今週土曜ちょっとみんなで親戚の家泊まらなきゃならなくなったけど、あんた受験生だもんね、『留守番』……するわよね!
頑張るわよね! 頑張りたいわよね!」
 と聞いた。少年の顔からちょっと血の気が引いた。このあたりの生ぐさい機微も母子でなければちょっと分からない。

68:
18/02/25 23:30:00.62 3XYtBtT6.net
「そ、そりゃ、1人の方が捗るし」
 声音が堅くなった。まさかバレているのかでも母さん大らかだから無言の許可なのか、いやいや待てアリバイ工作は完璧
だった筈1ヶ月前から仕込んでいたんだぞ大森ならともかく小林がトチる筈がでも完璧なつもりな計画ほどつまらないミスで
露見するのが世の常な訳でエトセトラエトセトラとうろたえる少年は気付かない。
(なんか、怪しい)
 妹が、自分と母とのやり取りを襖の隙間から覗いているのを。水希ちゃん(以下敬称略)。唯我を愛すること甚だしい黒髪
ぱっつんの少女も何となくだがキナ臭い雰囲気を感じている。
 朝帰りの記憶じたいは消されている。先週土曜、初夜を終えて帰ってきた唯我にもちろん食って掛かりかけた水希であった
が葉月ちゃん和樹くん(以下両名とも敬称略)がパっと出てくるや。
「お兄ちゃんは朝帰りなんてしてない」
 尋問の険に彩られていた水希、みるみると凡矢理もとい惆(ぼんやり)した顔つきへ蕩け果てた。
 その後ろには、紐付きの五円玉をポケットに手際よく仕舞う和樹がいて、葉月と花江は無言でサムズアップしていた。
 どうも、朝帰りの記憶は消される慣例らしい。文乃との外泊の時も恐らく同じ処理が行われたのだろう。
 が、水希。
「今度の土曜、兄以外全員が外泊」「兄だけを、残す」といった母の提言に、脳の、記憶の欠落した黒いクレバスを刺激された
らしかった。「っ」。右側頭部を微かな苦悶の顔つきで抑える水希。尖った槍の砕片が貫通したような衝撃と頭痛に当惑する。
(私は……何か、大事なことを忘れている……!)
 謎めいた苦衷はずっとあった。
(先週の金曜、お兄ちゃんはいつ帰ってきたの……? 祭りの日は? 夜、突然飛び出していった日は…………?)
 不安は、記憶を消されてもずっとあった。何が不安かを考え、眠れない日々が続いていた。
(そのせいで最近……不眠症気味だよ…………)
 目の下のクマ。兄を取り巻く見目うるわしい少女たちにはないそれを兄に気味悪がられているのではないかと怯える。
「やっとく?」
「やっとこうか」
 背後で幼い弟妹が紐と五円玉の化合物を持ち出した。にじり寄る二豎(にじゅ)と忘却病。熟慮の水希は気付かない。
(しかもお兄ちゃん、先週金曜以来、ヘンだし。思いつめた表情すると、ランニングとか筋トレを、いきなり……)
 それは、うるかの女体を想像して悶々とした時の適応機制である。弟妹のせいで容易に自己処理できぬ彼にとって、あ
けっぴろげに出来るただ唯一の発散であった。
 この奇行は、唯我の母堂の確証を強める材料であったのは想像に難くない。初体験を疑わせたのは何か別な案件であ
ったかも知れないが、ランニングや筋トレは補綴足りえたろう。
 人生経験の浅い水希はそういった生臭い男の摂理までは理解できない。が、「おかしい」ことは仮令(たとえ)予備知識の
ない子供だったとしても分かるものだ。
(とにかく! お兄ちゃんを一人きりにさせちゃいけない!! 理由は分からないけどさせちゃいけない!)
 外泊の記憶こそ失っているが外泊の結果行われたであう行為への根源的な恐怖が決意を生む。
(決めた! 土曜日、私はゼッタイ家開けない! 親戚ゆき賛成のフリしてお迎えの車きたときバックれて! 家戻る!!)

69:
18/02/25 23:30:21.24 3XYtBtT6.net
                                        かた
 可愛らしい怒りの表情で眦(まなじり)に涙溜める水希の決意は、鞏固い。
「これはムリだよ」
「50円玉がないとムリだねー」

 そして決戦の土曜昼! 水希は!
「すぴー」
 縁側の板に寝そべり! 涎を垂らし! 眠っていた!
 ああ! 決意を固めていた筈の彼女が、いったい誰のせいでこんな目に!!
「え、母さん、この状態で水希連れてくのかよ、せめて起こした方が……」
「いいのよ。ここしばらく何か不安らしく寝れてなかったし、起こす方が可哀想よ」
 唯我の傍で花枝はあらあらまあまあと笑っていた。
「んもーてっきりゴネると思ってたのに寝ちゃうなんてドジなんだから! でも大人しく親戚の家いく方が成幸に好かれるの!
無理やり残ってお邪魔したら嫌われるわよ~。お兄ちゃんは大事な用事があるんだから」
 娘に肩を貸す母のポケットから何か落ちた。青と白が半々のカプセルがたくさん規則正しくパッケージされたシートであり、
その一隅では拉げたブリスターから遥か下の地面が見えている。つまり一錠が……使われている! 
(あコレ睡眠薬だ、睡眠薬だよ絶対、母さん水希に一服盛りやがったな睡眠薬を!)
 視線に気付いた母は「バッ」と無言で座り込んだ。水希に肩を貸しているにも関わらず恐ろしく機敏で、獰猛ですらあるその
速度が唯我には怖かった。
 小声だったが、唯我は聞いた。確かに聞いた。「まずい疑われちゃう疑われちゃう」と早口で紡がれた母の言葉を。
(オイ)
 唖然とする息子の前でうずくまっていた母はしばらくゼーハーゼーハー息せききっていたが、立ち上がると、
「た・だ・の、お母さん用ビタミン剤よぉ」
 と、てへぺろ顔でサムズアップし楽しげに笑った。
(ウソだよなそれ絶対ウソだよな!? あんた俺の妹に何してくれてんだ! ああいやでも不眠症気味だったから処方とし
ちゃ正しいのかいや正しくねえよ!! 医者のちゃんとした処方なしの投薬とかダメだろ絶対!)
「う、うう。全身まっくろなラバースーツが私のみぞおちに鋭い貫手を…………」
(ほら水希ヘンなユメ見てるし! 母さんあんた何してくれてんの!?)
 依然として白目を剥きぐったり呻いている妹にまったく唯我は同情を禁じえないが、
(けどすまん水希)
 水希を押し込まれた親戚の車のドアがバタムと閉じた。それがブロロロと去っていくのを唯我は涙ながらに見送った。
(今日ばかりは、今日ばかりはお前が居ない方が……。すまない……)
 口に横手を当てた少年。不等号に細まった双眸からボロボロっと溢れるは水球。

 連行っ……! 唯我水希、連行っ……!

 ここに最大の障害が、消えた。

70:
18/02/25 23:30:51.23 3XYtBtT6.net
※ 『次』をすぐ求められる場合、「脈絡はないが」でページ内検索するとすぐ飛べる。

 うるかが唯我以外だれもいない唯我家に到着したのはこの日の午後5時。
 服装は文乃を見舞いに来た時のアレといえば早い。唯一ちがうのは髪型で、ポニーテールだった。
 着くなり玄関先で「んっはあ!」とか何とかベロチューの1つでもかまし、そのまま朝まで貪りあってくれれば述べる方とし
ても楽だったが、
「よいしょ」
 うるかは、靴のつま先を玄関めがけ揃えそして置いた。

71:
18/02/25 23:31:04.87 3XYtBtT6.net
「しばらく俺の部屋で勉強な」
 唯我は玄関の扉をかちゃりと施錠した程度に収まった
 事もあろうにそれから2名は午後10時を過ぎてなお普通に受験勉強をしていたから始末が悪い。
 節度というか縛りというか、ともかくこの数日前から「やることはやるが、英語の強化合宿を5時間ぐらいしてからでもないと」
といった約定(うごき)がどちらからともなく芽生え、かかる協契と相成った。
 設定された刻限は午後10時。
 むろん若い2人だ、机に参考書やらノートやら広げた当初はすぐ隣で自分にとって心地いい匂いを漂わせている相手に、
(これホントにガマンできるんだろうか)とドキドキ悶々としていたが、30分も経つとすっかりふだんの授業風景になった。
「ええーっ、アルファベット1文字だけじゃん抜けてるの。オマケしてよー」
「お前なあ、受験でそーいう物言い絶対通じんぞ。いま間違えた単語10回練習な。あとでテストして暗記できてるか確かめる」
 1時間14分目で小休止。20分の休憩と雑談を挟んで模擬テスト。
 2時間49分の時点で先の模試の採点完了。プラス4点は微増の範疇とはいえ、うるか、最高記録更新。唯我、褒める。

72:
18/02/25 23:31:21.57 3XYtBtT6.net
 二度目の休憩が終わったのが午後8時15分。順番は前後したが唯我もうるかもこの辺りで「もう少しで……」と行為を
ちょっと意識したが、あと僅かだからこそ妙な色気を勉強に持ち込むのが憚られ、むしろ一層集中した。時おり訪れる
一茶頃(いっさけい)のズズリという音はあたかも”ししおどし”の如く。
「つーん」
「悪かったって。中学からずっと名字で呼んでるせいで、つい」
「……やだ。2人きりの時ぐらい「うるか」って呼んでくんないと、やだ」
「すまん武もt……あ!!」
「だから! ああもう成幸も練習しようよ、あたしみたいに……」
 刻限たる10時までの活動は静謐なるがゆえに起伏はなかった。
 質問と返答、指示と練習が交差するいつもの勉強風景であり、傍目からはとても性行為を控えた若い男女には見えなかっ
た。
 いや、当人達ですら滑稽な話ではあるが失念しているようだった。
 失念する瞬間の方が多くなり始めていた。甘美への興奮を誤魔化すため眼前の勉強を徹底した結果、セックスという、
質量のない砂糖菓子よりも魅惑的なイベントが、最近ちょっと巷を沸かせている程度のゴシップネタ程度の頻度でしか脳
髄を過ぎらなくなった。

73:
18/02/25 23:31:35.22 3XYtBtT6.net
※ 『次』をすぐ求められる場合、「脈絡はないが」でページ内検索するとすぐ飛べる。
 5時間。大作と呼称される映画ですらほぼ2本見れるほど長い時間。寝れば一瞬だが、爆ぜそうな生理現象を耐えるには
余りに長い。若く、旺盛な性欲もまた爆ぜそうな生理現象であろう。2人は、よく耐えた。勉強風景からすれば忍耐という言葉
はやや遠いが、質実を以って軽燥を押し込め抜ける高校生などそうはおらぬであろう。
 うるかの茶量はいつもより多い。間を持たせるためとか鎮静のためとか、色んな理由でコクコク飲んだ。
 
 これがのちに、どうしようもなく彼女を恥ずかしがらせる原因になるとも知らず……。
「あ、その菓子もらっていいか。葉月と和樹の好きな奴なんだ」
「いいよー。袋ごといっとく?」
 暗記カードの束から目を離さない少女に「すまん、感謝する」と手を立て頭を垂れる少年といった退屈な情景が続き─…
 ようやく刻限たる午後10時が、来た。
 その瞬間、2人は!

74:
18/02/25 23:31:48.71 3XYtBtT6.net
「えー。じゃあここの文法こうなるんじゃないのー?」
「だから違うって! お前のここへの騙されっぷりはなんなの!? そりゃ日本語じゃこーいう順番だけど、英語は違うの!!」
 まったく気付いていなかった。せっかく机の上の目覚まし時計さんが、待望していたはずの午後10時を差してくれていた
のに、ほんとう、全然、完膚なきまでに! 気付かなかった。
 目を縦棒いっぽんの無心にした表情で、かりかりとノートに書き留めるうるか。
 ぼやきながらも、彼女用に分かりやすい例題を考える仕草の唯我。
 時計の針がカチリと動き午後10時01分になったが、勉強に没頭する2人は気付かない。
 ぽたぽた。急須の口から鮮やかな翠の雫が垂れる。「湯淹れんの3度目だぞ。やかんのが良かったかなあ」、唯我がぼやきなが
ら台所に行った間もうるかは休まず練習を続ける。
 10時32分。「あ! なるほど!! これなら分かりやすい!」「ホントか? じゃあ応用問題出すからやってみろ」
 10時45分。「……。2問目より捻ったのに正解とか」「えへへ、分かってきてるっしょ?」
 10時57分。「じゃあさ成幸、あれもこれと根っこは同じだったりするん?」「よく気付いたなお前! そうなんだ実は……」

75:
18/02/25 23:32:12.29 3XYtBtT6.net
 …………。

 こいつら、いつヤるんだ。
 と、述べる方すらヤキモキするほど両名は勉強漬けであった。

※ 『次』をすぐ求められる場合、「脈絡はないが」でページ内検索するとすぐ飛べる。

 まったく唯我という男はよほど教育者気質らしい。確実に成果を出しつつあるうるかが嬉しく、つい指導に熱がこもる。
 少女は少女で一生懸命かんがえた結果が上達に結びつく水泳のような構図が楽しくて、何より大好きな少年に褒められ
るのが嬉しくて、頑張ってしまう。
 その頑張りが指導の熱になる無限の循環はもちろん平素であれば好ましいものである。
 性の機運を、輝度の高いソーダ・アイス色のエネルギーを、対受験の高純度燃料に転化しうる節制じたいは見事である。
 が、エロを述べる方や述べられる方にしてみればこれほど馬鹿馬鹿しい構図もないだろう。
 しかしまだ抜粋であるだけマシと容赦していただきたい。唯我と武元うるかの情事であることを示すという名分のもと、
そのじつ同じ苦痛を味わえとばかり、金甌無欠でノーカットな5時間以上の『勉強風景』総てを述べるのも当然可能である
が、1秒でも1字でも早く「本番」へ行けるものが是とされる情報化社会の成人指定に則り、最低限の抜粋に留めた。(その
ため勉強の用語的なものは意図的に省いた)。

76:
18/02/25 23:32:30.55 3XYtBtT6.net
 11時22分。運命の転機が。訪れた。
「ほんとだ予備校のテキストに解説あった」
 先に気付いたのはうるかである。何気なく時計を見た瞬間、勉強のキャッチボールは終わり─…
(もうほぼほぼ11時半なんですけど!? 予定から1時間半、過ぎちゃってるんですけど!!?)
 温和で優しい少女だから、勉強に夢中で、唯我に「そういうこと」をさせてあげれていなかった事実にまず申し訳なくなった。
(ううう。家族の人だれもいない夜に1人でお泊りしにくるって「そういうこと」なのに……! と、途中まではちゃんと覚えてたっ
ていうか、覚えてるからこそ勉強に集中したのに気付いたら90分ぐらい過ぎてるとか本末転倒もいいとこだよーー!!)
 艶っぽいお姉さんキャラなら、「あらもうこんな時間。ここからは夜のお勉強ね」とでも上手く誤魔化して突入できるが、うる
かの経験値は乏しい。わずか1週間ほどまえ初夜を迎えたばかりなのだ。とてもフェロモンむんむんで誘惑などできない。
 が、じーっとしててもどうにもならないとは中学以来さんざ味わいつくした実感でもある。
(落ち着かなきゃ。とと、とりあえずお茶飲んで、落ち着いて、そっからゆっくり考えないと)
 すっかりぬるめの緑茶をズングリした白い湯のみからコクコク飲むうるか。好材料はある。初夜。かすかだが度胸付けに
なっている。
(そうよ武元うるかあたしだっていつまでも昔のあたしじゃないの! こーいうときはウジウジしてないでバっと伝えるのが一番!
ふ、ふしだらな女の子って思われるのかもで恥ずかしいけど、な、成幸だってえっちなこと好きだし? 予定だって過ぎてるん
だし? あたしから誘っても問題ない! 筈!)
 意を決したうるか、ついに喋る。
「なりy「でだな、ここはこういう覚え方をするとだな」
 熱の入った唯我の解説に流された。流されながらも教え子の悲しい性で、ついつい反射的にノートをとってしまう。ノートを
とる作業が、告解という莫大なエネルギーに割くべきリソースを喰ってしまう。眼鏡少年のレクチャー、続く。
(ううう。言い出し辛いよぅ。成幸の解説、ギア入っててめっちゃ分かりやすいから、遮るの勿体なくて、言えないよぅ)
 双眸を不等号にして、ミニマムな雪だるま型の涙を溜める褐色少女。明らかな変調だが、解説に没頭する唯我は気付かない。
この男のよくない点である。文乃のポニテくるくるから何1つ察せなかった時の、唾棄すべき、とても腹立たしいアレが出た。
 11時47分。
「すまん武元。茶葉がなかったんでほとんど湯だが良いか」
 と急須抱えつつ台所から戻ってきた唯我、時計に気付く!
(……!! ……!!)
 彼の滑稽さたるやなかった。危うく落としかけた急須を辛うじてキャッチすると、眼鏡の奥の瞳をくわっと見開き、口を数度
パクパクさせた。動揺は着座しても続いた。
(やべえ。すっげえやらかしちまってるぞ俺! 2時間近く、その、武元と、する……ことを忘れちまってたとかどうなんだ!? 
いや受験生としちゃ寧ろこっちこそ正しいんだけどね、しかし男としてはどうなんだ!?)

77:
18/02/25 23:32:51.49 3XYtBtT6.net
 客観的に言えば、唯我はさっさと刻限が過ぎている旨だけ告げればいい。もしこれが
”唯我が下心を隠し、勉強すると偽って、うるかを招いた”
 であるなら、勉強からの急転直下で襲うのは到底歓迎できない行為だが
(武元からの了解は、既に……)

─「べ、勉強も頑張るから、終わったら、ご褒美を……」

 といった約定は先日確かに引き出している。(あん時の武元、可愛かったなあ)と唯我がホワホワするほどのうるかだった。
その時の彼女は俯き、前髪に両目を隠したまま、唯我の袖を「ちょいっ」と摘んで、気恥ずかしそうにおねだりしていたのだ。
(だ、だから時間過ぎてるってちゃんと告げさえすればガーっと行ったっていいわけで)
 ガマンしていたぶん、思い出すと、ひどい。おねだりうるかを思い出したのも惹起となった。
 いまや唯我最重要の橋頭堡には戦力が結集しつつある。7時間、である。下世話な言い方をすれば、精力が全盛で、発
散すべき機会に驚くほど恵まれぬ男子高校生が、つい先日モノにした魅力的な少女と、7時間2人きりで、『何も』なのだ。
 彼らは。
 受験生として、やるべき勉強を、やった。予定より2時間も長く……。
 そしてもう深夜であり、疲労はピークだ。人間の頭脳的な構造からいってここからの継戦ほど能率の見込めぬ作業もない。
 で、あるなら。
((べ、別に、いいよねっ!?))
 と唯我とうるかはほぼ同時に両名から視線逸らしつつ、蒸気漂う情けなき泣き笑いをした。
 が、唯我の口をつくのは英語の解説ばかりである。うるかもまた、質問しかできない。
(だって……)
(切り換えのタイミングがわからん……! ど、どーやってるんだ他のヤツは! いつも通りな雰囲気から、ああいうことへの
切り換えってどうすりゃいいんだ!?)
 間が持たないのか、そわそわした様子でお茶を喉へ流し込むうるか。両目をグルグルさせテンパる唯我。
(いやほんと、切り換えってどうやりゃいいの!? エロいこと書いてるサイトにゃなかったぞそんな知識!!)
 刻限を設定していた理由の1つは正にそこだった。女性の経験に乏しい唯我だから『刻限』に頼ろうとしていたのだが、
……忘れていた。
(あああ、ヤバい、武元が、俺との、ああいうことずっと待っててくれてるんだったら、いつまでも勉強してんのは何つーか、
失礼だろ! 約束すっぽかしてる形なんだから、怒ってるかもで、だから謝って、武元がどうしたいか聞かないと……!)
 とここまでは理性的な判断だったが、”そうではない”部分に気付いた成幸、首から油の切れたブリキ人形のような音立て
つつ下を見た。
 どことは言わないが視線をやった部分はもうギンッギンである。
(聞き辛いよぅ。こんな状態で武元お前はどうしたいって聞くの、俺がシたいだけって思われそうで怖いよぅ)
 情けない戯画的な表情で涙ぐむ。シたいのは事実だが、そんな状態全開で相手の意思を問うのは軽蔑されそうで、怖い
のだ。

78:
18/02/25 23:33:34.51 3XYtBtT6.net
(てかギンギンな状態で英語の方は解説してるこの状況なんなの! 武元に見られたらヒカれますよね絶対!)
「先生」と呼ばれる存在は性的で陰湿な部分をひた隠すべきなのだ。露悪すれば以降けっして上流に置かれることはない……
といった教育の基本的な部分は何となく分かっている唯我だから、生理反応と教育勅語の乖離に苦しみ出す。
 幸いうるかは気付かない。気付かぬまま、出涸らしもいい所の一杯を服(の)み干し、何度目かの質問をした。
「で! あの、ここっ、ここの単語はどういうイミかなーなんて」
「はいっ!? あ、そ、それ!? それはだな」
 辞書の、小さな項目だったのがマズかった。覗き込もうとした唯我の二の腕に、うるかの肘がこつんと当たった。
「「~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」」
 真赤になった2人はめいめいとは逆の方へ飛びのいた。色々緊張しているところでの肉体的接触は、気まずい。あと中途
半端でもあった。普通こういう場合は「ギンギン」の方こそ当たるべきではないか。衝突から少女の奉仕へとなし崩しに行く
べきであるのに、やんぬるかな、唯我はうるかの肘に二の腕を当てるという気の利かなさだ。
「ちちっ、違うからな武元!! 催促とかじゃなくて! 本当に偶然、当たっただけで!!」
「わわわ分かってるから成幸! 分かってるからーーー!」
 額から蒸気吹く2人はもうパペット人形状態だ。差し向かって手をアワアワあわあわ振り合って初々しく大慌て。メトロン星
人じみた両手を意味もなく上下する様はモンキーダンスにも似ていた。求愛でも威嚇でも滑稽すぎる踊りだった。
「あ……」
 少女の視線は少年の、テント状態な股間に吸い付いた。
「! み、見ちゃだめーー!」
 などという唯我は真赤だ。スカートでも抑えるような手つきでズボンを抑え(あああ、俺、俺、見られてるーー!)両目を不
等号にして涙ぐんだ。
(乙女か。……でも可愛い)
 うるかが呆れるほどのグダグダぶりであるが─…
 膠着とはそれが長引けば長引くほどつまらぬきっかけで崩れるものだ。というより、膠着を倦む者ほど『つまらぬきっかけ』
を力尽くで状況打開に結びつける。僅かな潮目の変化に、降り積もった鬱憤をここぞとばかり叩きつけ……事態を動かす。
(駄目ようるか、ここはいい子で流しちゃ駄目ーー!!)
 変転に手をかけたのは以外にも武元うるか。
(ここで普通に流したらまたヘンな雰囲気に逆戻りじゃん!! ここ、ここはあたしから仕掛けるべき! でもどうやって!?
あたしオトナなユーワクの仕方知らないよ!!?)
 が、天啓ッ! 脳裏を過ぎったのは意外にも『小美浪先輩』ッ!
(そうだ! 時々あすみ先輩、成幸からかってるじゃん! あれが多分ユーワク! えっと、先輩ならこーいうとき、多分!)

『催促って、いったい何の催促なんだ後輩』

 とでもニヤニヤからかうであろう。
(それよーーーーーーー!!! それだったら成幸の本心が引き出せるし、あたしもオーケーだよって伝えられる!!!)
 心の中の人魚姫はグっと拳を固める。両目は当然、不等号。
(しかもあたしはああいう感じのこと実はやってるじゃん!)

79:
18/02/25 23:33:59.07 3XYtBtT6.net
 例のスマホの一件のお風呂中、電話を取ったであろううるかが如何なる反応をしたか想像に難くない。
 遊んでそうな女友達の顔で、『あしゅみぃ先輩』の蠱惑的な言動はできる、できるのだ!
(とりあえず練習。『あれー? 催促ってなんの催促なん?』、『あれー? 催促ってなんの催促なん?』。よーし! 言うぞ!!!)
 腕まくりして意気込んだうるか、言う。
「さ、催促って……どーゆーことの…………催促……なん……?」
 くっと俯いたまま、たどたどしく、呟く、自分を、認識した心の中のうるかは、ふっと笑った。すべてを海容する優しい笑いを
浮かべて、
(バカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!)
 盛大に突っ込んだ、自分に。
(ああああ駄目ださっきの成幸のテントが、テントが、目に焼き付いて、目に焼き付いて……!
 ちょっと冷静でいられない。褐色の頬から蒸気がもうもうと立ち込めた。
(って! なに今さら恥ずかしがってんの!! えっちなら既にしたでしょ先週したでしょ! なのになんでいかにも遊んでる
女友達のカオができないの! いっ、いつもならすっと出てくるでしょ何でサボってんのあたしの顔!! うわーーーん!!
失敗だーー!!!)
 涙が出てくる。自分が情けなかった。刻限を忘れ、誘惑1つ満足にできない自分が悲しく、ちょっとむくれた。
(もー! こんなの全然進歩してないじゃん。ようやく成幸と結ばれたってのにちっとも成長してないじゃん)
 が、人の心を動かす最低条件は「うまくやること」ではない。「ひたむきであるか、否か」である。
 ひたむきな様子で涙を溜める褐色少女の横顔が唯我をついに、動かした。
(武元が泣いている……。すまん。俺が煮え切らないから。いつまで経っても俺がどうするか伝えないから……)
 旗幟(きし)不鮮明な自分が責められているというのは唯我の誤解だが、事態を正答に導く思わぬきっかけにもなった。
(武元は言った。確かに言った。『どういうことの催促』と。俺の意思を知りたいんだ。だったらまずはそれを伝えるべきだろ。
そっからは武元の判断に任しゃいい。勉強が長引いたせいで心身ともにその気じゃなくなってたとしても……任せる)
 問題は何を催促しているかの、伝え方。
(予定のこと……だと、無理強いしてるみたいでアレだ。「ヤる」とか「シたい」とかはねえし。セック……は論外な論外すぎる)
 唯我にだってムードを求める心はあるのだ。初夜は、綺麗だった。紫冥の空に、きらめく星々が斡(めぐ)る時刻に
黄金の月光だけを頼りに愛する少女の肢体を見た記憶は今だって背中に慄えがくる。大いなる星空は素晴らしいのだ。
 今日はいかにも貧乏な己の家だが、だからこそ、初夜の如きロマンを何か1つ、うるかへ与えねばならんのだ。名前呼び
はそこから。少女が心から歓(よろこ)べるシチュでやってこそ、唯我の美質たる誠実さは納得できる。
(そのためにも武元が出題した『何の催促』って問題、間違う訳にゃいかねえよ。どうすりゃいい? どうすりゃ初夜なみの
ロマンをあいつに……あ)
 初夜、という言葉に閃いた。唯我は腐っても秀才である。難問から正解をもぎ取る粘り強さはあるし、文乃と理珠の不得意
分野を彼女らが分かりやすく咀嚼できる思考力だってある。それが、うるかとの、男女的な機微に、向いた。
「どーいうことって、そりゃ、な」
 怖がらせないよう、なるべくゆっくり寄る。膝立ち歩きで。この状態でギンギンなら最悪だが、先の思考で頭に血が行った
せいか収まっている。だからうるかは微かにびくっとするだけで済んだ。近づいてくる唯我を不安半分期待半分の濡れた
眼差しで見ながら再び同じ問いを投げかける。

80:
18/02/25 23:34:20.56 3XYtBtT6.net
「……成幸。さっき、どーゆうことを誘ったの…………?」
「こーいうこと」
 唯我の手が、動いた。きっと胸とか大事なトコとか触られるんだとドキドキしていたうるかだったが、思わぬ部位への感触
に目を見張る。
 彼の手があったのは……
 うるかの、頬。
 しかも涙を、拭っている。
(あ…………)
 ニュアンスを理解したうるかは「かああぁっ」と紅くなり、それから静かに含羞(はに)かんだ。
(あたしが、したことだ……。初めての、一番最初のえっちの時……やっと1つになれた時……あたしが、したことだ……)
 繋がるまでの様々が募って泣いたうるかにもらい泣きした唯我を、彼女は今のような仕草で慰めた。「あたしのせいだし、
泣いていいよ」とか「大好き」とか、さまざまな気持ちを込めて、少年の涙を、拭った。
 秘め事に乗り気なうるかは、だから察した。
 唯我の言う、『こーいうこと』が、『1つになること』だと。
 うるかの肘に二の腕が当たったハプニングは、こーいうことの催促ではなかった……と。
 誘うなら、これ位のちゃんとした「想い」を込めて触れるのだと。
 ある意味では、暗喩であろう。結ばれた時の仕草を再現するなど、暗喩でしかないし、事実唯我自身”そういった行為”を
言外に匂わせている。だからこれは極論すればフェラチオにおける唇のすぼまりを擬するに等しい。

 が、洒落てもいる。胸を触る訳でもなく秘部を弄(まさぐ)る訳でもなく、そっと涙を拭うだけといった挙措は、乙女なうるか
に……効いた。優しいし、何より。
(あたしが……初めてだったときを…………覚えてて……くれたんだ)
 とさえ思い、頬を染めた。良くも悪くも暗喩を考えられない少女なのだ。何より自分の何気ない挙措を『覚えて』くれる唯我の
部分が大好きだから─女性は記念日などを覚えてもらいたがる─、初夜の再現による誘い方にはロマンしか感じられ
ない。
(……なりゆき)

 赤い実が、はじけた。
 
 頬に手を当てる。
 キスや愛撫といった男性本意なアプローチに比べれば遥かにマシというかちゃんとしたムードがある。むしろ万が一うる
かが”今日はもうそんな気分じゃなくなって”いた場合ですら修正が効く妙手である。涙を拭き、謝りながら慰めるというフォ
ローに繋げられる以上、童貞を捨ててまだ1週間な朴念仁ぎみな少年の打つ手としてはまずまずの合格点であろう。

81:
18/02/25 23:34:53.23 3XYtBtT6.net
 だが。うるかの頬に絶賛接触中の唯我は。

(クッソ恥ずかしいなコレ!!?)
 心の中で両目をグルグルさせていた。
(涙を拭うとかもっと顔が良くてスポーツ得意で家が貧乏じゃない奴がすべきことなんじゃないのか!? 何やってんの俺
何キザったらしいマネしてんの!? 恥ずかしいいいい!! す……っげえ恥ずかしいいいいい!! ああああ、これ武
元が誰かにバラしたら俺そいつと一生話せない!!そんぐらい恥ずかしい、恥ずかしいよぉおおお!!)

82:
18/02/25 23:34:59.53 3XYtBtT6.net
 今すぐ布団にくるまってのたうちまわりたい、そんな顔だった。
(だって頬に手ぇ当てるとか、ハリウッド俳優とかがやって初めて成立するあれで……! あああ、やっぱ普通にキスとか
にしときゃ良かった!!! キキっ、キスもそりゃ俺なんかにゃ似合わないけど!? キザったらしさだけはない訳で……!)
「なりゆき……」
 うるかが口を開いた。両目はもう堰を切ったようなありさまだ。カツカツとした水分が親指の腹を湿らせた瞬間、唯我
少年の心は心筋の攻撃的な収縮にズキっと痛んだ。

83:
18/02/25 23:35:08.57 3XYtBtT6.net
「なりゆき。なりゆきぃ」
 唯我の手を取る人魚姫は童女のようなしゃくり上げですっかり上気している。顔が涙でぐしゃぐしゃで、開いた口も中で唾
液がどろどろと糸を引いているのが見えた。両手で頬から口の前へと導いた少年の繊手へと今にもむしゃぶりつきそうな
濃厚な恋情がたっぷりと漂っており、
(キスするより……エロい…………)
 やっと唯我の、火がついた。
 唇を塞ぎ、横たえて─…

84:
18/02/25 23:39:45.20 3XYtBtT6.net
 脈絡はないが二度目の交合は唯我家において行われた。
 場所は少年の起居する部屋。時は夜。斯様な仕儀に及ぶ以上むろん母と妹たちは外泊中で、不在。
 初夜と違い、蛍光灯がつけっ放しなのは庶民的な性の生臭さに満ちている。机の上にはノートや参考書、筆記用具が残さ
れたまま。
                                                                      ・ ・
 半ズボン。SWIMと染め抜かれた黒いシャツ、チェック柄のパーカー、ブラジャー。それらが乱雑に放り捨てられた『掛け布団』
さえも押入れから興奮の赴くまま叩きつけられたという歪みっぷりだ。
 その掛け布団上でM字開脚のうるかが激しく突かれている。足首には純白のショーツが巻きついたままだった。脱衣すらそこそこに2人
が突入した行為は、褐色の細い両腕を掴んだ正常位によって最初のラウンドを終える。
「あっあっあっ、あーーーーっ」
 注ぎ込まれる灼熱に法悦を浮かべぐったりするうるか。深夜0時半を回っているが、夜はまだ始まったばかりである。

85:
18/02/25 23:40:13.80 3XYtBtT6.net
 数分後。
「きょ、今日は、このカッコ、で……」
 四つん這いになった少女が秘部も露にお尻を突き出した瞬間、唯我は眼鏡に亀裂が入るほど仰天した。
(や、やべっ、いまお尻の穴見えたチラっとだが見えた。綺麗なピンクってすまん武元そこまで見るつもりは……!!)
 初夜は上にしろ下にしろうるかを背後から見る余裕はなかった。故に初めて目撃する少女のアナルに唯我は硬直した。
(それ抜きにしてこのカッコ、すっげえエロい)
 小柄の体型の割には大きめなプリっとした尻たぶはそれだけでも魅惑的なのに、あろうことか日焼け痕に彩られている
のだ。渓谷の終焉にある土手は先ほどの交合の余波でひくついており、白い密すらとろとろと垂らしている。それだけなら
ポルノだが、お尻の向こうで口を波線にしたうるかが気恥ずかしそうに瞳を潤ませているのが何とも純愛の構図めいていて
少年の心を刺激する。
(両手を、包丁とか使うときの『猫の手』にしてんのがポイント高いなあ)
 何気ない仕草だが、そういう部分にこそ男は愛らしさを感じるのだ。唯我は背景に花が飛ぶほどホワホワした。
「可愛いよ、武元」
「また名字……?」
 甘えを込めて軽くムスっとしてみせるうるかに、
「な、なんつーかその、咄嗟に名字しか出てこないぐらい、だな」
 唯我はしどろもどろである。女体に狎(な)れた男ならスっと出せるおべんちゃらが、ウブな心には恥ずかしすぎるらしく、
それでも本当に心から、反射的に、呼びなれた方を使ってしまうほどだったと伝えたくて、彼は、紅くなりながらそっと囁き、
「可愛いよ。スゲェ可愛い」
 頭を撫でる。少女の小さな鼓動はそれだけで25mプールを無呼吸で三往復半したぐらいドキドキする。訥々としたいかに
も草食な賛辞だからこそ本当だと分かってしまう。
「い、いや、今えっちなポーズしてるし? 可愛くなんか……」と抗弁しかけた少女だが、髪を均すひんやりとした掌の往復が
重なるにつれ「あ……」と戸惑いがちに目を細める。ふだん陽快な大きな瞳は切なげな嬉しさと、募ってくる激しい情動です
っかり大人びた陶然の色。
(……やだ)
 後ろを向いたまま顔色を変えて首を前後するのは、秘部から甘やかな汁(つゆ)が溢れてきたからだ。
「み、見ないで挿れて……。恥ずかしい、から……」
 頭を撫でられただけで濡れてしまう自分の機能を死ぬほど恥ずかしがるうるかがいじらしくて、唯我はちょっといじめたくなっ
たが、(序盤ぐらいは優しく……)と律儀にも視線を”そこ”から外す。様子を見たうるかの瞳の中で恋慕の色が深まった。
「手探りになっちまうぶん、ちょっと時間かかるかもだけど……いいか?」
「うん。いい。成幸の先っぽで入り口くちゃくちゃされるの好k……じゃなくて! えと、そんな、そんな嫌じゃないし? 大丈夫、
だから……」
 素直になれない勝気ぶりがまた男心をくすぐる。わざと焦らして昂ぶらせる基本の手管ぐらい唯我も知っているが、若さは
迂遠を嫌うのだ。可愛いうるかと初めてのバックを早くしたいという興奮の赴くまま少年は淫裂に吸い付いた亀頭に体重を
預けるようにして膝立ちで進む。ヌルっ、というぬめりは愛液と精液の潤滑ゆえだろう。(あ、来る、後ろから、来ちゃう……)
既に一度の挿入で熱くほぐれた秘所はあっさりとペニスを受け入れた。
「はっ、はぅうううん」
 背筋をピンと張りピクピクと悶えるうるか。
(征服してる感が……凄い…………。そんで武元の背中の日焼け跡、×印なのがエロい……)

86:
18/02/25 23:40:34.23 3XYtBtT6.net
 相対的な雪肌(せっき)である、そこは。うるかの焦(や)けてない肌は小麦色であり、絶対的なマシュマロ地とは言いがた
いが、焼きチョコのような外郭とのコントラストで相対的に、白く見える。
 そこに興奮した唯我だから指でなぞる。「んっ」。今もって首を後ろに向けている人魚姫が艶かしい声を上げる。清純に目
を閉じる感応。桜色の唇のプルっとしたテカリに少年は「硬くなる」。中で察知した少女は「……えっち」と悪戯っぽく笑う。
「動くぞ」
「…………うん」
 律動が、始まった。最初のうち少年は不慣れな体位ゆえ、少し慎重に動いた。腰をどれだけ引くと肉棒が抜けるのかと
いう見極めに神経を集中する。(この前みたく抜けるのは嫌なんだよ)と確認しつつ行っていた腰のグラインドが、少しずつ
早まる。可愛らしい舌ッ足らずな声があがった。初夜さんざん荒らしまわった秘所はすっかりこなれており、狭いながらも
唯我の猛りを滑らかに受け入れる。
 20回は突いただろうか。そろそろ少女に違う刺激を与えたくなった唯我は突き入れの角度を変える。初夜、正常位でも
見せた創意工夫はバックになっても健在という訳である。
(ここまでの、で、当たっていなそうな場所は……)
 少ない人体構造の知識から自分なりに考えて角度を変える。
 最初の三度はうるかの反応はさほど変わらなかった。
 が、四度目。
「…………っ?」
 ピクっと少女の顔が波打った。何か違う刺激を感じたが、まだよく分かっていないという様子である。
(一応……試してみるか)
 バックだからこそ届く、青く未成熟な処女地を肉ゴテでゴツゴツ叩く。「??」と不思議そうにしていたうるかはしかし見る間
に反応を変えていく。「っっ?!」と戸惑った瞬間、パルスは淫靡な方へ舵を切り、「そこ……なんか、ヘン……」と切羽詰った
声を迷いつつも遂に上げた。
 膣内も熱く潤み始めた。涎を垂らした襞ヒレがグネグネと肉棒に纏わりつくいやらしい感触に興奮した少年はちょっと激
しめに突き入れる。ぴしゃりという乾いた音は彼の大腿部が斑(ぶち)の尻たぶにぶつかったせいである。
「あんっ」
 清(す)んだ声が跳ね上がる。やや媚びた諧調は(あたしっぽくなくて……恥ずかしいけど)唯我の愛撫が確かなものであ
ると示す一番の手段である。羞恥で戸惑う声を、優しい唯我は苦鳴と捉えがちで、逐一大丈夫なのかと問うてくる。
(それは大切にされてるって感じがして……嬉しいけど…………でも成幸にはもっと……)
 遠慮なく、テンポよく動いて欲しいのだ。
(あたしの体を……味わって…………欲しい……)
 バックでそう思うのは犯される尽くすことへの覚悟である。「……」。汗で上気し前髪が張り付き気味な顔でじっと唯我を
見る。子犬のような無垢な瞳に、被虐的な欲情と、快美への喘ぎを織り交ぜて無言で見る。
(んなカオされたら、俺……)                       のぼ
 面頬に数学界の緋色のスラッシュを何本も刻み込まれた少年は上気せの仰せのままに「はあぁ」っと息を吐き、うるかの
脇腹を掴んだ。引き締まっているが少女らしくプニプニとした感触を唯我の両手が味わうとき、それはスパート。少年の腰使
いがやや乱暴になる。パンパンガクガクと発情期の雄犬のような速度で腰を叩きつける。唯我の全身に汗が滲み始めた。
 体位が変われば抉られる場所も変わる。さんざほぐされた初夜においてさえ未開の肉襞、青く、こなれていない粘膜に荒々
しい肉ゴテが衝突した。
「あっv」
 思わず出てしまった舌ッ足らずな可愛い声をうるかは恥じた。ちょっと媚びた声なら良いが、語尾にハートマークのついて
るような「いかにも」な嬌声は流石に恥ずかしい。
 だのに。
「ここ、感じるのか?」
「えっ? あっ!? あんv いやっ、ああん、あんっv」
 先ほど反応した部分を唯我が責め始めた。背後からの揺さぶりに戸惑って目が白黒なうるかは悶え鳴いて制止を乞うが、
本能に火がついた唯我は止まれない。
「ダメだ。俺だってガマンしたんだ。7時間も……!」
「はぅんっ、あっv、声、だm……あ!」
 うるかは未開の媚肉を肉槍で打突されるたび「びくっ」と露骨に背中を逸らし顔を上げる。
 そんな少女の初々しさが唯我は可愛くて仕方ない。

87:
18/02/25 23:40:58.93 3XYtBtT6.net
 ただの甘ったるい嬌声なら過剰な演技かと萎えもするが、跳ね上がる高い声をつくづくと羞じ、ギュっと目を閉じ抑えよう
とする人魚姫には真実がある。慎みの有る無しどちらかを好むかは男によるが、少なくても秀才で鳴らしている唯我は理
性ある真実を好むのだ。律動で揺れるポニーテールなどいかにも素朴で彼ごのみだ。しかも従順の証でもある、唯我に
可愛いと言われてから勝負どころでは必ず、長くもない髪を纏めてくるのだ。
(ふだんのテンションとの差が、ヤバい…………)
 勝気で明るいうるかが性行為においては人変わりにしたような清楚を見せるのは初夜すでに知っていた唯我だが、喘ぎ声
ひとつにさえ恥らう少女が「後ろから」攻め立てている結果だと再認識すると、初めての時とはまた別種の興奮が漲ってくる。
 何しろ彼女は生理すらまだなのだ。生物学的見地から言うと、童女を攻めているに等しい。背徳は少年を燃やす。
「いやああ、速っ、声、どんどん変にっv、あっ、だめえ」
 自分の速度でますます激しく前後し始めた背中を唯我は見下ろす。引き締まっているが華奢な体つきだ。小さな肩が艶か
しくくねりながら律動に耐えているのを見た瞬間、そこから飛ぶ澄んだ飛沫が唇に付いた瞬間、唯我の射精の気分が高まった。
「すまん、さっき出しといて情けないが、もう……ッ」
「いい、いいの、ふぁぅん、げんかい、だもんね、ずっとべんきょで、がまんしてたから、いい、なりゆき、きて……!」
 色々あって予定より2時間多く「お預け」された事情と初めてのバックの興奮に唯我は自分でも驚く早く達す。短い呻き
と共に突っ張った中腰の奥底で熱い衝動が弾け飛んだ。
「あっ! あああああああああん!」
 どくどくと注ぎ込まれる愛情に仰け反った少女であったがすぐさま唯我めがけ首を捻じ曲げ、「すごい、このカッコだと、せ
なか……せなかの内側に、熱いのが、唯我の熱いのが……かかって……」と嵐(もや)かかった瞳で息せき切なげに笑う。
(背中の内側ってのは大袈裟……)
 唯我の放出で蘇る冷静さはそんなことを一瞬考えさせたが、快美にとろけきった少女の顔が全てを打ち消す。ドキっとしな
がらも獣欲を微かに滲ませた緊張の面持ちで生唾を飲んだ唯我は─…
 2つの華奢な肩甲骨が描くハの字。脊椎の窪みはハの字を両断するよう走っている。しなやかな肉の畝だった。再動した
バックの刺激に首を上げていたうるかが唯我に表情を見せるべく振り返ると、上記の背すじ周りに褐色の皺が寄る。
(筋肉の連動がエロいです武元さん)
『肉』を感じさせる質朴な現象に少年はドキドキする。しかもうるかは初めてのバックにも関わらず表情を見せてきている。
責め苦のなか後ろを向き続けるという不自然な体制を、水泳で鍛えた筋肉を突っ支(か)えにして─…
 長い睫をしっとりと濡らしたまま唯我を見つめている。
 いつも真直ぐな光を湛えている紫水晶も今ばかりは病中のように妖(なまめ)かしい。半開きの愛らしい口から喘ぎを
漏らしながらもただじっと「何をされても……大好き、だから」と言わんばかりに少年を見ているうるかに、
(可愛い……)
 刺激の強さでやや虚脱しつつある少女に、ときめいた唯我。指を、桃色の沼にも似たうるかの口に滑り込ませる。声を抑
えさせるための救済措置でもあったらしい。「噛め」といった顔を少年は一瞬した。
「んぷっ!?」
 人魚姫は不意に進入してきた指に一瞬戸惑ったが思惑を理解するや優しさへの嬉しさで陶然と目を細め、
「んっ、んっ」
 お礼とばかり健気に、ご奉仕し、
「ん……」
 指が口の中をかき回せば切なげな上目遣いで身を委ねる。
「んむぅぅっ! んーっ!! あんっv」
 脱力の隙をついて深く突き込まれたうるかは指を甘噛みして声を忍ぼうとするが、甘噛みゆえにすぐ指は口を外れ、律動
の中しゅぽんと出ていく。声も溢れる。唯我は再び指を、口に。「んむぅ」、やや強引な手つきだったがそこにワイルドさを
感じたらしく人魚姫は喜悦を浮かべる。
 また突かれた。いやらしい声が白い歯の隙間を抜けた。
 指さえ強く噛めばもっと小さくもできようが、(だめ、力入れて噛んだら、成幸がシャーペン、シャーペン持てなくなって、勉
強できなくなるかも知れないから、強く噛むの、だめ……)と必死に力を抑えている。なのに声を出すのも恥ずかしくて、瞳
に葛藤のクリオネが泳ぐ。
 金時計を売ったのに断髪で鎖を買ってくるような健気さだ。それが唯我の猛りを強くする。片手はうるかの口だから、グラ
インドは腰のバネに依存する。

88:
18/02/25 23:41:18.93 3XYtBtT6.net
 露骨に局部を突き出すやり方には秀才らしい羞恥と葛藤も一瞬うかんだが、結局は誘惑が勝った。乾いた音を立て少女
を揺する。控えめな乳房をぷるんぷるんと前後に揺らす。そろそろ全身を霑(うるお)し始めている雫がきらきらと散った。
「んんーっv んっ、んっ、んううう!」
 ちゅぱちゅぱと指に吸い付き喘ぎを耐えるうるか。だがくぐもった声はむしろ感悦の韻を際立たせている。興奮する唯我。
肉筒が熱く滑る媚肉を”ぐにん”と滑る。「……んっ!」 叩き込まれた衝撃を噛み締めるよう目を閉じて味わううるか。
「あっ! ふああぅ!?」
 ペニスが抜け落ちないようマージンを取って動いていた唯我がいよいよ本能的なガムシャラに突入。はあはあと息せく
少年は最高速のグラインドで少女を突き、衝き、撞く。成す術なく揺すられる四つん這いの少女は吊るした水風船のように
重力に引かれやや楕円形になっている乳房をぷるぷると揺らす。小ぶりだが形のいいそれが揉みこまれた。「きゃううっ」、
悲鳴とも喜悦ともつかぬ声が上がったのは木苺が抓られたからだ。いつしか覆いかぶさっている唯我は、淡い突起を二つ
とも同時に摘みあげている。
「いいっ、おっぱい、気持ちいい、さわりかた、優しくて、いいっ……v」
 切羽詰っているが余りある幸福にも彩られている薄目でうるかは鳴く。乳首はあっという間に尖った。それまでも秘部から
の刺激でぷっくりと充血していたが、比ではない。唯我の手が触れただけで速乾性の瞬間強力接着剤をザバリと振りかけら
れたように硬くしこった。(反応えっろ)。たかが接触ひとつで可愛らしく張り詰めた淡い授乳器官に唯我がドキドキするその
下で、うるかは耳まで真赤にした。自分でも予想外な唯我への敏感さを愧(は)じているらしい。
「だって、成幸の、成幸のひんやりした手が、火照ってる……ちく……ちく……びに、気持ちよくて、あそこからの刺激で、
もやもやした熱の溜まってる……ち、くびに…………成幸の手が、ちょうど良くて、だから……だから……」
 自分は触られただけで乳首が勃起する淫乱ではないのだと訥々たる調子で訴える少女だが、しかしはて、「誰でもいい」
ではなく「あなたじゃないと感じれない」と言われ興奮しない男が居るだろうか。
「武元」
「あっv、んっ、ふぁへ、こへ、だふぇ」
 だめ、声、ダメと唯我の指にうるかが慌てて吸い付いたのは、乳首をちょっと強めの力で押しつぶされたからだ。球技
大会ノーブラ事件に端を発する自社開発で敏感になっている胸だから、少女の感応、とみに鋭い。脳を灼く過大なパルス
に悶えて大変なのに、「い、今のできゅっと締まったぞ」とか唯我が耳打ちしてくるからたまらない。
「///」
 うるかはぽっと赤面した。紅くなりながらも満更でもなさそうに浮かべる含羞(はにか)み笑いは心から体を許している男
にだけ見せるいわば究極の媚態である。見蕩れた瞬間、前回の射精直後から7分56秒ずっと耐えて突いていた少年はた
まらなくなり、催迫の調子で、告げる。
「武元っ、そろそろ……!」
「うん、いい、出して、たっぷり……出して……」
 数度ネチャネチャと出し入れを繰り返した少年は荒々しく息を吐きながら深く突き入れ虚脱の呻きを上げた。打ち震える
彼の胸板を背で受け止めたうるかの膣内へ、びゅっ、びゅるっと白濁が噴きかかる。ゼラチンをスポイトで排出するような
独特の気配に、「ああ、出てる、なりゆきの、いっぱい、いっぱい、出てる……」と嬉しげに頬をゆがめる。

 饗宴、続く。

 ステークが排莢されるたびサーモンピンクのラビアが捲れ上がるのが淫猥だ。
「あっ、だめこの恰好、直すまで、直すまで、待っ、あっv」
 お尻だけを高く突き上げる恰好でうるかが突かれていたのはバックにおける最初の射精から7分後。獣の体位にすっかり
興奮した唯我はあれからしつこく突き続けている。更に一度、精を放ったのに
「凄いの分かったから、硬くて、逞しいからぁ、四つん這い、普通の四つん這いに戻すまで休ませ、やっ、そこダメぇ、変なビリ
ビリきちゃうから、だめぇ、あんっ、あんっ!」
 シーツにびったりと上半身をつけたまま顔だけは唯我に向け懇願するうるか。左手は少年に押さえつけられており、右手は
ほぼ土下座のような直角を描いたまま頼りなげに揺れている。

89:
18/02/25 23:41:37.49 3XYtBtT6.net
 責めの激しさに堪りかね上半身を崩したのが悪かった。最初はただのアクシデントだったのに、安産型のお尻のみを掲げ
ている少女の恰好に生唾を呑んだ唯我は体勢の持続を求めた。「あ、あはっ。崩れちゃったね、今から戻すから……」と
言いかけていたうるかに、爆ぜそうな獰猛を孕んだ無表情を向けると、「えっ、きゃっ」と戸惑う声を無視して激しく突き入れ
始め……今に至る。
「ひどい、このカッコ、恥ずかしい、恥ずかしいって言ってるのに、バックに慣れてからならじゃないとダメって言ってるのにぃ」
「さ、最初からレベル高い問題に挑んだ方が、その、伸びるし……!」
「うーーー」
 うるかは憾(うら)みがましい目をした。勉強ならさもありなんだが、性行為なのだ、恥ずかしいのだ。

90:
18/02/25 23:41:52.60 3XYtBtT6.net
(なのに……)
 褐色の面頬は「ぶるっ」と震える。閉じた瞳の両端に透明な雫が浮かぶほど恥ずかしいのに、恥辱の体位が唯我によって
もたられされているのを実感すると気持ちよくなってしまううるかがいる。
(変、気分が、ヘン、だよぉ。初夜よりもっとビンカンで、頭の中、ぴりぴり、してくるよぉ)
 性感は少しずつだが開発されつつある。肉体的な感受の無さを唯我への思慕でカバーし一定の悦楽を得ていた初夜と違い、
そこから目覚め、更に何回か記憶を頼りに弄られた秘部は、この1週間、感触を快楽に変換しうる発達を少しずつではあるが
遂げている。平たく言うと唯我の肉棒が肉体的にも「善く」なっている。
 が、感覚の方は一週間前を基本としているから、うるかは自分の感応の違いに驚き、戸惑っている。
 といった様子を見て興奮しない男はいない。

91:
18/02/25 23:42:57.16 3XYtBtT6.net
 ただでさえヒップだけを揚げさせる背徳的な姿勢に昂ぶっているのに、可愛らしい人魚姫ときたら川端康成先生の「禽獣」
に出てくる分娩途中の未成熟な犬のように「自分の体には今いったい、なにごとが起っているのだろう。なんだか知らない
が、困ったことのようだ。どうしたらいいのだろう」と言った表情で困惑しているのだ。
「武元っ」
 唯我は、手をついた。初めて立った赤ちゃん鹿のような広げ方は形容とは裏腹に荒々しい。いたいけな少女に臀部だけ
突き上げさせたまま、本格的に犯しぬく四足の獣だった。「あっあっあっ」、シーツの上で目を閉じ喘ぐうるかはもう相手の
表情を見れない、見る余裕がない。腰は深く突き入れられるたび前へ撓(たわ)む。腰椎から胸椎へと到る骨の蛇腹に緩衝
されグニャンと背筋に向かって前進する。少年は、骨と肉に、弱い。女体が見せる予想外の可動を、武元うるかの柔軟性
を、もっと沢山しゃぶりつくしたいと燃え立った少年は歪なグラインドをただ見舞う。

92:
18/02/25 23:43:14.75 3XYtBtT6.net
 組み伏せられているうるかは啼くしかできない。
「だめ、激しい、そこいい、気持ちいい、あっあっあっ、だめっ、頭の中しろくなるっ、あっ、ヘン、今日、ヘン!」
「お前の、気持ちいい。締め付けが強くなってきてて、凄く、いい……!」
 初夜より明らかに活発な愛撫と摩擦に眼鏡少年は「っ」と切羽詰った赤面をし、寒気を吐く。
震えるそれは矛盾の吐息、放出を望みながらも勝(た)えている。手淫では決して味わえぬ甘い魔窟の吸い付きに耐えて
いる。裂け目より蜜が再び漏れ出でた。
(初夜より、ねっとりしてる……)
 いよいよ粘っこくなってきた愛液に唯我の昂揚も高まる。見るなといわれた秘部さえ盗み見てしまう。よくお菓子を食べる
うるかだからか、結合部から漂ってくる匂いは心なしか甘い。膣内にグリコーゲンが行き渡り、かつ、デーデルライン菌の質
または量が不活発な場合、同様の現象が起こるというが、うるかがそうであるか、どうか。
 鼻を、ねっっっとりと突く香りはしかし牝の匂いというにはまだまだ余りにあどけない。あどけないからこそ唯我の情動は
却って強まる。マカロンよりコアラのマーチが似合いそうないたいけな少女を、動物の恰好で犯しているのだという実感、
今にも傾きそうなボロい自宅の、染みのういた布団の上で脱ぎ散らかした衣服に囲まれながら、バックで、うるかを攻めて
いるのは、月明かりが幻想的だった初夜に比べるとあまりに生々しい。が、生々しさは倒錯である。
(すげえ悪いことしてるのに……気持ちいい)
(襲われてる。あたし今、成幸に襲われてるんだ……)
 行為の前に7時間も勉強をする羽目になったのが”タメ”となり、倒錯を強く熱く燃え上がらせる。
 強まるグラインド。ゴム製の水枕を揺らした時の水音にも似た調べが膣内(なか)で幾度となく響き渡る。入り混じる吐息。
腰の撓みの間隔は瞬く間に短くなり切れ切れの悲鳴が上がる。浮かしきった小ぶりのヒップの尻たぶの隙間に生々しい
桜色の淫棒をぬちゃぬちゃと叩き込む唯我。法悦に結ぶうるかからはもう姿勢の回復は吹き飛んでいる。蹂躙にヨがり
甘え泣くばかりだ。尻たぶの揺れが徐々に激しくなる。巨大生物の足音が近づく水溜りのごとく振幅の波が大きくなる。
「出して、そろそろ、またっ、あんっv、出して、出してぇ、成幸の熱いの、欲しいよぅ」
「俺まだガマンできるぞ。もっと気持ちよくしてやれるから……」
「いや。今欲しいの、せーえき、今、ちょうだい。出してから、ねちゃねちゃの状態で動いていいから、今、欲しいのぉ……」
 恐ろしく淫らな要望を聞いた瞬間、少年はもう達していた。

93:
18/02/25 23:43:30.36 3XYtBtT6.net
 バックは終わらぬ。
「あっあっあン、いいっ、いい」
 両名とも膝立ちのまま繋がり、貪りあう。唯我の手はうるかの胸を弄んでいた。
 あるときは乳肉を上へ上へと追いやるよう揉みこみ、またある時は双丘をまったく別の方向へこねくり回す。乳輪をなぞ
り乳首を弾き、そちらの刺激にうるかがトロンとした所で耳たぶをそっと噛む。
「んっ……」
 激しさの連続の中で訪れた変則的な刺激にうっとりとする少女の、生白く見えるふくらみを唯我は強調するように鷲づかみ。
力任せに握られた水風船は表面張力を別方向へ逃がす。小ぶりだが弾力に溢れた瑞々しい乳房もまた少年の掌から零れる
ような動きを見せる。
(やらけ……。スッゲ、やらけ……)
 魅惑の感触を眼鏡少年はただ揉み込むほかない。ふにふに、ぷよぷよと。
 執拗な突き込みも続いており、だから少女は放心の笑みで涙を流し、叫ぶ。
「好き、成幸におっぱい触られるの、好きぃ!」
 そこまでのうるかは胸を離された後背位の状態で可愛らしいバストをぷるぷるぷるんと揺らし続けていた。このぷるん
ぷるんはセブンイレブンで発売中の「ふわっとろ」な京風きなこわらびもちに匹敵する。
 後ろから唯我の顔が近づいてきた。すぐさま察し、彼と唇を合わせる。
「んはぁ、んぶ、んんうう」
 舌を絡める間にも律動はやまず、釣鐘型の乳房は跳ね上がっては落ちる。落ちた瞬間、衝撃でまた軽くバウンドするの
が淫らだった。

94:
18/02/25 23:43:50.87 3XYtBtT6.net
 四つん這いに戻った。
 続く激しい律動すら従順な少女は受け止める。光に透けると珊瑚色帯びるメラニン薄い黒髪がふるふる揺れた。
 女性の動く余地がほとんどない獣の体位は温和で草食な少女の好みに合う。「猫の手」をシーツに置いたままゆっさゆっ
さとゆさぶられる。
 唯我は、うるかの肩の、褐色と日焼け痕の境目に唇を当てた。
「ーーっ♪」
 思わぬ愛撫だが愛情表現なら喜んで受容できるのがうるかだ。目を細め嬉しげにのどを鳴らす気配が伝わったのだろう。
ちゅっ、ちゅっと音を立てて唯我は吸いつつ、乳房をもコネコネする。そしてまた肩越しにキスをして、感じあう。
 香竄(こうざん)とは匂い篭もる孔を指す。蜜があふれ、ヒレうごめく香竄は車軸のように硬く太くなった唯我をヌメヌメぐ
ねぐねと包み込んで蠕動する。
 午前2時。行為開始から2時間近く。かなりの長時間だが、若く、ここに到るまでお預けを食っていた2人にとってはまだ
折り返し地点に過ぎなかった。
 四つん這いのとき、何かの睦言がきっかけだった。唯我がちょっと言葉攻めめいたことを言った後だ。
 表情を逓(たが)いに見せっこするため上げていた顔をうるかは伏せた。が、羞恥一色でもないらしい。明るい少女らしい
能動的な照れ隠しという奴だ。それが証拠に伏せ方もどこかお茶目だった。というのも唯我の何か言葉攻め的な発言が、
野卑な男の揶揄ではなく、不慣れな言葉攻めをぎこちなく演じている感満載だったからだ。それを聴かされた瞬間うるかは
(相ッ変わらず言葉で攻めるのヘタだなあ)
 と呆れたが、同時にそういう部分がとても可愛く思えて、だから「///」とふざけた様子で顔を伏せてみたのだ。分かり辛い
機微だが、一種の睦言であろう。平易な言い方をすれば、「こらあ」と殴るマネをしてきた恋人に「きゃー」と怯えてみせるよ
うな、他愛ないイチャつきである。
 快美とは程遠いやり取りだが、しかし営みとはむしろこのテの潤滑油があった方が数も増え、質も上がる。
(馬鹿にしやがって)
 唯我は軽く苦笑する。うるかときたら伏せた顔をちょっと横向け、前髪の間から少年の反応を伺っている。そういう露骨な
盗み見が楽しくて仕方ないらしく、口元はすっかり綻んでいる。初夜今夜とかなりの回数苛んでいる筈の唯我をちょっとおちょ
くっているような態度だから、(馬鹿にしやがって)と少年も笑えてくる。深夜のテンションも手伝っていたのだろう。
(ちょっとイタズラしてやる)
 まっさきに浮かんだのはアナルである。体位の都合上もっとも近くにある。が、却下する。場所が場所だけに無許可は
気まずいし、何よりどこか陽気さを帯びてきたイチャつきに相応しくない。
(ならココだ!)
「きゃうっ」
 うるかが甘く鳴いた。触られたのは太ももだ。正確には、揉まれた。
「もー。成幸! マッサージとか反則ー!」
「だーめ。俺を馬鹿にしてきた罰」
 心臓マッサージのような手つきで、大腿部の筋肉の一番太い筋を揉み解す唯我。「っっ」。笑っていた人魚姫も神妙な反
応を示し始める。ただのマッサージなら足がだるい時よく自分でしている。女性にしては筋量があるため、コリはよくほぐれる。
場所によっては5分揉むだけで気持ちよくて眠くなる。
 唯我は男性でこそあるが、ひょろっとした苦学生だからうるか以上の力はない。全力を出してやっと少女の平生に互角か、
互角に一歩及ばないぐらいだろう。
(な、なのに……)
 四つん這いで張り詰めた太ももを揉み解す唯我の手がひどく気持ちいい。1つには角度の恩恵がある。人が自分の足を
揉むとき、どうしても人体構造上、力の伝達がうまく行かない恰好になる。うるかに覆いかぶさる唯我の手は、力を込めやす
い角度を選べる。だから元の膂力で劣る唯我でも伝導率では勝るため、結果として、うるか以上の力で彼女の大腿部を揉め
るのだ。うるか本人では構造上、刺激できない箇所すら難なく揉み込める。

95:
18/02/25 23:44:10.17 3XYtBtT6.net
(でも、何より)
 揉んでいるのが唯我の手であるという認識が、快感、という、主観によっては無限大にさえ到達しうる概念を極上のものに
仕上げている。ぶるるっと快感に震えたうるかだが、こういう方面で開発されてはならないとウソをつく。
「あ、足なんて別に感じないし? 他のとこ触った方が得かなーなんて……ひゃうう!」
「両方ならどうだ!」
「も、もー!! ちくびといい何で同時攻撃すんの! そんなん気持ちいいに決まってんじゃん! 卑怯! 成幸のばかっ!」
「じゃあ禁止するか?」
「……それもヤダ」
 しょーもない奴だなお前は。唯我は笑いながら頭を撫でる。拗ねて唇を尖らせていたうるかに喜色が差した。怒りたいが
謝りたい微妙な心境で、うまく伝えられなかったので、側頭部を唯我の頬にすりすり擦りつけた。
(…………可愛い)
 数分後、両腕を持たれたバックの体勢でうるかはさんざっぱら揺らされ、
「だめ、激しい、あ、またヘンに、あ、だめだめっ、だめぇ! あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
 大きな瞳を見開く惑乱の表情は無慈悲にも考慮されないまま、当晩何度目かの灼熱を注ぎこまれた。

「はぁっ、はぁ……」
 繋がった四つん這いのまま息せくうるかが「えっ」と目を見開いたのは視界が突然あがり始めたからだ。浮遊感。小柄な
体の周囲の景色がどんどんと下がっていく。ガラス張りのエレベーターに乗った時のようだった。
(待って! これってまさか……)
 褐色と小麦色が混在するしなやかな背中に熱っぽい胸板が押し付けられているが、しかしもう唯我はX軸概念で覆いかぶ
さっていない。真直ぐ、だった。真直ぐと、垂直になった唯我の胸が、Y軸観点でうるかの背と密着している。
 だけではない。彼の両手は虚脱ゆえ無抵抗だったうるかの太ももをM字に割り開いて、持っている。
 すっくと両の足で立ち上がった唯我が、うるかに、女児の小用のようなポーズで持ち上げているこの恰好、言うまでもなく、
 駅弁、である。
 気付いたうるかは狼狽した。双眸に巴(うずまき)を浮かべ、もがく。切羽詰った喚きすら散らした。
「ちょ、このカッコ、だめ! このカッコだけはそのっ、一番キラいな奴で、幾ら慣れても絶対ダメなアレだから、やめて、降
ろして……!」
 恥ずかしさはあるがしかし淫靡への羞恥ではない。もっと根源的な、乙女としての宿業だ。
(体重……! あたし筋肉ばっかで重いから! 重さにドン引きされたら、重さにドン引きされたら、あたし、あたし…………!!)
 涙ぐみ、フィジカルの全てを動員して逃げようとするうるかなのに、唯我ときたら耳元で囁くのだ。
「でも俺お姫様抱っこしたことあるよな、お前を」
 そのときは他の誰よりも長く抱えてたぞ……といった言葉に打たれたうるかのもがきが止まる。うまい。『お姫様抱っこが
どういう出来事かは知らないが』、このテの競争原理の決算損益は水泳選手である所のうるかに驚くほど効く。ルールの
中で生きている彼女だから、お前はルールの中、最後まで勝ち残ったのだ、トップなのだという宣告は、ただ単純に「軽い
と思う」などといった主観をぶつけるより遥かに効果的なのだ。
 果たして、
(確かにあの時は最後まで……)
 重さへの羞恥に揺れていたうるかの双眸が葛藤を帯び始める。自分はもしかすると自分が思っているより重くないのでは
ないかという淡い期待が駅弁への抵抗を燮(やわら)げる。
 これも手管である、唯我の。教育係としての力量を女体方面で悪用している。アスリートゆえに筋量(おもさ)を気にし、駅
弁を拒むうるかを、お姫様抱っこなる過去の絶対的な事実でいとも容易く調略しつつある。

96:
18/02/25 23:44:27.24 3XYtBtT6.net
 が、
(ちゃ、ちゃんと武元を納得させてからこの体位やらねえと、嫌がって暴れた武元がケガするかもだからな。この高さから、
ヘンな落ち方して頭打ったら初夜の『ずがずが』なんぞ比じゃねえ。つうか足だろうが肩だろうが良くねえよ。まだ国体とか
あんだから)
 受験や水泳のため、少女にケガをさせたくないという善意を隠すところなく浮かべているのが逆に小憎らしい。何度も言う
が文乃のポニテくるくるには何も察せなかった癖に(ry。あと説得は持ち上げる前にやれ、説得前に落ちたらどうするつも
りだった。
 という負い目、若さゆえの衝動ゆえ承諾なしで駅弁に移行した気まずさがやっと襲ってきたのだろう、唯我は「動かして……
いいか?」と遠慮がちに聞いた。
 うるかの熱く潤んだ双眸が左右に泳ぐ。重さへの不安は和らいだし、未知の体位への甘やかな関心だってある。何より
唯我第一な彼女だから(え、えきべん……で、違った気持ちよさを感じて欲しいけど……)、やはり初めての恰好への恐れ
はある。第一うるかほど『質量と疲労の連関性』を知っている者もない。軽く思えるプールの水でさえ疲れてくると鉄のカーテ
ンかと言うぐらい掻き分け辛くなる。
 1.5リットル入りペットボトルは持つだけなら容易だが、ダンベルよろしく5分10分と上げ下げすれば疲労が募り重くなる。
 ましていかにも鍛えてなさそうな唯我が人(うるか)を『抱え続けたら』……。駅弁に必要な運動を繰り返したら……。
(だ、大丈夫なん? たとえあたしが軽かったとしても成幸疲れたりしない? こ、腰とかやっちゃったら受験に支障が……!
抱え続けたせいで疲れて、「重い」みたいな反応されるのも大概かなしいけど、成幸がギックリ腰になるのはもっとイヤ。
自分の勉強できなくなるし、同じぐらい辛いのは、文乃っちやリズりんが苦手科目聞けなくなっちゃうことで…………!)
 優しさゆえに戸惑う少女の肩を押すのはやはりというか、唯我の言葉。
「一応だけど少しは鍛えてるぞ。この1週間、お前を思い出してモヤモヤするたび、ランニングとか、筋トレとかで。うち簡単
に発散できない環境だから。何も考えずガーっとやったせいで昨日まで筋肉痛ひどかったけど、今は何とか」
 うるかはちょっと嘆息した。俯いた拍子にその両目は唯我から見て前髪に遮られる角度になった。声は水泳部の厳しい先
輩になった。
「も、もー。成幸、筋肉痛のチョーカイフクに夢見すぎ。一週間やそこらでいきなり頑丈になる訳ないでしょ。ただでさえ他の人
より体力少ないんだから、ちょっと鍛えたぐらいでいきなりあたし抱えてずっと動けるレベルになんて、そんな、無理っしょ」
(……ご説ごもっともです武元さん)
 唯我はこれが名うての教育係かというぐらい情けない引きつり笑いを浮かべた。何しろ筋肉のことだ、フィジカルのエキス
パートに駄目だしされては頷くほかない。
(俺だって武元がちょっと一夜漬けしたぐらいで英語上達したって自慢してきたら……するだろ、同じ反応)
 彼女を降ろす……つまり今回は駅弁を諦めた方が賢明ではないかとさえ思い始めた。
 じっさい、もやし少年が水泳国体級の少女に僅かな鍛錬を誇るなど、愚かな話でしかない。
「だから」
 顔を上げたうるかは唯我めがけ向けるツンと尖った流し目の下を薄紅に染めながら、告げた。
「ど、どんだけ鍛えられてないか確認したいし? とりあえずこのカッコで動けば……?」
「え、それって」
「うー!! だから言葉通りの意味だってば!! 恥ずかしいんだかんねこのカッコ!! てか一番キラいだし!! だだっ
だから! 早くヘバって終わらせてよーーーー!!」
 怒ってみせるうるかだが体位そのものを拒んでいないのは甘々である。
 なぜ寛恕が芽生えたか? 簡単である。先ほど俯いたとき、彼女は、下記が喜悦を浮かべていた、密かに。
(成幸この一週間ずっと、あたしのこと思い出してくれてたんだ。苦手な運動すらやっちゃうほど、たまらないって、あたしと
の記憶に、一生懸命に……なって、くれたんだ…………)
 実に、ちょろい。唯我は別にこういった篭絡を目的にランニングと筋トレを明かした訳ではない。駅弁で腰は”やらぬ”だろ
うという物理的証左を供出しただけに過ぎないのに、うるかときたら多分に拡大解釈を交えて自分への思慕に矯正した。まっ
たくの曲解ではないが、ヨーグルト風味のチョコをヨーグルトと断じる程度の無理はある。
 この辺の、唯我に対する夢見がちはもちろん本人も理解しているから、だから「どんだけ鍛えられてないか確認したいし?」
と言った片意地に置き換えた。


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