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5月25日、「総理のご意向」と書かれた文書について、前川喜平・前文科省事務次官が会見で「文科省専門教育課で作成され、
幹部の間で共有された文書」と断言し、「安倍晋三首相の天の声での加計学園の獣医学部新設が決まったのでは」という
“官製談合”事件の様相が強まってきた同じ頃、愛媛県今治市では菅良二市長が海運関連の展示会
「バリシップ2017」の歓迎会で挨拶をしていた。
乾杯後、関係者との談笑を一通り終えた菅市長に「加計学園疑惑についてどう思うか」と声をかけたが、
一言もなく、主催者からは退出を命じられた。翌26日、“前川会見”の受け止めを菅市長に聞こうと市役所を訪ねたが、
「取材には応じていない。会見の予定もない」(秘書課)と拒否された。
前事務次官会見で首相主導を物語る文書の信憑性が高まる一方、地元・今治市では去年秋の菅市長の発言が注目されている。
「安倍総理の強いリーダーシップをもってやるから安心してほしい」と周囲に語っていたというのだ
(26日のテレビ朝日の「報道ステーション」も紹介)。
市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦・共同代表は、「『総理が動いている』という市長発言は市内で広まっていますし、
市の文書にも
『総理・内閣主導』
と明記されています」と、市企画財政部が去年11月10日に作成した議員協議会資料
「国家戦略特区の制度を活用した取組の進捗状況について」を示した。
確かに、国家戦略特区を説明するページに「『総理・内閣主導』の枠組み」と太文字で書かれていた。
「これは、今治市が『総理・内閣主導』と認識していたことを示すもので、
菅市長発言(『安倍総理の強いリーダーシップ』)とも一致します。
『今後のスケジュール』のページには『平成28年10月31日 事業者によるボーリング調査の申出を受理、承諾』や
『平成30年4月開学』と具体的日程が明記されています。安倍首相主導で加計学園ありきのタイトな日程で進んでいたことを物語っています」
半年程度で姿勢一転の謎
首相主導を示唆する文書は他にもある。「総理のご意向」と発言したとされる藤原豊審議官(内閣府国家戦略特区担当)が、
当初は獣医学部新設に慎重な姿勢であったことが、昨年2月、今治市議会に提出された資料に明記されていたのだ。
藤原氏と市の関係者の面会内容を紹介した部分には、「(藤原氏より)新設大学への財政支援による今後の財政悪化や人口減少により
学生が本当に集まるのか危惧されていた」と記載。昨年2月には消極的姿勢だった内閣府が昨年秋に積極的姿勢に転じたのは、
地元で広まる菅市長発言の通り、安倍首相の主導(直接指示)としか考えられない。
加計学園疑惑の構図が明らかになってきた。「国家戦略特区諮問会議トップ(議長)の安倍首相が天の声を発し、
加計学園が選ばれるような条件を加えることで競合相手を排除した」というものだ。
談合(受注調整)担当をしてきたゼネコン関係者は「発注者の意向で本命業者を入札前に選ぶ官製談合事件に等しい」と話す。
「公共事業の発注者は、どういう入札条件を加えれば、どの業者が選ばれるかのデータベースを持っています。
そのため官製談合では、発注者の意向で入札前に本命業者(チャンピオン)を選ぶことが可能。
今回は、安倍首相の発注者意向で『広域的に獣医学部がない』という条件が付加され、加計学園が選ばれたのでしょう」
一方、中村時広・愛媛県知事は24日の会見で内閣府から国家戦略特区申請の助言があったことを改めて認め、
決定プロセスをクリアにすることも国に求めた。会見後、「安倍総理の天の声で決まったのではないか」
「違法性があったのではないか」と聞くと、中村知事は「僕は分からない。過去の経緯から説明。県はあれ以上でもあれ以下でもありません」と答えた。
しかし前川会見で首相主導の可能性はさらに高まり、愛媛県や今治市は官製談合事件の共犯者となる恐れも出てきた。
地方と中央の両面からの真相解明が期待される。
(横田一・ジャーナリスト、6月2日号)
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