14/05/16 23:26:51.64 u6T1izTP0.net
にこは至って普通の小学生だった。そう、両親が離婚するまでは。
名字が母の旧姓である『矢澤』に変わり、クラスの中で話題になった。
親しい友人こそ気を使ってくれたが子供とは残酷なもので、一週間も経たない内にあだ名は『矢澤りこん』になった。
その頃からにこの心は閉ざされていく。
男子には父親の不在を揶揄され、仲の良かったはずの友人の「おかーさんがあんまり付き合うなって言ってた」という陰口を聞き、
次第ににこの表情からは笑顔が消えていった。
学校帰りにまだ幼い双子の妹を保育園へと迎えに行くのも、帰りが遅い母に代わってその妹たちの夕食を用意するのも、当然のようににこの役目だった。
いつからか父親からの養育費は滞り、中学に入ると同時に家賃の安い団地に引っ越した。
母の帰りはこの頃から遅くなり始め、ようやく帰宅したと思ったら酒臭かったり、挙げ句の果てには男を連れ込んだことすらあった。
中学最初の三者面談で担任にやんわりと友人の少なさを咎められた。母は恥をかかせないで、と言った。
虎太朗が生まれた。誰が父親なのかにこにはわからない。
にこはますます人を近付けなくなった。
部活にも行かず、勉強もしない日々。
そんなにこにも唯一、趣味があった。アイドル。
幸いアキバは家から近く、グッズを買う金銭的な余裕はないものの、見ているだけで楽しかった。
アイドルグッズを見ている時だけはにこの表情に笑顔が戻った。
決めた。高校生になったらスクールアイドルになる。
にこはそう決心した。