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「いいじゃねーか、ペリーヌ。あんたにとっちゃこれくらいのはした金、なんでもないだろ。」
ペリーヌが取り出した数枚の紙幣をひったくるように取り上げると、
マルセルは「すまねえな」と言い残していつものように後ろを振り向くことさえせずに軽快に走り去っていった。
おそらく今夜もどこかの場末の酒場でしこたま酒を飲み明かすつもりなのだろうとペリーヌは想像した。
マルセルがあんなふうになってしまったのはいつからだったろう。
サーカスの練習を懸命にこなし、一方でペリーヌ母娘を元気付け助けてくれたあの優しいマルセルが、
こともあろうに彼女の財産をあてにしてお金をせびりに来るようになるなんて、今でもペリーヌには信じられなかった。
「その辺にしときなさいよ。」
肩を叩かれマルセルが顔を上げるとそこにはやつれた表情のロザリーがいた。
「放っておいてくれよ。」
酒くさい息を吐き出し、マルセルは言い捨てた。
「いい加減現実を見たら?貴方はサーカスの道化。ペリーヌはパンダボアヌ家の後継ぎなのよ。
釣り合う訳無いわ。。私も貴方の事言えた義理じゃないけど。」
「放っておいてくれって言ってるんだよ!!」
自分でもどうしようも無かった。
ファブリの愛人になり日陰の身となったロザリー。ペリーヌに金を無心する自分。
何処で道を間違ったのだろう?マルセルはまたグラスに手を伸ばした。