18/08/17 09:28:42.59 .net
>>42
『母をたずねて三千里』というのは、『ハイジ』が大ヒットした後、別の人が1年間『フランダースの犬』を作っている中、
1年間休憩した後で、宮崎駿・高畑勲コンビが作った長編アニメシリーズです。
いや、高畑勲は監督だから、この場合「高畑・宮崎コンビ」と言わなければいけませんね。
宮崎駿は画面設計を担当していました。僕はこれを、高畑・宮崎コンビの最高傑作だと思っています。
この『母をたずねて三千里』の原作は、昔の小学校の学級文庫によく置いてあった『クオーレ』という、
イタリアの子供たちの道徳の本です。これは「イタリア人の子供なら、だいたいみんな読んでいる」と言われる本なんですけども。
クオーレ
URLリンク(livedoor.blogimg.jp)
高畑勲は、その中に収録されていた40ページくらいしかない短編小説を、無理矢理全50話くらいに引き伸ばして
、1年間のアニメシリーズに仕上げました。これを1年間のシリーズにするために、高畑勲は、
『ハイジ』でやった時以上に徹底的に、19世紀末のイタリアの風俗を調べ上げたんです。
興味のある人は『クオーレ』を読んでみてください。あっという間にマルコとお母さんは再会を果たしてビックリしますから。
日本人がよく知っている『母をたずねて三千里』の物語というのは、高畑勲のオリジナルだなあと思いますよ。
ちなみに、この『母をたずねて三千里』は、宮崎・高畑コンビの最後の作品でもあります。
その後にも、『赤毛のアン』などで、宮崎駿が高畑さんのアニメを手伝うこともあったんですけど、
本格的にガップリ4つに組んだのは、これが最後です。
・・・
この19世紀のイタリア・ジェノバで、マルコ・ロッシのお父さんのピエトロ・ロッシは、
貧しい人たちへの病院を経営していたんです。でも、病院を経営していただけで、
彼は医者ではないんですよね。“事務員”なんですよ。
僕も、アニメを見ていた時は、病院を経営してるんだから、てっきり医者だろうと思ってたのに、
「貧乏だ、貧乏だ」ってずっと言ってて、なんでだろうって思ってたんですけど。
なぜかというと、病院の経営を任された事務員で、医者のワガママを聞きながら、なんとか経営をしていたからなんですね。
さて、この病院が経営破綻して、どうにもこうにも倒産しそうになったので、
マルコのお母さんであるアンナ・ロッシは、アルゼンチンのブエノスアイレスに出稼ぎに行くことになってしまいます。
なぜ、アルゼンチンなんていう、南アメリカの遠い所まで出稼ぎに行くのかというと、
実は19世紀後半から20世紀の頭まで、アルゼンチンというのは世界で最も豊かな国だったんですよ。
当時のアルゼンチンは、農産と牧畜によって農業大国として、かつての豊かなアメリカと同じように大成功していて、
「そこに行けば誰もが金持ちになれる」と言われる国だったんですね。
なので、マルコのお母さんも、奉公に行ったんです。まだ9歳の子供だったマルコ・ロッシ君はお母さんを恋しく思います。