18/02/08 03:06:45.51 TWRMizVD0.net
当該文献を読んでいないので,はっきりしたことは言えませんが,
正規・非正規間の業務の差は小さくなっているという指摘が多く,
その意味で「正規は監督困難,非正規は監督が容易」という区別は確かに難しくなっているかも知れません.
だとすると,両者の待遇差は,正規の実質賃金が慣習や組合交渉力とその法的保護にによって
高止まりさせられているという解釈が出来るかと思います.
すると,現在の正規従業員の給料はスムーズな価格調整で達成される水準(均衡実質価格)を
上回っているということになります.実質賃金が高すぎるから正規従業員への需要は少なく,
供給(なりたいという人)は多い.その結果,不本意ながら非正規労働,
場合によっては失業ということになる.この様な場合,名目賃金(要するに賃金の額)が
スムーズに変化するならば名目賃金が低下し,需給の一致がはかられるわけです.
……しかし,名目賃金はそう簡単には下がらない.これは90年代大停滞のなかで
企業の名目賃金がたいして低下していない,その結果として実質賃金は
この不況下でむしろ上昇を続けたことなどからも分かります(
もしよければ拙著『経済学思考の技術』のp211の図を参照下さい).
実質賃金は名目賃金÷物価(W/P)です.Wがなかなか下がらないならPが上がってやればよい.
そのために安定的なインフレの継続が必要だというのが僕の見解です.
したがって,むしろ価格メカニズムの稼働を助けてやるためにインフレが必要と考えられるのです.
つまりは,本来の価格メカニズムでは正社員の実質賃金をスムーズに「下がる」けど
それが制度的に難しいからインフレで後押ししてやるというわけです.
もちろん名目賃金の変化をスムーズにする「構造改革」が必要だとの見解もあるでしょうが,
これは実際には難しいと思います.
URLリンク(yasuyuki-iida.hatenablog.com)