【チャイナ・パニック2】海棠的故事at MITEMITE
【チャイナ・パニック2】海棠的故事 - 暇つぶし2ch700:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:03:25 ydqtr3bd.net
「だからそれこそが」メイファンは冷たい笑いを浮かべて答えた。「お前の作った幻だ」

701:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:06:19 ydqtr3bd.net
「あの二人を救ったことにし、現実を認めないために、お前はこの世界を作ったんだ」
「違う!」メイファンの言葉にユージンは苛立ったように立ち上がった。「それ以上言うと……!」
「ほう」メイファンがニヤリと笑う。「幻で私をどうにかするのか」

702:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:08:58 ydqtr3bd.net
「大体おかしいでしょ!」ユージンは叫んだ。「この世界が幻なら、椿の身体から出た僕がどうして生きてるの!?」
「認めたな?」メイファンは聞き逃さなかった。「自分が椿の中にいたことを」

703:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:12:26 ydqtr3bd.net
「ルーシェンが幻なら」ユージンはメイファンの言葉を無視した。「どうして僕は生きてるのかな!?」
「そうキチガイみたいに笑うなよ」
「うるさい! どうしてか答えてみろ!」
「そこがお前の凄いところだ」メイファンは答えた。「お前、幻で身体を作ったな?」

704:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:14:51 ydqtr3bd.net
「そんなことまで出来るとは思わなかった」
メイファンは感心したような馬鹿にするような顔でユージンに言った。
「幻で作った人物の身体に入って、息をしていられるとはな」

705:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:18:22 ydqtr3bd.net
「はっきり言ってみろ」
ユージンの顔が険しくなった。
「この僕に、言いたいことをはっきり言ってみろ」
メイファンはさすがに少し顔が青ざめた。
「椿とランが本当はどうなったって言いたいのか、はっきりと言ってみろ!」

706:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:20:11 ydqtr3bd.net
メイファンは顔中に汗を流しながら、それでも口にした。
「海の底で、死体に」
「ただいまー」と言いながら、チョウが部屋に入って来た。

707:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:22:50 ydqtr3bd.net
「チョウ!」ユージンが歓喜の声を上げた。
「おう、無事帰ったぜ」チョウは眠そうな声で元気に言った。
「聞いてよ! メイファンが変なことばかり言うんだ!」
「あ? 変なことって?」
「椿とランが僕の兄弟だとか、チョウが死んだのを見たとか」
「あぁ、死んだぜ、俺」チョウは笑いながらそう言った。

708:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:25:45 ydqtr3bd.net
「死んだ……? でも、ここに……いるじゃん」
メイファンは二人のやり取りをニヤニヤしながら見物していた。
チョウが言った。
「死んだけど、霊婆に生き返らされた」
「霊婆に?」
「あぁ。俺に霊婆の後を継げってさ」

709:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:27:23 ydqtr3bd.net
「あぁ、そうだったな。あのアニメでも確か、そうだった」
メイファンが口を挟んだが、二人はまるで別の世界にいるように聞いていなかった。

710:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:29:51 ydqtr3bd.net
「ユゥ、一緒に霊婆の島で暮らそうぜ」
「チョウ……本当? 連れて行ってくれるの?」
「あぁ」チョウは優しく微笑むと、ユージンの手を取った。「お前を俺の、お嫁さんにしたい」
メイファンは腕を組むと、目を伏せた。

711:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:34:02 ydqtr3bd.net
『どうにもならなかった』
メイファンは頭の中で、ララへの言い訳を考えていた。
『命令通り、チェンナは守った。しかしお前の子は、3人とも、救えなかった』

712:創る名無しに見る名無し
20/03/10 00:34:38 ydqtr3bd.net
      (完)

713:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:36:13 ydqtr3bd.net
うーん。もっと1レスの文章少なくすればよかった。
大分余ってしまった……。

714:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:43:03 ydqtr3bd.net
【あとがき】

このスレッドの物語は中国の劇場用長編アニメーション映画「大魚海棠」をベースに、勝手にユージンとメイファンらを交えて作り替えた。
最初は椿が二人になる予定だったが、書いているうちに変わってしまった。
動機としては原作アニメの映像美に憧れ、ヴィジュアル重視の小説を書きたいと思ったのだが、あまりうまく行かなかったなと思っている。
本当はもっと詩のような物語にしたかったのだが、どうにも力が及ばなかった。

715:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:46:54 ydqtr3bd.net
椿、祝融、赤松子、霊婆など、多くの人物は原作にも登場する。
ランは原作ではクン、秀珀は鼠婆(シュウポー)と名前が違う。

716:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:48:54 ydqtr3bd.net
椿


URLリンク(i.imgur.com)

717:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:51:59 ydqtr3bd.net
椿は元々アニメから名前を借りただけの別キャラで、海底世界の椿と出会って冒険を共にする予定だった。
なぜか書いているうちに変わってしまった。

【原作との相違点】
原作ではチョウの幼馴染み
髪は赤くない
元々海底世界の住人

718:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:53:27 ydqtr3bd.net
チョウ


URLリンク(i.imgur.com)

719:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:56:40 ydqtr3bd.net
チョウは原作ではそれほど好きなキャラではないが、本スレのチョウは個人的に贔屓するキャラとなった。

【原作との相違点】
椿のことは大好きだが、そんなに引っ込み思案ではない

720:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:57:37 ydqtr3bd.net
祝融


URLリンク(i.imgur.com)

721:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 00:59:38 ydqtr3bd.net
祝融は原作ではあまり登場回数が多くはない。
原作の登場キャラの中でもかなり個人的に好きなほうだったので、本スレではいっぱい登場してメイファンとも戦ってもらった。

【原作との相違点】
原作ではそこまで強くない

722:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:00:25 ydqtr3bd.net
赤松子


URLリンク(i.imgur.com)

723:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:02:43 ydqtr3bd.net
赤松子のほうが原作では祝融より登場回数が多い。
祝融と同じぐらい好きなキャラ。

【原作との相違点】
元々椿とは仲良し
本スレのようにナヨナヨとはしていない
神通力を攻撃には使っていない

724:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:03:30 ydqtr3bd.net
鹿神


URLリンク(i.imgur.com)

725:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:04:48 ydqtr3bd.net
ルーシェンは原作とはまったく違うキャラ。
途中でユージンが入る身体が欲しくなり、急遽名前と下半身だけ借りた。
原作との相違点はありすぎるので記さない。

726:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:05:32 ydqtr3bd.net
霊婆


URLリンク(i.imgur.com)

727:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:06:26 ydqtr3bd.net
霊婆はキャラ自体はほぼ原作の通り。

728:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:07:18 ydqtr3bd.net
鼠婆


URLリンク(i.imgur.com)

729:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:09:47 ydqtr3bd.net
鼠婆はいかにもジブリのパクリ臭いキャラで、好きではないので出さない予定だった。
代わりに出した秀珀というキャラがこの鼠婆にあたる。
原作でも最後には絶世の美女に変身して人間界へ行くが、その目的は不明だったように記憶している。

730:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:12:56 ydqtr3bd.net
ラン(大魚)


URLリンク(i.imgur.com)

731:ちゃめ
20/03/10 01:14:47.86 ydqtr3bd.net
ランは原作での名前はクン。
元々ランはクンとは違うキャラのつもりで作ったので、相違点はありすぎていちいち記さない。

732:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:17:36 ydqtr3bd.net
クスノキの老人


URLリンク(i.imgur.com)

733:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:22:40 ydqtr3bd.net
クスノキの老人は原作では名前が「丿」。
もちろん原作ではアニメオタクではない。
基本的には原作のキャラに従った。
>>168の「お前が正しいと思うことなら、しなさい。それを皆がおかしいと思うのなら、皆のほうが間違っているのだ」
のセリフはまんま原語のセリフをパクった。
しかし最近Netflixで日本語版を観る機会があったのだが、日本語訳では「優しいお前のすることが間違いであるわけがない」みたいに変えられていた。

734:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:23:47 ydqtr3bd.net
さて、大分スレが余ってしまったが……これ以上書くことがない。

735:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:24:35 ydqtr3bd.net
あ。ちなみに>>683の歌を歌っているのは男性歌手である。

736:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:37:02 ydqtr3bd.net
さて本スレは自分がヴィジュアル的なものを書きたいという理由から一人で書いてしまったが、
次スレはリレー小説形式にするつもりである。
参加者がなければまた自分一人で書いてしまうつもりではあるが、
どうかそんな寂しいことにはならないよう、多数のご参加をお願いしたい。

737:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:40:36 ydqtr3bd.net
ただし、今はチャイナがリアルでパニックになってしまっているので、次スレではタイトルを変える予定である。
台湾は台北を舞台に「TPパニック」にしようと思っている。

738:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:41:21 ydqtr3bd.net
ちなみに台湾もコロナウィルスに曝されていると思っている方は多いかもしれないが、
政府が迅速に対応し、マスクの無料配布、各施設での衛生管理も徹底されており、日本よりも安全な状況である。
むしろ日本からの旅行者のほうが警戒されている。

739:ちゃめ ◆ImXwiGbh5w
20/03/10 01:42:04 ydqtr3bd.net
私は台湾旅行が趣味と言ってもいいほどなのだが、
あぁ……。しばらく台湾行けないなぁ。

740:創る名無しに見る名無し
20/03/14 16:25:07.14 cidPB1b9.net
740

741:創る名無しに見る名無し
20/05/02 09:35:00 otBhvPGx.net
さてと

742:創る名無しに見る名無し
20/05/02 09:35:17 otBhvPGx.net
何をしようか

743:創る名無しに見る名無し
20/05/02 09:43:49 otBhvPGx.net
うーん

744:創る名無しに見る名無し
20/05/02 09:44:06 otBhvPGx.net
何も思い浮かばない

745:創る名無しに見る名無し
20/05/02 09:44:56 otBhvPGx.net
とりあえずこの板って、常駐3人ぐらいしかいないの?
一見さんも月に数えるほどっぽい

746:創る名無しに見る名無し
20/05/15 17:18:07 xzsxXpJO.net
読んでないけど(ごめんw)なんか頑張って更新してる人がいるなーと思ってたよ
完結乙

>>745
もうちょっといる気もするけど特定スレのリレーだけ参加して去っていく感じだな
あと自粛で微妙に層が変わったような感覚がある(小中学生っぽいノリが増えた)

747:創る名無しに見る名無し
20/06/04 17:23:54.48 8X9F5GxQ.net
( ^ω^ )(((o(*゚∀゚*)o)))( ≧∀≦)ノ

748:創る名無しに見る名無し
20/08/02 15:34:29.49 fF49KMkW.net
最後まで読んだ。感動した

749:ちゃめ ◆1afS6ccHuc
20/08/03 04:47:28 7cssXkZn.net
ありがとうございます。
釣りだとしても嬉しい。
下敷きにしてるアニメは映像美がとにかく凄いですよ。netflixで日本語吹き替えで観られるのでよかったらどうぞ。

750:ちゃめ
20/08/03 07:44:40.33 7cssXkZn.net
原作アニメの日本語タイトルは確か「紅き大魚の伝説」だったかな。
「君の名は」の声優さんが声担当してたと思う。

751:創る名無しに見る名無し
20/11/26 17:05:31.85 5Nw+R1cX.net
良スレ

752:創る名無しに見る名無し
20/11/26 17:48:46.03 Nnh6k9mU.net
糞スレ

753:創る名無しに見る名無し
20/11/26 17:49:38.87 BB5fdTsk.net
他スレ荒らしの巣

754:創る名無しに見る名無し
20/11/26 23:02:38.39 aeCuq5MC.net
『やんごとなき駄目ドラゴン』#1
「……と、言うわけで一部の気の荒い個体や血気盛んな若い者を除いて、基本的に竜族はテリトリーやタブーを
侵されない限り進んで他者を襲わない。古竜と呼ばれる格の高い竜ともなればその特徴は尚、顕著となる」
王国大学。竜人リューコを講師として招いての集中講義だ。
「よって切羽詰まった冒険の時には、刺激せずに通り過ぎる事をお勧めする。しかし多くの竜が財宝や伝説級の
武具を保持している為に、それを目当てに戦いを挑む冒険者も多くいる。心当たりがあるだろう?」
会場にクスクスと笑いが漏れる。大いに心当たりがあるのだから仕方が無い。
「先程竜族は無闇に戦わないと言ったが、覚悟して挑んでくる挑戦者は大歓迎だ。強者に戦いを挑まれ、それを
斥ける事、斥けられる事は最大の誉れだからな。むしろその為に日頃から宝物を溜め込んでると言っても良い。
これらのものは身も蓋も無い言い方をすれば餌なんだが、竜族側の真意は自らを退治する勇者には最大限の
寿ぎを持って応えたい。その褒賞がショボかったら自らの沽券に関わる、ぶっちゃけると見得だな。」
竜視点の戦いの論理。他ならぬ竜人からの言葉ゆえに説得力はいや増す。
「よって、竜族相手には十分に備えて、容赦無く、精一杯戦って貰いたい。そして勝ったなら、その事を大いに誇って
吹聴して欲しい。諸君らの今後の新たな竜退治伝説に期待する。御静聴ありがとう」
大きな拍手が沸き起こる。名高い竜人によるカリスマ溢れる講義であった。

その後は参加者各人に軽食や飲み物が配られ、幾分気楽な空気の中での質疑応答タイムとなった。
「竜と竜人はどう違うんですか?」
王国に来る前までJKだった雪乃は往年の勘を取り戻し真っ先に質問する
「竜人族は意外と種の歴史が浅い。発生条件に天然タイプと合成タイプとが存在する。
天然タイプは、人語を解する温厚な竜が人間と懇ろになってイタしたり、神として崇められた古竜が人身御供で
捧げられた娘と、折角だからとヨロシクやってしまった結果生まれた者だ。」
「……壊れてしまわないのでしょうか。竜とイタして……妄想が捗ります」
誰かが小声で呟いていたが、皆聞こえないフリをした。
「そして合成タイプは、少し昔にどこぞの神々がやたらと竜と多種族とを掛け合わせる実験に奔走した時期があ
って、少なくない竜人が生み出され放逐された。結果、従来稀にしか生まれず、互いに出会う事がなかった竜人が、
集まり、竜人同士の交配が進み、今では小さいながらコミュニティを形成するまでになった。この合成タイプの出現
が竜人族の発生の契機と言えるだろう。」
生命の創造。普段は様々な雑務に勤しむ神々も、偶には神ならではの仕事をこなすようだ。
余談だがハムスターも、ごく最近、とある森に番が目撃されたのを皮切りに、以後世界に広がっていったと言う。
閑話休題。
「竜人族の家格はどのようにして定まっておりますの?本人の実力?先祖の功績かしら?」
ヴォルケッタ子爵(笑)が扇子で口元を隠しつつ質問する。
主催者のマリーは、「はいはい、貴女はどっちもありますね……」といった様子で溜息をつく。
リューコはやや苦笑しつつ、
「強い先祖を持つ家の竜人は地力がそもそも高い。よって次代が受け継ぐ財産も多くなる。その財産を有意義に
用いて更に強くなる。結果、その竜人は発言権も強くなる。これが人間の言う家格というのかどうか……」
「しかし、やはり実力至上主義だな。どんなに金持ちでも弱ければ多種族に退治されて、ハイ、それまでだ。
むしろ……私やこどらのように偉大な古竜を先祖を持つ家系の者は、簡単に負けたりしたら、受け継いだ力
を生かせなかった愚か者と一般(竜)人以上の誹りを受ける。これが家格というならば難儀なものだな」
「ほう、ほう……ほへっ?」
ヴォルケッタを含む全員の視線が、軽食を食べてお腹がくちくなり、涎を垂らして午睡を満喫するこどらに注がれる。
続く?

755:創る名無しに見る名無し
20/11/26 23:02:56.57 j0lmF6J/.net
『やんごとなき駄目ドラゴン』#1
「……と、言うわけで一部の気の荒い個体や血気盛んな若い者を除いて、基本的に竜族はテリトリーやタブーを
侵されない限り進んで他者を襲わない。古竜と呼ばれる格の高い竜ともなればその特徴は尚、顕著となる」
王国大学。竜人リューコを講師として招いての集中講義だ。
「よって切羽詰まった冒険の時には、刺激せずに通り過ぎる事をお勧めする。しかし多くの竜が財宝や伝説級の
武具を保持している為に、それを目当てに戦いを挑む冒険者も多くいる。心当たりがあるだろう?」
会場にクスクスと笑いが漏れる。大いに心当たりがあるのだから仕方が無い。
「先程竜族は無闇に戦わないと言ったが、覚悟して挑んでくる挑戦者は大歓迎だ。強者に戦いを挑まれ、それを
斥ける事、斥けられる事は最大の誉れだからな。むしろその為に日頃から宝物を溜め込んでると言っても良い。
これらのものは身も蓋も無い言い方をすれば餌なんだが、竜族側の真意は自らを退治する勇者には最大限の
寿ぎを持って応えたい。その褒賞がショボかったら自らの沽券に関わる、ぶっちゃけると見得だな。」
竜視点の戦いの論理。他ならぬ竜人からの言葉ゆえに説得力はいや増す。
「よって、竜族相手には十分に備えて、容赦無く、精一杯戦って貰いたい。そして勝ったなら、その事を大いに誇って
吹聴して欲しい。諸君らの今後の新たな竜退治伝説に期待する。御静聴ありがとう」
大きな拍手が沸き起こる。名高い竜人によるカリスマ溢れる講義であった。

その後は参加者各人に軽食や飲み物が配られ、幾分気楽な空気の中での質疑応答タイムとなった。
「竜と竜人はどう違うんですか?」
王国に来る前までJKだった雪乃は往年の勘を取り戻し真っ先に質問する
「竜人族は意外と種の歴史が浅い。発生条件に天然タイプと合成タイプとが存在する。
天然タイプは、人語を解する温厚な竜が人間と懇ろになってイタしたり、神として崇められた古竜が人身御供で
捧げられた娘と、折角だからとヨロシクやってしまった結果生まれた者だ。」
「……壊れてしまわないのでしょうか。竜とイタして……妄想が捗ります」
誰かが小声で呟いていたが、皆聞こえないフリをした。
「そして合成タイプは、少し昔にどこぞの神々がやたらと竜と多種族とを掛け合わせる実験に奔走した時期があ
って、少なくない竜人が生み出され放逐された。結果、従来稀にしか生まれず、互いに出会う事がなかった竜人が、
集まり、竜人同士の交配が進み、今では小さいながらコミュニティを形成するまでになった。この合成タイプの出現
が竜人族の発生の契機と言えるだろう。」
生命の創造。普段は様々な雑務に勤しむ神々も、偶には神ならではの仕事をこなすようだ。
余談だがハムスターも、ごく最近、とある森に番が目撃されたのを皮切りに、以後世界に広がっていったと言う。
閑話休題。
「竜人族の家格はどのようにして定まっておりますの?本人の実力?先祖の功績かしら?」
ヴォルケッタ子爵(笑)が扇子で口元を隠しつつ質問する。
主催者のマリーは、「はいはい、貴女はどっちもありますね……」といった様子で溜息をつく。
リューコはやや苦笑しつつ、
「強い先祖を持つ家の竜人は地力がそもそも高い。よって次代が受け継ぐ財産も多くなる。その財産を有意義に
用いて更に強くなる。結果、その竜人は発言権も強くなる。これが人間の言う家格というのかどうか……」
「しかし、やはり実力至上主義だな。どんなに金持ちでも弱ければ多種族に退治されて、ハイ、それまでだ。
むしろ……私やこどらのように偉大な古竜を先祖を持つ家系の者は、簡単に負けたりしたら、受け継いだ力
を生かせなかった愚か者と一般(竜)人以上の誹りを受ける。これが家格というならば難儀なものだな」
「ほう、ほう……ほへっ?」
ヴォルケッタを含む全員の視線が、軽食を食べてお腹がくちくなり、涎を垂らして午睡を満喫するこどらに注がれる。
続く?

756:創る名無しに見る名無し
20/11/26 23:03:08.87 N1di0+eK.net
『やんごとなき駄目ドラゴン』#1
「……と、言うわけで一部の気の荒い個体や血気盛んな若い者を除いて、基本的に竜族はテリトリーやタブーを
侵されない限り進んで他者を襲わない。古竜と呼ばれる格の高い竜ともなればその特徴は尚、顕著となる」
王国大学。竜人リューコを講師として招いての集中講義だ。
「よって切羽詰まった冒険の時には、刺激せずに通り過ぎる事をお勧めする。しかし多くの竜が財宝や伝説級の
武具を保持している為に、それを目当てに戦いを挑む冒険者も多くいる。心当たりがあるだろう?」
会場にクスクスと笑いが漏れる。大いに心当たりがあるのだから仕方が無い。
「先程竜族は無闇に戦わないと言ったが、覚悟して挑んでくる挑戦者は大歓迎だ。強者に戦いを挑まれ、それを
斥ける事、斥けられる事は最大の誉れだからな。むしろその為に日頃から宝物を溜め込んでると言っても良い。
これらのものは身も蓋も無い言い方をすれば餌なんだが、竜族側の真意は自らを退治する勇者には最大限の
寿ぎを持って応えたい。その褒賞がショボかったら自らの沽券に関わる、ぶっちゃけると見得だな。」
竜視点の戦いの論理。他ならぬ竜人からの言葉ゆえに説得力はいや増す。
「よって、竜族相手には十分に備えて、容赦無く、精一杯戦って貰いたい。そして勝ったなら、その事を大いに誇って
吹聴して欲しい。諸君らの今後の新たな竜退治伝説に期待する。御静聴ありがとう」
大きな拍手が沸き起こる。名高い竜人によるカリスマ溢れる講義であった。

その後は参加者各人に軽食や飲み物が配られ、幾分気楽な空気の中での質疑応答タイムとなった。
「竜と竜人はどう違うんですか?」
王国に来る前までJKだった雪乃は往年の勘を取り戻し真っ先に質問する
「竜人族は意外と種の歴史が浅い。発生条件に天然タイプと合成タイプとが存在する。
天然タイプは、人語を解する温厚な竜が人間と懇ろになってイタしたり、神として崇められた古竜が人身御供で
捧げられた娘と、折角だからとヨロシクやってしまった結果生まれた者だ。」
「……壊れてしまわないのでしょうか。竜とイタして……妄想が捗ります」
誰かが小声で呟いていたが、皆聞こえないフリをした。
「そして合成タイプは、少し昔にどこぞの神々がやたらと竜と多種族とを掛け合わせる実験に奔走した時期があ
って、少なくない竜人が生み出され放逐された。結果、従来稀にしか生まれず、互いに出会う事がなかった竜人が、
集まり、竜人同士の交配が進み、今では小さいながらコミュニティを形成するまでになった。この合成タイプの出現
が竜人族の発生の契機と言えるだろう。」
生命の創造。普段は様々な雑務に勤しむ神々も、偶には神ならではの仕事をこなすようだ。
余談だがハムスターも、ごく最近、とある森に番が目撃されたのを皮切りに、以後世界に広がっていったと言う。
閑話休題。
「竜人族の家格はどのようにして定まっておりますの?本人の実力?先祖の功績かしら?」
ヴォルケッタ子爵(笑)が扇子で口元を隠しつつ質問する。
主催者のマリーは、「はいはい、貴女はどっちもありますね……」といった様子で溜息をつく。
リューコはやや苦笑しつつ、
「強い先祖を持つ家の竜人は地力がそもそも高い。よって次代が受け継ぐ財産も多くなる。その財産を有意義に
用いて更に強くなる。結果、その竜人は発言権も強くなる。これが人間の言う家格というのかどうか……」
「しかし、やはり実力至上主義だな。どんなに金持ちでも弱ければ多種族に退治されて、ハイ、それまでだ。
むしろ……私やこどらのように偉大な古竜を先祖を持つ家系の者は、簡単に負けたりしたら、受け継いだ力
を生かせなかった愚か者と一般(竜)人以上の誹りを受ける。これが家格というならば難儀なものだな」
「ほう、ほう……ほへっ?」
ヴォルケッタを含む全員の視線が、軽食を食べてお腹がくちくなり、涎を垂らして午睡を満喫するこどらに注がれる。
続く?

757:創る名無しに見る名無し
20/11/26 23:03:22.80 LKbzKbbQ.net
『やんごとなき駄目ドラゴン』#1
「……と、言うわけで一部の気の荒い個体や血気盛んな若い者を除いて、基本的に竜族はテリトリーやタブーを
侵されない限り進んで他者を襲わない。古竜と呼ばれる格の高い竜ともなればその特徴は尚、顕著となる」
王国大学。竜人リューコを講師として招いての集中講義だ。
「よって切羽詰まった冒険の時には、刺激せずに通り過ぎる事をお勧めする。しかし多くの竜が財宝や伝説級の
武具を保持している為に、それを目当てに戦いを挑む冒険者も多くいる。心当たりがあるだろう?」
会場にクスクスと笑いが漏れる。大いに心当たりがあるのだから仕方が無い。
「先程竜族は無闇に戦わないと言ったが、覚悟して挑んでくる挑戦者は大歓迎だ。強者に戦いを挑まれ、それを
斥ける事、斥けられる事は最大の誉れだからな。むしろその為に日頃から宝物を溜め込んでると言っても良い。
これらのものは身も蓋も無い言い方をすれば餌なんだが、竜族側の真意は自らを退治する勇者には最大限の
寿ぎを持って応えたい。その褒賞がショボかったら自らの沽券に関わる、ぶっちゃけると見得だな。」
竜視点の戦いの論理。他ならぬ竜人からの言葉ゆえに説得力はいや増す。
「よって、竜族相手には十分に備えて、容赦無く、精一杯戦って貰いたい。そして勝ったなら、その事を大いに誇って
吹聴して欲しい。諸君らの今後の新たな竜退治伝説に期待する。御静聴ありがとう」
大きな拍手が沸き起こる。名高い竜人によるカリスマ溢れる講義であった。

その後は参加者各人に軽食や飲み物が配られ、幾分気楽な空気の中での質疑応答タイムとなった。
「竜と竜人はどう違うんですか?」
王国に来る前までJKだった雪乃は往年の勘を取り戻し真っ先に質問する
「竜人族は意外と種の歴史が浅い。発生条件に天然タイプと合成タイプとが存在する。
天然タイプは、人語を解する温厚な竜が人間と懇ろになってイタしたり、神として崇められた古竜が人身御供で
捧げられた娘と、折角だからとヨロシクやってしまった結果生まれた者だ。」
「……壊れてしまわないのでしょうか。竜とイタして……妄想が捗ります」
誰かが小声で呟いていたが、皆聞こえないフリをした。
「そして合成タイプは、少し昔にどこぞの神々がやたらと竜と多種族とを掛け合わせる実験に奔走した時期があ
って、少なくない竜人が生み出され放逐された。結果、従来稀にしか生まれず、互いに出会う事がなかった竜人が、
集まり、竜人同士の交配が進み、今では小さいながらコミュニティを形成するまでになった。この合成タイプの出現
が竜人族の発生の契機と言えるだろう。」
生命の創造。普段は様々な雑務に勤しむ神々も、偶には神ならではの仕事をこなすようだ。
余談だがハムスターも、ごく最近、とある森に番が目撃されたのを皮切りに、以後世界に広がっていったと言う。
閑話休題。
「竜人族の家格はどのようにして定まっておりますの?本人の実力?先祖の功績かしら?」
ヴォルケッタ子爵(笑)が扇子で口元を隠しつつ質問する。
主催者のマリーは、「はいはい、貴女はどっちもありますね……」といった様子で溜息をつく。
リューコはやや苦笑しつつ、
「強い先祖を持つ家の竜人は地力がそもそも高い。よって次代が受け継ぐ財産も多くなる。その財産を有意義に
用いて更に強くなる。結果、その竜人は発言権も強くなる。これが人間の言う家格というのかどうか……」
「しかし、やはり実力至上主義だな。どんなに金持ちでも弱ければ多種族に退治されて、ハイ、それまでだ。
むしろ……私やこどらのように偉大な古竜を先祖を持つ家系の者は、簡単に負けたりしたら、受け継いだ力
を生かせなかった愚か者と一般(竜)人以上の誹りを受ける。これが家格というならば難儀なものだな」
「ほう、ほう……ほへっ?」
ヴォルケッタを含む全員の視線が、軽食を食べてお腹がくちくなり、涎を垂らして午睡を満喫するこどらに注がれる。
続く?

758:創る名無しに見る名無し
22/05/17 10:38:51.29 dbBRz4mu.net
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759:創る名無しに見る名無し
22/05/17 10:39:33.68 dbBRz4mu.net
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