【ペリ子や】ペリーヌ物語28【適当にね】at RANIME
【ペリ子や】ペリーヌ物語28【適当にね】 - 暇つぶし2ch132:名無しか・・・何もかも皆懐かしい
20/12/27 12:31:25.30 .net
『何故つて、お前、今度英国の機械師達が機械を据ゑ付けにやつて来た処が、フランス語が解らない、処で細野さんを招《よ》んで通弁をさせると、まるつきし話が通じないのさ。親方は怒り出す、細野さんも弱つて、如何《どう》か親方の機嫌を直したいと思つて、糸繰り工場《こうば》に英語のわかるお花と云ふ娘《こ》が居ると云つたのさ、其処《そこ》で私《わし》が迎へによこされたんだよ。若し細野さんの様な英語なら、お前こゝらで降りた方が間違ひが無えぜ、どうだ馬車を止め様《やう》かね』
『いゝえ降りなくてもよござんす』
『己《おれ》はお前の為めを思つて云つてるんだぜ』
 やがて白岡の工場《こうば》につくと、忽《たちま》ち社長の前によび出された。新右衛門の側《そば》には、尚一人の支配人の高水《たかみづ》が立つて居る。社長は彼《か》れにどんな娘かと聞いた。
『左様で御座います、十二か十三位の年格好で、怜悧《りこう》さうな顔をして居ります』
と支配人が云ふと社長は、やさしく、
『おい、こつちへお出《い》で』
 花枝はびくびくもので近づくと、何とは知らず一生の大事が此《こ》の瞬間にきまる様な気持ちがして、胸をどきつかせ身を固くして立つて居た。
『お前の名は何と云うんだえ』
『お花で御座います』
『で、両親は』
『もう亡くなりました』
『いつから此《こ》の工場《こうば》で働いて居るのかえ』
『三週間前からでございます』
『何処《どこ》の者だえ』
『巴里から参りました』
『英語が出来るかえ』
『母が英人で御座いましたまら』
『それぢやお前英語を知つて居るね』
『話は出来ますが』
『出来ますがぢやない、出来るのか出来ないのか--どつちなんだえ』
『でも、商売や機械の詞《ことば》はわかりません』
『おい高水なかなか利巧な口をきくねえ』
『へえ、一寸《ちよつと》気のきいた顔をして居ります』
『ぢや役に立つかも知れない』
 彼は杖《つゑ》にすがつて立ち上り、支配人の腕に助けられて歩き出した。
『お前ついて来るんだよ』
 花枝は如何《どう》なる事かと心細さは山々であるが、云はれるまゝに二人の後からとぼとぼとやつて行くのであつた。


次ページ
続きを表示
1を表示
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch