TRPG系実験室 3at MITEMITE
TRPG系実験室 3 - 暇つぶし2ch240:ジャスミン
23/06/11 01:24:34.39 Dt0ff5aX.net
その砲弾は戦前で使われていたもの。トラック程度なら容易く吹き飛ばしてしまうだろう。
ハゲタカのリーダーが防護スーツを身に纏っているとはいえ、その衝撃は骨の一本や二本ではすまないはずだ。
「いいね、そいつなら脅しにも使えそうだ。
 できるなら諦めてくれるのが一番なんだけど……あの様子じゃ、無理そうだね」
マリーゴールドが二人の端末に監視カメラの映像を繋いでくれる。
そこに写されていたのは、トラック型車両が装甲を展開して簡易的な陣地を作り上げる様だった。
防護スーツを着用したリーダーらしき男が銃座に陣取り、監視カメラに向けて何事か叫んでいる。
「てめえら!俺の手下どもを返しやがれ!でなけりゃありったけの弾薬を撃ち込んでぶっ壊してやるぞ!
 戦前のAIなんかに味方しやがって恥ずかしくねえのか!そいつもシェルターと同じでお前らを利用することしか考えてねえんだ!」
『お二人を利用、とはどういう意味でしょうか?人間は資源でも家畜でもありませんが……』
疑問符を頭に浮かべて、首をかしげるマリーゴールド。それに答えるジャスミンが手を振った。
「バカの言うことなんて真面目に考えるだけ無駄だよ、とっとと吹き飛ばそう。
 あの装甲車で帰りたかったけど、そうもいかないね」
ちょっとした陣地と化したトラック型車両は、グレネードランチャーのみならず重機関銃や小型のミサイル迎撃システムまで展開している。
このまま時間を稼ぐだけでは、説得に応じることはなさそうだ。
120㎜砲弾でぶち抜いてもらおうと、ジャスミンが口を開きかけた時だった。
『……この状況は企業と協力者への武装を用いた脅迫及びAIに対する侮辱とみなされ、これに対する自己防衛は戦前でも合法です。
 よってわが社の警備システムではなく、防衛システムを起動します』
そうマリーゴールドが告げると同時に、二人がいた警備室の近くから何かが展開される音がする。
ぎょっとして通路に出てみれば、そこにいるのはハイランダーによく似た人型自動機械。
都市迷彩のように灰色と水色が入り混じった装甲を身に纏い、2mほどの高さで二人を見下ろしていた。
ハイランダーと違う点は装甲が分厚く、ステルス性など考えない頑強さを見せつけるような角ばったデザインであること。
さらに装甲の隙間を隠すように流体金属が蠢いており、それが鎖帷子のようにも見える。
『グラディウス、お二人に協力しなさい』
『御意。ジャスミン、ヘンゼル。あなた方を護衛し、あの車両を排除します』
男性よりの低い合成音声が頭部から発せられたと思えば、自分のいた格納庫のレバーを勢いよく下に引く。
すると武器庫が近くに展開されて、小型ミサイルと大型アサルトライフル、そして名前の由来となったであろう幅広で分厚い単分子剣をグラディウスは淀みなく装備した。
そして二人の命令を待つように、微動だにせず待機している。
「……こいついたら、あたしたちいらないんじゃない?」
【厄介な相手に頼れる味方、いざ戦闘へ!】
【書いてたのを貼り忘れてました…】

241:創る名無しに見る名無し
23/06/16 08:31:38.16 xvFf7DkG.net
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242:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/06/18 22:59:29.53 XUL6kl0E.net
>「いいね、そいつなら脅しにも使えそうだ。
> できるなら諦めてくれるのが一番なんだけど……あの様子じゃ、無理そうだね」
 正直自分でもちょっと物騒すぎるかなと思ったのだが、ジャスミンなら気に入ってくれそうだとも思っていた。
 一方、防護スーツを着用したリーダーの男は監視カメラめがけて何かを叫び散らかしている。
>「てめえら!俺の手下どもを返しやがれ!でなけりゃありったけの弾薬を撃ち込んでぶっ壊してやるぞ!
> 戦前のAIなんかに味方しやがって恥ずかしくねえのか!そいつもシェルターと同じでお前らを利用することしか考えてねえんだ!」
 一瞬、俺はドキッとした。俺を利用する手合いのことなんて心当たりがありすぎる。
 もっともそれはシェルターではなく、俺に冒険者のいろはを叩きこんだ《魔女》のことである。
 奴は妹のグレーテルの命を盾にして金を要求するとんでもない悪党であり、武器商人でもある。
 悪辣な《魔女》に比べればシェルターなど生易しい。というより俺には幾分と善良な連中に見える。
 とはいえそんなことはジャスミンにもマリーゴールドにも話していないので、誰も知らないはずだ。
 だから俺はマルチプルランチャーの銃口をトラックに向けたままこう返した。
「おたくの理屈がよう分からん……俺たちは自分の身を守ってるだけだ」
>『お二人を利用、とはどういう意味でしょうか?人間は資源でも家畜でもありませんが……』
 マリーゴールドの疑問形にジャスミンがこう答える。
>「バカの言うことなんて真面目に考えるだけ無駄だよ、とっとと吹き飛ばそう。
> あの装甲車で帰りたかったけど、そうもいかないね」
 あのトラックも戦利品にしようと考えてたのか。まったく、ジャスミンは根っからの探索者だな。
 と思っていたらトラックはグレネードランチャーどころか重機関銃や小型ミサイルまで展開した。
 流石にやべぇ。これは先手必勝だ。戦車の砲弾を発射して、ただちに無力化しなければこっちがやられる。
 ジャスミンもそう考えたのか、俺の方に顔を向けた。その時である。
>『……この状況は企業と協力者への武装を用いた脅迫及びAIに対する侮辱とみなされ、これに対する自己防衛は戦前でも合法です。
> よってわが社の警備システムではなく、防衛システムを起動します』
「ん? マリーゴールド、そりゃどういう意味……」
 何か音がしたと思って通路に出てみると、そこには2メートル程度の人型自動機械があった。
 分厚い装甲は雄々しく、頑丈な印象を与える。実際、相当頑丈のはずだ。
>『グラディウス、お二人に協力しなさい』
 マリーゴールドの命令に従うように、目の前の自動機械、グラディウスが古めかしい口調で答える。
>『御意。ジャスミン、ヘンゼル。あなた方を護衛し、あの車両を排除します』
 こんな隠し玉があったのか。俺は少なくとも物資やデータを惜しみなく提供してくれたマリーゴールドへの駄賃に、
 荒らし屋のハゲタカからこの工場を守る気概で戦ったわけだが、こんなものがあるなら余計なお節介だったかもしれん。
>「……こいついたら、あたしたちいらないんじゃない?」
「ああ。マリーゴールドには驚かされるばかりだ。もし敵対的な行動をとってたら俺たちは死んでたかもな……。
 ともかく、グラディウスがいるならちょっと作戦を変更するか。今は砲弾を使うのは止めにして、こいつを使う。
 ジャスミンはグラディウスを盾替わりにして突っ込んでくれ。それなら目は潰れない。グラディウス、前衛は頼めるか?」
 砲弾を仕舞って代わりに取り出したのは『閃光弾』だ。これも持ってきた5発の弾のうちにひとつ。
 強力なフラッシュで相手の目を潰せばトラックの仰々しい武器も一瞬、使い物にならない。
 そして2メートルもあるグラディウスに隠れて突っ込めば、接近戦の得意なジャスミンは目を潰さず肉薄できる。
 しかも、グラディウス自身は自動機械だから閃光弾でカメラが一瞬潰れてもレーダーなどで問題無く戦えると思われる。
 この作戦が二人に了承されれば、援護担当の俺は二人が突っ込むタイミングで『閃光弾』を発射するだろう。

243:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/06/18 23:00:27.44 XUL6kl0E.net
【お待たせしました。グラディウスを先頭にして突っ込もう。ヘンゼルは援護で閃光弾を使い、敵の目を眩ませます】
【閃光弾を使うタイミングはジャスミンさんで自由に描写して頂いてOKです】

244:ジャスミン ◆26mbO0iBgc
23/06/22 16:13:18.93 23J0GwwT.net
ヘンゼルの質問にグラディウスは小さく頷く。
自動機械らしさを感じさせない自然な動きから、戦前AIの高度さが感じられるだろう。
『肯定します、ヘンゼル。彼らの装備では重機関銃以外、当機の正面装甲は貫けないでしょう。
 小型ミサイルは直撃すれば危険ですが、迎撃の可能性は87%です。
 遮光ゴーグルを展開しますので、そちらのタイミングで閃光弾を射出していただければと思います』
人間でいう額にあたる部分からサングラスのようなバイザーが下り、グラディウスの頭部センサー群を覆う。
そうして各々の準備が整ったところで、ジャスミンが機械腕を唸らせてこう告げた。
「あたしたちが飛び込むと同時に閃光弾をトラック正面で起爆。
 後は手下を黙らせてグラディウスにボスを拘束してもらう。生け捕りがダメそうならヘンゼル、あんたの判断で砲弾をぶちかまして」
二人と一機でお互いに頷き、持ち場に散開する。
ジャスミンとグラディウスはトラックの真正面、フォークリフトや使われないままの資材が乱雑に置かれた資材搬入口。
ヘンゼルは射線と周囲の警戒がしやすい場所に。
「お前ら!またシェルターに働かされたいのか!あいつらの奴隷になるのは嫌だって言ったのはお前たちだろうが!」
相変わらずわめき続けるハゲタカのリーダーを無視しつつ、ジャスミンが合図を出す。
「3……2……1……行くよっ!」
グラディウスが資材搬入口のシャッターを開けたかと思えば、重量を感じさせないなめらかな動きでトラックへと向かう。
その斜め後ろ、トラックの重機関銃の射線が通らない位置にジャスミンが続き、閃光弾が完璧なタイミングで爆発した。
「うおっ…!くそっ!てめえら気合入れろ!あるもん全部ぶっ放せ!」
視界を潰されたとしても、その火力は探索者二人を殺すには十分なもの。
小型ミサイルが熱探知によってグラディウスに誘導され、グレネードランチャーはその爆発で工場を片っ端から破壊しようと射出される。
さらにハゲタカのリーダーは防護スーツである程度閃光弾を遮光できたのか、すぐさまグラディウスへと重機関銃を構えた。
『迎撃モードに移行。マリーゴールドと計算連携』
だが、小型ミサイルはグラディウスのアサルトライフルによってあっさりと迎撃される。
重機関銃の斉射もグラディウスが素早く近くのフォークリフトに隠れ、ジャスミンはその間に回り込む。
『ヘンゼル聞こえる!?ミサイルは潰せたけどグレネードランチャーがそろそろこっちを見る!』
見れば展開された小型隔壁の向こうに、ようやく視界を取り戻したハゲタカの一人がグレネードランチャーをジャスミンたちに向けようとしている瞬間だった。
【というわけで戦闘開始】
【開幕で閃光弾使わせていただきました】

245:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/06/25 23:27:39.91 c+n3rpdh.net
>『肯定します、ヘンゼル。彼らの装備では重機関銃以外、当機の正面装甲は貫けないでしょう。
> 小型ミサイルは直撃すれば危険ですが、迎撃の可能性は87%です。
> 遮光ゴーグルを展開しますので、そちらのタイミングで閃光弾を射出していただければと思います』
「グッドな回答だ。遮光ゴーグルまで装備してるとは。よく出来てるな、本当に」
  グラディウスの回答に親指を立てると、ジャスミンが口を開く。
>「あたしたちが飛び込むと同時に閃光弾をトラック正面で起爆。
> 後は手下を黙らせてグラディウスにボスを拘束してもらう。生け捕りがダメそうならヘンゼル、あんたの判断で砲弾をぶちかまして」
「了解した。まぁ、正直なところ砲弾は極力使いたくないけどな。
 帰りに自動機械と遭遇して、使う必要が生じるかもしれん。奥の手はとっておきたいのが探索者の心理ってもんだろ?」
 俺とジャスミンだけなら使う機会もあるかもしれないが、今はグラディウスがいるからな。
 この高性能な自動機械がいれば戦車の砲弾は温存できるというのが俺の見立てなのだ。
 まぁ当然ながら、いざという時に出し惜しみする気はないけど。
 持ち場に散開した俺たちは三方向に別れて強襲する機会を窺う。
 ジャスミンとグラディウスは資材搬入口に陣取っている。俺はそれよりやや後方の物陰に隠れた。
 ここなら身を隠せるし、身を乗り出せばすぐにトラックを狙えるポイントとなる。他のハゲタカが狙ってきてもすぐに分かるしな。
>「3……2……1……行くよっ!」
 ジャスミンの合図とともに構えていたマルチプルランチャーから閃光弾を発射した。
 放たれた閃光弾はトラックの正面で炸裂し、ハゲタカたちの視界を奪おうと眩い光を発する。
>「うおっ…!くそっ!てめえら気合入れろ!あるもん全部ぶっ放せ!」
 ちっ。これだから馬鹿は困る。視界が潰されてもヤケクソで撃ち回る気だな。
 下手な鉄砲、数撃ちゃ当たるってやつだ。しかも、ハゲタカのリーダーは閃光弾の効きが薄いようだ。
 防護スーツの機能か? 重機関銃の銃口をピタリと正確にグラディウスへと向けている。
 具合の悪いことにミサイルも飛んできた。が、グラディウスはアサルトライフルで正確に迎撃している。
 リーダーが撃ってきた重機関銃はフォークリフトに隠れることで対処したようだ。グラディウスは無事。
 しかも、その攻防の間にジャスミンが抜け目なくトラックへ回り込んでいる。
>『ヘンゼル聞こえる!?ミサイルは潰せたけどグレネードランチャーがそろそろこっちを見る!』
 トラックが展開した隔壁の向こうにいるハゲタカの一人が、グレネードランチャーをジャスミンたちに向けている。
 隔壁に隠れているハゲタカを撃ち落とすのは難しい。単純に考えて、隔壁をぶち抜ける銃弾がいる。
 だがそれが出来るのは俺の手持ちの弾じゃあ戦車の砲弾以外にないだろう。
 少し発想を変えよう。隔壁で防御していても狙えるものがあるとすればどうだ。
 考えてもみろ。防御しながら敵を狙い撃つのだから、グレネードランチャーの銃口は剥き出しだ。
 狙うなら、そいつだ。俺が狙うのグレネードランチャーの銃口。針の穴を通す精密な射撃でグレネードランチャーを潰す。
 俺のサングラスはレーダーを兼ねた端末であり、マルチプルランチャーの照準とも連動している。
 この機能によって射撃を補助することで常人では不可能な精密射撃も可能となる。
 物陰から移動して狙える位置へ動く。使う弾はアヴェンジャーから何発かくすねておいた機関銃の弾丸だ。
 ロングコートのポケットに入っている。今回は1発あれば十分だろう。
「慈悲を乞うがいい」
 誰に言うでもなく、俺は呟いた。
「くれてやるのは『機関銃の弾丸(こいつ)』だけどなッ!!」
 発射された1発の弾丸はグレネードランチャーの銃口に吸い込まれるように侵入する。
 そして、内部で弾丸とグレネードが激突したことによりハゲタカの手元で爆発した。

246:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/06/25 23:28:32.04 c+n3rpdh.net
【精密射撃でグレネードランチャー自体を狙い撃ち、破壊する】

247:ジャスミン ◆26mbO0iBgc
23/07/01 14:11:13.67 XHgD8i/s.net
ただ一発の弾丸がグレネードランチャーを完璧に破壊し、爆発した衝撃でハゲタカが隔壁の向こうに叩きつけられる。
他のハゲタカがそちらに注意を向けている隙を見逃すことなくグラディウスとジャスミンはミサイル発射器に飛び込み、ハゲタカを殴り倒して無力化した。
「まずは一人!」
一度内部に飛び込んでしまえば、隔壁も兵器も意味をなさない。爆発のショックでうめいていたハゲタカをあっさりと拘束してしまえば、残るはリーダーのみ。
小型の陣地と化したトラックの奥でリーダーは困惑を隠せないように銃座から離れていた。
「う、うう……この役立たず共!誰が助けてやったと思ってる!自動機械や同業者から身を守る術を教えてやったのは誰だ!
 シェルターの手下二人と一機のポンコツ相手にいいようにされやがって……!」
銃座に飛び込んだ一人と一機を前にわめきちらし、大口径の拳銃を何度も発砲する。
だがジャスミンには機械腕で防がれ、グラディウスに至っては関節部の液体金属すら貫けない。
間近でジャスミンが解析すると、防護スーツの詳細な情報があっさりと流れ込んできた。
「核汚染、生物汚染、化学汚染、ナノ汚染の完全防護……これも戦前の遺産?
 ヘンゼル、こりゃ当たりだよ。トラックよりよっぽど儲かったかもね」
相互通信で伝えながら、未だに拳銃を振り回すハゲタカのリーダーを殴りつけて黙らせる。
万が一にでも暴れられないようにグラディウスが首筋に名前の由来となった単分子剣を突きつけていて、少しでも怪しい素振りを見せれば首が飛ぶだろう。
「どこでそんなものを拾ったのか、工場をどうやって見つけたのか。色々聞きたいことはあるけどさ……
 まずはそのスーツ、脱いでくれないかい?あんたごとスクラップにしたら、掃除が面倒なんだ」
リーダーが取り落とした拳銃を拾い、機械腕の出力を上げて思い切り握りこむ。
それだけで頑丈な造りのはずの拳銃が鈍い金属音と共にねじれ、潰れていく。
機械腕を開き、男の目の前に突き出された拳銃は、ただのスクラップと化してしまっていた。
「ヘンゼル、あんたも何か聞きたいことある?喋らなかったりしたら脚から順番に潰していくつもりだから、何でもこいつに質問していいよ」
【防衛戦終了、報酬漁り&質問タイム】

248:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/07/08 23:13:16.91 JEMCzd+J.net
 流石はジャスミンと言うべきか、グラディウスとの連携は完璧だ。
 機械腕が届く近距離戦闘に持ち込めればサイボーグである彼女に敵う人間はほぼ、いない。
 トラックが展開する隔壁の内側に侵入した彼女は瞬く間に敵を制圧していった。
>「う、うう……この役立たず共!誰が助けてやったと思ってる!自動機械や同業者から身を守る術を教えてやったのは誰だ!
> シェルターの手下二人と一機のポンコツ相手にいいようにされやがって……!」
 ハゲタカのリーダーは大口径の拳銃を発砲しながら抵抗しているようだが、あまりに虚しい。
 ジャスミンもグラディウスも意に返さないほど、それは無意味な行為だった。
>「核汚染、生物汚染、化学汚染、ナノ汚染の完全防護……これも戦前の遺産?
> ヘンゼル、こりゃ当たりだよ。トラックよりよっぽど儲かったかもね」
「なに? そんな貴重なものをどこで手に入れたんだ……」
 なんて俺が呑気に言っている間に、ハゲタカのリーダーがジャスミンにぶん殴られる。
 死んだんじゃなかろうな。あっ。さすがにジャスミンも手加減してくれているようだ。まだ生きている。
 もっともその首筋にはグラディウスの単分子剣が突きつけられている。この勝負、完全に俺たちの勝ちだな。
>「どこでそんなものを拾ったのか、工場をどうやって見つけたのか。色々聞きたいことはあるけどさ……
> まずはそのスーツ、脱いでくれないかい?あんたごとスクラップにしたら、掃除が面倒なんだ」
 ふむ。確かにただのスカベンジャーにしては、装備が良すぎるな。
 このトラックにしても、防護スーツにしても。どこで手に入れたのか気になるところだ。
 スカベンジャーは基本的に、探索者のおこぼれを拾って生きているわけで、まぁこいつらに関しては探索者を襲ったりしているわけだけども、普通の手段でこれだけ充実した装備を揃えられるとは思えない。
>「ヘンゼル、あんたも何か聞きたいことある?喋らなかったりしたら脚から順番に潰していくつもりだから、何でもこいつに質問していいよ」
 ひいいいい。この子怖いことを平然と口にする。そんなことまで俺は考えてませんよ。
 とはいえ、俺たちの身の安全を守るために確認しておかなければならないことがある。
「じゃあ聞く。ハゲタカ、お前らはこの工場に来たメンバーが全員でいいのか?
 これは大事な質問だから正直に答えろ。俺たちが帰るときに襲われたらたまらんからな」
 そう言いながら、俺はリーダーの防護スーツをぺたぺたと触った。通信機の類がないか確認したのだ。
 もし他にも仲間がいて、しかもリーダーが探索者に捕まったと知られたら面倒ではないか。
 探索者稼業で気をつけるべきなのは、行きより帰りだ。
 行きは体力も十分にあり、装備も整っており、万全の準備ができている。
 しかし、帰りは戦いの後で疲労しており、集中力も散漫で、弾薬などの装備も不十分だ。
 加えて探索で手に入れた戦利品を抱えており、まさにハゲタカのような危険な連中に狙われる可能性まである。
 だから聞いておいた。まだ他にも仲間がいるなら最悪、先手必勝で潰しておく必要すらある。
【質問:ハゲタカはこの工場に乗り込んできたメンバーが全員という認識でいいのかな?】

249:創る名無しに見る名無し
23/07/09 22:35:20.43 EcB5usBVr
毎年毎年懲りもせす゛テ□リストJAL墜落事件か゛どうたらお祭りみたいなことして何が目的なんた゛ろうな
騒音に温室効果ガスにコ□ナにとまき散らさせて,氣候変動させて海水温上昇させてかつてない量の水蒸気を発生させて.
土砂崩れに洪水、暴風,猛暑.大雪にと災害連発させてるテ囗リス├に.核兵器反対みたいな、クソ航空機反対すら主張しないあたり.
巻き添え根性丸出して゛人が死ぬのを望んて゛るのか、テ□リス├JÅLに薄汚い見舞いの品でも出させたいのか,
いす゛れせよバカ晒してるだけのキモチワルヰお話だよな
もしかしてクソ航空機か゛ケ━ザイにとって必要なことだとか勘違いしてたりするのかな
曰本におけるケ一ザイってのは,ー部の賄賂癒着害蟲が地球破壞して災害連発させて國土破壞して人殺して私腹を肥やすことをいうわけだか゛
そんなケ-サ゛ヰとやらか゛マトモなことた゛とか本氣で思ってるとしたら,救いようのないクソガイジ丸出しだそ゛

創価学会員は.何百万人も殺傷して損害を与えて私腹を肥やし続けて逮捕者まで出てる世界最惡の殺人腐敗組織公明党を
池田センセ━が□をきけて容認するとか本氣て゛思ってるとしたら侮辱にもほと゛があるぞ!
URLリンク(i.imgur.com)

250:ジャスミン ◆26mbO0iBgc
23/07/14 19:38:53.55 wO4SliIR.net
ヘンゼルの質問に合わせるようにジャスミンがリーダーの足先に手をかける。
舐めた態度をとればすぐさま機械腕が足と防護スーツをまとめて圧着してしまうだろう。
リーダーは身をよじって反射的に逃げようとしたが、グラディウスは無言で単分子剣を首に押し当てた。

「ぜ、全員だ!全員だよ!拠点に誰か残せば物資をちょろまかす奴がいるかもしれない、
 だから俺が拠点から動くときはいつも全員で動くんだ!」

「そいつはありがたいことだね。通信機もヘルメットだけ?あと防護スーツとトラックの出所もお願い。
 防護スーツはもう脱がなくていいよ、そんなに頑丈じゃないって分かった」

ぎち、と防護スーツの上から締め上げるような音が響く。
感触に悲痛な声をあげたリーダーはさらに情報を吐き出していった。

「そうだ!通信機は他にない!防護スーツもトラックも壊れたシェルターから掘り出してきたんだ……
 だから指を離してくれ!」

『私からも聞きたいことがあります。なぜここを襲撃すると決めたのですか?』

「偵察させた連中が警備の甘い工場が残ってるって言ったからだ。
 アヴェンジャー1体がうろついてるだけのちょろい区画だって……戦前AIがいるなんて知らなかった」

他にも拠点の座標や残った物資など、聞き出せるだけの情報を聞いたところで防護スーツを脱がせる。
いざ下着一枚の姿となってみれば、そこにいるのは無精ひげを生やしたどこにでもいるような中年男性だった。
彼をそのまま縛り上げ、同じようにした手下どもを合わせてトラック前に運んでいく。

「さーて……トラックはまだ運転できるし、後はこいつらまとめて運ぶだけだね。ヘンゼルも手伝って。
 それとマリーゴールド、本当にありがとね」

『こちらこそ、工場を守っていただきありがとうございました。
 本来であれば感謝状と粗品を贈呈するのですが、その余裕もなく……』

もらったデータだけで十分ありがたいよとジャスミンが謙遜しつつ、トラックを動かす。
武器を片付けてスペースを開けた荷台に、機械腕を稼働させてハゲタカたちを放り込んでいく。

「燃料はまだあるし、シェルターに帰るまでは持つ。
 あと何かやり残したこと、ある?」

ジャスミンが汗臭い運転席からヘンゼルに通信を送る。
帰り道は順調になるはずだが、この工場に戻る暇があるほどではない。
少しでもリスクを減らすなら、ここでやるべきことは終わらせておくべきだろう。

【回答:全員で乗り込んでくるタイプだったので奇襲もなく安全に帰れます】

251:へんぜる
23/07/21 20:12:16.97 O5f7AxXB.net
すみません、投下期限を明日に延長させてください!
ちょっと予定が立て込んでたのでまだ一文字も書けて無いのです(汗)
本当に申し訳ないです……。

252:ジャスミン ◆26mbO0iBgc
23/07/21 23:19:31.08 ODqmWQ4P.net
【了解しました リアル優先で大丈夫ですよー!】

253:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/07/22 22:15:10.06 lbDvuS6S.net
>「ぜ、全員だ!全員だよ!拠点に誰か残せば物資をちょろまかす奴がいるかもしれない、
> だから俺が拠点から動くときはいつも全員で動くんだ!」

「なるほど。いい返事をありがとう。これで俺の心配事はなくなったぜ」

>「そいつはありがたいことだね。通信機もヘルメットだけ?あと防護スーツとトラックの出所もお願い。
> 防護スーツはもう脱がなくていいよ、そんなに頑丈じゃないって分かった」

 ハゲタカのリーダーが悲鳴に近い叫び声を上げた。まるで俺たちが悪い奴みたいだな。
 まぁやり方がヤクザ染みてるからしょうがないんだけど。

>「そうだ!通信機は他にない!防護スーツもトラックも壊れたシェルターから掘り出してきたんだ……
> だから指を離してくれ!」

 戦ってる時の威勢はどこにいったのか、思った以上にペラペラ喋ってくれている。

>『私からも聞きたいことがあります。なぜここを襲撃すると決めたのですか?』

 マリーゴールドも便乗して質問をぶつけた。ハゲタカのリーダーはやはり素直に答えてくれた。

>「偵察させた連中が警備の甘い工場が残ってるって言ったからだ。
> アヴェンジャー1体がうろついてるだけのちょろい区画だって……戦前AIがいるなんて知らなかった」

 その後、ハゲタカのリーダーは身ぐるみを剥がされ、拘束されたうえで下着一枚の姿になっていた。
 無精髭を生やした普通のおっさんである。悪辣で危険なハゲタカも中身はどこにでもいそうな人だったというオチだ。
 汚染区域内で防護スーツも何もないのに大丈夫なのは、このおっさんだけ解毒剤を飲んでいたためである。

>「さーて……トラックはまだ運転できるし、後はこいつらまとめて運ぶだけだね。ヘンゼルも手伝って。
> それとマリーゴールド、本当にありがとね」

「オーケーオーケー。こいつらは大事な報酬の引換券だからな。任せておきな」

 ハゲタカたちは存外大人しかった。暴れたり抵抗する様子もなく素直にトラックへと放り込まれていく。
 こいつらの収容が終わったところで、ジャスミンから通信が入った。

>「燃料はまだあるし、シェルターに帰るまでは持つ。
> あと何かやり残したこと、ある?」

「いや……やり残したことは特にないが……こんだけあれば結婚式もなんとかなりそうだし……。
 あ……そうだ。ひとつ忘れてたことがあったような気がするな。ほら、あれだよあれ」

 上手く口から言葉が出てこない……ハゲタカが乱入してきたせいですっかり忘れていたが、
 マリーゴールドのいるサーバー室で、ジャスミンが確か何か言いかけていた。「ちょっと気になることが―」って。
 もう工場から立ち去るので関係ないかもしれないが、気になることってのは結局何だったんだ。
 俺はトラックに乗り込みながら、そのことをジャスミンに聞いてみた。

「なあ、お嬢、サーバー室で言いかけてたことは何だったんだ?
 この工場のことなのか? もしそうなら、もう帰っちまうから真相は闇の中だな……。
 まぁそのことを調べても藪蛇かもしれん。気にしなくていいのなら、俺はそのことは忘れるよ」


【お待たせしました(汗)期限延長ありがとうございました!】

254:ジャスミン ◆26mbO0iBgc
23/07/27 19:56:42.97 BxX+VTJn.net
ヘンゼルの問いに、ジャスミンも運転席に座りながら思い出す。
あの時は言いそびれてしまったが、事が全て終わった今ならその話もできるはずだ。
「マリーゴールドがサーバー室に閉じ込められてる間、アラームウォーカーの移動パターンを誰が変えたかって話よ。
 あいつらは自律型の思考はできないはずだから、マリーゴールドみたいな自分で考えられるやつが指示しないとそのままのはずなのに」
『それでしたら、アラームウォーカーたちに再接続した際にすぐ分かりました』
二人で頭をひねって考えていたところに、マリーゴールドがすっと回答してくれる。
積み込みの手伝いをしてくれていたグラディウスが回答に合わせるように動きを止めて、こちらに向き直った。
『グラディウスが警備パターンをいくつか構築し、事前条件を付けてあらかじめアラームウォーカーにダウンロードしてくれていたのです』
『当機の目的はこの工場を防衛することです。何らかの形で当機が工場を防衛できなくなっても、最大限の防御を構築できるようにするためでした』
二人のAIがよどみなく答えてくれたことで謎は全て解けた。
だが、ジャスミンはさらに生まれた謎を問いかけてみる。
「あの警備パターンって、どういう条件?たぶん工場を漁ってたのは私だけなんだけど」
好奇心と興味と一抹の不安が混ざった疑問に、グラディウスはやはり躊躇いなく答えてくれる。
『はい、暴力的かつ遵法意識に欠けた人間が工場に押し入ってきた場合のパターンです。
 ジャスミン、あなたの行動は事前条件を87%満たしていました』
「…………ヘンゼル、帰ろうか。もうやることないし」
運転席の背後に置かれた機械腕を見つめて、悲しみを込めた声でジャスミンは呟く。
助手席にヘンゼルが座ってしばらく経ってからも、まだ彼女は機械腕を見つめ続けていた。
人間に言われたなら反論のしようがあったかもしれないが、合理的判断しかしない軍事AIにそう告げられては何も言い返せないのだ。
(次からは機械腕以外の装備も使おう……)
哀愁すら漂う雰囲気になりかけたが、マリーゴールドがその雰囲気をほぐすように話してくれた。
『結果としてお二人が工場を守っていただいたことに、私たちは強く感謝しています。
 どうかお二人が無事に帰還し、人類復興の一助とならんことを。さようなら、ジャスミンさん、ヘンゼルさん』
その明るい声に、ジャスミンはかすかな笑みを浮かべて応える。
車のエンジンが始動し、振動が車全体に響いた。
「うん、さようならマリーゴールド。また会いたいね」
【というわけで無事帰還】
【ここからちょっとだけ続きます】

255:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/08/04 19:43:35.65 5C7P4IR+.net
【ゲェェェーッ日付の確認を間違ってました。金曜期限だと思ってました、すみません!】
【すぐ書いて夜中には投下するのでお許しを……!】

256:ジャスミン ◆26mbO0iBgc
23/08/04 20:15:00.09 quQFVZ9t.net
【あらら…でもそういうことはよくありますからお気になさらず】

257:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/08/04 22:23:37.65 5C7P4IR+.net
>「マリーゴールドがサーバー室に閉じ込められてる間、アラームウォーカーの移動パターンを誰が変えたかって話よ。
> あいつらは自律型の思考はできないはずだから、マリーゴールドみたいな自分で考えられるやつが指示しないとそのままのはずなのに」
「ああ、そんなこともあったな。完全に忘れてたぜ……」
 休憩中にそんなことを俺も考えていた気がするが、結局答えの出ないままここまで来てしまった。
 今ならマリーゴールドに聞けば何か分かるのかもしれないな。まさか他にもAIがいるなんてことはないよな。
>『それでしたら、アラームウォーカーたちに再接続した際にすぐ分かりました』
「ほう。俺はそんな利口な方じゃない。種明かしを教えてくれよ。つまり、どういうことだったんだ?」
>『グラディウスが警備パターンをいくつか構築し、事前条件を付けてあらかじめアラームウォーカーにダウンロードしてくれていたのです』
「……それはグラディウスが移動パターンを変えたってことか。グラディウス、おたく、戦う以外もできるんだな……」
 冷静に考えてみれば、マリーゴールド以外にもAIはいた。グラディウスがそうなのだ。
 俺はてっきりグラディウスは戦闘を専門にしていると思い込んでいたので、その可能性は考えてなかった。
>『当機の目的はこの工場を防衛することです。何らかの形で当機が工場を防衛できなくなっても、最大限の防御を構築できるようにするためでした』
「なるほどなぁ。言われてみれば分からんでもない理屈だな」
 俺がそんな風に相槌を打つと、ジャスミンが更なる疑問をぶつけた。
>「あの警備パターンって、どういう条件?たぶん工場を漁ってたのは私だけなんだけど」
 次のグラディウスの回答で俺は思わず噴き出しそうになった。
>『はい、暴力的かつ遵法意識に欠けた人間が工場に押し入ってきた場合のパターンです。
> ジャスミン、あなたの行動は事前条件を87%満たしていました』
「……まぁ、なんだ。気にしすぎるなよ。お嬢は確かに荒っぽいところもあるが、それだけじゃないだろ。
 困ってたマリーゴールドにあれだけ親切にしてあげてたじゃないか。そういう優しい面もあるってこと、俺は知ってる。
 誰にでもできることじゃないさ。暴力的な優しさというか……どういう意味かは俺も分からんが……まぁ、気にしすぎるなよ」
 なんとかフォローしようと試みたが、思い返すほどジャスミンの荒っぽい光景ばかりが思い浮かんでしまう。
 でもジャスミンが根本的には、気前のよい優しい奴だってのは、俺の本心でもある。
 当の本人は少しショックを受けているようだが、まぁ慎みを覚えるのもいいんじゃないか。たぶん。
>「…………ヘンゼル、帰ろうか。もうやることないし」
「そうだな。マリーゴールド、最後まで世話になった。また金に困ったら訪ねてきていいか。
 ……冗談だよ。街に戻ってもこの工場が不利になるようなことは極力しないでおくから、安心してくれ」
>『結果としてお二人が工場を守っていただいたことに、私たちは強く感謝しています。
> どうかお二人が無事に帰還し、人類復興の一助とならんことを。さようなら、ジャスミンさん、ヘンゼルさん』
 結果だけ見れば予想以上だ。これならグレーテルの結婚式が本当に実現できそうだ。
 俺の脳裏に笑顔でウェディングドレスを着て、新婦と共にいる妹の姿が思い浮かぶ。
 そうだ。これからきっと、グレーテルは幸せの中を歩いていく。それだけが俺の望みのすべてだった。

【無事帰還できて何よりです。まさかの投下期限勘違い、重ね重ね申し訳ないです!】

258:ジャスミン ◆26mbO0iBgc
23/08/10 19:51:43.02 riOGl8f2.net
センターに戻った二人を出迎えたのは、センターに登録されていないトラックを警戒する防衛部隊が突きつける銃口だった。
ジャスミンが運転席から身を乗り出して怒鳴り散らせば誤解は解けたものの、機械腕を起動する一歩手前まで怒りに溢れていたのは間違いないだろう。
それからすぐ、戦利品を探索者支援センターに持ち込んで換金を依頼したときのことだ。
わざわざジャスミンとヘンゼルが狭い別室に通され、鑑定結果を記した書類を職員から丁重に渡される。
合計金額に目を通してすぐ、部屋全体に響く怒声をジャスミンが叫んだ。
「あんだけ苦労したナノマシンの設計図が一切の報酬なしってどういうこと!?
 ハゲタカ共の賞金がいまいち少ないのはいいけどさ、こっちは戦前の本物、魔法みたいな代物なのに!」
「ですから……先程も説明した通り、内部に敵対的なデータが入っている可能性を考慮し、
 シェルターの技術班によって隔離エリアでの研究がされた後、改めて評価いたしますので、現時点では探索者としての評価を上乗せするということでご理解いただきたいのです……」
戦前の部品は高く買い取られたものの、ハゲタカは揃って捕まえたせいか逆に脅威を排除したとみなされず小型自動機械レベルの賞金、
学習型毒性分解ナノマシンの設計図はデータの解析中で評価不能。
機械腕の修理や点検の費用を差し引けば、儲けは微々たるものだ。
「嘘でしょ、これじゃナノマシンの修理槽なんて作れない……また修理屋やるしかないってこと?
 マリーゴールドがウイルスなんて仕込むわけがないってのに……」
「ヘンゼルさん、あなたにもご理解いただければと……探索者としての評価は、大幅に上乗せされますし……ご家族にシェルターの施設を利用する権利も与えられますので……」
職員がハンカチで額に浮いた汗を拭きながら、心底申し訳なさそうにヘンゼルへ深く頭を下げる。
おそらくは、この職員も報酬の算出方法に納得していないのだろう。
【いざ凱旋、と思いきや……けれどもシェルター内部は広いので、大抵の施設があるのです】

259:ヘンゼル ◆.lZxadOr.I
23/08/18 00:31:27.98 8bSw9D7B.net
>「あんだけ苦労したナノマシンの設計図が一切の報酬なしってどういうこと!?
> ハゲタカ共の賞金がいまいち少ないのはいいけどさ、こっちは戦前の本物、魔法みたいな代物なのに!」
 ジャスミンの怒号が狭い部屋に響いた。さっきからずっとそうだ……。まぁ俺も理性が無ければそうしていたかもしれない。
 ただ、俺はもういい大人なので、納得がいかないことでもそう声を荒げずにいられたってだけだ。
>「ですから……先程も説明した通り、内部に敵対的なデータが入っている可能性を考慮し、
> シェルターの技術班によって隔離エリアでの研究がされた後、改めて評価いたしますので、現時点では探索者としての評価を上乗せするということでご理解いただきたいのです……」
「それはいつ頃になるんだ。十年後とか二十年後じゃねーだろうな……そんな先まで俺が生きてる保証はないぞ」
 探索者というのは命懸けの仕事だ。いつポックリ逝くかなんて誰も予想できない。
 どれだけ万全の準備を整えて注意を払っていたとしても、不測の事態であっさり死ぬ。そういう世界だ。
>「ヘンゼルさん、あなたにもご理解いただければと……探索者としての評価は、大幅に上乗せされますし……ご家族にシェルターの>施設を利用する権利も与えられますので……」
「理解はしてるさ。納得できるかは別問題だけどな……」
 俺の頭の中で占められていたのは、妹グレーテルの結婚式のことだけだ。
 本当はもっとゴネたいところなのだが、昔に散々ゴネた結果、探索者としての評価がかえって下がったことがある。
 ようするにシェルターの決定は絶対なのだ。いち探索者がどう逆らってもいいことは何もない。
 それに俺にとっての問題は結局のところ、報酬額の低さよりも、妹が無事に結婚式を開けるか、幸せに生きていけるか。
 たったそれだけのことなのだ。心の中で反芻すると、それは驚くほどシンプルだった。だから怒りもそれほどではない。
「なぁ、俺や俺の家族はシェルターの施設が利用できるんだったな。俺はシェルターの中のことをよく知らん。あまり育ちの良い方じゃなかったからな。だから噂でしか知らないんだが、シェルターの中には『教会』があるってのは本当なのか?」
 戦前の宗教文化というのは、今の世の中ではほとんど失われている、と言われている。
 だがシェルターの中には実に多様な施設があり、体裁だけではあるが教会もあると聞く。
「いや別に宗教に熱心なわけじゃないんだ……ただ、教会でやることってのは何も祈るばかりじゃないだろ。
 教会で結婚式を開きたい。俺の妹の。それがたったひとつの望みなんだ。金はなんとかする」
 なんとかするって簡単に言っちまった。でも当てがないわけじゃない。
 最悪……《魔女》のやつに頼めば、なんとかなるかもしれない。出来るならやりたくないけど。
 借りたらたぶん俺は理由をつけられて一生奴の奴隷になることだろう。まぁ、妹のためならそれも悪くない。

【厳密には期限超過したことをここにお詫び致します】
【ついでに>>257で新婦と書きましたが正しくは新郎ですね。失礼しました】

260:ジャスミン ◆26mbO0iBgc
23/08/24 16:15:41.08 GPRaVfy8.net
ヘンゼルの質問に、職員は壁に取り付けられた本棚からパンフレットを取り出して二人に渡す。
『シェルターに奉仕し、戦前の施設を楽しもう!』と書かれたそれは、シェルターに居住していない探索者や一般人向けに作られたものだ。
「え、ええ……宗教施設は戦前にあったものはそろっておりまして、シェルターに一定の金額を納付するか、
 大いに役立つと判断された物品を持ち帰るなどすれば、シェルター外の人間であっても施設を利用することができます」
「金持ち連中だけが使ってるような制度だけど、今回持ってきた設計図なら十分OKなんじゃない?
 敵対的データが入ってる可能性なんて、探索者が持ち帰ったもの全部にありえる話だし」
パンフレットを読み流したジャスミンが職員に質問してみると、その回答は二人にとって理想的なものだった。
「はい、汚染除去のために消毒と検査を受けていただく必要はございますが、
 結婚式であれば十分可能な利用範囲です。シェルター内部でも利用されている方は多いですし、
 参加者は30人程度が限界ですが、お二人の功績であれば金銭の納付は必要ないと思われます」
ようやく報酬の折り合いがつけられると思っているのか、職員の表情もどことなく柔らかい。
ジャスミンはパンフレットにあった元素変換システムの細かい項目を読み込んでおり、彼女が受け取る報酬については不満がありつつも納得しているようだ。
「あたしはゴネ終わったけど、ヘンゼルはどう?
 タダで、シェルターで、結婚式。なかなか拍が付きそうなもんじゃない?」
「必要な準備や費用についてもセンター側で負担させていただきますし、
 どうか納得していただければと……」
【最近じゃ珍しくないもんな……と思っていました>新婦】
【そしてなんとかできそうな結婚式!】


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