あなたの文章真面目に酷評します Part106at MITEMITE
あなたの文章真面目に酷評します Part106 - 暇つぶし2ch188:創る名無しに見る名無し
18/01/20 02:48:30.24 IjKkaiek.net
3/3
僕はこの空気が好きだ。僕は自分の小説の執筆がうまく進まないときはここに来ると決めている。
ここに来ると特段筆が進むというわけではない。むしろ、やつがどうでもいいことばかりくっちゃべったり、タバコの煙が僕の喉を痛めつけるせいで、執筆環境としては僕のアパートの方が何倍もましだ。
でもここにくると、あれこれと悩んでいたものがいつのまにか自分の中で腑に落ちていたりするし、大抵の小さな精神的課題は解決する。
ここの空気にはそういう力があるのだ。もしかしたらそれは、僕よりはるかに怠惰で、ほとんど人間的に破綻しているといってもいいくらいのやつを見ることで、自分より下の存在を認識し、安心していたからかもしれない。
人間は誰しも生まれながらにそういう性質を持っているし、多くの人間が無意識下でそうやって自己を保っているのだ。
誰にもそれを責めることはできない。
けれど、僕が本当にそういった自己保全のためにここにいるかと問われるとそれはそれで微妙なところだ。
そういった要素が多少存在することはあっても、それが全てではない気がする。やはり、ここの空気にはある種魔法のような力があるような気がしてならない。
「で、二つめは?」
僕がそう言うと、やつは視線を天井から離し、もうほとんど燃え尽きて火が手元まで迫っていたセブンスターを机の上の灰皿に押し付けた。
灰皿のすぐ横の箱から新しいセブンスターを取り出し、ずっと右手に持っていた100円ライターで火をつける。
煙を宙に吐き出す。その煙が部屋の淡いオレンジ色の空気に飲まれ、同化し、見えなくなると、
やつは微笑を浮かべながら僕と数秒目を合わせた。そしてこう言った。
「煙草を吸うことさ」


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