18/08/21 11:31:05.36 .net
>>594
次は犬の“ヒン”です。
なぜ、ヒンが魔法使いなのかというと、宮崎さんが一番最初に書いた企画書に「犬人間」って書いてあるからなんですね。
犬のヒンというのは、サリマン先生によって、罰を与えられたのかわからないけど、
「お前は犬としてずっと私に使えて、スパイの役割をしなさい」と言われているんですよね。
だから、最後にヒンがサリマン先生の失敗をあざ笑うと、「この浮気者!」というふうに言うんです。
「この裏切り者!」ではなく、「この浮気者!」というふうにサリマン先生が言うってことは、
サリマン先生が自分の使い魔にしているようなやつらは、
基本的に、全員、一時は自分の恋人だったということですよね。
つまり、「自分の恋人として籠絡することによって、恋に落とすことによって、
そいつらを使役していたんじゃないか?」というのが、あの映画の根底に流れている“情念”みたいなポイントです。
なぜ僕が、このヒンのことを“犬人間”と断言するのかというと。
ソフィーがこのヒンを持ち上げて、階段を登るシーンがあるからです。
(パネルを見せる)
URLリンク(livedoor.blogimg.jp)
ここで持ち上げられたヒンは、ソフィーが予想していたより、ずっと重いんですよ。
なぜかというと「犬に変身させられているけど、体重は人間のままだから」です。
だから、ソフィーは「なんであんたはこんなに重いのよ!」って言いながら一生懸命に持ち上げることになったんです。
あんなシーンをわざわざ入れたのは、この不自然な体重を見せるためなんですよね。
「あんた重いわね」じゃなくて、「なんでこんなに重いのよ」と言うのは意外な重さがあるということですから。
では、なぜ、その不自然な体重を観客に知らせる必要があったのかというと、
「人間を犬に変えて何十年も使役している」という、サリマン先生の残酷さを表現するためです。
犬のヒンというのは、そのために出てくるんですけど。
でも、同時に二重構造の良いところとして、そんなふうに“女の怖さ”を表現しながらも、
かわいい犬のキャラクターが出てきたら、子供は喜ぶんです。
ここら辺にも、「よし、今度の映画はもう勝った!」という宮崎駿の計算が、ちゃんと働いています。
・・・
次は、サリマン先生です。サリマン先生は言うまでもなく魔法使いです。
王国の魔法学校の校長みたいな立場でもありますけども、かなり怖い人です。
『ラピュタ』でいうところの“ムスカ”みたいなポジションだと思っています。
そして、サリマン先生の近くにいる小姓達。まあつまり、子供の頃のハウルそっくりの姿をしている男の子達ですね。
自分の身の回りに仕える、執事代わりに使っている者たちを、全員ハウルの幼い頃と同じ姿にしているところに、
かつてのサリマン先生とハウルの関係のエロさというか、ドロドロさというのを感じますね。