04/12/19 00:38:45 6jgmfhCe.net
『月日は遡行し、数年前のとある日常。人称“俺”編』
目がさめた。夏の盛り。青空。いざ新世界。
徒歩10分。通天閣を見上げながら歩いていると、眼前にたちはだかるオッサン。
出鼻をくじかれる。
「ワシなあ、帰ろうとおもったらちょうどこれ切れててなあ」
期限の切れた定期か回数券を見せながらおっさんはいう。
変わり映えしない光景（おっさんどこに帰んねん…）とせつない気持ち
にさせられながらもやり過ごし、ジャンジャン横丁の入り口。
地元民はジャンジャン町と呼ぶ。ワニ肉シカ肉を売りにしている店、
コラーゲンたっぷりうどん、串カツ、スタミナ焼きなどを横目にやまと屋。
まずはアン肝あたりを肴にビールをひっかける。
朝10時ぐらいからぐでんぐでんの奴多し。白い目でみられることはない。
天狗、八重勝の行列を尻目に将棋クラブの前で立ち止まり、
坂田三吉に思いを馳せ、銀が泣いてる…と泣いてみるのもいい。
アーケードを山王側に抜ける。顔といい、髪型、髪色、スタイル、
眉間に皺をよせた感じといい、松本幸四郎そっくりのひととすれ違う。
（おっとこまえやなあ。これでピンクのスカートさえ穿いてへんかったらなあ…）
路上で売られている品々。昨日の新聞。数週間前の雑誌。
videoのパッケージ―だけ。アルミ缶でつくった灰皿、なぜかガラスの破片。何これ？
交差点を渡り右手へ行くと太子の交差点。やがて萩之茶屋、天下茶屋。
毎度！茶髪のにいちゃんに声をかけられる。多い日で数分間に３、４人。
知り合いではない。みんな売人。
左へずっと上って行くとアベノ天王寺界隈（こちらはサブカル臭ただよう店多し）
俺にとってこの界隈は新世界とワンセット。右、左ときて今度は真正面。
そこは大阪を集約したような商店街。
しばらく行くと、飛田新地。遊郭。妖しいネオン。江戸時代の雰囲気。
一皿500円の大盛スタミナ焼きで腹を満たす。
いきなり怒号。コロッケ屋の前でおっさんが嘔吐。
誰かがだれかに怒鳴っている。濁った目、黄色く欠けた前歯。
誰かがうつ伏せに倒れている。俺はそれを跨ぎ、パチンコ屋へでも。
人称『“僕”編』へ、たぶん続かない。