水泳の試合の入場at SWIM
水泳の試合の入場 - 暇つぶし2ch2:第1のコース!名無しくん
16/11/19 13:38:44.67 CDmrk7wZ.net
あれ大きな大会の決勝だけだから
地方の予選でやってたら、時間が足らなくなるよ。

3:
18/02/25 22:54:29.77 3XYtBtT6.net
問EX「で、あるからして天才は[x]の夢にうなされる」
 夜、皺の寄ったシーツの上でうるかちゃん(以下敬称略)がおへそも露に足を広げていた。褐色の立ち膝2つすっかり割
り開かれているのは再三にわたる唯我くん(以下敬称略)の最終確認を嚥下と共に受諾した結果である。
 暗夜の、秘事である。照明が落とされた黝(あおぐろ)い部屋に観月の淡い金光が幾筋も差込むさまは一種幻燈の趣が
ある。
 2人はいま、全裸だった。
 少女らしい丸みを水流によってシャープに攻(みが)き抜いた褐色の裸身の足の間に、細身だが、触れれば意外とがっし
りしている少年の姿が膝行している。
 両名ともひどく緊張した面持ちだった。
 うるかはチョコレート色の頬にひりひりした赤熱を乗せたまま、しかしどこか陶然と唇を結び瞳を潤ませ、唯我は眼鏡がうっ
すら曇るほど顔中に大粒の汗をかき、細い、細い、弾けそうな興奮を孕んだ乱調子の息をひゅるひゅると震わせている。さも
あらん、少年は生涯最大の昂揚の中にいる。原因は眼下に横たわる少女。姿は”人魚姫”の二つ名どおりしっとりだ。光が
透けるとどこか珊瑚の細工物のように赤み掛かる艶々としたショートボブはプール上がりのように前髪も襟足もじっとりと肌
に吸い付いている。原因は主に汗だが、うるかを湿らせているのはそればかりではない。例えばよく焦(や)けた肌のそこか
しこで煌めく水光の幾つかを観察すると、うっすらとだが何かに吸い付かれたような痕があるのが分かる。唯我の、所業だ。
頬、肩、脇、太もも……少年の衝動を散々に受け止めた肌はそのたび悲喜いずれかの嬌声をうるかに上げさせた。
 唇の端や乳房に点在する白濁が何か言うまでもない。流布する類の奉仕は概ね実行されてきた。健気さと従順さに基づ
く甘美なる炸裂がこれまで幾度となく発生した。
 りっちゃんこと理珠に比べれば流石に見劣りするが決して小さくはない乳房は日焼け跡によって相対的な白さを手に
入れており、それは枕頭の、初体験のドタバタによって期せずして開いたカーテンから差し込む月光によっていっそう幻想
的な色合いを与えている。
 しかしはてな、この両名、到底ふかい仲には成り得なかったのではないか。「うるかに好きな人がいるという唯我の誤解」
はどうクリアされたのか。
「成幸の受験が終わるまで負担になりたくないといううるかの思い」に関しては「どうせ受験が終わっても今度は新生活に慣
れるまではと理由をつけて延長するだろ的な、『犬』にも分かる理屈」が突破の原動力になったのかも知れないが、その辺り
はまあ、割愛する。
 唯我は、動いた。
「あっ」。うるかの鼻を甘い声が抜ける。膝と膝の間に居る少年の猛々しいシンボルがいよいよ濡れ光る秘裂に触れたのだ。
 ヘアは水泳選手だから当然よく刈り込まれている。丸坊主な三歳男児の毛髪のようにまばらで短く、柔らかい。
 諸々の葛藤とお伺いの雑多な積み重ねで結局2時間近くに及んだ前戯は、うるかの秘所をすっかりトロトロに潤ませてお
り受け入れる準備は万端だ。少年の粘膜と奏でたヌチャリという音に少女は猫のような大きな瞳をいっそう大きくし息を呑
む。
 ゆらい唯我に対しては良くいえば夢見がち、悪くいえば幻を見るほど異様な妄想癖を有する少女だ。挿入なる一大事の
場面だって何度も想像してきたし、そういう時の唯我を更に盛り上げる魅惑的なセリフだって何度も何度もベッドの中で
練習済みだ。だがいざとなると、いつものことだが、出てこない。停電した唯我家で、理珠みたくはすり寄れなかったチャンス
×の少女なのだ。しかも生殖器の粘膜を、長年焦がれた想い人のそれと触れ合わせている異常な状況、心臓バクバク、
顔面真赤の動揺極地だから、セリフなど、端的にいうと、トンだ。無数の思案の末に完成した美辞麗句が吹っ飛んだ。それ
でも何か言わなきゃと両目を一瞬、対立する不等号にしたうるかは愁いを帯びた顔つきで、か細く告げる。
「は、初めて…………だから、優しく……シて……」
 ひどいしおらしさは確かに唯我の鼓動をトクンとさせたが、させた方は内心大泣きである。
(バカー!! なにベタなこと言ってんのあたし!? てか今ので初めてってバレたー! ここまで一生懸命いろいろやって
きてそれなりに経験のあるオトナのオンナって演出してきたのに、く、口とかバナナで練習した成果を頑張って出したのに、
絶対初めてな成幸をスマホとかの知識でリードしてきたのに! 今のでぜーんぶ台無しになったーーー!! 結ばれてか
ら、実は初めてだって、驚かそうとしてたのにーー!)

4:
18/02/25 22:55:08.74 3XYtBtT6.net
 初めての子は重いと思われがち……そんなネットの情報を典拠としたうるかの対唯我の戦略はこの少女らしく恐ろしく
シンプルだった。(1)途中まで経験豊富と思わせておいて、(2)最後の最後で純潔でしたとバラす大逆転。優位は取りた
いが誰とでも関係するふしだらな女とは思われたくないといううるかの葛藤が良く出た他愛もない策謀だったが……
(自分で崩すとかどーなん!?)
 失態に少女は口をほぼほぼ水平にまで開ききったV字にしてふるふる、ふるふる。そんな彼女に、唯我。
「い、いやまあ、何となくお前が初めてなんだろうなって気づいてはいたが」
「気付いてた!? なんで! あっ」
 粘膜にかかる力が増した。「説明は……後な」。唯我の、切羽詰って底光りするあどけない眼に少女はちょっと竦んだが、
同時に(求められてる、ガマンできないぐらい求められてるよぅ)と嬉しくなる。美辞麗句はやっぱり思い出せないが、もはや
それはどうでもいい。
「う、うん。いいよ」
 少女はなけなしの勇気を振り絞って示す。
 長年の想いが報われることを、やっと結ばれることを、自分はとても嬉しく思っているのだと、表情に乗せて、
「来て」
 ずっと表現できなかった想いすべてを笑顔に変えて、両手を広げ歓待を示す。打算も何もない、仄かに含羞(はにか)みを
孕んだ透き通るような微笑に唯我は
(可愛い…………)
 理性も忘れ、前進する。
 ラビアを二度三度上下に擦った亀頭がとうとう裂け目に埋没した。「んくっ」。敏感な部分を侵食しつつある異物感に小さ
な肩が震えた。
 唯我は進む。
 痛いぐらいに剛直するペニスは標準よりやや長く、やや太め。受け入れる少女は少年より頭半分ほど小柄。必然秘所も
狭隘で、しかもこなれていない為なかなか肉竿、入らない。入念に準備した愛液の潤滑の援(たす)けがあってやっと砲身
が3分の1ほど入るという有様だ。
(太い……)
 やや早まる呼吸の中うるかは紅い顔を軽く横向ける。他方、少年は
(やべえ。先の方だけフロ入ってるみてえだ)
 手では味わえない未知の快美にただ奮(ふる)える。
 異物を押し戻そうとする「ナカ」の動きも、抵抗も、オスにとっては気持ちいい摩擦にすぎない。何よりうるかの表情。快活
で動的だとしか思っていなかった『女友達』が、恥じらいも可憐に身を任せ切っているという事実が弾けそうな気持ちを呼ぶ。
ここまで口と手と胸で合計5回出していなければ、挿入半ばでの射精なる男としてあるまじき醜態を演じていただろう。
 硬い手応えに、行き当たる。

 それが純潔の証であると同時に理解したふたりはどちらかともなく目を合わす。言葉は、出なかった。どちらも喋れば自分
が何らかの葛藤で止まりそうだから、無言の諒解だけを瞳に灯す。唯我はうるかのカッと血潮染まる代赭(たいしゃ。赤褐色)
の膝頭2つを立てたまま、少女の腰方向めがけなるたけググっと曲げる。そこは橋頭堡、手をあて支えとする。支点と結合
部の距離は、脇腹やM字開脚中の太ももを支えにした時より心持ち遠いから、ペニスを頂点に鈍角を描くような突き込みに
なる。初体験で選ぶにはやや奇妙な体勢だが、(武元の足、どんだけ柔らかいか……感じてぇ)、唯我はうるかがストレッ
チによって獲得した柔軟性をも行為の中で味わいたかった。じっさい膝は─厳密に言えば太もも付け根など足全体の柔
軟性に基づく両足の蛇腹的な畳まれ具合は─驚くほどグニャリとしていて、だから膝は、唯我が想定していたよりだいぶ
結合部に近い位置となった。

5:
18/02/25 22:55:49.94 3XYtBtT6.net
 そこを支えに、突き込む。破瓜は両名が想定していたよりずっと早く訪れずっと速く決着した。不意の衝撃に「ひぐっ!?」
とうるかが軽く歯噛みしながら仰け反ったのは、膝小僧を拠り所とする力の突き入れが、それまでの停滞がウソのようなスム
ーズさで関を破ったからである。「くっ、か……!?」。構造躯体を引き裂くような鮮烈な衝撃に少女はわななく。大きな瞳が
戛然と見開いた。黒目の”しぼり”はここまで拡がるのかとうるかが驚くほど大きくまろくなり、焦点を失った。尾を踏まれた
猫のような牟(な)き声が喉奥から迸った瞬間、無意識に頭が仰け反り頤(おとがい)が空を切った。よく陽に焦(や)けた
喉首にぶわっと噴出した脂汗は梅雨の外窓の水滴ほど多い。
「あ、ああああ……」
 頭だけでブリッジするような仕草で悶える人魚姫。脳髄ほぼ全てを占めるは熱くとろけそうな異物感。かすかにした血の匂
いは現実の物、秘部から溢れ出した幾つもの細い滝がシーツに点々とわだかまる。
 配慮と遅疑とで2時間近くに及んだ前戯の潤滑は、角度と力攻さえ確かなら容易く決壊を促すのだ。施した唯我ですら突如
局部を襲ったぬめりに殆ど崩落する思いで前進した。見下ろせば結合部、ほとんど根元まで体毛淡き谷間の中にある。うる
かが血の匂いをかぎつけた頃、彼は純潔の証が流れ出てくる様を目撃した。
(入った?! こんな呆気なく!?)
 大人しいゆえに自分はもっと初体験で苦労するのだと思っていた少年は驚いたが、それにかかずるヒマはない。体験した
こともない生暖かさが砲身全体に纏わりつき、妖しい気分が込み上げてくる。うるかはと見ればほぼ唯我と同じ気分らしく
これまた見たこともない艶かしい顔つきでもどかしげに喘いでいる。
 心持ち視線を左にやっている少女は熱にうかされるような表情だ。桜色の果肉を控えめに左官したように”ふっくら”盛り
上がる唇は軽く開き、微かに覗くエナメル質は枕頭の段差のやや先にある窓から差し込む月光の反射で、てらてら皓(しろ)
く濡れ光っている。熱く潤む大きな瞳はまだ快美より戸惑いが大きい。前(さき)の衝撃と、股間同士が密着している視覚情
報から何が起こったかキャッチしているが、認識の方がついていかない。
 臍下で渦巻き始める裂くような痛みの本質は結局強姦と変わらない。
 数年来の覚悟と念願に基づく合意は確かにあり、唯我もまた入念な、水準以上の潤滑をもたらしていたが、しかし他律さ
れる異物が生誕以来ずっと閉ざされていた渓谷を無残に引き裂いたという極めて客観的な事実は、女性視点の主観的な
観念に裁定を任せた場合どうも強姦めいており、で、あるが故にうるかもまた陵辱された時の一種絶望的な放心に見舞わ
れた。
 唯我を拒んでいる訳ではなくむしろ逆だが、しかし恋という極めて理性的な情緒の作業の落着が、破瓜と言う、生殖の、
あまりに生々しい原生的な痛みを孕んだ被害に帰結した。帰結せざるを得ない生物ゆえの落差は数年来の恋慕を以って
しても俄かには埋められない。
 宿業であろう、処女の。
 一方的に痛みを与えられる女性なればうるかの当惑は多かれ少なかれ味わう。或いは豊麗極まる媚態で跨り騎(の)れ
ば話は違うかも知れないが、羞恥がそれを阻むから処女性は難しい。
 不意に、泣いた。うるかが、である。痛みに対しては気丈を浮かべていた彼女であったが、現状を認識するにつれ真珠の
ような涙が数粒ぽろりと零れてきた。痛みは強姦と根を同じくするが、枝葉はまるで違うのだ。蕾は優しく披(ひら)かれた。
確かな愛の交流で契り……うるか自身が受け入れると決めて、受け入れた。やっと。ようやく。彼女は。
 想い人と、1つになれた。
 そういう思いによって促される流涕(りゅうてい)を一体だれが責められよう。
(ば、ばか、なに泣いてんのよあたし)
 こんなの重い女って思われるだけでしょと掌で目元を拭うが、涙はいっこう止まる気配がない。鼻先で熱い水気がツーンと
迸った瞬間、(あ、これヤバイ奴だ)と顔を横向けたが隠す方の余裕はもう無くて。
「だ、大丈夫か!? 辛かったら、引き抜く……けど」
 あ、動きたい衝動すっかり忘れてるなと分かるほど心配そうな唯我の声を聞いた瞬間、それだけ想われているのが実感
できた瞬間、涙はもうどっと堰を切った。苦衷と憂悶が報われたが故の涙は確かにあり、量は悲哀を凌駕する。片思いは
余りに長すぎた。報われるかどうかも分からないのに、うるかは、人気のない夜道をずっと避けてきた。

6:
18/02/25 22:57:19.13 3XYtBtT6.net
「あんた水泳ファンの間じゃアイドル並みの人気者なんだから、警戒しないとヤバいわよ」とは川瀬隊員の忠告らしい。ぽ
やーとしたうるかは何がヤバいか最初よく分からなかったと、いつだったか文乃に言ったが、「だから、キズモノになった
ら唯我の前に二度と出れなくなるよね性格上」なる海原隊員のフォローでやっと(いやいやあたしなんか襲っても得すんの?)
と思いつつも─…
 昼間でさえ人相の悪い男や不審な車には近づかぬようしてきた……という。
 捧げられるか定かでなかった純潔をうるかは彼女なりに懸命に守ろうとしてきたのだ。
 守ってきたものは今ぶじに捧げられた。安堵はしかしどこかで張り詰めていた糸を切った。豪雨の降り始めを思わせる大
きく熱い水滴はもう止められない。止められようがない。
(だから)
 気丈な少女らしく必死に口を結ぶ。湿った布を詰めた様な感触はもう扁桃腺の傍にある。いっそ弾ければどれほど楽か。
泣いて、しゃくりあげて、ここまで抱え続けてきた不安と貞淑の数々を唯我に曝け出すこと叶うなら、どれほど楽か。
(でもそんなんやったらヒかれるよ。だって成幸も初めて……なんだよ。動いて、気持ちよくなりたい時に、あたしが泣きなが
らあれこれ言ったら……萎えるよ絶対。この女、ナダメスカシがいるとか面倒くさとか思われたらあたし生きてけ─…)
 うるかの時間が凍結したのは唯我の顔を見たからだ。現実は想像よりずっと残酷だった。あれこれ怖がって、怖がりなが
らも覚悟する、そういう癖を持っているうるかですら、この時の想い人が投げかけてきた顔には、ひどく、傷つけられた。
 唯我は。
 泣いていた。
 鼻の頭を紅くして大輪の涙を、文乃でいう泣きぼくろの辺りに溜めていた。意図的に浮かべたものであればうるかはまだ
傷つかずに済んだだろう。だが唯我は「っっ!」と自分のそういう表情の変化が想定外だったらしく、慌てて眼鏡を持ち上げ
涙を拭った。拭うまで視線が自分に集中していたのをうるかは確かに視たから、だから彼女は傷ついた。好きな人が泣いた
原因が自分にあると分かってしまったから、申し訳なくて、傷ついた。その事実を表情筋に反映しながら、(嬉しい……)とい
う顔をもした。
「大会の、帰り道」
 かすかな痛苦と溢れそうな嗚咽にぶよぶよと輪郭を歪められながら紡がれたその言葉は閨とはかけ離れた物だった。
少女本人でさえ、言ってから「あ」という顔をした。不明瞭だが、唯我が先んじて泣いたうるかの悲事が何事かあったらしい。
 言葉はそこで途切れる。大会の帰り道で何があったかまでは語らず、
(……分かってくれたんだ。あたしの、本当に色んなことを)
 褐色の頬はただ微笑(わら)う。
 満足気に細まる瞑目の端に真珠のようなきらめきを宿したきり、不安定な潮が引くのを微かな震えと共に待ち始めた人
魚姫。
 彼女を瞻(み)る唯我の少し赤い瞳にはさまざまな申し訳なさが宿っていた。教育係としての鋭さはここまで男女の機微に
対しては一切発生してこなかったが、少女を抱くという極めて大きな変化のなか1つ上の階梯へ行ったらしく、それがため先
ほど、涙ぐむうるかから背景の様々を察したらしい。察した瞬間、
(こんな冴えない俺を……そんなに深く思ってくれてたのか…………。中学から、ずっと……)
 という感傷が少年の心を刺激した。男とは巨大な思慕を寄せられることを望みながらも、どこかで諦め決め付ける生物だ。
自己が評価する規模の自己であるなら、深く想われることなどないのだろう……と。安全、なのだ。そうやって欠点を、言わ
れる前に是認しておけば。であれば心ない女性からの指摘を受けても深くは傷つかずに済む……などといった世知辛い処
世を編み出すばかりだったと回顧する思春期だったのに─…
(武元は)
 密かに、ずっと、想い続けていた。風采が上がらず、家も貧しく、人生を、熱意を傾ける対象さえ見つけられずに居ると、
自分を卑下してきた少年(じぶん)に、
(武元だけは)
 価値を見出してくれた、今日び奇(めずら)しいまでの一途さで、必要な存在と思い続けてきてくれた……ということを涙ぐ
むうるかからつくづくと実感した瞬間、唯我は、気付けば涙を零していた。零した瞬間、(なのにそんな武元に、俺は)気付い
てやれなかったのだという申し訳なさが込み上げてきて、鼻が痛み、喉が詰まった。

7:
18/02/25 22:57:57.87 3XYtBtT6.net
 涙をぬぐっても、洟を啜る水音は止まらない。瞳の色から察するに、『苦学の中、うるかの水泳の頑張りから勇気を貰って
いた』気配が強い。救いをくれた少女が自分への思慕を匿(かく)し続けてくれていたのを知ったからこそ、唯我の歔欷(きょき)
は、止まない。
 交合はどうも男女の哀切をも昂ぶらせるらしい。唯我の涙を見たうるかは一瞬であるが本当に決壊したくなった。「泣かなく
てもいいじゃん成幸」と言いながらギャン泣きして一頻(ひとしき)り泣きあえば確実に両名ともすっきりできるだろう。唯我の
涙とはつまる所うるか積年の想いへの無言の感謝なのだ。ならば少女が、報われて嬉しいと泣きじゃくるのは自然だし、報
われなかったぶん今ぐらいは涙なる醜態も許されてはいいではないか。
(でもあたしまで泣いたら収拾つかないしなー)
 うるかのどこかが戯画的な顔でのほほんと思ったのは結局つまるところ”女”だからだ。普通に育った女性は、男に泣かれ
るとどこか冷静になる。薄情、という訳ではなく母性の問題だ。幼少期の本当に悲しい時の涙を母親に、ちゃんと受け止めら
れ共有された少女が男の涙を目撃した場合まず「助けなきゃ」という情誼を沸かす。(逆に涙を碌でもない怒りで抑圧された
場合、哀泣に対しひどくヒステリックになる)。
 うるかは標準的な母性愛を受けて育った。少女としては泣きたい気分は未だある、確かにある。伝えたいのに、遠慮のせ
いで伝えられない諸々が熱く湿った空気を瞳の前線に送り続けているのは確かである。
(けど)
 母性はそっと唯我の顔に手を伸ばす。眼鏡と皮膚の隙間に潜り込んだ指は自分でも驚くほど優しい手つきで涙を拭った。
 その思わぬ挙措に驚く唯我。。
 人魚姫は目元に涙を讃えたまま、静かに笑う。
「ありがとね、泣いてくれて。あれだけでホラ、あたし満足だから。ね?」
 自分にあるかどうか分からない女の子らしさを必死に瞳孔へかき集めて、甘くて優しい雰囲気でろ雰囲気でろと頑張って
訴える。泣いてでも欲しかった共感は唯我の涙によってきっと大半が補われたのだ。貞淑を守るための精一杯の努力や、
想いが報われるかどうか分からずただ怖かった日といった存在に、唯我は気付き、謝意と謝罪で涙した。
「泣いてくれたんだね。あたしなんかの、為に」
 まだ溢れてくる唯我の涙をうるかは拭う。夏の日差しの面影の濃い掌は、いかにもインドアでちょっと青白い頬を愛しげ
に撫でる。
 人魚姫は人魚姫でぽろぽろと涙が零れてくるのを止められないが、それでも微笑は懸命に保つ。笑ったまま「よしよし」と
唯我の涙を拭い続ける。「泣くな」とは言わない。心が楽になるまで泣いていいよ、付き合うよと構えるのが泣かせてしまった
原因である自分が当然果たすべき責務だと人魚姫は考える。
「気持ち、隠してたあたしの方がずっと悪いし」
「違う。俺だって、俺だって、プールの時のアレで気付けた筈で」
 ううん。うるかは首を振って静かに笑う。
「アレで気付けないほどこんがらがっちゃったのは、ラーメンの後、あたしが、はぐらかしちゃったせいじゃん」
 唯我は悪くないよという囁き。掌には熱が昇る。少年の頬はすっかり紅い。
(なんで俺の方を……気遣うんだよ)
 いっそう強く押し出される涙を丹念に拭う指が、唯我には辛い。思いやりを享(う)けることに罪悪感を覚えるのは支えあっ
て生きてきたからだ。家庭が、貧しい。身を切って配られる物がどれほど重いか知り尽くしている唯我だから、今のうるかの
献身が、やるせない。ようやく言葉を、発した。
「一番泣きたいのはお前だろうが。なのにどうして原因な俺を優先すんだよ」
 うるかはちょっと困った風に肩を竦めて笑ってから、「えへへ」と頬を緩めた。
「しょーがないじゃん。好き……なんだからさ」
 眼鏡が、ズレた。不覚にも見蕩れた唯我は(クッソ! 過去の俺殴りてえ! こんな可愛い子を「あの武元」とか呼んでた俺、
ブン殴りてえ! どんだけ節穴だったんだ俺の目、どんだけ!)という感情を全面的に押し出した。

8:
18/02/25 22:58:30.61 3XYtBtT6.net
 愁嘆場を覆す動きは更に起きる。
「成幸」
「なんd」少年の言葉は途中で遮られる。んむっという柔らかな音が塞いだのだ。持ち前のフィジカルで仰向けから跳ね上がっ
たうるかの唇によって封じられたのだ。接触は数秒にも満たないし、この時が初めてでもない。既に何度か経験した舌同士
を絡めあうディープなものでもない。そっと重ねてそっと放す挨拶程度のものである。だが挿入という最大の出来事にばかり
目を奪われていた唯我の不意を突くには充分だった。
「お、お前、いきなり何を……」
「にへへ。何となく」
 してやったりと白い歯も露に笑ううるか。一方の唯我は少女のようにドギマギとしている。
(きゅ、急に戻んなよ、いつもの……武元に)
 匂い立つように瑞々しい少年の照れに誘引されたのだろう、ニカリと笑っていた褐色少女の頬が切なさに彩られ、再びの
キスへと移行する。
 今度は舌を吸わせる為の艶かしい行為だが何を思ったのか唯我は顔を引き、あろうことか……排出、『拒まれた……?』
と不安に彩られるうるか。そこに少年はほぼ激突する勢いで猛烈なキスを見舞い、舌を絡める。
「んーっ、んーっ」
 突然のことにもがくうるか。反射的に逃げようとする肢体をしかし少年は逃がさない。
 背中に手を回し、強く、ぎゅうっと抱きしめる。「~~~~っ!?」 思わぬ奇襲攻撃に、うるかの、ねこねこした瞳が驚愕
に見開く。細身が砕けるほどの熱烈なハグに少女は混乱しながらも歓喜するが、しかしキスによって息ができないのも事実。
鼻梁すら押しつぶすほどの強い愛情表現だから窒息寸前なのである。
 とんとんと遠慮がちに叩かれる胸の響きを感じつつ、唯我、思う。
(武元。お前は常に突き放されやしないか不安がってるようだからな。敢えてキスを拒み、ショックを受けた所で想定以上の
をすれば絶対にマヒする。そして!)
 息をできなくしていたのも策略の1つ! もうそろそろ限界だろうなというタイミングで顔を離す。果たして呼吸を再開する
うるか。へあへあと舌を出し、酸素を取り込む。
(それを、待っていた!)
 きゅぴーんと─いい教師であるが、秀才どまりの器らしい、しょうもない策士気取りが我々に出会ったころ、あったのだ
─きゅぴーんと唯我は内心で恰好つけたポーズをしつつ、剥き出されたうるかの舌に己のそれを絡める。
「っ!? は、はぁ、はぁ……」
 びくりとしたうるかだが、誘うような絡み付き方に情欲の炎がついたと見えて舌使いをヒートアップさせる。少年のうるかの舌
への執拗さときたら、桃の”たね”からなおも果肉をそぎ落とさんとする時のネチっこさ。うるかはうるかで、舌使いを拒むど
ころか嘗(な)めに嘗めて熱烈迎賓。愛撫の錯雑。くちゅくちゅとした水音がしばらく響く。
 この間、両名は繋がったままであるが、動き始める気配はない。
(本当は突きたいさ、てか武元の中すんげえ気持ちいいから、今すぐめちゃくちゃに動きてえ!! けど!)
 ゆらい誠実な男である、結合直後の心の交差が軽挙を許さない。作法というか儀式というか、とにかく愛情を確かめ合える
何事かを挟んでから動かないと、なんというかただの欲望でうるかを抱いたようで、嫌なのだ。
 長めの、納得を得るには充分なほど長めの、たっぷりとしたキスが終わる。
 二度目の酸素確保のインターバルを与えられた少女─水泳選手だから辛うじて耐えられた長い無呼吸期間だった─
の両肩に唯我はすっと手を当てる。
「こ、今度は、なに……?」
 怯えながらも期待に潤む上目遣いはサドッ気を存分に刺激する。ちょっと見とれながらも唯我は、
「お前が悪ぃんだよ」
 理性的だが弱気な少年がいよいよ衝動を炸裂させるとき特有の、やや上ずり甲走った声音で、
「お前らしい、ガキ大将みたいな笑顔から、お前らしくない色っぽい顔になって舌吸えとばかり迫ってくるとかなんだよ」
 倒していく、うるかを。ベッドめがけ、沈めていく。
「くそ。可愛いから悪いんだよ。どっちも可愛くて、落差もすげぇから、俺はもう、俺は…………」
「…………っ」
 褐色の頬が艶かしく波打ち、大きな瞳が泳いだのは内部で存在感を増す唯我を感じたからであろう。根が気弱な少女らし
く、いよいよ次なる事態が迫っていることに一瞬恐怖を覚えたが、先ほど母性優先になっていたのがここで効いた。
「うん。あたしが泣いちゃったせいで随分待たせちゃったもんね。動いて。たくさん……動いて……」

9:
18/02/25 22:59:13.63 3XYtBtT6.net
 微笑は先のガキ大将のものではない。総てを抱擁する優しさの笑みだ。
 これによって唯我は免罪符を得たが、すぐさま直ちにガッつくのは何だか情けないという見栄もまたあり、
「う! 動きはするけどな! 痛くなってきたらちゃんと言えよな! 傷は傷だし、洗いはしたが、入れてるモノがその、モノ
だし! 俺の無茶のせいでお前が破傷風めいたもんなって受験に差し支えが出るとか、嫌だからな! ちゃんと言えよ、
ちゃんと!」
 捲くし立て、ツンと赤面を背けた。
(はうう、ツンツンデレデレな成幸カッコ可愛いよぅ)などとうるかは両頬に手を当て瞳孔2つをでっかい一等星に置き換えたが、
気遣うあまり想い人が動けなくなってはたまらぬと、叫ぶ。
「ちがっ、違うよ! 痛いから泣いてたんじゃなくて、嬉しいからで、でもなんてゆーか、中学からずっと好きだった成幸と1つ
になれて嬉しいとかそんなの言ったら、『この女さっきからベタなことしか言えてないな、つまらない』とか呆れられそうで、だ
からそんなん言えるわけないでしょ成幸のばかーーーっ!」
「……言ってるじゃねえか。てかその辺の話引っ張るなって言葉の外で訴えておいて自分の方ではまだ言うか」
 少年のもっともな指摘に「はっ」と褐色少女、顔をコタツの照明より紅くした。黒焦げた煙さえ頬から立ち上るようだった。
「てかやっと結ばれたときのセリフがこんなんでいいのーーーー!? 色気もへったくれもないじゃんバカはあたしだーー!
ああもうやっぱ泣きじゃくってた方が色っぽかったかなあ!! って! 今さら気付いても手遅れじゃん! もう別のイミで
しか泣けないーーーー! もうイヤー!!」
 頭を抱えてぎゃーぎゃー騒ぐ少女に(確かにもうちょっとお淑やかにはして欲しい。あと武元さん? あまり動かれると刺
激で下の方がですね)と眼鏡少年は引き攣る。繋がった状態でこれである、どうも両名、艶聞一色には染まりきれぬ間柄
らしい。

10:
18/02/25 23:01:35.61 3XYtBtT6.net
(……でも)
 少年は「すげえよ武本は」と少女を見た。様々な感泣を結局のところ耐えた少女を。彼女は耐えて、いつもの明るい調子
を当たり前のように取り戻している。
 くすん。うるかは鼻を鳴らした。むっくりとした柴犬の子供が途方にくれているような大仰な眉の下げっぷりだった。(こんな
あたしじゃ幻滅されちゃうよね……)という不安が大いに滲んでいる。
「大丈夫だって。心配すんな」
 少年は柔らかな苦笑と共に少女の側頭部を右手で撫でる。子供をあやすような仕草であり閨にはとんと不向きだが、しか
し唯我は女性を安心させる術などほとんど知らぬ。やれることといえば妹2人で培った「あやし」ぐらいだ。撫でながら優しく
呼びかけることしかできないから、幻滅を恐れる少女へは
「俺はお前のそういうとこが……好き、だし。ぶっちゃけ、そのままの可愛い所が見たい」
 と、照れくささに詰まりながらも自分なりの懸命さで好意を込めるほか、唯我は応える術を持たぬ。

11:
18/02/25 23:02:31.32 3XYtBtT6.net
 少女には曲解の癖(へき)がある。唯我の言葉を何かと拡大解釈してしまうのだ。
 それがこの、聞きたてのセリフにも作用した。
 うるかはデフォルメの効いた、悪意で修辞するなれば愚鈍の体現者のような顔つきでほわほわと変換した。
(お前がこの先どんな痴態を演じても、俺は愛し抜いて見せるぜ?)
 なる地上のどこにも存在しない唯我の言葉を捏造し、あろうことか、
「もー! どんな痴態でも愛するとかドンヨクだなあ成幸は!!」
 とペンギンの前肢のように簡略化された両手をブンブン振って照れ混じりに叫ぶ。この少女、性分明朗なれど臆病という
特質に生まれついてなければ、ストーカーになっていたであろう。
「痴態? ドンヨク……?」
                    おか
 唯我は唖然としたが、うるかが風狂しなことを口走るのは毎度なので受け流す。
「てかお前、結局のところ大丈夫なのか?」
「んー? どしたん?」
「どしたんじゃねえよ。だから、その、俺のを、お前、今……」
 唯我の視線を追って自分の下腹部へと視界を移したうるかはハっとする。肉壺はいまだ剛直を納めている。実感すると
面頬からは快活さが消え、代わりに切なげな震えが走る。
「ど、どうしよう。改めて認識したらちょっと……変な気分に……」
「痛みは」
「ふぇ? あ、ええと、あるっちゃああるカンジ? ジンジンするっていうか、おっきな座薬が入ってるっていうか、あ、今の
ナシ、忘れて! 座薬挿したことあるのとか考えたでしょ成幸のばか、あわよくば挿したいとか……えっち!」

12:
18/02/25 23:02:56.35 3XYtBtT6.net
 振りかざされた枕を頭にてポフリと受け止めるのは贖罪だ。少年らしい勘繰りは確かにあったのだ。
「すまん武元。前半だけは事実だ」
「えええ!? あれ? 呼びかt……あ! というか成幸のが座薬みたいに細いとかじゃないよ! ホントだから!」
 枕をてやりと元の位置に戻すうるかに、少年はちょっと吐血もののショックを受けた。少女たちから低い扱いを受けるの
は慣れているつもりだが、それでも”そこ”のサイズについて貶められると男としてかなり悲しい。
「てゆーか、成幸の………………太い…………」
 そっとシーツで口を隠したうるかが上目遣いで恥ずかしそうに告げた瞬間、男としての自信、復活。
「ふわっ、な、なんかまたちょっとカタくなってない……?」
「男ってのはシチュで変わるもんなんだよ。悪いか」
「悪くないよ。というか…………カタくて太い成幸も………………イイ、し………………」
 後半はほとんど消え入りそうな声のうるか、耐え切れなかったのかシーツで顔一面を覆う。静寂の深夜のしかも間近で
漏らされた声を聞き逃すほど難聴ではない少年は、燃えて、萌える。
(可愛すぎんだろ武元!)
 少年、やや暴走。うるかの顔からシーツを強引に剥ぎ取る。「ひゃああ!?」 思わぬ侵攻に少女は面食らったが、「えへ
へ、なんか楽しい」と能天気な不等号目つきで笑ったりもする。もっとも、
「さてそろそろ」
 と唯我が何事か告げた瞬間、さすがの能天気もサっと緊張に強張った。
「大丈夫だったらもういいだろ、動くぞ」
「う、うん。好きにして……いいよ。って、またベタだあたしもうイヤー!」
 涙ぐむうるかの絶叫。だがそれは半ばで止まる。触れたのだ。髪に、手が。
「いいんだよベタで」
「え」
 手。それは唯我の物。撫でていた。彼はうるかを撫でていた。
(お。おおお)
 状況を把握するや少女は歓喜した。
(頭なでなでだーー! ときどき理珠りんに影でこそっとやってる頭なでなでだーー! やって欲しいって思ってたけど、言うと
ちっちゃくもない筋肉付きまくりの女がナニ言ってんだってヒかれそうで求められなかった、頭なでなでだーー! しあわせー)
 とろっとした垂れ目の三本線でほわほわする少女はちょろいが、忠実だ。次の唯我の言葉も確かに聞いた。

13:
18/02/25 23:03:16.38 3XYtBtT6.net
「何だって基本を疎かにする奴は伸びねえよ。水泳だって英語だって、お前は一番地味で面倒臭い基本こそ大切にしてる
だろ。馬鹿になんてしてねえだろ。一見軽そうなのに着実なことできるお前のそーいうトコ、立派だって思ってる。あ、あと、
料理もだな。あれも基本を踏まえてる。立派だよ」
(え、料理まで!? 何コレ幸せすぎるんですけど! まさかユメ!? ユメなの!? あ、でも、あそこは……まだ痛いし……
じゃあユメじゃない! ヤッター!)
 褒められながら頭を撫でられる喜び。うるかは気付いていないが、脳内麻薬うんぬんで秘部の痛みは集中してようやく知
覚できるほど小さくなっている。唯我がこれを打算でやっているなら寧ろ可愛気があるが、この男の始末の悪いところは、
斯様な”たらし”をまったくの自然体でやれるところだ。文乃のポニテくるくるの真意はカケラも気付きもしなかった癖に、う
るかの喜びそうな言動は当たり前のようにするから、まったく憎々しい。
 ふつう初陣の男子は征服した領地の甘美さに心奪われ遮二無二に動くものであり、うるか自身そうされるのを(期待と共に)
覚悟していたのだが、唯我はすぐには蹂躙的な動きは見せず、ただただ少女の平生のみを褒めた。事ここに到る前にそ
れをやれば「繋がりたいがため、拝み倒している」とうるかですら─女性としての疑い深さではなく、己に自身のない少女
としての不安から─疑念を抱いていただろうが、破瓜直後という一番貪りたくなるタイミングで平素への感服や、「なでなで」
の方を優先されると、
(しあわせ)
 心まで1つになれた気がして、うるかは心底からの充足に頬を緩ます。
 唯我は、言う。
「だからいいんだよ。こういう場面でベタでも」
「そりゃそうだけど、で、でも、恋愛だよ!?」
 もっと聞いたことない言葉とかのが嬉しいんじゃ……そう言い掛けるうるかの内部で槍が引かれて、押し出された。ズンと
いう衝撃に彼女は一瞬息すら忘れた。むず痒いような、痛気持ちいいような感覚の炸裂に、「あ……が……?」と両目を白
黒させるうるかは、眼前小岩の如くそびえる唯我が二度目の律動に移っているのに気付き、青くなる。
「動い……ちょ、え、褒めてるさいちうに、いきなっ、……あっ!」
 再度の突き入れに、仰向けるうるかのココア色の顎が跳ね上がる。
「ベタってのは、基本ってのは、人の心を捉えるもんなんだよ」
 三度、四度。引いては突く繰り返しは徐々に加速を帯びてくる。最低限の脂肪しかない、それでいてストレッチで存分な柔
軟性を得たチョコレート餅のような質感の脇腹に指をめり込ませた唯我は何度も何度も腰を叩きつける。最初こそ破瓜の傷
を擦(す)られる微妙な苦悶を浮かべていたうるかも、徐々に徐々に女芯を燃やし始める。
「よく分からないけど、熱い、お腹の中が段々、熱く……」
「ベタだな」
 けどそこがイイんだよ。とろけ始めた顔つきの少女にひどく興奮した様子の唯我は突き入れる角度を僅かに変える。
「っは! はううん。そこ、そこもなんか、イイ、良く分からないけど、いいよぉ……」
 軽く甘え泣きして更に物欲しそうに唯我を見るうるか。
「言動には心ってのがあんだよ、軸の通った基本こそ一番の武器なんだよ」
 と平素教師をやっている唯我はやや説教じみたことをいいながら更に突く。
 時に浅く、時に深く。
 力いっぱいの全速で、現状考えられうる限りの最奥を打撃したかと見れば、うるかの膣の圧迫を楽しむように緩やかに。
 少女が少しでも未知の反応を示せばその地点を重点的にイジめ抜く。
「ベタでも心がかよってりゃ」
 水音の中、前後しながら、言いつけるように、
「燃えちまうんだよ、男は……」
 と灼熱の突き入れで教導する。
 説教強盗じみた愚にもつかぬ『教育』だが、受験勉強を通して形成された一個の、「教える立場なのだ」という優位性を
動員し、動員することによって名誉にかけての保全を企図せぬ限り唯我は、ともすればすぐにでも漏れ出でそうになる衝
撃に到底耐えられそうになかった。そういった戒厳を施して初めて粛然となれる様態は桐須先生にも似ているが、意図し
たか、どうか。

14:
18/02/25 23:03:42.90 3XYtBtT6.net
 とまれこの教育の本質は結局、”躾”なる行為であるから結局唯我自身「ベタ」の轍は踏んでいる。もっともやられる方はい
い意味でも悪い意味でも反駁の素養を有さない。うるかはただ、唯我から発される肉体的な揺さぶりに、獰猛な愛情が存
分に篭っているというただ一点に対し、(はうう、ドSちっくな成幸もカッコいいよぅ)と惚れ惚れするのみである。
「むしろ下手に恰好つけた内実の伴わん方法とか言動とか、いつか絶対メッキが剥がれるもんなんだよ」
 という唯我本人こそちょっとそっち方面な”攻め”をやりつつあるが、濡れ場の男など客観視すれば概ね滑稽な物なのだ。
むしろ「勉強」という学生最大の本分に通じる言動である分だけ、常人の痴態よりはマシであろう。
「お前は今のままでいいんだよ。軽薄なこと一切すんな。いいな」
 と上ずった声で言い渡す。半ばは教師として出来上がった態度だが、半ばは可愛い少女を自分色に染めようとする他愛
もない独占欲だ。
「う、うん。しな、しないから……約束するから、もっと……してぇ」
 少女は綿になることを欲す。大好きな少年の独占欲を吸う一個の真綿になりたいと願う。
 ベッドのスプリングはいつからかか軋み始めている。最初こそ遠慮がちだった唯我はもう欲望の赴くままだ。若い獣の貪り
で揺らされる日焼け痕の裸身は、当然ながら双丘をも、ぷるん、ぷるん、と瑞々しく上下に左右に揺らしたくる。巨乳、とい
うには些か厳しいサイズだが、しかし大きさのみが重要なのではない。「デカけりゃイイってもんじゃねーんだよコラ! だよ!」
と言ってこその『師匠』であるだろう。大事なのは持ち主が可愛いか否かだしだいたい頑張れば点数と同じように伸びr(以下
592行削除)、掌にほぼほぼ収まるサイズの膨らみは、能動的ながらに慎ましいうるかを体現するに相応しい可憐さだ。
正常位の突き入れによって先ほどから可愛らしく動盪していたふくらみに少年の我慢は、弾けた。
「きゃう!?」
 脇腹を握り締めていた両手が艶かしい乳房たちを揉み始めた。7
(ちょっ?!! 確かにもっととは言ったけど、胸まで!? こ、ここ、だけなら)
 何度か触られてはいる。前戯のさなかちょっとした騒ぎのすえに。
 左の、やや小さめな乳輪の周りにいまだ付着している白濁を見れば何が行われたか想像に固くない。挟みもしたし、乳首
で先端をも刺激した。だから決して未知の刺激ではないが、秘部に突きこまれながらとなると快美の色合いは変貌する。色
つき透明セロハンを重ね合わせたような加法混色によって……激変する。或いは爆薬調合。腰と胸、まったく違う箇所から
上ってくる快感が脳内で遭遇するや交じり合い、此処の爆発力以上の爆発を惹起。
「ふああああああああああん!?」
 これまでどこかで堪えていたうるかの声が甲高い叫びとなった。武元家にうるか1人という好機を見計らって唯我を招き
入れていなければ、この声1つで秘事は露見していただろう。それほどの大声だった。中学以来の知り合いの聞いたことも
ない声音に、淫らながらに愛らしい叫びに、少年の背筋はゾクゾクした。
 困ったのはうるかである。勝気な表情を赧(あから)めながら透き通った瞳を泳がせる。
(バカなに大きな声あげてんのあたし!? 近所の人に聞かれたら成幸の推薦パーになるのよ!? 確かに気持ちよかっ
たけどでも何度もは駄目、バレちゃう! でもあまり強く拒んで成幸にヒかれるのもイヤ! この女たいしたサイズでもない
のにケチりやがってとか思われたらあたし生きていけない。じ、実際、リズりんに比べたら……だし。これっぽちだし……)
 おぅこらテメー贅沢って言葉知ってっか、塾じゃDつってたよな、ア゛ァ!? だよ! ととある少女が知れば間違いなくガン
を飛ばすであろう事柄をありありと表情に浮かべるうるかの思案、続く。
(ととととにかくやんわりとした断りのセリフ入れなきゃ保(も)たないよ! 凄く気持ちいいけど、今はだめ、下からの刺激に
慣れる前に胸刺激されたらえっちな声がいっぱい出ちゃう、バレちゃう! ご近所さんからママにバレて推薦パーで、あああ
どうしたら、どうしたら成幸おこらさずに断れるかなあ! 柔らかい言葉、柔らかい言葉、なんでもイイから出てきてよーー!!)

15:
18/02/25 23:04:11.64 3XYtBtT6.net
 両目をグルグルさせながら必死に考える人魚姫であったが薄桜色の唇はやがて動く。「の」。の? 何を言わんとしているの
かとばかり唯我の視線が武元うるかに集中した。果たして言葉は緩やかに紡がれた。
「の、のーさんきう…………」
 言葉と共に少女は右腕一文字で2つの丘を隠した。顔は羞恥でいまだ紅いが手応えも感じている。
(英語なら柔らかいよね! しかもこれなら『咄嗟に英語で断れるぐらい勉強してるのか偉いぞうるか』とか褒められつつ中止に)
 右腕が剥がされ鷲づかみの一撃が炸裂する。「きゃん!」 びっくりするうるかの乳房は以前より猛々しい力でぐにゃぐにゃ
揉まれ込んでいく。
(うわーんダメだったー!! てかあたしのーさんきうって言ったじゃん、なんで逆にコーフンしてんの成幸のバカー!!!)
 自分の言動の何が少年を燃え立たせたのかちっとも分からぬうるかである。こうなったら事情を洗いざらい話すしかないと、
テンパった涙目で叫ぶ。
「駄目だからおっぱい駄目だから! なぜならノーブラだった球技大会のとき成幸に擦られたのが気持ちよくて、それから時どき
成幸のこと考えながら触ったり抓ったりするようになってますます敏感になっちゃってるからーー!! だからダメー!!」
 背筋をゾクゾクさせた少年、触ったり抓ったりをやりだした。事態はもう、めちゃくちゃだ。
「うぎゃーしまった! これ言わなきゃ絶対バレなかったやつじゃん! どーして自分でバラすかなあたしーー!! あっ、だめ、
そこ特に触ってたとこで敏感だから、やめっ、あ、だめ、だめ、うわあん……また自分でバラし、あン!」
(ああもう)
 唯我は眉尻さげ、ほっこりした。叫ぶうるかに、である。
(す……っげぇ可愛い)
 声を出さないための対策を悉くしくじり大声を上げている滑稽さが少年は楽しい。性行為という、甘美ながらもふと冷静に
なれば不安な未来しか浮かばぬ『作業』の中で、そういった暗さを一切見せず普段の明るさを保っているうるかを「凄いな」
とさえ思った。破瓜を成した行為いまだ終わらぬ中で、「これ」なのだ。彼女にしてみれば痛みなど、唯我にどう思われるか
に比すれば鴻毛程の重さもないらしい。
「武元」
 じたばたする少女の顎を唯我は持った。
「あ……」
 くいっと少年に”向かされた”うるかは驚きながらもどこか観念したように瞳を細め視線を逸らす。感じたのだ。かれの声音
に籠もる獰猛さを。普段なら「つーん」と顔を背けていたろうが、せめてもの可憐な抗弁が精一杯。
「その武元ってのやめて……。名前で呼ぶって、言ったじゃん。プールで約束したこと守ってくれなきゃ……いや……」
「6年近くこっちだったしすぐにゃ無理」
 答える少年の声は切羽詰っている。ベルトをがちゃがちゃとほどく時のような、刺激に飛びかかりたくても飛びかかれない
もどかしさが滲んでいる。だからこそ手つきは速い。空いている方の左手はもう鮮やかな乳輪をなぞっており、その刺激に、
甘美なる泡粒の洶(さわ)ぎに、「んくっ」と少女は目を瞑りかけたが、
「い、今はだめ……だからっ」
 鋭い叫びと手つきでぴしゃりと撥ねる。うるかの手刀は、鋭い。水中において早回しの櫂のごとく運動できるよう様々な訓
練を重ねているからだろうか。とにかく少年の手を胸から追放するや少女は抗禦の構え。隠したのだ、乳房を。今度は両腕
を胸骨の前で交差させ「今だけは……」と赤らんだ瞳で懇望する。
「慣れてきたら、腰の方のちゅくちゅくに慣れてきてからなら幾らでもイイから、だめなの、今だけは、胸……やめっ、あ!!」
 新たな刺激に声が跳ねる。
 唯我の手がうるかの手と胸の間に潜り込んだ。聞く耳もたず、という訳である。腕と胸の間で圧殺されたヘビの如く這い回
る唯我の腕をどうしていいか分からずうるかは「…………っ」と両目を潤ませた。
 根本は恐ろしく従順な少女だった。「…………」。もう逃れられないと覚悟を決めつつも、気恥ずかしさと不安が多いに乗った
切なげな顔をシーツの上できゅっと逸らした。唯我の手がまた乳房へ。今度は、抵抗しない。「んんっ」。甘やかな果肉の弾
力が恋人の掌の中を跳ね回る。ゴムボールの圧搾だった。柔軟不壊の弾力と戦わされる握力だった。強く握ればするりと
逃げる柔らかさは唯我の握りこぶしの中をくにゃくにゃと逃げ回った挙句、人差し指の輪とも隙間とも取れる隙間から、ぷ
くりと盛り上がり棠(こりんご)を作る。(恥ずかしい……)。全てを見ていた少女の頬に血潮が上る。

16:
18/02/25 23:04:46.60 3XYtBtT6.net
 筋力で「もやし」の猥褻を拒みきるのは容易い。だが口で「だめ」と言いながらも瞳にはどこか期待の光が灯っている。
 従順な乙女は本心の深いところで蹂躙を望んでいるのだ。だがそれを述べるのは貞淑さ故にどうしてもできず、また、初
めての行為で極度に乱れ狂った場合、「インラン」とドン引きされるんじゃないかという不安もある。
 唯我は一切合切を見透かした。才、である。教え子の得意分野と苦手分野を分析できる観察力がそのまま女衒の手練
に転嫁しつつある。
 不幸なのは俎上の人魚姫だ。また乳房を揉まれ身悶えた。胸部において四本の腕が入り乱れる攻防戦を繰り返してい
る間も少年の突きこみは継続されている。砲身に纏わりつく薄桃色の液体は破瓜の印と愛液との混合物。茂みが薄めの
秘裂から滴る蜜は唯我に内応しつつあるらしく、透明から、泡めだつ白の度合いがそろそろ強い。潤滑が往還を助ける。
胸をいじられながら突かれるうるかは額に左前腕部を乗せ艶かしく喘ぐ。
「あっあっあっあン」
 穿たれたりといえど脳医学的にはまだ童女である、うるかは。膣からの刺激はまだ受容器官の中では、「快美」とさえ認識
されていない。ただ漠然とした、宇宙全体を思うような巨大な概念だけが唯我の蠕動によって伝わってくる。痛みがあり、異
物感があり、それらに対しうるかの童女的な思考体系は限りない恐怖と恐慌を抱いているのに、他方、少女としての観念は、
「成幸と、1つになれた」という事実を的確に認識し、認識することによって限りない多幸感を覚えている。
 今の彼女の性感帯はどうも、条件付けによってのみ成立しているらしい。
 少なくても現時点の生殖器に於いては、気持ちいい場所というのは具体的には存在せず、唯我の動きに付帯する加圧や
摩擦といった極めて現実的な刺激の種々を、「成幸にそうされちゃってる」から、気持ちいいとのだと解釈しているように見て
とれた。
 男にとってこれほど都合のいい体もないだろう。侵襲すべて、是である。なのに是であることはまったくの悪事であるように
うるかは恥じらい、ブレーキをかけんとする。
(その慎ましいところが)
 唯我の攻め手に愛情ゆえの緩急を与え、
(ほ、本当に成幸初めてなん……? 上手で優しくて、気持ちいい、気持ちいいよぉ)
 とうるかの顔をますます水気でくしゃくしゃにする。唯我。初めてゆえ技巧1つ1つは拙いが、全体的な波に整合的な諧調
がある。優しく、理詰めで、何より女性に対して誠実だから、いきおい房事の手並みも相手の反応に合わせたものとなって
いる。それが、
(いい、とても、いい……)
 胸に生(な)る林檎が弾け飛びそうな力に悶えた瞬間さっと力を緩め休憩を与えてくる手管。
 源泉濃密なる快美の醴(れい)から解き放たれ息つく間にもちゃっかりと乳輪を撫で微細な刺激を送り続けてくる周到さ。
 うるかが強きに耐えられなくなれば弱め、弱きに陥らば強さが物欲しくなるよう誘導する手つきは、
(優しく、されてる)
 と実感させるに充分だ。
 安心し、充足する。安心と充足を得た瞬間まるで真逆の獰猛な刺激を欲し始めるから女性の機微は難しい。が、唯我は
察す。察するからこそうるかの恋慕が出発し今という波止場に行き着いた。
「ひゃううン!!」
 乳首が、抓られた。潜り込んだ唯我の手は数式で難問を解くようなあざやかさで最も効率的な戦術を披露した。
 うるかの木苺は、敏感だ。神速の神経伝令がうるかの運動野をマヒさせた。軽く涙を浮かべるほどに瞠目したうるかは痺
れる余韻にしばらく声もなく震える。もはや、総崩れ。両腕をシーツの上に投げ出したうるかは無防備になった乳房をこねら
れる。時には乱暴に、時には付け根をくすぐるように。甘美な刺激は下腹部からの、乱数的な、深さも角度もまちまちが刺
激の連打と重なって、万華鏡的な快美をうるかにもたらす。
「やめ、やめてえ、だから、いまは、いまだけはおっぱい……触らないで…………ひゃううう」
 健気にも再び手を伸ばし胸を覆ううるかだが、
「あっ」
 再び潜り込まれ、抓られ「~~~ッ!?」と瞳孔見開き、腕緩む。日焼け痕も艶かしい乳房はプルンとまろび出た瞬間、羊
肉に群がる餓虎もかくやと勢いづく唯我に掴まれ揉みくちゃだ。

17:
18/02/25 23:05:20.42 3XYtBtT6.net
「ば、ばかぁ!」
 涙ぐむ少女は耳たぶまでも真赤にしつつ、それでも残り少ない勝気さと羞恥心で懸命に胸を隠しなおそうとするが、後は
もうイタチごっこ、唯我の手管に反応しては曝け出す悪循環だ。
「お願いなのぉ、だから、あっ、おっぱい、後でなら好きにしていいからあ、今は、今は、だめ、だめなのぉ……」
 童女のように泣きじゃくり首を振るうるかであるが、閨閤における哀訴など焚き火の前の薪でしかない。相手に快美ありと
知った唯我、薄紅色の乳首をジョイスティックでも微調整するが如くゆるゆると根元から時計回りに回転させる。すっかり
尖りきった”しこり”はコリコリと廻る。
(やだっ、強いのがくるのとばかり思ってたのに、ソフトなんが来て……)
 目を閉じたうるかはぴくぴく震えながら刺激を甘受する。
(ヤバい武元……。すごくエロい)
 Sっ気こそあるが、根は純情な唯我である。乳首を摘まれるだけで面白いように抵抗をやめ涙目になる少女にひたすら
ドキドキする。うるかへの英語指導が決まった時のプールのようなフハハ感で「逆らえば今よりもっと強い刺激が来んだよ、
諦めて今のままを受け入れろ」と厳しく宣告したくもあるが、あまり強くいじめすぎると性行為に対する恐怖が芽生えるかも
知れないと理性で辛うじて抑える。
 しかしやることは変わらない。変えようがない。うるかが儚い抵抗を試みるたび乳首を刺激し無力化するのはどうしても
やめられない。可憐に悶えて、よだれすら垂らし、艶っぽい薄目で涙ぐみながら中止を希(こいねが)う少女が可愛くて、だか
らどうしてもやってしまう。
「ばかぁ、成幸の……ばかぁ」
 興奮と運動でうるかはすっかり汗まみれだ。水分が体表に移ったぶん、口中の湿気はずいぶん下がったらしい。開いた
口の中で涎が何本もの粘っこい柱になっている。薄い紫の瞳は充血し、鼻梁周りはぐしゃぐしゃだ。涙どころか鼻水すら
混じっているかも知れない。そんな形相で唯我の乳房愛撫を咎めながらも、反応自体はますます可愛く、淫らになり、しか
も腰すら心持ちうねらせ始めているのが……少年にはたまらない。
「やっ、やあああんん」
 うるかはいやいやと首を振る。
 繋がったまま上体を前へと畳んだ唯我が、勃(お)こりっ放しの可愛い突起を口に含んだのだ。ぴちゃぴちゃという音は
勿論うるかに聞かせるためで、聴覚からのいやらしい情報は目論見どおり官能の炎をひときわ熱い蒼とする。
(吸われてる……吸われちゃってる……)
 ヒルのように真空を作る唇の感触は指とはまた違うものだ。そのくせ唯我はもう片方の手で乳首をいじる。一辺倒な力任せ
ならまだ怒りを以って拒めたが、うるかが程よく感じられる力加減でまさぐってくるから逆に彼女は困るのだ。
「いや、いやあ、ちくび、気持ちいい、気持ちいい、よぉ……」
「触っちゃ駄目なんじゃなかったのか?」
 嘲るようなセリフは唯我自身、言ってから(しまったもうちょっと後にすべきだったか)と後悔したが、しかし効いた。
「だってぇ、成幸がぁ、成幸がぁ、急にあたしのツボ掴んできてるから……気持ちよくて……怖いのに……気持ち、よくてぇ」
 ぐずりながら、しかも顎に拳を当てながらする白状の破壊力は、高い。少年の獣性、いよいよ制動の効かぬ領域へ。
「んんっ!?」
 唯我にキスされたうるかはギョっとしたがすぐさまうっとりと目を蕩かせる。舌が絡み合った。ねっとりと、絡み合った。正常
位で組み伏せられている少女はいつしか少年の首の後ろへと褐色の細腕を回した。
「んっ、んっ、ん……ぷは、あっ、ああン」
 唇をついばまれながら乳房をいじられ、うるかの頭はもう日焼け跡より真っ白だ。覆いかぶさった唯我はもう獣である。
はあはあと息を荒げながら前後に動く。いよいよ露骨に大きくなる「くちゅくちゅ」という水音が、うるかの芯をいっそう炬(も)
やす。
「だめ、えっちな気分が、えっちな気分が、すごくて……あっあっあっ、速い、だめっ、乳首、2つともぎゅうってするの駄目、
あっ、駄目ッ! だめええええええええええええええ!!」
 尖りきった木苺からの感悦に大きく高啼きした少女は霞んだ目で背中を弓逸らし、そのままどたりとシーツに沈む。手は
とっくに唯我の首筋から離れている。イッた訳ではないが、未成熟な感応はひとまず現状の限界を超えた。
「っっー! はーっ! はーーっ!」
 全力疾走した直後のような紅潮に顔色の支配権を明け渡しぐったりとする少女だが
「悪い、武元」
「え……」
 細い脇腹が掴まれた。

18:
18/02/25 23:06:03.77 3XYtBtT6.net
 身を起こす少年。伏せ目で軽く身を持ち上げたうるかはどこかで始まりの終わりを直感し、直感は確かに的中した。
 腰が浮いた。浮かされた。腹部の側面ごと持ち上げられた。
「あっ」、成幸に向かってずるっと引かれた褐色の体が勁(つよ)い突き込みで押し返される。突き込みは一度で終わらない。
脇腹を持ち上げたことで結合部を自分本位な高度に変更した唯我は「やりやすい」とばかりうるかを揺さぶる。乳首からの刺激
で軽いオーガズムを感じたばかりの少女はこの乱行に文句を言っていい立場だが、
「お、男の子だもね、いい、動いて、いっぱい動いて……! 最後まで……行って……」
 虚脱した笑みでうわ言のように寧ろ促す。突き込みはますます激しくなった。いつしかうるかの体は、シーツに皺を寄せつつ
唯我とは反対方向の向きへ確実に確実に、押しやられつつある。
「武元……っ! だ、出すぞ、いいな、中だけど……いいな」
「う、うん、あたし女の子の日いっぺんも来たことないから、大丈夫、だから……」

19:
18/02/25 23:06:23.89 3XYtBtT6.net
 ざらっとした息を盛大に吐きながら唯我はなるたけ深く突き入れ突き入れる。掴まれた脇場を支点に軽く仰け反るうるか。
仰向けだったころと違い、今は両肩と臀部のみが支え、いわば軽いブリッジの体勢だ。上体やや浮き気味のため首もまた
ベッドに向かってかくりと曲がる。突きこみを受けるたび仰け反った頭が揺れ艶やかな髪が乱舞した。
 それは時間にすれば5~6秒だった。後は理性を放出の受容によって消し飛ばされるのみだったうるかが、何を思ったか、
首をベッドと逆方向、つまりは上へ曲げ、両肘も支えに軽く上体を起こすや、少年を、見た。
「最後は、[ずがっ] 成幸の、成幸の、[ずがずがっ] 顔見ながらが…… [ずがが] いい、成幸が……出すとこ……[ががん!] 
出すときの……カオが……みたいの……」
 恐ろしく艶っぽいセリフに唯我は(俺だってお前の、初めて出される時のカオを……)と獣性丸出しの心境になりかけたが、
しかし待て、何かがおかしいと気付く。
(ずがずが鳴ってんの、ありゃなんだ?)
 射精衝動すら緩める、謎で、もっともな疑問はうるかを、厳密にはうるかが居る彼女の部屋の構造を把握した瞬間解けた。
 彼女は、突かれる度、後頭部を、ぶつけていた。
 ぶつける? 何に?
 ……。

20:
18/02/25 23:07:44.62 3XYtBtT6.net
 彼女のベッドは窓際にある。枕のある方を窓側につけている。
 ベッドからすぐ窓という訳ではなく、窓までは目覚まし時計がおける程度の「幅」がある。
 ずがずがの元凶はその幅とベッドの柵が作る「段差」らしい。
 突き入れでいつしか少女の体はそちらに寄っており、唯我の顔を見るべく上体を起こしたがため前後運動の”あおり”を
受ける頭が後ろの段差に「ずがずが」ぶつかって、いたのだ。柵に衝突するという生易しいものではない、段差の角張った
部分に少年の律動の激しさそのままに後頭部をぶつけている。当該事象、長引けば命さえ危ぶまれるであろう。
 少年、取り敢えず止まり、言う。
「……武元、今のセリフはすっげぇグっときたけど、でもお前、頭、頑張って持ち上げたせいで打ちまくってるぞ」
「え!? あ゛ーーーーーー!!!」
 やっと気付いたらしい。後ろを見たうるかは凄まじい声を上げた。そしてさっきの艶っぽい、少女渾身のおねだりがどれ
ほどの滑稽に彩られていたか気付くやトマトジュースを吸ったスポイトの如く下から上へ朱を上らせる。
(もーやだー!! なんで最後の最後で変な失敗すんのあたしーー!)
 頭を抱える。双眸が深刻な蒼白ぶりに塗りつぶされて見えなくなるほどだった。舟形の小さな汗が冗談のような早回しでひっ
きりなしに沸いてきくるほどの焦燥と、自責があった。

21:
18/02/25 23:08:31.27 3XYtBtT6.net
(文乃っちとかリズりんならああいうおねだり、スゴい破壊力で言えたのに何やってんのあたし! 頭ずがずがって何!? 
なんなの!? 最後の最後でグダグダ、グダグダだよぉ!!)
 一般人がよくやらかすかといえば、ちょっと妖しい。「外れた」行為だから、うるかはほろっと涙を讃える。
(うう。やっぱあたし、こーいうの向いてないんかなあ!! 成幸ぜったい萎えたよね!? 初めてでもう少しって時に女の
方が頭打ちつけまくってるとかそんなん誰だって萎えるよね!??! ほほほ、ほら実際成幸の、おち、だ、大事なとこ、
しおれ始m─…」
 怒張は、硬度を増した。(えっ!!!) 予想外の感触に漆黒の人魚姫は思わず瞳を戯画的な三本線にした。

22:
18/02/25 23:09:26.22 3XYtBtT6.net
「ちょっ、え! なんで、なんでむしろコーフンしてんの!? う、嬉しいけど、さっきのあたしのどこにそんな要素が!?」
 少年は答えない。ひどく切羽詰ったギラギラした光を細い瞳に宿している。明らかに欲情に染まっているが、うるかは何故
かれがそうなるに到ったか分からない。(ずがずがの変っぷりにとうとう怒った!?)と結果からいえば見当違いなことを思っ
ている間にも事態は急速な進行を見せる。少年は少女の細い肢体を山賊のような手つきで自分めがけ引き寄せた。
「きゃっ!?」 成幸らしからぬ荒っぽい所業にびっくりするうるかは更に見る。彼の手が轟然と迫ってくるのを。また乳房で
もいじめられるのかと首を竦めたが、どういう訳か手はうるかの頭の後ろに着弾。何をしているのか、衣擦れに似た、しかし
衣服の着脱にしてはいささか冷たい音が人魚姫の視界及ばぬ後頭部やや斜め下で運行されやがて止んだ。
(え? え? なに、なにをして)るのと振り返る余裕はなかった。「武元」、腕を少女の脇腹に戻した唯我が腰を引き、そして
ここまでで最大の力を持って突き込んだ。
(いぐっ!!?)
 破瓜並みの衝撃に歯を食い縛って目を見開くうるか。少年の灼熱の鉄塊は交合中最大の深度に達している。
「あ、あああ…………? ぉ、おく? いちばん、おく、おく、にぃ…………?」
 脇腹を持ち上げたせいで角度をつけやすくなったのは確かにある。だがもっと決定的なのは少年の攻勢の変化だった。
さきほど少女の機微に合わせ緩急をつけていた教育係の手管は最早ない。思うさま引き、ただただ力尽くで突き入れる獰
猛な少年だけがそこに居た。面頬やや暗く狷介(けんかい)の気配さえある。和合を棄てているのに宿業的な何事かを耐え
んと覚悟している顔つきは暗殺者によくある。要するに、危険な一刺しを狙っているのがバレバレだったが、(ダークな成幸
も素敵だよぉ)と頬染めるうるかは逃げるなど全く考えない。或いは、剣呑の裏に潜む一種の限界を、フィジカルの権威らし
く直感したのか。
 とかくこの当時の唯我はフクザツであった。「頭ずがずが」によっていかなる心気的変転をきたしたのか、唯我はただただ
鞴(ふいご)のような息を漏らし褐色の肉体をいじめ抜く。
「あっ、だめ、おく、おくばっか、集中するの、だめっ、ヘンなの、気持ちが、えっちになってくるから、だめ、だめええ」
 懇願はやはり無視される。少年の淫棒は最奥の同じ箇所だけひたすら打つ。
 びくびくと震えるうるかの体もまた新たな感覚に開眼しつつあるがしかしまだ精神的で形而上な興奮が勝る。長らく懸想
してきた相手の亀頭が、硬く張り詰めた尿道海綿体が、少女当人ですら触れたことのない深奥を舐(ねぶ)るように叩く
のだ。「犯され抜いている」。ぞっとすべき実感なのに、それほどの大事を許しきる、純潔供出の本尊ともいえる現象を確か
に行えているという想いが狂おしいまでの喜びと多幸を呼び起こす。
「気持ちいい、おく、おくに、成幸が当たってる、すごくすごく恥ずかしいのに、気持ちいい、気持ちいいよぉ」
 耐えられない。耐えられる訳がない。甘え泣くうるかのどこかで慎ましさのヒューズが飛んだ。
「おっぱい、おっぱいもいじめてぇ……。あっ、あっ!!」
 速攻の承諾に少女は嬉しげな嬌声を上げる。唯我の右手がふっくらした膨らみを鷲づかみした。強烈な刺激に涙の喜悦
を浮かべるうるかは気付かない。少年の左手が脇腹から背に回り、いまの姿勢を単騎孤軍ささえているのを。
 ヒートアップする腰使い。「ゆるして、これ以上、これ以上、感じちゃったら、ひかれるから、同じとこもう、あっ、すご、あ!」
がくがくと揺さぶられる少女に唯一残っている理性は唯我のカオを見るただ一点である。どれほど善(よ)がっても大好きな
少年の顔からは目を離さない。或いは自分の表情(カオ)を見せるのが義務だとでも思っているのか。確かなのは先ほど
なら打ち付けていた筈の頭が先ほど以上の激しい活動の中で一度たりとも「ずがずが」を奏でていないという……事実。
なぜ起こらなくなったかうるかにはわからない。彼女はただ己の現実を……叫ぶ。
「もうだめ、もうホント、限界、限界、だからっ……! ちょっとだけ……休ませてぇ……!」
 泣きじゃくってシーツすら握るほど身悶える美少女の痴態に、応える代わり少年は、正に渾身の力で突き込んだ。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!」

23:
18/02/25 23:10:07.85 3XYtBtT6.net
 滑走路に墜落してきた飛行機をうるかは脳裏のどこかで見た。舗装を削り飛ばすような恐るべき驀進が初々しい粘膜の
洞(ほら)を「ぬるんっ」と、猛然と、擦過した。子宮口で爆ぜた衝撃はうるかの意識を一瞬だが桃源郷の彼方へ追放し、
「あ!! あああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
 無意識に凄まじい大声を上げさせた。同時に少年の槍は全てが埋没した。したが
「武元っ」
「あ、がッ……!?」                                 
 ぎちぎちとした圧迫感が既に最奥と密着していた尖端から迸り、うるかはたまぎるように叫ぶ。大きな瞳の中で混沌が渦
を巻いた。構造上、極めて入れづらいのが子壺である。初体験でしかも勢い任せの唯我もまた挿入までは果たせない。だが
独特の刺激だけはもたらした。腰から前進し続ける力は決して捻じ込めない肉の壁を前にとうとう逸れた。先走りをたっぷり
浸した肉の筆が凄まじい筆圧で子壺を撫でて行き過ぎた。「っ、ーーっ!」 形容できぬ感覚に口をぱくぱくとする少女の甘美
なる地獄はまだ続く。
「武元!!」
 更に数度。凄まじいグラインドを唯我はかけた。成す術なく揺すられる細身のうるかの、揺れるふくらみの雀舌が如き柔ら
かき左の芽をきゅうきゅうと抓っていたのも束の間、激しく唇を重ねる。
(キス、この状況で、キス……!)
 気持ちよさに目が蕩けるうるかは侵入(はい)りこんでくる舌を迎え入れ、自分のそれを絡める。顔の角度を微妙に変えな
がら啄ばみあう情熱的なキスを続けていると。
 とろっ
 と口の中に見知らぬ生暖かいものが流れ込んできた。
(唾液!? 成幸の!?)
 つばという、キスの残り香程度にしか思っていなかった体液なのに、
(なんつーことしてんの成幸! つばって、つばって……!)
 「ぼふっ」。つむじから両耳から蒸気が漏れた。瞳が見開く。「んー! んー!!」。驚きを訴えもがく可愛らしさが……
最後の放出を、呼ぶ。
「そ、そろそろ……!」
 と切りつけるよう叫びつつ褐色の肢体を衝動的に抱き起こしそして抱きしめる。人魚姫、瞠目。
(ぎゅううって、ぎゅううって!!)
 或いは、最も効いた。夢見がちで恥ずかしがりなうるかは数々の性戯の果てに訪れた極めてロマンチックなハグに、
「ふ、ふあああああああああ!!」
 と甘ったるく啼きじゃくる。神経系において如何なる伝達経路が開拓されたのか。膣がきゅうっと収縮し肉棒を締め上げる。
「でッ、出る、出ちまう……!」
 迸る灼熱。尿道から砲弾の如く飛び出た「どろっ」が膣壁に掛かった瞬間、うるかは第ニ階梯的な巨大な快美を味わった。
「あぁッ! ああああああああああん!!」
 唯我を好きになってから今までに至る一連の出来事が走馬灯の如く脳髄を駆け巡り、それは第二波第三波と吹きつけられ
る精液によって万感の法悦へ締め括られる。
「なりゆき、凄い、まだ、出てる。まだいっぱい、出てるのぉ……。あっ、また、また……」
 陽快な顔を今だけはうっとりと蕩けさせ、ぴくぴく悶える少女の胸に少年は顔を埋め、そのまま一緒に前方へと倒れこむ。
運動は苦手なのだ。息が切れる。
「お前の中、すげえ気持ちいい……やべえ。出る、まだ出る」
 ぶるっと身震いする少年。割れ目から白い粘液がとぷりと溢れ出た。
 放出が収まったあと、2人は繋がったままどちらからともなく唇を重ねあった。穏やかだが幸福な時間だった。
 ややあって。
「で、なんでその……頭ずがずがの後…………急に、コーフン、したの……?」
 うるかは気まずげに聞いた。失敗の発掘というのもあるが、初体験直後だから唯我と目が合わせられない。少年も同じで
ある。なのに繋がったままであるのは奇妙だった。先ほど倒れこんだ姿勢のまま、肌を密着させ、睦言を交わしている。
 とまれ一体どうして先ほど唯我は突如として獣のような攻め口を見せたのか。本人はややまごつきながら、語る。
「か、可愛すぎたからだよ!」
「え、可愛、ええ!? 初体験のいよいよって時にベッドの柵とかで頭打ちまくってたんだよあたし、その、それのどこが……」
「だからだよ」。成幸の頬に血潮が上ると彼は急に乙女じみる。

24:
18/02/25 23:10:35.55 3XYtBtT6.net
「大事なこと告げてる時に、頭打ちまくってることに気付きもしないとか……可愛すぎだろ!」
(そーなん!? 男の子ってみんな同じこと考えるの!? それとも成幸だけが異じょ……特別!?)
「しおらしい癖にドジ踏んでるのが、お前らしすぎだろって、頭の件教えたあと急に思えてきて……お前にゃ悪いと思ってる
けど、たまらなくなってきて、だからあんな激しく動いちまったんだよ」
 それに。「それに?」。うるかは効き返す。
「頭打ちまくっても気付かなかったってことは、それだけ俺の顔に集中してたってことだろ。勉強始めたころは何かとすぐ
遊びに行きたがってたお前が、ムラっ気のあるお前が、大好きな水泳と同じぐらい俺に……集中してくれてたってことだろ。
そこが俺は嬉しくて…………だからお前のこと、ますます可愛いって………………」
 ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、細面へたっぷり羞恥を乗せて瞳を泳がせる唯我に偽りないことをうるかは察したが、
だからといって「そうでしょ、可愛いでしょ」と言える厚かましさは良い意味で、ない。褒められようが恥部は恥部だ、主眼が
そこにある限り、簡単には喜べぬのが……乙女、なのだ。
「成幸に集中するって、そそ、そんなの、当たり前でしょ……」
 おずおずと先鞭をつけた反論に唯我が微かに首を傾げたのも当然であろう。「当たり前」? 何がどう、当たり前なのか。
「す! 好きな人のカオ見たいって思うのは当然じゃん……。好きな人があたしの中に初めて、その、出して……くれる時に、
表情(カオ)が見れなかったら……後で絶対…………後悔、する、から、ずっと足踏みしてた時みたく、「また」、だから、だか
ら……」
 放出間近だった頃の唯我を、凝視した。
 水泳選手にとって「時間」は大事だ。1秒の油断が取り返しのつかないことを招く。唯我の「初出」も同じだ。うるかは目を
離せなかった。決定的瞬間は、短い。とある星好きの少女であれば千年に一度、三秒しか夜空すべれぬ流星を以ってうる
かの心を語るだろう。しかも先ほど『集中していた』人魚姫は突き入れによって惑乱状態にあった。トバされそうな理性を保
ち唯我を見る手段は結局すべての神経を想い人の顔に注ぎこむ他しかなかった。
 と、いう機微を口に上らせたうるかは一瞬、(これはこれで相当えっちだよう。出してる時のカオが見たかったとか、今度
こそヒかれても仕方ないよう)といつもの調子で強張りそうになったが、もはや状況は土壇場、ヤケクソになって叫ぶ。
「あたしはっ! あたしは! 中学時代からずっと成幸のこと好きだったの!! 何年もじもじしてたと思うの!!! いったい
何年気付いてもらえなかったと思ってるの! ずっとずっと好きで、でも勇気がなくて告れなくて! キスとかの小さなウワサ
聞くだけで終わった失恋したってぐすぐす泣いて、褒められること妄想する度そうじゃない現実に泣かされて、ちょっと報われ
るだけでも泣きを見て、成幸への気持ちがぐっしゃぐっしゃになった夜は自分でもヒくほど泣きまくって、ああもう泣いてばっか
じゃんあたし!! でもそんなあたしでもどうにか勇気出せた結果、付き合えるようになって、やっと! やっと結ばれたんだ
よ!! だだ、だったら、そーいうとき最後の成幸のカオが見たいって思うのは当然で……! 他のことなんて考えられなく
て……! えっちなことが好きなんじゃなくて、成幸が好きなだけで…………!」
 唯我の表情はさまざまだ。突然の叫びにまず驚き、次に長らく気持ちに気付けなかった鈍感さを詫びるような顔つきにな
り、いつも明るく元気に振舞っていた少女が影でどれほど泣いていたかにまた驚き、愛の深さに、嬉しさと、申し訳なさを
浮かべ、”であるからこそ”、一見滑稽でしかなかった『頭ずがずが』が一体どれほどの意味を有していたか……知る。
 うるかは。
「うー」
 言い尽くしてなお均衡を取り戻せぬらしい。やや恨めしさに瞳尖らせつつも淳良な赤面で唸る。そんな少女に、少年は。
「だったらやっぱり頭打ちつけまくってたのは変なことじゃねえよ。お前の、一番いい部分が集まった、凄えことだよ」
 笑って声をかける。心から感服して心から褒めるための笑顔で、少女の頭をぽふぽふ撫でる。
「卑怯だよ、成幸は」
 うるかはちょっと拗ねたような表情をした。
(とてもたくさん気持ちよくした後に、優しく笑ってくるなんて…………ズルいよ。いっそ頭ずがずがを馬鹿にしてくれたら……
こんな、こんな…………切ない気持ちになんか、ならなかったのに…………)

25:
18/02/25 23:10:59.48 3XYtBtT6.net
 やっとうるかはベッドの柵を見れた。先ほど唯我が何かをしていたその場所に立て掛けられていたのは「枕」である。
(クッション代わりにしてくれたんだ……。あたしが頭ずがずがしないよう、敷いて、くれたんだ)
 そうしてくれたときの唯我はうるかの中で果てる寸前だった。そんな初体験の限界ほぼギリギリ、催迫の状況で楽で甘美な
放出よりうるかの頭の保護を……選んだ。
(あたしは成幸のこと見るだけで精一杯だったのに……気遣うことまで出来なかったのに……成幸はあたしのこと、守ろうと
してくれてた……)
 夢見がちな少女はやや大袈裟な修辞を枕に贈ったが、そうせざるを得ないほど嬉しくて、幸せだった。少年は少女を貪って
いるようで気遣ってもいたのだ。相手をただ性欲解消用の粘膜装置としか見ていないのであれば到底できぬ芸当だ。
「ラ、ラストスパートの時あたしの体を成幸の体めがけて引っ張ったのも……ブツけないように……だよね……?」
 熱く潤んだ上目遣いでうるかは問う。彼女はいま、捧げたもの以上の物を得ていた。
「まあそりゃ、な。ケガしないようにってのもあるけど」
 少年は照れくさいらしく、鼻をかいた。
「頭1回ブツけるたび脳細胞が数百は死ぬっていうからな。せっかく覚えた英単語がああいう形で消えんの、お前だって嫌だろ?」
「そっち!? あんな時まで勉強のこと考えてたの!?」
 あんな時だからこそだよ、照れ隠しか、唯我はやや人相悪めで目を細めそして逸らした。
「だってスッゲェ気持ちよかったし……。複雑な公式とか難しい英訳とか頭に浮かべでもしなきゃ出すの耐えられんぐらい、そ
の……お前の、なk」
「いい! 死ぬほど恥ずかしいから言わないで頼むから!!」
 うるかは両目不等号でうわーんと泣いて叩くマネ。(無粋だったかなあ)とちょっと困り顔しながらも唯我は教育係らしい
厳しめの顔をした。」
「頭ずがずが打ってるのはすごい可愛かったけど、いくら可愛くたって受験に影響が及びそうなこと、癖にすんのはダメだ、
お互い自重な。ただでさえこーいうこと、してんだし……」
(まあそうだけど) うるかは嘆息した。これ、なのだ。これが初めて結ばれた後の会話なのだ。いったいどこの世界に「英単
語忘れるといけないからあのプレイ禁止な」と告げる男が居よう。うるかが空想してきた無数の唯我は誰も彼もが本人とは
乖離した王子のような顔つきで歯の浮くような事後のセリフを告げていた。「とっても良かったぜ、うるか」とか何とかキザった
らしく囁いていたのに……
(英単語かー)
 風船に書かれたうるかの簡略図のような腑抜けた表情でうるかはぼへーっとした。ぼへーっとするほどに想定外のセリフ
だった。艶っぽさがまるでない。そんな現実が馬鹿馬鹿しくて、うるかはくしゃっと微苦笑した。
「なーんか、いつもとあまり変わんないね」
 言い方しだいでは「退屈な情事だった」となりかねぬセリフだが、日によく焦(や)け、陽の匂いが漂う少女の底抜けにカラっ
とした物言いにかかっては最大の賛辞となる。
「まあ、な」
 唯我もまた同じ気持ちであることを確認したうるかは、(ホント……いつもと、同じだった)と安堵する。唯我は優しくて、英
単語を気にするほど教育係で、うるかは可愛く務めようとするたびどこかでドジ踏んで落ち込んで、まったくいつもと同じな
関係だけがそこにあった。
(いつだったかなー。『告白してダメだったら今の関係には戻れない』って思ったの)
 同質の不安は結局、付き合うようになってからも消えなかった。「フラれたら」「飽きられたら」とどこかで怖がっていて、だか
ら『結ばれる』ことにだって恐怖はあった。男友達と女友達だからこそ保たれていた居心地のいい関係が、彼氏と彼女になって
からもお互いのウブさで保護されていた親愛が、行為によって、男と女の、生々しくてささくれやすい間柄に変質するのでは
ないか……とうるかは心のどこかで怯えていた。互いのどちらかの醜い部分が性の獰猛さの中で露になり、それをして愛が
『泡』にされるのではないかと人魚姫はずっとずっと怖がっていた。

26:
18/02/25 23:12:20.68 3XYtBtT6.net
(なのに実際は……頭ずがずがで…………英単語で…………)
 2人は、いい意味で変わっていない。うるかはそれが嬉しかった。
(あー、力抜けたわー。いい意味で力抜けたわー)
 心の中のうるかはユルっとした瞑目で湯気を吐く。見栄を張らなくて良くなったという思いが生来の明るさを取り戻す。

(ホントは最後のとき名字じゃなくて名前呼んでほしかったけど、でもそこまで細かい要求したらこの女重いって思われ
そうで出来ないよぅ)
”うるか”呼びをして欲しいのに踏み込めない奥ゆかしさに揺れながらも(でも幸せ……)と半ば虚脱しながらもネコ口で
目を細める少女。少年の方は、

27:
18/02/25 23:12:32.86 3XYtBtT6.net
(ああくそ、いつもの調子で名字呼んじまったのはマイナスじゃねえのかコレ。でも仕方ねえだろ中1から高3までずっと
武元呼びだったんだぞ、プールの後でも気ぃ抜いたらこっちだったし、脳内でも武元は『武元』だったし)
 まさに風聞だが、とある風の都で高名な赤い刑事も妻を婚前の役職名で呼んでいるらしい。結ばれる前の二人称には
そういう容易には変更を許さぬ呪いめいた強制力があるらしい。

 長々とこの話を述べた。進行度はむろん、文章量相応である。走れメロスで言うならメロスが激怒したあたりである。

28:
18/02/25 23:13:19.14 3XYtBtT6.net
 ……。
 …………。
 ………………。
「そーいやさ、挿れ……る前に成幸あたしが初めてだって分かったのはどーしt…………って!」
 褐色の、ツネられても柔らかく伸びるもちっとした頬が戸惑いに波打つ。
「なんでまたおっきくするんのよ! ばか! 成幸のえっち! えっちなとこまでいつも通りって信じられない!!」
 少女が突然叫んだのは、いまだ少年を受け入れている秘所の中で膨張の気配がしたからだ。射精によって幾分やわら
かくなっていた唯我の分身が突如として勢力を取り戻した。
「すまん。嬉しそうなお前が可愛くて、つい」
「うーー。可愛いっていいさえすれば余韻ブチ壊していいって訳じゃないんだかんね! いや別に成幸がゼンブ悪いって訳
じゃなくて、なんだか名残惜しくて入れっぱなしにしてたあたしも悪くてそこはゴメンなんだけれども……あああ何いってんだ
あたし、入れっぱなしとか言ったの忘れて!!」
 でも余韻……女の子らしい機微で涙ぐむうるかに、唯我は「……悪ぃ。一回離れてみるか? お前だって色々、一息つき
たいだろうし……」と申し出る。
「そ、それもヤダ」
「どうしろと?」
 2人の背後をアカトンボが通り過ぎた。ような気がした。古いアニメーション演出のような奇妙な「間(ま)」があった。

29:
18/02/25 23:13:46.72 3XYtBtT6.net
 仰向けのまま想い人を受け入れているうるかは結合部の方へとしばし視線を落としていたが、顔を上げ、問うた。
「その……成幸はまだ……シたいの……? さっきので、くち……とかで出した時と合わせて6回、もう6回も出してんじゃん。
な、なのに、まさかまだ……足りない、とか……言うの? 体力とか、大丈夫……なん?」
「ええと」。質問攻めを捌けぬようでは教育係は務まらない。唯我はうるかの疑問を1つ1つ、ほどき始めた。
「まず最初の質問だが、悪い、お前さえいいなら……したい」
 男ってのはそういうモンだし、何よりお前が可愛いから、欲望が、欲望が…………と唯我、「くっ」と双眸から涙流しコブシ
さえ固める。自分の情けない浅ましさを悔いているが、かといって諦めきれないという葛藤は、巨大だった。女性たるうるか
にも充分伝わるほどに巨(おお)きかった。
「ま、まー、あたしの許可を待ってる分、マシだから? 別にイイけど」
『勝気な女友達』の顔つきで若干ツンツンと片目瞑って指立てるうるか。恩着せがましく言うのは照れ隠しであろう。本当は
唯我との営みを沢山したい。どれほど彼が無許可で動いたとしても受け入れて悦(よろこ)べる。だがただただ「させている」
だけではフシダラな女と思われそうで恥ずかしいから、「許可を待ってる分、マシだから」などと勿体つけた言い方で、いかに
も特別に許可していると、そう思わせたいのだ、うるかは。
「でも7回以上いけそうってどうなん……」
 少女は頼もしさ半分呆れ半分で少年を見た。「スマン」。縮こまった唯我は返事すら震えている。先ほどの獰猛な虎はもう
いない。
「俺あんま発散できないんだよ……!」 泣きそうな声で教育係は両拳を固め力説する。「ウチいつも葉月いるし和樹いるし!
いや見られても今は何やってるか理解できないだろうけどさあ! それでも恥ずかしいし、何より教育に悪いだろ絶対! い
ない時もあるけど下手にゴミ箱使うと水希に感づかれそうだし! かといってトイレに捨てんならティッシュはダメだし! なのに
トイレットペーパーはボロボロ崩れるし!」
「……妹ちゃん、年ごろだもんね。てか何その最後の生活感………………」
「だいたい俺はエロいハプニングに見舞われても見ないよう見ないよう気を使ってんだぞ! 生殺し! そりゃ本当は見たい
さ! 男子高校生なんだから、見たいさ! でも見たらみんなに悪いし、いろいろ、我慢を、我慢を……」
 最後の方はヒヨコのような表情で訴える唯我である。
(リズりんのおっぱいとかチラ見してるもんね……。本当これだから男ってヤツは)
 それでも見ないようにしている以上、「使う」ことはもっとないだろうとうるかは思う。信じてる。
(あ、あたしでだったら、その、別に、いい、けど……)
 とにかく唯我は色々「溜まって」いるらしい。絶倫かどうかについてはこの時点ではまだ不明だが、貯蔵量じたいは相当
らしい。
(相当……)。うるかはちょっとドキドキした。疼くような期待は否めない。だいたい子沢山の家庭に生まれた唯我なのだ、
遺伝的に繁殖の素養がある。好色、といっていい。
「最後の体力だが」。眼鏡少年はトレードマークをスチャリと触り、得意気に。「多分俺のは……お前より先に、尽きる!」
「……うんまあ、そう言うだろうと思ってた。成幸、神社の階段昇るだけでバテてたもんねえ。あたし肩貸したし」
 そんなガリ勉少年と、そんな水泳部のエースではどちらに軍配が上がるやらだ。
(え、ちょっと待って! じゃあ、あたしがずっと成幸を攻め続けるってことも可能だったりするん……!?)
 騎乗位ぐらいうるかだって知っている。『予習』したからだ。スマホがあって知りえぬ方がおかしい。
 想像力豊かな人魚姫の脳裏に、上位の自分が淫らな海棲種の如く唯我を搾取する甘美な曼荼羅が浮かぶ。彼女は悶え
る想い人の顔に(はうう手も足も出ない成幸も可愛いよぅ)とか何とかときめいたが、
(いやいやいやムリムリ無理だから! あんなえっちなカッコ成幸にするとか恥ずかしすぎて死んじゃうから!)
 根が貞淑なので両目不等号でふるふるする。活発な癖にゆらい攻勢にはとんと不向きな奇妙な”たち”である。
(特に、成幸のカオに跨って……舐めて、もらうとか……)
 ぼっ。泣きそうなほど目を見開いた少女は急いで話を変える。
「ととっ、ともかく、成幸の体力が尽きたら終わりってことでイイのかなあ!?」
「お、おう……。でもお前が止まらないっていうならその時は、その、時で……」

30:
18/02/25 23:14:16.11 3XYtBtT6.net
 奇妙といえばこの2人の関係で、繋がったままシーツの上で顔面突き合わせている癖に「手さえ繋げぬカップル」のような
初々しさを漂わせている。お互いあどけない赤面をぷいと背けつつも(限界超えてなお向こうが求めてきたら……)などと、
不安なのか期待なのかよく分からぬ混沌とした思惑をも秘めている。
 だが混沌程度が薄めるにはうるかの懸想は長すぎた。再動へ続く火縄を燃やしたのは慕情である。彼女は自分の余韻ガ
ン無視で「おっきくなった」ほど溜め込んでいる少年の不遇ぶりを改めて思いホロリときた。苦労続きの人生なのだ、彼は。
(ならこーゆうことで位いいことあったって……いいじゃん。あたしで……初めての女の子で、気持ちよくなれるようしてあげ
なきゃ……)
 この男のため身を削ってやろうと強く決めたうるかだから、促す。
「じゃ、じゃあ、また……動きなよ」
「お、おう」
 身を起こし、次なる攻勢に移りかけた唯我。
 悲劇は、そのとき起きた。
 すっぽ抜けたのである。唯我の分身が。ねっとりとした愛液を引きながらうるかの体外へと脱落した。
(なっ!)
(あー)
 抜ける、というのは熟練者でもちょっと加減を誤るだけでやらかしてしまうイージーミスだ。いわんや初めての唯我である。
滑落はむしろ当然といえた。
(待て、だが俺はだからこそ気をつけていた! どうすれば抜けずに続けられるか色々調べて実践してきた! 現にさっき
までは大丈夫だったのにどうして今に限って……待て!)
 唯我は、気付いた。抜け落ちる直前の”そこ”の感触を反復して気付いた。恐ろしく、ぬめっていたのだ。
(精液! そうか出したせいで滑りやすく……! だからさっきまで抜け落ちなかった動きでも……抜けた! くそ、摩擦係数
を忘れるとかイージーミスにも程があるぞ!)
 唯我はえも言われぬ戯画的な表情でひたすらに、固まった。
 いざ再動というときすっぽ抜けたのは男として恥ずべきことだ。
(ととと、とにかく立て直すぞ、落ち着け、一度は入ってるんだ、こーいうとき焦るとドツボだからな、落ち着け俺)
 初体験で「滑落」という失態を演じた場合かえってくる反応は概ね2つである。
 叱責の嘲笑か、或いは……慰め。
 後者は優しく思えるが、「初めてだから仕方ないよ」的な言い草は、謝りながら斬りつけるような物なのだ。唯我と知り合っ
て間もない頃の文乃がやっていたような言動といえば概ね分かるだろう。自尊心の高い者には”こたえる”。男性としての晴
れ舞台をしくった挙句、組み伏せるべき女性にすら同情され─潜在的に─低く見られるのがどれほど辛いか。
 悪いことに唯我は「秀才」、耐えられない。
(武元はどっちだ、どっちで攻撃を……!? いや、気付かれる前にさっきの手順でもう一度やった方が安全……)
「あはは、抜けちゃったねー」
 焦っていた唯我は見た。暖かな笑みを。うるかは笑っていたのだ。正に総てを海容する南国の大海原のようなゆったりとし
た海闊さを浮かべてニッコリと笑っていた。母性が、溢れている。
「…………っ」
 それは有り得ない対応だった。軽く汗をまぶしながら、うるかはただ楽しそうに笑っている。男性の失態がすぐそこにあるのに、
何をするわけでもなくヒマワリのような満面の笑みだけを保持している。
 理屈では、ない。唯我は焦りやパニックがうるかの笑顔によって消えていくのを実感した。
「? ??」
 驚いたように自分を見てくる唯我がどれほど感動しているのか少女はよく分かってないらしい。口元を綻ばせたまま可愛らし
く小首をかしげていたが、やがて
(……そっか)と何事か察すると、わざとらしく声をあげた。
「もー。成幸ってば意外にニクショクだなあ! ほとんど初めてのあたしにあんなん要求するなんて!」
(あんなん……?)
 唯我は当惑した。うるかが突然わけのわからぬことを言うのはいつものことだが─唯我視点ではそうだ。文乃看病の
時の「デザート」など─いつものことだが、今回はちょっとだけ様子が違う。うるかは口元こそ笑っているが、両目が見え
ない。前髪の影に覆われている。さほど長くない珊瑚色のそれが双眸を隠すのは汗で心持ちバラけているせいでもあった
が、或いはもっと大きな『陰(かげ)』が脳髄のどこかから沸いてきて感情を蔵匿しているよう唯我には思われた。

31:
18/02/25 23:15:03.61 3XYtBtT6.net
 とにかく笑った口元しか見えないうるかは唯我の両肩に手を当てた。「あっ」、脱落や不可解のせいで無防備だった少年
は正に「あっ」と言う間に座った姿勢へさせられた。それだけならまだ彼は再挿入リトライなる失地回復の戦略を冷然と描け
ていただろうが、現実はそれを許さない。
「あむっ。あむっ……」
 うるかの頭は唯我の股座にあった。小さな頭が熱心に上下している。くぐもった吐息に混じって湿った音が響く。少年の肉
棒は少女の口中にあった。優れた、フィジカル。うるかは唯我を座らせるや否や、電撃の速度で口唇愛撫を始めていた。
(おおおお掃除ぃーーーー!?! 初めてのあと速攻でこれってどんだけサービスいいんすか武元さん!?)
 と評されるうるかであったが、流石に恥ずかしいのだろう、褐色の目元が明らかに赤らんでいる。しかし恥ずかしがりながら
も少女は、自らの破瓜の血と愛液と、それから唯我の先走り液や精液でベトベトの肉棒を口の中で健気にも清める。やや
あって喉が鳴る。(は、初めての血を……) 飲んだ、と知ったとき唯我はひどい背徳感を覚えたが、たまらなく愛おしくもなっ
た。

32:
18/02/25 23:15:21.52 3XYtBtT6.net
 少女は。
(うーーーっ! うーーーっ! 恥ずかしい、恥ずかしすぎるよぉ! 初夜でこれだよ!? これ、だよ!?? フツーもっと
慣れてからすることを初夜でするとか、するとか……ヒ、ヒかれないよね!? 男の人はこーいうの好きっていうけど、ああ
けど成幸堅物だからあまりフシダラだと喜ば……で、でも、成幸がすっぽ抜けちゃったことを隠すにはこれしか、これしか…
…!)
 少女は、『すっぽ抜け』が唯我の失敗であることを─…
 知っていた。
 だからこそ、である。「ニクショクだなあ!」といかにも勘違いしている風を装い、お掃除を始めたのだ。そう。自分が
『すっぽ抜けを失敗だとは知らず、あくまで、”成幸”が、お掃除をさせたいがため”わざと抜いた”……と、勘違いしている』
状態であると、偽ったのだ。

33:
18/02/25 23:15:36.90 3XYtBtT6.net
(ややこしいけど、こーでもしないとフォローできないのあたしは!! 成幸がミスったことそのまま指摘したら、笑うか、
慰めるかしかできなくて、どっちにしろ傷つけるよ絶対! 文乃っちならきっとステキな言葉で勇気づけられるし、リズりん
は……何かのムズカシー実験がちょっと失敗した程度の顔で再チャレンジしそうだけど、ほらあたしバカだから! そのま
んま指摘したら絶対さ、ロクな言葉かけてあげれそうにないから!)
 ふだん唯我が目にしている「突然暴走し、勘違いでおかしなことをいう」自分を利用したのだ。失敗にすら気付けず、妙な
受け取り方をしている「バカ」であると、振舞ったのだ。
(だって……)
 不慣れながら自分なりに一生懸命、首を上下して愛撫するうるかは思う。
(成幸はあたしの失敗を……頭ずがずがを笑わなかった。それどころか……あたしらしいって、……可愛い…………って、
言ってくれたんだよ…………?)
 そんな風に、いつだって、中学の頃から、ちゃんと自分を見続けてくれている少年の「すっぽ抜け」を、失敗を、うるかは。
(…………からかえる訳……ないじゃん)

34:
18/02/25 23:15:47.08 3XYtBtT6.net
 眦(まなじり)の涙、息苦しさばかりではない。愛おしさの赴くまま、口中脈打つ剛腹な質量に粘膜をねっとり擦りつける。
髪をかきあげる姿に少年は見とれた。うるかはそれにさえ気付かない。(成幸……) 子犬が大好きな飼い主に濡れた鼻を
押し付けるような衝動がある。(成幸) ひたむきに口から出し入れする。掃除すれどいまだ破瓜の血と精液と愛液と先走
りでドロドロの肉棒だ。一般的な少女であれば忌避して当然のそれをうるかは躊躇いなく含み、愛する。半ばまで口に入れ
た状態で啜り、或いは裏筋を力いっぱいの舌で舐めとり、考えつくまま奉仕する。
(これが……成幸の……)
 息をつくため口からすべて引き抜いた肉棒を見る。少年らしくまだ全体的に赤らんでいるそれは、年相応の緊張を湛えて
いる。仮性、なのであろう。今は剥け返って引き伸ばされている部分に透ける赤紫の血管はなかなかにおぞましいが……
(これが……さっきまであたしの中にあった…………、成幸の……)
 少女は頬を赤らめ、亀頭にちゅっちゅとキスをする。鼻をつく淫らな匂いもまた興奮を促す。たまらなくなったうるかは、一瞬
だけ戸惑いの吐息を漏らしたが、「もう耐えられない」とばかり双眸を潤ませ、
「はむん。んっ、んっ」

35:
18/02/25 23:16:18.67 3XYtBtT6.net
 白濁のぬめり残す亀頭を優しく咥え込む。ぷりっとした艶やかな唇で、未だ僅かに山頂へ唇越しにかぷかぷと噛み付いて
刺激をもたらす。口唇愛撫はきょう初めて実践したうるかであるが、唯我への愛情ゆえか、歯を(直接)立てぬという基本を
マスターしつつある。潮風が鼻腔を抜ける中、
「──」
 濡れた瞳が少年を瞻(み)あげる。可憐な口にグロテスクな肉棒を咥えたまま、しかし拾われたての子犬のような無垢無
心の眼差しを向けてくる少女はそれだけで出てしまいそうな光景だと唯我は呻く。そんな顔がますますうるかを掻き立てる。
(好き。好きなのぉ)
 とうとう鈴口を舐め始める濃(こま)やかなご奉仕。いつだったかの縁日でドキリとさせた「まっひンク」がいま自分の不浄
な肉茎を這い回っている光景に少年は生娘のように「かああっ」となる。鱈の卵巣よりも強く明るい桃色した淫靡な棘皮生
物がペニスの先端でチロチロと蠕(うご)いている様はそれだけでも衝撃的なのに、感触よ、生暖かい味蕾(みらい)のザラ
つきが敏感な亀頭を否が応にも刺激する。
(き、気持ちいいけど、すっげえ悪いことしてる気分……)
 数時間までキスさえまだだった清らかな少女の口を排尿気管の愛撫に使っている背徳感に、目を逸らしたくなる奥手な
唯我であったが、局部をねっとりと這い回る感触の前では叶わない。舌。金なる鱗さえ獲得していた。窓から差し込む月光
は唾液へ洸(ほの)に照り映えて幻妖なる魚燐と変じている。黝(あおぐろ)き暗室に神話のような器官が現出したことに
唯我はただただ息詰まり見蕩れる他ないのに、よりにもよって、美しきそれは醜怪なる亀頭を”れろん”と慰撫するのだ。
少年はもう怺(こら)えられない。
「いい、武元、それ、気持ちいい、す……っげえ、気持ち、いい……!」
 光の加減でケラチンが珊瑚色を透かす艶やかな黒髪をくしゃりと撫でる。
 少女の無心だった筈の瞳が俄かに媚態を帯びる。ツリ目はトロトロの上目遣いだが下品さはない。生殖器を咥えるとい
う婬(みだ)ら極まりない状況下で、うっとりと恋慕の情に浸りながらも決定的なところでは純朴さを保っている。
 男は、顔に惹かれ、抱く。抱く以上、惹かれた顔がどのように甘く歪むか見届けたくなるのは当然だ。
 だから、である。少年が少女の表情の劇的な変化に「やられた」のは。
「うっ」
 射精と心臓の痛みは同時にきた。後者がズキっとしのは初の伽で淫靡極まる奉仕をさせている心痛ゆえではない。少し
前まで中学以来の女友達に過ぎなかったうるかが、自分の股座の中で「女」の顔をしている異常さに興奮したせいである。
興奮した瞬間、心臓の血液拍出量が冠動脈のキャパを一瞬だが大きく上回り胸部を軋ませた。異様な軋みに動揺した
分だけ唯我の自制はほどけ、ほどけたが故に彼は放出した。
「んんっ!?」とうるかは軽く瞠目したが、状況を悟るや静かに目を閉じ、熱い奔流のすべてを口の中へ受け止める。
「あ、ああああ」
 期せぬタイミングでの噴出に唯我は赤面し、悶える。だが射精は止まらない。一晩に7度も発射するなどむろん初めての
経験だ。生命基幹の何事かが削られている絶望的な虚脱を感じながらも、それと、「少女の顔だけで達した」背徳感に唯我
は軽く弓反り身震いする。かつてない快感だった。
「んっ……。んっ……」
 鼻にかかった艶かしい声を漏らしたのはうるか。髪を抑える色っぽい顔つきで”うなじ”も露に、びゅるりびゅるりと際限な
く放たれる子種を嚥(の)んでいく。
(凄い。全然、……薄くなって、ない)
 若い味は挿入前実行された初めてのフェラチオの時と遜色ない。むしろ新鮮さを増しているような趣さえあった。もちろん
それはうるかの主観であり実際はどうか分からない。ただ彼女は皮膚を想像した。新陳代謝とは古いものほど表層に近づけ
新しいものほど深遠に残す活動だ。家族構成ゆえに発散に恵まれなかった濃縮もまたそうではないかと、うるかのみは、
考えた。
 舌痺れる苦味有する「おかゆ」のような味の最後の一滴が少女の喉を滑り落ちた。だが搾り出されてなお、若い壁立は
いっこう萎む気配がない。
(コーフン、してる。あたしなんかに、一生懸命になって、くれてる……)

36:
18/02/25 23:16:53.68 3XYtBtT6.net
 深く咥えなおした少女はエヘヘと目を細める。むしろ唯我の方が首まで紅くなった。手を握ることさえ未だ照れがある少
年の、やわっこくて敏感な心の粘膜はもう、こそばゆくて仕方ない。こういう時の定法に「咥えさせたままグラインド」がある
のは少年も知っているが、うるかの笑顔を前にするとどうしても無理だ。欲情はある。あるが、『壊したくない』といった少年
特有の、青臭い感傷が衝動を留めた。係留された瞬間から彼のやわっこい部分は、こそばゆい快楽の隷下となった。
(ヤバい……。気持ちいい……。フェラはさっきもして貰ったけど、出した直後で敏感だから凄く……いい)
 うるかの技巧じたいはまだ拙い。だが唯我を少しでも気持ちよくしたいという健気さが1つ、また1つと的確な快美を生んで
いる。下から上へ唇を這わすという何気ない挙措にしても、たっぷりとした愛情が乗っており、なのにその満点回答にさえ
どこか不安げで、気恥ずかしげな表情を浮かべ唯我を伺う。
(めっちゃエロいことしてんのに反応は清楚とか、すげえ、武元、すげえ……)
 もはや疑念などとっくに吹っ飛んでいる。「これ、俺のすっぽ抜けをごまかすためなんじゃ」と当初こそ疑っていた唯我で
あったが、もはやそんな思考は、立ち上る快楽と、うるかの清純なる反応で、甘く甘く溶かされ……失せている。
 うるかはそこまで計算していた訳ではない。彼女は自分があの失敗に気付いていると気付かれなければそれでよかった。
よもや唯我の観察力という、彼女がもっとも惹かれた魅力の1つが恐ろしいほどのあっけなさで失陥しているとは思いもよ
らなかった。それほど彼がうるかの奉仕へ『夢中になっている』とは……気付かない。
「武元……ッ」
 珊瑚色の髪が再びくしゃりと撫でられた。たったそれだけで少女は「ふへへ」と照れくさく笑う。途轍もなく淫靡な行為に見
合わぬ純良な笑みだ。
(お、俺のを咥えたまま、そのカオって……)
 唯我は照れに照れた。夢のようなご奉仕だからこそ、甘美すぎて直視できない。
 反応に気をよくしたようだ。うるかは深く咥え込んだ。相変わらず髪をかき上げている。褐色の顔に汗を滲ませながら「ずず」
と口を鳴らすと少年は何か想起したらしく─のちの話によれば2人で訪れたラーメン屋におけるうるかの食事風景らしい─
硬度はもはや、ガチガチだ。
「あむ、ふむっ、あむ、あむっ」
 ぶじゅるとい唾液の音を時おり混ぜながらうるかは忙しく首を上下する。模様も、表情(カオ)も、すべて唯我は一望できる。
一望できるよううるかが顔面の角度を調整しているのだ。男が表情を見たがるものだと直感し、恥ずかしさに耐えつつ見せ
ている。見せるたび秘所はきゅうっと奇妙な蠕動を見せ……愛液を滴らせる。
 唯我の顔にやや苦悶混じりの快美が広がったのは精巣がころころと玩弄され始めたからである。
「痛かったら……言ってね…………。あ、あたしさ、筋肉あるけど……加減、頑張って、加減、するから…………」
 少年はぎょっとし、
(こ、ここも刺激の対象!? そんな! 図書館の官能小説とかハウツーサイトとかにゃちっとも!)
 精巣に意識を飛ばす。
 男の自慰は「竿」の上下動こそ基本である。「袋」については強打した時の激痛を知っているものほど手が伸ばせない。
小学校時代、人並み程度には悶絶を味わってきた唯我ゆえ、精巣への愛撫はまったくの想定外だった。
 だからこそ少年は、拒めない。フェラであれほど清純さと淫靡さ、相反する2つの要素を見事に兼備していたうるかが、
唯我の乏しい性知識では決して知りえなかった領域を愛撫するという予想外の事態にひどい誘惑を感じた。旺盛な男子が
いったいどうして逆らえよう。
「じゃ、じゃあ頼むわ武元。お前ほら、料理とかじゃ、すごく繊細なトコあるからな、信じる、からな」
 優しくしてとまでは流石に男の矜持が邪魔していえないが、恐怖は確かにあった。急所、なのだ。だがそれだけにフグを
食べたがるような異様な期待もまたあった。
 果たしてうるかは「そこ」への愛撫を開始した。最初はクルミ2つを弄ぶように掌で包んでころころとしていたが、自分の握
力が怖くなったらしく、片方だけに狙いを定める。親指と、それ以外の指とのチーム分けが右の睾丸をコリコリとほぐし始めた。
「…………ッ」
 少年はすっかり受身である。後に彼が少女に語ったところによると、どこか鈍痛の籠もった独特な刺激があったという。う
るかは皮の中の紡錘形─少女がまずこの形に驚いたというのも後の話である。「玉」ないしは「丸」と呼称されているのに、
唯我のそれはややラグビーボール型をしていた─を恐々と触る。

37:
18/02/25 23:17:08.55 3XYtBtT6.net
(ぶどうみたいに、ぶよぶよ、してる……)
 筋肉がコンプレックスの少女は極力ちからが籠もらぬよう気をつけつつ精巣を揉む。
 加減に加減を重ねた愛撫ゆえ、触り初めてすぐ唯我に射精ものの快楽が加わるということはなかった。だが5回も揉む
と彼の様子は少しずつ変わり始めた。(これは、筋肉痛の部分を揉まれてるような)、独特な痛気持ちよさが俄かに巡って
きたのだ。8度目の射精を期待し、低く研ぎ澄まされた息を漏らす唯我。しかし、事態は、やがて。
 ……。
 嚢(ふくろ)に包まれているという意味では睾丸もまた臓腑である。”そこ”への刺激は解剖学上、前提ではない。体内を
愛撫されるという点では女性器にも似ているがしかし先の理由でまた異なる。
 睾丸を愛撫され始めて3分後。うるかは相変わらず唯我の股座の近くに顔を置き、褐色の指先でくりくりと睾丸を揉んで
いる。仰向けになった唯我が息も絶え絶えといった様子でもがいていた。
(これ、やばい……ッ!)
 刺激が決して強い訳ではない。竿でいえば亀頭どころか根元への摩擦より弱々しい。だが臓腑であり……急所。痛気持
ちよさは或いは竿より直通で脳髄を苛む。興奮は募る、確かに募る。されど独断で撃つ貯蔵施設はない。切羽詰った竿か
らの急信があって初めて放てる原則が、慣例が、睾丸愛撫に対する射精を一切許諾しないのだ。むろん数さえこなせば脳
髄との連絡回線が開通し、女性がイき方を覚えるよう射精できるだろうが、その”数”が唯我にはまだない。考えてもみよ、
普通の自慰ですら初めてのそれは達するまでかなりの時間を要すると言うではないか。睾丸も然り。故に唯我は。
「っっーーっ。っっーっ」
 激しい怒りを抑えている時にも似た独特の、細い息をついて刺激に悶える。射精という明確な行き場のない快美はやが
て屹立それ自体へ集中した。増したのだ、仰角が。それまでですら仰角約10度という若々しい”そそり立ち”をしていた肉
棒が、驚くべきことに鋭角マイナス5度を切るまでに勃(お)こった。マイナス、である。恐るべき話だが、肉竿は腹についても
まだ止まらず、ミチミチと肌に埋没するような勢いで勃起運動を続けている。何という怪異、端倪すべからざる魔人のわざ。
斯様な現象はもちろん唯我自身まったく経験したことがない。うるかの睾丸愛撫はそれほどの刺激だった。
(マジか)
 と瞠目したのは少年のみではない。なかなか訪れぬ射精に(あたしココへの刺激ヘタなんかなあ)としょげかけていたうる
かですら瞠目し、「……なりゆきの、えっち」と、含羞(はにか)んだ。
 少女は愛撫に自信を持ったらしく、指から完全に力を抜いた。揉む、というより、精巣に皮越しで触れたまま、五指に極め
て緩く捕らえたまま、手首をゆらりゆらりと動かす程度……である。
 たったそれだけなのに唯我の脳髄にえも言われぬ快美が広がった。
 波が、あった。鈍い緊張感を孕んだ痛気持ちよさが何十秒か続いた後ふと刺激はただの触感に代わる。快感が去り、睾
丸をまさぐられているという客観的な認識にすり替わる。これなら耐えれそうと油断しかけた所で再び気持ちよさが再来し、
少年は息を荒げる。
 竿では決して味わえぬ独特の法悦だった。玄妙きわまる不可思議に少年はただもがく。
 放出したくもできないのが甘い地獄だった。苦しい訳ではない。鈍痛はむしろ1時間でも2時間でも続けていられそうな心地
よさに変じつつある。経験ほぼ皆無の少年が本気でこれを、射精のための刺激ではなく、貯蔵施設そのものへの慰労では
ないかと考えるほどに痛気持ちいい按摩だった。
 錯覚かも知れないが、心なしか睾丸周りが軽く爽やかになりつつある。下腹にめり込むほどの勃起は、知らず知らず停滞
していた陰嚢周りの血液がうるかのマッサージによって急速に流れるようになったせいではないか、解き放たれた鬱血が
生殖器へ集中しているせいではないか……などと秀才なる少年は勘繰ったが実情は分からない。とにかく恐るべき刺激が
あるのに先遣の液が溢れていないのは奇妙だった。
「りょうほう、いい……?」
 少女の濡れ光る瞳が甘えるように問うてきた。少年は一瞬恐怖に囚われたが結局は快美への好奇に……負けた。
 そこから刺激が、12分続いた。
 両(ふた)つの睾丸を摘んだうるかは極めて柔らかい指使いでころころと愛撫している。倍加してなお射精にまでは至らな
い寸止めの快美に唯我はただ悶えた。波の高い時は寒空の下にあるように細く鋭い息をすすり泣くが如く漏らし、低い時は
刺激からの開放感と、行為の疲労ゆえウトウトまどろみ、又(ふたた)びやって来た法悦に叩き起こされる繰り返しを演じた。

38:
18/02/25 23:17:34.49 3XYtBtT6.net
 偶然だが、それが少年の回復を促した。体力のなさゆえ初体験で疲労困憊だった唯我は、端々で訪れる瞬間睡眠によっ
て少しずつ血色を取り戻しつつある。
(なんか……こーいうのもいいなあ)
 うるかはしみじみと思う。性行為といえばどちらかがどちらかを絶頂させるものだとばかり思っていたが、「癒す」行為もあ
るのだと知ると、根が気弱で温和なせいか、つい安心してしまう。
(でも……)
 疼くような衝動もまた体の芯にある。飛び込める場所でいつまでも飛び込めない辛さを耐え切れる少女であればココには
いない。
 いつしか少年の睡眠と興奮の境界はドロドロに溶け去った。夢と現が曖昧になった幻想的な世界の中で細面の、どこか
女性的な顔立ちの少年は、悶え泣いてのた打ち回りたい衝動を必死に耐えていた。女性であれば快美に啼くことは許さ
れる。だが少年は少年ゆえの矜持ゆえにどうしてもできない。ただひたすら
(すげえ気持ちいいのに……何で出ねえの……。やべえ、擦り……たい。いっそガーっとやって、1回、1回でイイから……
出して……区切りを…………)
 といった攻撃的な願望に摩り替えることで辛うじて耐えていた。
 少年の顔をずっと見ていた少女は、臆病さゆえの躊躇をわずかに浮かべた。だが悶える唯我の顔を見ていると、切なさ
が心を締め付ける。愛撫で高まるのは男だけではない。少し前までの『男友達』の切羽詰った吐息を聞くたび秘所がきゅうっ
と蠕動していた。『体』に対しては活発で能動的な少女が、である。稚(いとけな)い割れ目から搾り出された白濁が太もも
を濡らすのを感じてどうして大人しくできよう。むしろうるかは、よく耐えた。
「成幸……」
 褐色の裸身に覆い被さられた少年はぎょっとした。本能的に跳ね除ける選択肢もあるにはあったが、哀憐を滲ませ見つ
める少女の顔にそれも麻痺した。
「辛いなら、擦るから」
 もう耐えられないばかり奮(ふる)える声だが母性的な優しさも多分に混じっている。肉棒は太ももに挟まれた。
「たけ、もとっ……」
 と唯我が油粘土を杵で搗(つ)くような声を漏らしたのもむべなるかな。ずっと直接的な刺激を欲していたペニスがよく引き締
まった足と足とでぎゅうっと圧迫されたのだ。だけではない。唯我の両腕の更に外側に手をつき身を起こしたうるかは、紅さす
艶かしい顔を軽く後ろに曲げ唯我の”それ”が太もものどの辺りにあるか確認すると、つま先を支点とする足全体の上下運動
を開始した。
(す、素股だっけ、いや足だから違、やば、気持ちいい)
 無駄な脂肪はないがゴチゴチの筋肉一色でもないのがうるかの足だ。水泳という速度の競技に従事するが故、肥大化は
NGなのだろう。むしろ日ごろのストレッチにより柔らかい弾力に富んでいる。それがピッタリと屹立を挟んだまま上へ下へと
動く。
 刺激たるや掌の比ではない。掌であれば握力は指同士の隙間から逃げていくし、そもそも手淫とは掌の”圧”ではなく、
指を動かすための筋肉の醸し出す微妙な蠕動を楽しむ行為だ。
 うるかの太ももは、違う。両側からビッタリとペニスを圧迫する。肉棒が肉剣の形になるほど海綿体が歪むといえばどれほ
どの力が掛かっているか分かるだろう。掌の肉のうねりとはまったく違う、原始的なパワーのプレスがある。パイズリならまだ
柔らかさで緩衝されるが、
(すげえ、締め付けが……すげえ)
 がっちりと、むっちりと両側から圧迫される感じに唯我は悶える。特に感じるのはやはり亀頭だ。褐色の太ももの隙間で
顔を出し入れする瞬間、手淫では味わえぬ雄渾な”圧”がもっとも敏感な先端を刺激する。後日唯我は太ももの再現性を
求め己が両掌でペニスを挟み込み圧迫し上下してみたが全く及ばなかった。
 なにしろ人魚姫の足ときたら、凄まじい泳力を産む一種の原動機である。
 そんなものから緩慢なるエンジンピストンのようなストロークを受けた唯我のペニスだからたまらない、あっという間に海老
くさい先走りをびちゃびちゃと泌(にじ)ませ始めた。

39:
18/02/25 23:17:57.25 3XYtBtT6.net
 ただの力任せなら痛いだけだが、すべすべした褐色の肌の質感の奥にプリプリした太ももの肉の弾力があるため刺激は
極上の部類である。しかも太ももは先ほどの交合や、睾丸愛撫への興奮で伝い落ちた愛液でぬめっている。
(しかも……武元、汗、かいてる)
 少年が一番背徳感を覚えたのはそこだ。一連の流れと、今の上下動でしっとり潤ってきている「汗」に自分のシンボルが
触れるのが何よりいやらしく思えてドキドキした。愛液とか、先走りが太ももを濡らしているのは秘事限定の現象と割り切れ
るが、「汗」という、スポーツ少女ならごくごく日常的にかいている物が、己の陰部をひた濡らし潤滑の快楽をもたらしている
という事実が……心(しん)を穿つ。
同じ感想に到ったのか。うるかの表情がとろけ始める。胸の上で、裸の「元・女友達」が切なげに息を荒げているさまは
唯我ならずとも興奮するであろう。日焼け跡の、生白い鎖骨を何となく撫でる。「んっ」、軽く目を瞑ったうるかはペニスを
咥え込んだ太ももにいっそう力を込める。ただでさえ代謝の高い少女の全身が熱くなっているのを唯我は感じた。肉剣を
を圧迫する足はもう夏場の車体外装ほどの熱がある。火照っているのはうるかだけではない。
「熱いの、成幸のが熱いの。あたしの足の間でコチコチで、ヒリヒリで、……ぴくぴくしてる……」
「お前の足も……気持ちいい。すべすべしてて弾力があって、締め付けも、いい」
 ほんと? 嬉しい……。褒められた少女は咲(わら)い、献身の度合いを深めていく。健康的な足の上下動が速くなった。
腕立て伏せと似た姿勢で太ももに埋没したペニスを速く的確に摩擦できるのは体を鍛えているうるかならではの愛撫であ
ろう。汗と愛液と先走りですっかり滑った太ももがヌルヌルと肉棒を擦りあげる。睾丸愛撫でずっと刺激を求めていた少年
のシンボルは30秒と持たなかった。
「で、出るッ、出る…………!」
「うん。出して、楽に、なって……!」
 耐えただけあり量は初夜最大だった。翌朝事後処理に当たっていたうるかはベッドから2mは離れた場所に白濁が落
ちているのを見つけ真っ赤になる。それほどの噴出だった。びゅるびゅるっと勢いよく吹き出した精液が褐色の太ももに
どろどろと蟠った。「あ、あああ」。8度目の射精なのがウソのような軽やかな感触に唯我は呻く。愛撫によってすっきりと
した睾丸は放出にかけてむしろ最盛期に到りつつある。
(足に……あたしの足に、びゅーって、びゅーって……)
 うるかが昂ぶった理由はそこだけではない。少年の屹立はいまだ衰える気配がない。太ももを離せばバネ仕掛けのように
腹へ戻りそして再びめり込むだろう。
(すごい、成幸、すごい……)
 少女の雌の本能が疼き始めたのはこの頃だ。褐色の細い肢体は何の許諾を得ないまま動いた。唯我に覆いかぶさった
まま、彼の踵方面へ全身を少しだけ後退させ─…
 足と足の付け根の間に、ペニスを、挟んだ。
「ちょ、武元! 俺いま出したばっかで敏感……」
 うろたえる少年の顔もトロけ始めた人魚姫にとっては(可愛い……)と思わせるスパイスでしかない。彼へ「騎(の)っている」
という実感も、フィジカルに於いては攻勢的な少女の側面を膨らませる。

「うるかって……呼んで?」
 少年の顎に手をかけるのは先ほどの乳首いじりへの他愛ない仕返しだ。甘ったるい水気でライトパープルにまで希釈さ
れた瞳を、窓からの月光できらきらと瞬かせながら、嫣然たる笑みの形に軽く細め、『下の名前』という唯我の困りそうな話
題を押し付ける。奥ゆかしい少女だから寧ろコレが改元にも匹敵する二人称変更の決め手となることを恐れているが、
しかし同時に、結ばれてなお反射的に名字を呼ぶ朴念仁を困らせたくもあった。男は刺激で女を支配するが、女は機微で、
だ。果たして少年は蠱惑の少女に射すくめられ、停止した。ちょっと右にローリングするだけで容易く組み伏せられるはずの
腹上のうるかに愛撫1つできぬまま固まった。
 好機とばかり人魚姫、更に追撃。
「8回で……満足…………?」
 太ももの間のペニスの感触にぴくぴくと反応しながらも、うっとりと笑いかける少女は面頬の客観的な破壊力に気付かない。
唯我の瞳に映る彼女は艶やかな黒髪を汗でべっとりと張りつけ、息を荒げ、『誘惑的な女友達』の眼光を妖しく灯らせている。
少年の心の臓はまたズキっときた。


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