18/08/20 11:03:30.93 .net
>>429
映画を1人のキャラクターの主観だけでまとめる構造というのは、かなりわかりやすい話にしないと難しいんですけども。
『ハウルの動く城』って、これなんですよ。基本的にはソフィーの主観だけで描かれている。
だから、その端々から漏れ出てくる情報を観客側が積極的に読み解かないと、なかなか面白くならないんですね。
例えば、『エヴァQ』ってありますよね?
新劇場版の今の所の最新作である『エヴァQ』が、なんであんなにわらかりづらいのかというと、
実はあれは、ほとんど全て、碇シンジの視点だけで描いてるからなんです。
たぶん、視点をいろいろ動かして自由に描いていたら、もっとわかりやすく面白くなっていたはずなんですよ。
たった1人の視点だけで物語を語ると、主観的に深く入っていける文学っぽい作品になるんですけど。
ところが、その代わり、一旦「ここ、変だな?」とか、「わかりづらいな」と思ってしまうと、
物語に乗り切れなくなってしまう。
そういう難しさが1人語りの映画にはあるんです。
・・・
こういった元々のわかりにくさに加えて、キムタクというアイドルを声優に起用したということで、
なんか無用の反感を持った人もわりと多いと思います。
そういう意味で、『ハウル』というのは、ジブリ初の敗戦処理映画になったんですよね。
もちろん、敗戦処理と言っても、歴代2位のヒットなんですよ。
『千と千尋』が、もう圧倒的で、ぶっちぎりに稼いだんですけど、その次にヒットしたのが『ハウルの動く城』。
だから、この作品を指して「敗戦処理」だなんて言ったと鈴木さんが聞いたら、ものすごく怒ると思うんですけど。
ただ、『もののけ姫』から続いて『千と千尋』もヒットしたように、それまでのジブリ映画って、
基本的にずーっと上り調子だったんですよ。「興行成績がまた良くなった!」「また良くなった!」
というふうに、倍々ゲームみたいに売上も伸びていたんです。
だけど、この『ハウル』という作品で、初めて興行成績を落としたんです。
つまり、鈴木敏夫にとっては“認めたくない敗戦”なんですね。
これについては、宮崎さん自身も、『ポニョ』で引退を宣言した時に「自分の作品で一番好きものは何ですか?」
と聞かれて、間髪入れずに「好きという意味とは違うんですけど、いまだにトゲのようにずっと刺さっている作品は
『ハウルの動く城』です」と答えるくらい、ひっかかり続けている作品です。
・・・
あとは、なぜ誤解されやすいのかというと、「お話がご都合主義だ」とか「論理的でない」と言われると、
宮崎さんは意地になって、こんなふうに答えちゃうからなんですよ。