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435 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:03/12/10 01:00 ID:???
仕事を終えたペリーヌが屋敷へ戻ると、ロザリーの弟ポールが中庭のベンチに腰掛けてバロンの相手をしていた。
「あらポール、来てたの」
「おかえり、ペリーヌ。今日は僕の仕事も早く終わったんだ」
今やすっかり老犬となってしまったバロンの頭を撫でながら、ポールは明るい笑顔をペリーヌに向けた。
彼は現在パンダボアヌ工場の機械技師としてファブリの下で働いている。
それはもともと彼が望んだ仕事だった。
幼い頃から工作を好み、また成長するにつれて機械いじりに興味を持つようになった
彼にしてみれば、最新の設備を誇る工場の機械技師は願ってもない職だったのだ。
しかし、ファブリとロザリーの関係を知る者たちの中には、ポールや彼の仕事について口さがない連中が少なくなかった。
姉を犠牲にして職を得たのではないか? 姉の愛人と一緒に仕事をしていて平気なのか?
ポールが職場で熱心に働き、また普段の生活で快活に振舞うほど、彼に対する陰口は陰湿さを増していった。
バロンに何か話しかけながら笑っているポールの横顔を見ているうち、ペリーヌはいつものように胸が締め付けられる思いがした。
世間の風評とは違う。ポールの本当の心は・・・
彼はかつて一度だけ、ペリーヌにだけ本心を垣間見せたことがあった。
「俺が今の仕事を辞めちゃったらさ、姉ちゃんが悲しむから」
ペリーヌはその言葉を聞いた時、なんとしてもこの姉弟だけは幸せになってもらいたいと強く願ったのだった。