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１６２話“キラのドーナツ”。
前スレにも書いたが、このお話は最終回に大きく繋がる、「特別な意味」が
ある。
前回の“妖精王”で、ヤダモンがキラに対して、妖精の森を破壊したのかと
問い質すや、キラはマリア特製のドーナツを冷酷に蹂躙しながら、木端微塵
に消滅させた、と嘲笑した。
そしてこの話の冒頭、ヤダモンはキラに無残に蹂躙されたドーナツを見て、
呆然として、次にキラを激しくなじりながら、大声を上げて号泣する。
「キラの馬鹿─！！」と、キラを罵りながら、心の底から泣き叫ぶ。
号泣するヤダモンに、うんざりとしたキラは、魔法で大量のドーナツを出す
のだが、マリア特製のドーナツに比べて、キラのそれは、さほど美味には
感じられなかった。
これまでにも、５３話“白い蝶の秘密”や、９１話“タコタコ上がれ！”で
ヤダモンが泣いた事はあるのだが、この話のヤダモンの号泣は、それまでに
涙を流した事以上に、遥かに大きな意味がある。
そしてこの事件が、最終回の「本当の事」に繋がる。
何が本当で、何が大切な事なのか？ 両方のドーナツの味も、その大事な
意味を表現するものだ。
魔女にも、妖精にも、人間にも、生きとし生ける者には、誰にでも
『価値観』がある。価値のあるもの、大事なもの、特別なもの。それを
残酷に捨てられる事、非情に破壊される事、冷酷に罵倒される事は、
悲劇である。
大切なものの為に、心の底から、声を上げて号泣するのは、恥ずかしい
事ではない。だからこそ、ヤダモンの号泣は大きな意味がある。