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鵜め
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梅
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楳
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17/01/13 20:17:05.13 Bi/LxAUn.net
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65:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/13 21:22:41.92 ZQAFYa48.net
何を思ったかいきなり服を脱ぎ始めるミライユ。
ローブ姿を見る限り自分と大差無い細身だとばかり思っていたが
下に着こんだ鎧や鎖によって凹凸を少なく見せていたようで、グラマラスなメリハリボディが現れる。
ちなみにティターニアは普通に魔術師のローブだけだが、魔術による加護がかかっているので防御力はそこらの鎧には引けを取らない。
>「あぁー、重い重い! こうやって武装を取るとスッキリしますね!」
明らかに見せびらかしているようだが、残念ながらジャンとラテには生暖かくスルーされているようだ。
もしもここが真面目と品行方正を良しとする中央大陸であったら、全くもって正しい反応であろう。
しかしここは西方大陸。多種族が住まい寛容と和とウィットとボケとツッコミを良しとする自由な大陸。
そう言ってしまえば住みやすそうだし実際住みやすいのだが、
人間至上主義の独裁体制、逆に言えば終始偉い人に目を付けられないように大人しくしていればどうにかなる中央大陸とは違った意味で過酷な世界でもある―!
という謎の理論による使命感によるものかは知らないが。
「ふむ、少し触らせてはくれぬか。よいではないかよいではないか、我はそなたのような娘が嫌いではないぞ」
ニヤニヤとした笑みを作りながら構えを取る。哀れミライユはBBAエルフの毒牙にかかってしまうのか!?
しかし実際には指一本触れることはなく手を下ろし、いつもの穏やかな微笑みで諭すように言うのだった。
「―安心せい、冗談だ。
しかし……切り札はいざという時のために取っておいた方がよい。
人は秘められたものに人は心惹かれるものだ、古代の秘宝然り、世界の真実然り、な」
イマイチ分かりにくいが彼女が行ったのは渾身のノリツッコミ― 一旦乗ると見せかけてツッコむという高度な技法である。
忘れがちだがこれは極限の心理戦、常に相手の上手を行きアドバンテージを取るのだ―!
ティターニアが指環という言葉を口にしたところで、ミライユが腰を捻ってベッドに倒れこむ。
「大丈夫か!?」
>「痛たた、何でもありません、何でもありませんったらー!!」
>「あぁ、うっかり落としちゃいました…… これ、ラテさんと同じでまだ正式にお渡ししていない会員証なんです。
あ~ 危ない危ない……これ失くしたら、マスターに怒られちゃいますね」
それにしては会員証の番号がやけに飛び飛びだった気がするが……。
と疑問を持つも、直接にミライユに殺意を向けられてはいないティターニアは
まさかこのドジっ娘が会員を冷酷無慈悲に抹殺したとまでは考えが至らない。
あんなに料理を美味しそうに食べる様を見せられては猶更だ。
66:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/13 21:24:55.30 ZQAFYa48.net
>「それじゃ、ティターニア様の次はジャンさん、その次はラテさん、って感じで話していきませんか?
面白くなかったら、罰ゲームってことで!」
こうして、一人ずつ伝承等の話を披露する流れとなる。
トレジャーハンターのラテは、レンジャーとしての腕前だけではなく伝承知識も豊富のようだ。
ベヒモスが登場する一連の神話―そういえば、あのヴォルカナで戦ったベヒモスはどうなったのだろうか、ふと思う。
あの後怒涛の展開で命からがら脱出したような状態のため、それどころではなかったのだ。
ジャンの喋る竜の話も興味深い物であった。
最終的に修学旅行の夜のような雰囲気になってきたところで、ミライユがティターニアの男性経験について切り込んできたりする。
こやつ、侮りがたし―! と思いながらも、謎の修学旅行テンションに後押しされてティターニアは間接的に答えを返す。
「お主、神樹の民にそれを言うか―我らエルフは受肉した精霊。
滅多に死なぬ種族が人間と同じように勝手に増えては人口ならぬエルフ口過多で世界が滅ぶであろう。
子を望む男女二人で神樹ユグドラシルに祈りを捧げ、神樹に認められた場合に限り実が結実し中からエルフが生まれるのだ……って何言わすねん!」
柄でもなく微妙に頬を赤らめ少女のように恥らっているようである。BBAの貫禄が見る影もない。
いつも心の中でツッコミを入れる時に使う西方大陸語も思わずポロリしようものである。
しかし人間から見る限りだと恥じらいポイントが全く意味不明であった。
もしかして、ミライユの仕掛けた罠にはまってすでにペースに乗せられてしまったのか、と思うが時すでに遅し。
さて、この話題が出てしまったからにはハーフエルフ談義は避けては通れまい。
一口にハーフエルフと言っても、神樹から生まれエルフ社会で育てられるエルフ寄りのハーフエルフと
人間社会で生まれ育った人間寄りのハーフエルフの二種類が存在する。
前者は種を超えて神樹の祝福を受けた奇跡の存在としてむしろ普通のエルフ以上に大事に育てられ
後者は……まあ予想が付くとおりエルフの側からすれば余所者扱いである。
ここで当然浮上する疑問が、後者の場合そもそも繁殖方法の違う二つの種族がどうやって子を成すのか、ということだ。
ティターニアの同僚にはそのような分野を研究している者もいるのだが、事例が希少過ぎて協力者が捕まらないため仮説を立てるしかなく
変なダンスを踊ってフュージョンと呪文を唱えながら小指を合わせるとか、カレーをひたすら1か月煮込みまくるだとか、
頭がいい(はずの)学者達が真面目な顔をして珍議論を繰り広げる様�
67:ヘ、まさに「笑ってはいけない学会」状態。 とはいっても、人間と本気の恋に落ちた時に肉体が変成する、というのが最有力説なのでご安心あれ―― 何にせよとても希少な存在なのでこの旅で出会う可能性はまず無いであろう(※フラグ)
68:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/13 21:26:59.77 ZQAFYa48.net
話を元に戻して、気が付くと、ミライユがふざけてジャンに抱き着いたりラテを脱がせようとしたりの独壇場と化していた―!
もはや何故か男性のジャンまで巻き込んでの女学園の修学旅行状態である。
この状況においても動じないジャンの安定感は半端ない。
もしも女学園出身だとしたら男性の目も気にせずいきなり脱いだのも天然なのか? と混乱してくるティターニア。
今までに出会ったことのない【新ジャンル】暗黒系ドジっ娘に完全に翻弄されているのであった。
騒ぎ疲れてそろそろ眠ろうかという頃、ラテが魔力の糸を部屋に貼っていた。
「なるほど、夜襲対策も万全というわけか。我らも安心で有難いことだ」
どうやら彼女はレンジャーの中でも魔力を積極的に扱う類のレンジャーなのだろう。
もしも怪しい動きをするつもりなら、魔力については専門のティターニアがいる場で、わざわざ自分で魔力を使ったセキュリティを張り巡らすとは考えにくい。
ここまでの過程で、長年の勘によるとラテは少なくとも危険な人物では無いだろうとの感覚は持っていたが、それが確信に近い物へと変わる。
これでミライユも怪しい動きは出来まい、と安心し、眠りについたのであった。
さて、まさかのお泊りイベントで閑話が盛り上がり過ぎてしまったが、そろそろ本筋に戻らねばなるまい。
ジャンとティターニアに暗黒系ドジっ娘ミライユの魔の手が迫る!
小動物系元気っ娘ラテは二人を守ることが出来るのか!? そしてそもそも大地の指環は手に入るのか!?
【>37 うまく拾えるかは分からぬがそういうの好きだ!】
*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*
次の日、一行はテッラ洞窟へと出発した。
アスガルドから洞窟まではそれ程離れてはいないので、程なくして到着する。
普段は開放されている洞窟の入り口も現在は立ち入り禁止となっていて、無鉄砲な学園生徒が入ったりせぬように警備兵が配置されていた。
「ユグドラシア導師、ティターニアだ。近頃強いモンスターが出現するようになったと聞き馳せ参じた」
学園の身分証を見せ、道を開けてもらおうとした時であった。
洞窟の奥の方からドォンと地響きのような音が聞こえてきて、同時に地面が少し揺れる。
「ああ、またですね……」と呟く警備兵。
「初めてではないのか……?」
「はい、少し前から段発的に。次第に感覚が短くなってきているようで……」
「分かった。我々が見て来るゆえそなたらはそこで待っておれ」
「くれぐれもお気をつけて―」
こうして一行は洞窟へと足を踏み入れるのであった。
69:創る名無しに見る名無し
17/01/13 23:33:23.68 qPUxKk/R.net
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70:創る名無しに見る名無し
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17/01/13 23:57:12.17 Pvw1AZJi.net
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73:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/14 00:47:57.39 Y7eW+DYy.net
>『以下の者を冒険者として認める。ジャン・ジャック・ジャンソン』
『鋼鉄都市スクリロ支部 No.95 鶴嘴の月 銅の日』
「だからよ、二重に入るってわけにもいかねえだろう。そこらへんの規則はよく知らないけどよ」
ジャンが共和国側のギルドに入っているという話を聞くと、ミライユは自信満々にさらに前に出る。
「では、尚更じゃないですか! スクリロもソルタレクの管轄ですね。
それは正会員証じゃないんですよ。では、実力が分かり次第、こちらから改めて正会員に加えますね!」
そう言うと、名前の書かれていない銀色の会員証をスカートに仕舞った。
―
ミライユが服を脱いでいると、横にいたティターニアが反応する。
>「ふむ、少し触らせてはくれぬか。よいではないかよいではないか、我はそなたのような娘が嫌いではないぞ」
周囲の反応が予想以上に(特にジャンがドキリともしないので)不満だったのか、一瞬胸をそちらに向けるも、すぐに隠す。
「ダメ、ですっ! これはマスター以外の方には…… それにティターニア様でも魔法の力を使えば……いや、何でも」
そこで言ってはいけない話をしてしまったかのように口を噤み、そのまま着替えを続けるとうっかりと「大事なもの」を落としてしまった。
周囲の注目を引くも、大事にはなっていない。
(会員証については特に疑われてはいないようですね……)
うっかり落としてしまった抹殺の痕は、すぐに回収したため名前までは見られなかった……といいんだが。
>「えぇー……どんだけジャンさんを困らせたら満足するんですかこの人……。
まぁ、ご愁傷様です。私先にお話するんで、頑張ってネタ考えといて下さい」
「すいません。ジャンさん、弄ると面白いタイプみたいで私、ツボにはまっちゃったみたいです!
じゃあ、面白いお話、期待してますよ!」
適当に流し、ホッと一息をつく。
>「指環は人の世には過ぎた力だと、時の聖女が神の落とした雷に指環を結んで、天に召し上げられた勇者へ返したとか……
地獄の大穴に返された、なんてパターンもありますね」
>「その竜はダーマ魔法王国のアールバト山脈に巣を構えていてな、通りがかる旅人に昔話を語るのが趣味だった。
昔話と言ってもそいつは長生きだったみたいでな、数千年前の話を平気でするんだ。まるで昨日の話みたいにな」
「その話の中で一番興味深かったのは、今思えば指環の話だな。なんでも竜の指環ができる瞬間に立ち会ったって言うんだ」
ラテとジャンの話を聞いていると、指環というものが途端に現実味を帯びたものに思えた。
―まるで、強ければ、強ささえあれば、力ずくで奪取することができる、かのような……
(やはり持ち主は竜……の可能性が高いですか。マスターにご報告せず、私一人で奪えるかなぁ……
この三人を利用すれば、あるいは……)
やがてティターニアが柄にもなくノリノリで恋愛経験について語り始めた。
どうやらこのエルフ、話し始めると止まらないようである。
結論からすると「人間世界でのまともな恋愛はしていない」といった感じだ。
それに相槌を適当に打ちながら笑い、眠りにつこうとした。
先ほどからラテの移動するところのそこかしこに魔力の糸が張られている。
消灯が終わってもその仕掛けは残っているようだ。魔術師の一部がよく使う手段で、野営でも使われる手法だ。
ミライユは空間操作をする魔術師でもある。ちょっと驚かせてやろう。
これだけの魔力を動かせばティターニアあたりは気付きそうなものだが、
仕掛けを周到に動かし、調度ラテの前までそれを形象する。
74:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/14 00:53:51.78 Y7eW+DYy.net
「ラテさん、ラテさん」
眠りについているのか、その振りをしているのか、彼女にそっと囁きかける。
「上、見てもらえますか?」
ラテは気付いたはずだ。見えない糸が動かされ、何かを込められていることに。そして、ミライユが魔力をラテの指のあたりに収束させると―
ラテの方角から「だけは」そう見えるように、文字が浮かび上がる。
『ぶっ殺すぞ』
その文字を見ているラテの方を、わあっ、といった感じに軽く叩く。
「わっ! ふふっ、驚いちゃいました? お邪魔してしまい、申し訳ありませんでした。勿論、これはネタ。冗談です。
私は野営には慣れてますので、三人分の知覚探知は代わりにやっておきます。明日は早いですし、気を張らず寝ていて良いですよ……ぐぅ」
と、言いながらミライユはいびきをかき始めた。
そして夜が明ける。
―
あくる日、四人はアスガルド近くのテッラ洞窟まで来ていた。
「ふわぁぁ、結構寝たのにまだ眠いですぅ、下着は買い込んでおいたので、
今度キャンプがあっても大丈夫ですが。食料はこれで足りますかねぇ」
アスガルドで買った味付きの乾燥パンをボリボリと齧り、ローブの中に着込んだチェインの具合をポンポン叩いて
フィット具合を確かめながら、ミライユは進んだ。
>「ユグドラシア導師、ティターニアだ。近頃強いモンスターが出現するようになったと聞き馳せ参じた」
「くれぐれもお気をつけて―」
(顔パスですか……流石ですね)
洞窟に入る前に念のためにギルドマネージャー級を含む増援を送ることにした。
ミライユの予想では、ここに指環が眠っている可能性が高い。
ティターニアが虚言でミライユを逆に罠に嵌めようとしている線は無いと見た。
ミライユはティターニアたちから比較的大きく間を取り、予め用意してあった小さな"通信石"を取り出すと、
そこに魔法文字による「追記」を行い、洞窟の外へと放った。これはアスガルドの別の宿で待機している仲間へと届けられることとなる。
『―タイザン殿、シュマリ殿、ホロカ殿へ。予定通り発信元の場所への増援をお願いします―
追記:現在ティターニアに張り付いております。目的は指環。情報を持っていそうな方は全て内部にいると見て良いでしょう。
警備の方が数名いらっしゃるようですが、全て殺してしまって構いません。その後は封鎖するのがよろしいかと思われます。』
【洞窟を少し進んだあたりで密かにアスガルド宿泊中のソルタレクギルド員に支援要請を送りました。
適当な場面で乱入させる予定です。】
75:創る名無しに見る名無し
17/01/14 08:33:30.50 69rngpEC.net
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76:創る名無しに見る名無し
17/01/14 11:49:23.98 FwP76uMs.net
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77:創る名無しに見る名無し
17/01/14 13:12:19.65 baCvzsLW.net
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78: ◆6Nqsyb3PfY
17/01/14 19:03:18.18 Y7eW+DYy.net
【先に追加キャラのプロフィールから投下しておきます】
名前:タイザン・シモヤマ2世
年齢:51
性別:男
身長:177
体重:68
スリーサイズ:痩せ型に見えるが引き締まっている
種族:人間
職業:ギルドマネージャー/料理人
性格:非常に奇を衒うが中身は常識人
能力:火を操る能力・刀剣術
武器:秘刀「カムイ」
防具:鎖帷子の上に白い独特の模様の衣服と帽子
所持品:食材やレシピ、マジックアイテム等
容姿の特徴・風貌:東国系。髪は黒で長く、頭頂部が禿げている。
簡単なキャラ解説:ハイランド連邦共和国の自治都市インカルシペの出身。
父・タイザンの酒場兼ギルドを引き継ぎ、酒場とギルドのマスターをしていたが、
突如ソルタレクのギルドにより併合され、マネージャーに抜擢される。
本人は旅に出て帰らぬ人となった父が考案した「カレー」を究極のものにすることに余念がない。
マトイという一人娘がいる。インカルシペの仲間たちならず、仲間をとても大切にする性格。
79: ◆6Nqsyb3PfY
17/01/14 19:13:54.74 Y7eW+DYy.net
【所用により夜中から明日の午前まで書き込めません。
この場面は顔見せだけなので、飛ばして次の方に書き込んでいただいて大丈夫です】
80:創る名無しに見る名無し
17/01/14 22:25:41.94 L8dnFEyf.net
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81:創る名無しに見る名無し
17/01/14 22:28:31.84 L8dnFEyf.net
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82:創る名無しに見る名無し
17/01/14 22:28:46.25 L8dnFEyf.net
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83:創る名無しに見る名無し
17/01/14 22:29:04.54 L8dnFEyf.net
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84: ◆ejIZLl01yY
17/01/14 23:13:02.55 Zx5dZlfu.net
レンジャー達の朝は早い。
理由は色々あるけど、まぁ単純にパーティを組めば奇襲警戒を任される私達がすやすや寝てたらまずいでしょ。
それに単独行動の時も、場合によっては森や敵地やダンジョンの中で何日も過ごす事になる。
そんな中で一睡もしないのはかえって危ない。
睡眠不足と空腹はどんな英雄にも通じる最強の状態異常ですからね。
かと言ってそんな危険な場所でぐっすりおねんねしてたら、そのまま永眠する羽目になる。
だからレンジャーは睡眠一つにも結構な訓練を積む。
どんな訓練かって、ただの反復練習だけどね。
つまり寝てる時に密かに接近されたり、攻撃されたり。
弱い雷の力を込めた魔法具は、攻撃されても怪
85:我はしないけどめちゃくちゃ痛い。 そんな事を繰り返していれば、その内僅かな気配ですぐに目を覚ませるようになる。 人間の環境適応能力ってすごい。 だから昨夜ミライユさんが私に何かするつもりだったのも、分かっていた。 『うーん……もうおやすみしたでしょ……流石に二人に怒られますよ……むにゃ……』 分かった上で、私はそう返事しておいた。 だってジャンさんティターニアさんの傍で私を殺そうとする事は、まずないと言っていいもん。 あの状況で、私がどんな形であれいなくなったり、死んだりすれば、今後の『仕事』がやりにくくなるでしょ。 昨日、ミライユさんの様子を見ていて分かったのは、彼女は「主導権の取りたがり屋さん」だって事だ。 だから私みたいな、別のギルドに所属している人間にも会員証を押し付けるし、 自分の仕事が絡まない、立場的に強く出ても平気な、つまりこれまた私みたいな相手には脅しをかけてみたりする。 まっ、なんていうか分かりやすいよね。 可哀想だけど、そういうやり方もレンジャーの領分。対策は簡単なのです。 つまり、てきとーにいなして構わなきゃいい。 反応しても疲れるだけだもん、そういうの。 書き方がちょっと刺々しくなっちゃったけど、許して欲しい。 私は誰かと反目したり争ったりするのは好きじゃないけど、 だからと言って私を踏みにじりたいだけの人間にずっと敬意を払えるほど愚かでもない。 ……って割り切れればいいんだけどなぁ。 仲良く出来ればそれに越した事はないよなぁ。 うーん……もやもやする。 まぁ、もっと長い時間を共にすれば、まだ見えてなかった一面も見えてくるかもしれないよね。 そうである事を祈ろう。 ……それにしてもぶっ殺すぞはちょっとチープ過ぎるのでは。 脅しにしたって、なんかもうちょっとあったと思うんだけど……。 だけど、チープであるって事は、平凡って事。 彼女が平凡な、何かちょっと、ボタンの掛け違いが一つ心の中にあるだけの、どこにでもいるような女の人なら。 それはきっと素晴らしい事だ。……そうである事を、祈ろう。 昨日目にした、ミライユさんの、人らしい側面が……全て偽りだとは、私は思いたくない。 なんて事をベッドの上で丸まりつつ考えていたら、その内ジャンさんとティターニアさんも起きてきた。 そして軽い朝食を取って、私達一行はテッラ洞窟へと出発したのでした。
86: ◆ejIZLl01yY
17/01/14 23:14:38.28 Zx5dZlfu.net
>「ユグドラシア導師、ティターニアだ。近頃強いモンスターが出現するようになったと聞き馳せ参じた」
「……ユグドラシア導師!?えっ、嘘、めちゃくちゃ偉い人じゃないですか!」
話の流れからなんかすごい人なんだろうなーとは思ってたけど、これは流石に予想外。
ユグドラシアは説明するまでもないよね。アスガルドの繁栄はあの学園があってこそと言ってもいい。
あらゆる魔法学の最先端を往くあの学園の、導師様って!
という事はもしかして、この洞窟に潜るのもフィールドワークの一環とか?
「という事はもしかして、この洞窟に潜るのもフィールドワークの一環とか!?」
気になったので聞いてみた。だって気になるじゃん。
「専門は……確か考古学でしたよね!それって環境魔法学とか、古代魔法とかについても調べたりするんですか?」
気になる気になる!すごく気になる!
こういう時私はちょっと自制が利かなくなっちゃう。でも気になるものは気になるんだもん。
……あれ?環境魔法学ってご存じない?あー、普通に生活してる分にはあんまり馴染みがないもんね。
まぁ読んで字の如しなんだけどね。環境魔法学ってのは、環境を利用した魔法について調べる学問です。
と言っても、ただ単に植物や鉱物を触媒にした魔法って意味じゃなくて、もっと大きな環境。
例えば大規模な召喚魔法を行う時とかって、人の力だけじゃ到底力不足で、だから星の巡りを利用するの。
星という無数の力の塊が夜空に描く魔法陣を用いて、やっと魔法が行使出来る。
星じゃなくて地脈を利用したり、大�
87:フに生きていた巨大な魔物の亡骸の側で儀式をしたりってパターンもあるね。 まぁそんな感じで、なかなかお目にかかる機会の少ない魔法学なのです。 でも他のどんな学問にも負けず劣らず、すごく偉大な学問なんですよ。 なんでそんなマイナーな魔法学を知ってるのか? ……いや、その、実家が神学者の家系でして。 嘘じゃないよ!ティターニアさん達に聞かれても同じように答えられるし!いやホント。 まぁそれに、夜空に敷かれた魔法陣も、地の底に流れる力の祝詞も、古き偉大な生物の遺骸も、 丸ごと盗み出すには大きすぎるけど、素晴らしいお宝だもん。 トレジャーハンター的には注目度の高い学問なんです。はい、この話はここでおしまい! と、不意に洞窟の中から轟音……だけじゃない、小さな地震も起きてる。 >「ああ、またですね……」 「初めてではないのか……?」 「はい、少し前から段発的に。次第に感覚が短くなってきているようで……」 「……これは、いよいよ怪しいですね。匂いますよ、お宝の匂いがします」 地震や火山の噴火が何故起こるのかは諸説ある。 そしてその中には神や精霊の昂ぶりとか、大きな力が流れすぎて一時的に詰まった地脈が原因とか、 トレジャーハンター的にはピンと来るような説もあるのだ! しかも地震の頻度が増してきているって事は原因である何かの力も高まり続けているって事。 つまり自然発生的な地震ではない……これは絶対何かあると見たね! それが昨日、ティターニアさん達が話題に上げた指環なのかは分からないけど。 まーでもあのタイミングで話題にするって事は何かしら意味があるんじゃないかな。 ミライユさんも指環って単語にすごい反応してたし。 「じゃ、先行しますね……って言っても、まぁとりあえずは普通に奥を目指す事になりますけど。 ……くんくん。うーん、マナの流れはまだ感じ取れないかな」 ……え?何を当たり前のように匂いを嗅いでるのかって?
88: ◆ejIZLl01yY
17/01/14 23:15:19.43 Zx5dZlfu.net
「もし魔物達を凶暴化させてる魔力の源が、どこかに隠された地下都市にあるなら、
どこかからその魔力が漏れ出てきていると思うんですよね。あ、進みましょうか」
いやいや、レンジャーたるもの鼻でお宝の匂いくらい嗅ぎ取れなくてどうするの。
これは別に冗談とかじゃなくて、レンジャーズギルドでは六感を鍛える訓練を積まされます。
私の場合は、五感を第六感で補う訓練。
二十四時間ずっと目隠しをさせられて、その状態でギルド内を自由に歩き回れるようになるまで外せないの。
当然そんな事、匂いを嗅ぐとか、音を聞くとか、その程度の工夫では出来る訳がない。
いやマジでしんどかったよ。訓練だから先輩達もわざと体をぶつけたり、急に大声で呼んできたりする。
トイレに行くだけでもビクビクしなきゃいけなかったし、一時は怖すぎてそのままトイレに閉じ籠もったりもした。
でも出来ないままじゃいつまで経っても目隠しは外せない。
そんな生活を延々続けていると、いつの間にか感覚が鋭くなっている事に気付く。
それは見えないものを感じ取る為に、体が第六感を効果的に使う事を試み始めたから。
その第六感ってのが、つまりは魔力を感じ取る感覚なのです。
訓練が色々とスパルタ過ぎない?って思うでしょ。
でもこれくらい頑張らないと、レンジャーになってもすぐ死んじゃうから、仕方ないんだよ。
レンジャーも、ハンターも、シーフも、アサシンも、スパイも、トレジャーハンターも、
およそレンジャーと呼ばれるクラスは、たった一人、ないし極少数で、大きな相手と戦う事になる職業。
だから徹底的に自分を磨き上げる必要があるの。
ギルドでその為の訓練をしてもらえるのは、正式にレンジャーになって暫くしてやっと分かる。
それは後進への大きな愛情なんだよ。
ちなみにこれはあくまで「出来ない人間が出来るようになる為の訓練」ってのが泣
89:ける。 出来る人は生まれつき、体を動かす為に魔力を使うって事が出来るのです。 魔力と体力が結びついてるって言うのかな。優れた戦士や武闘家が技を放つ時、魔力に似た気配を感じるのはその為。 他にも普通に素の身体能力だけで人外じみてる人もいたり……村娘Aには辛い世界だなぁ。 まぁそんな訳で、私はマナの流れだろうと嗅ぎ取る事が出来る。 「あ、ちょっと待って下さいね。もうちょっと匂いを分かりやすくします」 そう言って宝箱をがさごそ……と取り出したのは沢山の『灯火の杖』。 炎の杖じゃなくて?って思うじゃん? これは込められてる魔法が弱すぎて、炎と言うほどの威力が出せない低レアマジックアイテムなのだ。 でも松明代わりにはなるから回収して売るとそこそこ捌ける。 この手のアイテムは元から篭められていたり、大気中にあるマナを使うから魔力も浪費しないし、洞窟の中でも窒息の恐れがなくて安心。 ここで重要なのは、大気中のマナを使うって事。 この洞窟の中のマナを使って杖に火を灯していけば、大気中のマナ濃度は少しずつだけど薄くなっていく。 そして隠された古代都市があるならそっちとこっちでマのナ濃度差が生まれる。 するとどうなるか。 「……うん、風を感じます。濃いところから薄いところへ流れる、マナの風を」 干しスライムを水に突っ込むとすごい勢いで膨れ上がるじゃん? 理屈的には大体そんな感じ。水があるところから、ないところへ。 後はお化けナメクジに塩をかけるとめっちゃ萎むとか。
90: ◆ejIZLl01yY
17/01/14 23:16:38.65 Zx5dZlfu.net
さておき、これでマナ濃度の違う、別の空間の存在があるとはっきりした。
後はマナの風が示す道に沿って進んでいけば……ほーら。
アスガルドで見たオオネズミよりも更にデカいネズミの群れが!
ってなんでやねーん!
中にはなんか二足歩行になってるのもいるし……これは良くない。
人間の姿に近づいてるって事は、力だけでなく知性をも手に入れようとしているって事。
洞窟を封鎖するのも納得だね。学生さんが食べられでもしたら、色んな意味で厄介だ。
えー、マナの風は確かにこの奥から吹いてきてるんだけど……私一人ならともかく、全員気づかれずに抜けるってのはリスキーかな。
「……始末しちゃいましょう。もしかしたら、何かを守っているのかも」
何らかの要因で知性を得た魔物や獣が、その源を崇め、守ってるってケースはたまにある。
それは別にマジックアイテムとかじゃなくて……この先の空間そのものかもしれない。
ていうかそうだったら嬉しいんだけどなー。
「私が仕掛けますね。仲間を呼ばれても面倒ですし、上手い事全部仕留めてみます。まぁ、ミスったらフォローお願いしますね」
ラテちゃん特製爆弾を使えばこれくらいはイチコロなんだけどね。
流石に洞窟の中でぶっぱなすのはなぁ。そんなリスクを冒すほど状況も差し迫ってないし。
と言う訳で宝箱から取り出しましたるは、ピックを数本と、ヘブンスパイダーの毒を一瓶と、ショートソードと、んふふふー。
そして私は周囲の風景に自分の気配を同化させた。
先端の鋭いピックは獣の分厚い皮を貫いて、塗りつけた毒を体内に届ける。
一応頚椎を狙ってはいるけど、毛皮で手元が狂っても良くないしね。
ちなみにヘブンスパイダーってのは麻痺毒に長けた蜘蛛のモンスター。
噛まれた獲物は痛みすら感じず、全身がリラックスしたように弛緩して死んでいくからヘブンスパイダー。
この毒は濃縮したり効能を強めるよう調合すれば大型のモンスターにも通用するから結構便利。
刺したピックは抜かない。血の臭いが強くなったらバレちゃうからね。
とは言え……抜かなくても、時間の問題ではある。
……気付かれた。私の居場所はまだバレていないけど、仲間を呼ばれたらそれだけで私としては仕事は失敗だ。
「まぁ、もう遅いけどね」
そして私は、分厚い皮の鞘に収めたままのショートソードを【不銘】に番え……後方に向かって射ち放った。
あ、勿論ジャンさん達から狙いは外してありますよ……っと、血の噴き出す音。
既にネズミ達の首に括り付けてあったヘブンスパイダーの糸が、ショートソードに強烈に引っ張られ、首を切断したのだ。
さっきのんふふふーはこの糸をぼかしてたのです。
なんでかって?だってその方がカッコよく決まるし……あと、ほら、ネタバレとかよくないし……。
ちなみにヘブンスパイダーの麻痺毒が優れている理由は、糸が強靭だけど伸縮性がなくて、獲物を捕まえるのに向かないから。
だけどこういう用途には大変便利で、毒も糸も優秀だからと、レンジャーの中には捕まえてきて飼育してる人もいるくらい。
私?実はこの宝箱の中には……ふふふ、なーんて。
91: ◆ejIZLl01yY
17/01/14 23:17:57.79 Zx5dZlfu.net
さておきショートソードも回収して、これで道は開けた。
「ちょっと前をお願いします。私は一旦、後ろに警報程度の罠を張っときます。
血の臭いで何か集まってくるかもしれませんので」
そんな訳で脆い糸と薄い金属板で鳴子を作り……私は首を失ったネズミ達の死体を見る。
そして未だにその断面から溢れる血を、宝箱から取り出したポーション瓶で回収する。
……いや、魔物の血って魔法薬の素材として優秀なんですよ。
こんだけ強化された魔物なら、それはそれは強い効能が期待出来るんです。
私にはそれ以外にも、別の用途があるしね。
でも私みたいな小娘が魔物から血を抜いてると大抵の人は変な目でこっちを見てくるの。
つらい。
だからちょっとこそこそとさせてもらいました。
ともあれ、マナの匂いもかなり濃くなってきてる。
「そろそろ、何かありそうな気がするんですけどね。壁とか床とか、
古代都市を隠してるなら魔法的な仕掛けがあるのかも……どれどれ」
【てけとーに話を進める下準備だけしときましたので後はよろでーす】
さーて!またもや余白が沢山だ!純度100パーセントの落書きを見せてやる!
……って意気込んだ時に限ってなんだか書く事が思いつかない。
うーん、うーん……あ、じゃあ今回は魔力を使うレンジャーについてでも。
昨日ティターニアさんがなんか珍しそうに見てたし、
もしかしたら以前に身体的素質だけでやってるレンジャーでも見た事あるのかもね。
さっきも書いたけど、素質がある人は生まれつき魔力をまるで体力のように使う事が出来る。
その結果生まれるのは強烈な身体能力。
言い方は悪いけど、生まれつき体の作りが魔物にちょっと似ている、と表現すると分かりやすいかな。
でも私はそんな才能はこれっぽっちもない村娘Aだったので、色々と訓練を積んだのです。
では本題。そもそもレンジャーと魔力、魔法って、そんなにかけ離れたものなのかな?って所から。
例えばアサシン。
その由来は古くに栄え今でも密教としてどこかに残っていると言われる、とある宗教。
そこでは老人が若者を攫い、山中の楽園で秘薬を振る舞い、極楽を味わわせ……目が覚めたら若者は下界にいる。
そして懐には人名と、「楽園に戻りたくば使命を果たせ」と記された紙切れ、それに短剣……
宗教を拠り所にして、人界から離れた地に住まい、極秘の薬物で人を惑わし、操る……これなーんだと言われて。
魔女ですって言われたら、あーって納得しそうじゃない?
それに狩りを司る神様って結構いるんだけど、その中でも超有名な女神アルテミス様。
彼女の従姉妹には魔術を司る女神ヘカテー様がいるのです。解釈によっては同一神と扱われたりもするけど。
まぁつまり狩猟者と魔術師ってかなり属性的に近いところにいるの。
狩人も自分達だけの毒薬を作り出したり、あらゆる自然と命を崇め、その恩恵を求めたりするしね。
トレジャーハンターも、古代の遺跡に挑むなら魔術や呪いへの知識が不可欠だ。
そう、私も色々と勉強してるのです。例えば……レンジャーズギルドでも教えてもらえない、古代魔法とかね。
なんか良さげなタイミングがあったら、ティターニアさんに振ってみたいなぁ。
誰もが忘れた、なのに皆が覚えてる、三つの古代魔法……どう?面白そうでしょ?でしょ!
……あれ?なんか話が脱線してるような気も。まぁいっか!
92:創る名無しに見る名無し
17/01/15 12:18:28.11 zYFqe272.net
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93:創る名無しに見る名無し
17/01/15 12:44:47.33 zYFqe272.net
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94:創る名無しに見る名無し
17/01/15 12:46:00.63 zYFqe272.net
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95: ◆BRRt8qoQM4qo
17/01/15 12:49:31.03 S9Ls+HXP.net
名前:シュマリ・シズカリ
年齢:17
性別:女
身長:162
体重:53
スリーサイズ:87/61/90
種族:獣人(狐系)
職業:ギルドメンバー・ハイ(上級)
性格:直情型
能力:スピード特化型の爪による攻撃、精霊術
武器:アイアンファング
防具:臍出し型のレザー・アーマー
所持品:マジックアイテム等
容姿の特徴・風貌:髪はボサボサの銀髪。狐耳が出ている。
簡単なキャラ解説:タイザン2世の店の従業員から急遽ギルド員にされた少女。
タイザンの亡き親友、ワッカの娘であり、妹と共にタイザンの元に引き取られた過去がある。
タイザンの事を心から尊敬しており、恋心に近い感情を持っている。それなりにギルドの特殊任務の経験あり。
名前:ホロカ・シズカリ
年齢:15
性別:女
身長:155
体重:46
スリーサイズ:81/59/86
種族:獣人(狐系)
職業:ギルドメンバー・コモン
性格:穏やかな性格であるが真面目で忠実
能力:精霊術を生かした補助系能力が中心
武器:小型のボウガン、ナイフ
防具:民族衣装のローブ
所持品:マジックアイテム等
容姿の特徴・風貌:銀髪の混じる黒髪で直毛
簡単なキャラ解説:姉・シュマリと同じでタイザン2世の店の従業員から急遽ギルド員にされた少女。
ギルド員としての訓練を積んでおり、才能はあるが、破壊を嫌い、人殺しなどの仕事を毛嫌いしている。
96:創る名無しに見る名無し
17/01/15 12:50:04.48 zYFqe272.net
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97:創る名無しに見る名無し
17/01/15 12:50:22.09 zYFqe272.net
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98: ◆6Nqsyb3PfY
17/01/15 12:50:24.32 S9Ls+HXP.net
名前:タイザン・シモヤマ2世
年齢:51
性別:男
身長:177
体重:68
スリーサイズ:痩せ型に見えるが引き締まっている
種族:人間
職業:ギルドマネージャー/料理人
性格:非常に奇を衒うが中身は常識人
能力:火を操る能力・刀剣術
武器:秘刀「カムイ」
防具:鎖帷子の上に白い独特の模様の衣服と帽子
所持品:食材やレシピ、マジックアイテム等
容姿の特徴・風貌:東国系。髪は黒で長く、頭頂部が禿げている。
簡単なキャラ解説:ハイランド連邦共和国の自治都市インカルシペの出身。
父・タイザンの酒場兼ギルドを引き継ぎ、酒場とギルドのマスターをしていたが、
突如ソルタレクのギルドにより併合され、マネージャーに抜擢される。
本人は旅に出て帰らぬ人となった父が考案した「カレー」を究極のものにすることに余念がない。
マトイという一人娘がいる。インカルシペの仲間たちならず、仲間をとても大切にする性格
名前:シュマリ・シズカリ
年齢:17
性別:女
身長:162
体重:53
スリーサイズ:87/61/90
種族:獣人(狐系)
職業:ギルドメンバー・ハイ(上級)
性格:直情型
能力:スピード特化型の爪による攻撃、精霊術
武器:アイアンファング
防具:臍出し型のレザー・アーマー
所持品:マジックアイテム等
容姿の特徴・風貌:髪はボサボサの銀髪。狐耳が出ている。
簡単なキャラ解説:タイザン2世の店の従業員から急遽ギルド員にされた少女。
タイザンの亡き親友、ワッカの娘であり、妹と共にタイザンの元に引き取られた過去がある。
タイザンの事を心から尊敬しており、恋心に近い感情を持っている。それなりにギルドの特殊任務の経験あり。
名前:ホロカ・シズカリ
年齢:15
性別:女
身長:155
体重:46
スリーサイズ:81/59/86
種族:獣人(狐系)
職業:ギルドメンバー・コモン
性格:穏やかな性格であるが真面目で忠実
能力:精霊術を生かした補助系能力が中心
武器:小型のボウガン、ナイフ
防具:民族衣装のローブ
所持品:マジックアイテム等
容姿の特徴・風貌:銀髪の混じる黒髪で直毛
簡単なキャラ解説:姉・シュマリと同じでタイザン2世の店の従業員から急遽ギルド員にされた少女。
ギルド員としての訓練を積んでおり、才能はあるが、破壊を嫌い、人殺しなどの仕事を毛嫌いしている。
99:創る名無しに見る名無し
17/01/15 12:51:00.23 zYFqe272.net
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100:創る名無しに見る名無し
17/01/15 12:51:37.00 91gubEOg.net
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101: ◆6Nqsyb3PfY
17/01/15 13:29:38.25 S9Ls+HXP.net
―<アルガルドのとある宿にて>
ミライユから放たれた通信石は光状になり、アスガルドの宿の壁を貫通してタイザンの元へと届いた。
それはタイザンが持つ通信板と呼応し、空中で内容を伝える。
「んー……」
既に義�
102:ットって訳ね。ミライユは頭は良いんだけど…… 色々余計なことしてないと良いけどなぁ) 鎖帷子を着込んで身支度をしながらもブツブツと文句を言う。
103:創る名無しに見る名無し
17/01/15 13:31:22.62 SSDttvr/.net
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104: ◆6Nqsyb3PfY
17/01/15 13:32:54.71 S9Ls+HXP.net
タイザンは、あまり現状について満足していない。まるでミライユの下請けのような扱い。
それも酒場のマスターとしてギルド支部を仕切っていたら、突然ソルタレク側から合併の話が来た。
彼は料理以外のことはオマケのようなものだと思っている。父は全てを尊敬するほどの人物ではなかったが、
父と同じぐらい料理についてのプライドは高い。よって武器は常に料理用具になるものを持ち歩いている。
それも親友から預かった娘を勝手に配属されてしまった。せめて片方ぐらいは残したかったのだが。
ホロカに残れと言えば、泣いて嫌がるものだから、店は臨時休業で大打撃だ。
大体、タイザンという名前を受け継ぐのも嫌だったのだ。自分には「ナオユキ」という名前がある。
父も元々は「ヤスユキ」という名前だったのが、勝手に「タイザン」を名乗って代々継がせるらしいのだ。困ったものだ。
そして、さらに困ったことがあった。
「なあ、マスター。任務が来たんだろ? 内容をオレたちにも教えてくれよ!」
これだ。元々の肩書きが「マスター」なために「マネージャー」にして「マスター」と呼ばれる。
「あのさ、シュマリ。僕のことをマスターって呼ぶのはやめてくれない? 任務中はせめてね。向こうのマスター怖いのよ。
タイザンとか、マネージャーとか、あるでしょ他に」
「りょーかい、タイザンマスター!」
ホロカが脚をパタパタさせながら答える。二人とも向かいのベッドに並んで腰掛け、
早く行きたいとばかりに張り切っているようだ。シュマリは獲物の爪を磨いている。
タイザンは頭を抱えながら、渋々と立ち上がった。
「……じゃあ、朝ごはんにしようか。二人とも、鍋の用意して。
食材は、昨日の昼から決めてる。調理方法はは僕に任せてもらっていいよ。
食べ終わったら胃を悪くしないように、ゆっくり行こう。徒歩で。地図はあるからね」
各地で集めてきた食材・出汁とアスガルドの食材を合わせた鍋は、予想以上に美味だったようで、
特に食べ盛りの娘二人は迷わずおかわりをした。その間にタイザンは今回の任務について説明をする。
「ってことでさ、ギルドの資料によると入り口を封鎖して念のため一人見張りを置くのがベストみたいだけど、
そこは見張りを片付けてから決めようか。ミライユはああ言ってるけど、逃がしさえしなければ、殺す必要なんてないからね」
タイザンがコック帽を被っていたことに気付き、慌てて道具入れに畳んで仕舞う。
こんなものが見られてしまったらギルドマネージャーとしての面目がたたない。
その代わりに、下手をすればそれ以上に目立つ禿げ上がった頭頂部が丸出しになったが……
(……やっぱり朝食にカレー用のスパイスは拙かったかな……!?)
このようにゆっくりと朝食を味わった三人は、ミライユの予想よりも遅れて洞窟へと向かっていった。
【以上、支援の三人組登場シーンでした。このキャラたちはタイミングを見ながら
ミライユのターンで出していきますのでよろしく!】
105:創る名無しに見る名無し
17/01/15 13:33:14.29 SSDttvr/.net
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106:創る名無しに見る名無し
17/01/15 13:43:50.02 0w6xqI+N.net
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107:創る名無しに見る名無し
17/01/15 13:44:05.03 0w6xqI+N.net
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108:創る名無しに見る名無し
17/01/15 13:44:28.53 0w6xqI+N.net
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109:創る名無しに見る名無し
17/01/15 13:45:35.21 0w6xqI+N.net
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110:創る名無しに見る名無し
17/01/15 15:26:54.60 oDnZgUGE.net
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111:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:08:42.03 aWeqpg4N.net
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112:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:09:31.56 aWeqpg4N.net
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113:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:13:26.39 aWeqpg4N.net
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114:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:15:01.93 aWeqpg4N.net
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115:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:35:27.37 AQ8gJxjo.net
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116:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:35:40.16 AQ8gJxjo.net
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117:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:38:38.4
118:9 ID:AQ8gJxjo.net
119:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:39:17.36 AQ8gJxjo.net
埋
120:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:39:27.64 AQ8gJxjo.net
め
121:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:39:46.86 AQ8gJxjo.net
ま
122:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:39:59.82 AQ8gJxjo.net
す
123:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:40:29.61 b50VSs0c.net
埋め
124:創る名無しに見る名無し
17/01/15 19:40:54.18 WKTyiryX.net
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125:創る名無しに見る名無し
17/01/15 20:14:40.12 OFMGNHHr.net
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126:創る名無しに見る名無し
17/01/15 20:15:58.99 OFMGNHHr.net
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127:ジャン ◆9FLiL83HWU
17/01/16 21:09:25.55 gdIl8BgC.net
ジャンの朝は他種族に比べ、やや遅い。
それはジャン個人の体質というわけではなく、単純にオーク族そのものがそういった体質なのだ。
オーク族の神話が語るところによると、かつて夜に生きていたオーク族は戦争において
夜襲や見張り、両方に重宝されていたが昼に生きる他種族によって絶滅の危機に追い込まれた。
しかし、少数のオークが昼に目を覚まし、見張りをすることで無事に絶滅を防ぐことができたという。
今では他種族との交流が進んでいるためオーク族も夜行性の者が減りつつあるが、神話の名残として
夜遅く寝て、朝遅く起きるというオーク族の数は多い。
だからこそ、ミライユとラテの行動にも気づいていた。
ジャンにはよく分からなかったが、二人は寝る直前にあまり好意的でないやりとりをしていたようだ。
(ミライユの部下かもしれなかったが……こりゃ揉めるかもな)
朝起きたとき、二人は特におかしい様子はなかった。
両方とも賊の襲撃に備えてか警戒をしてくれていたようなので、もしかしたら勘違いをしていたかもしれない。
ジャンは市場で買った焼き野菜串と焼肉串を朝飯代わりに食べつつ、ティターニアの三歩後ろについてテッラ洞窟へと向かう。
洞窟の入口には警備兵が立っていた。学生が肝試し代わりに入るには少々物々しい雰囲気だが、
これも最近続いている魔物の活性化のせいだろう。
>「ユグドラシア導師、ティターニアだ。近頃強いモンスターが出現するようになったと聞き馳せ参じた」
「その護衛兼助手、ジャン・ジャック・ジャンソンだ」
ティターニアが学園の身分証を見せるのに続いて、ジャンもギルドの身分証を見せる。
根無し草とか浮浪者扱いされることも多い冒険者にとって、ギルド公認というのはとてつもなく大事なものだ。
もしここで身分証がなければジャンは警備兵に警戒され、一人だけ確認のために足止めを受けていたことすらありえる。
(だからまあ、ミライユが勧めてくる気持ちも分からなくもないんだけどよ……
そりゃ首府にあるギルドの方が有名だろうしな)
(でも、俺を初めて冒険者として受け入れてくれたのはあそこだ。その恩義に反することはできねえよ)
改めてスクリロの冒険者ギルドマスターに感謝しつつ、ジャンも洞窟へと入っていく。
128:ジャン ◆9FLiL83HWU
17/01/16 21:10:17.55 gdIl8BgC.net
だが、入っていく途中、妙なことに気がついた。いつの間にかミライユが後ろにいる。
「取材の報告でもしてんのか?俺の話がネタになると嬉しいけどな」
取材という目的をジャンはあまり信じていなかったが、それでももしジャンやティターニアたちの冒険が
文字になり、詩になり、物語となれば、ジャンの旅の目的は達せられたようなものだ。
だからこそ、せめて本当であってほしいと一縷の望みをかけてミライユに言った。
>「……うん、風を感じます。濃いところから薄いところへ流れる、マナの風を」
さて、洞窟に入ってしばらく進んでいるとラテが何かに気づいたようだ。
ラテのすぐ後ろを歩くジャンはミスリル・ハンマーを短く持ち、狭い洞窟内でも最小限の動きで戦えるように構える。
通路をさらに進んだところで、街で見たものよりさらに大きいオオネズミの群れに出くわした。
>「……始末しちゃいましょう。もしかしたら、何かを守っているのかも」
>「私が仕掛けますね。仲間を呼ばれても面倒ですし、上手い事全部仕留めてみます。まぁ、ミスったらフォローお願いしますね」
その言葉に無言でジャンは頷き、ラテを邪魔することがない通路の端へ移動する。
いつでも飛び出せるよう、リーダー格であろう二足で歩いているオオネズミへ狙いを定めることも忘れずに。
結局、ジャンが出る必要はなかった。オオネズミたちの首が音もなく吹き飛び、噴き出した血が地面や壁を染めていく。
ついでにジャンはオオネズミの肉も確保しておくことにした。
他種族が食べても平気かどうかは知らないが、ジャンはこの大きく締まったもも肉が好きなのだ。
というわけで干し肉の材料にするべく手早く解体していると、ジャンが解体しようとしたオオネズミをラテが血抜きしてくれている。
「お前……オオネズミ食うのか?わざわざ血まで抜く辺り、さては無類のオオネズミ好きなんだな…」
自分と同じオオネズミ食いが仲間にいたことに感動し、干し肉を作ったら分けてやろうとジャンは決意していた。
>「そろそろ、何かありそうな気がするんですけどね。壁とか床とか、
古代都市を隠してるなら魔法的な仕掛けがあるのかも……どれどれ」
「そうだな、見たところこいつらがいた広間が行き止まりみたいだが…あっおい!」
干し肉に使えそうなオオネズミの部位を専用の革袋に入れ、解体を終えたところで気がついた。
飛び散った血がこびりつく地面をよく見てみると、ジャンには読めない文字で紋様が円状に刻まれている。
死体の残骸をどかしてみれば、そこには刻まれた文字にオオネズミの血が流れ込み、血の魔法陣とも言うべき形を成していたのだ。
「……古代都市への入口というより、これじゃ冥界への入口だな」
129:創る名無しに見る名無し
17/01/17 10:00:51.90 oaiL8x7o.net
埋め
130:創る名無しに見る名無し
17/01/17 10:01:17.98 Ab3qDE8c.net
埋め
131:創る名無しに見る名無し
17/01/17 10:01:38.19 qRwMSOtR.net
埋め
132:創る名無しに見る名無し
17/01/17 22:38:34.39 XjYYaH2o.net
埋め
133:創る名無しに見る名無し
17/01/17 22:38:53.36 XjYYaH2o.net
埋め
134:創る名無しに見る名無し
17/01/17 22:39:11.94 XjYYaH2o.net
埋め
135:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/18 02:06:01.92 6K4Y6PbZ.net
昨日の夜ミライユがラテにちょっかいを出していたようだが、あれは何だったのだろうか―と思うティターニア。
魔力が大きく動いた気配がしたのでうっすら目が覚めたのだが、ラテが気に留めていない様子だったのでそのまま寝てしまった。
本人があの様子だったということは、おおかた他愛のない悪戯なのだったのであろうが……。
>「……ユグドラシア導師!?えっ、嘘、めちゃくちゃ偉い人じゃないですか!」
>「という事はもしかして、この洞窟に潜るのもフィールドワークの一環とか!?」
>「専門は……確か考古学でしたよね!それって環境魔法学とか、古代魔法とかについても調べたりするんですか?」
ラテが興味津々といった感じで食いついてきた。
あからさまに顔には出さないものの、満更でもなさそうな様子で応えるティターニア
「何、確かに人間で導師になった者は物凄い天才揃いだがエルフの導師連中はおおかた年の功といったところだ。
お主勘が良いな、概ね正解だ。実際に様々なところに行って忘れ去られた真実への扉を開く……それが我々の仕事となる。
もちろん詳細な解析は個々の専門の者に委ねることになるがな。
この前行った遺跡ではな……おっと、長くなるゆえ帰ってから話すとしよう。
ミライユ殿、どうしたのだ? 行くぞ」
思わずヴォルカナやステラマリスのことを普通に話してしまいそうになるが流石に思いとどまり
いつの間にか後ろの方にいたミライユに声をかけて、洞窟へと入っていく。
夜目が効く種族補正の無いラテやミライユが困らぬように杖の先に明かりの魔術を灯す。
>「じゃ、先行しますね……って言っても、まぁとりあえずは普通に奥を目指す事になりますけど。
……くんくん。うーん、マナの流れはまだ感じ取れないかな」
しかし、どうやら魔力の流れが読めるラテには必要なかったようだ。
レンジャーとして積極的に先行するラテの後姿を見ながら、まだ少女であろう若さで大したものだな―思う。
これは天性の素質があったか……もしそうでなければ余程の努力を積み重ねたかのどちらかであろう。
>「……うん、風を感じます。濃いところから薄いところへ流れる、マナの風を」
>「あ、ちょっと待って下さいね。もうちょっと匂いを分かりやすくします」
ラテがマジックアイテムの力を借りて、魔力の流れをティターニアにも分かるようにして見せる。
そこに存在する魔力を感じ取る力自体は本業の魔術師であるティターニアの方が上かもしれないのだが
どちらからどちらへ流れている等の動きを感じ取るにはまた別の訓練が必要のようだ。
>「……うん、風を感じます。濃いところから薄いところへ流れる、マナの風を」
マナの風に沿って進んでいくと、そこは巨大ネズミやら二足歩行のネズミが闊歩するネズミーランドと化していた。
確かに魔力には溢れているがあまり夢のある光景とは言えない。
>「……始末しちゃいましょう。もしかしたら、何かを守っているのかも」
>「私が仕掛けますね。仲間を呼ばれても面倒ですし、上手い事全部仕留めてみます。まぁ、ミスったらフォローお願いしますね」
杖を構えるティターニアだったが、ラテがそう言うのでお手並み拝見ということで、ジャンと共に下がっておく。
数瞬後―
136:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/18 02:08:14.55 6K4Y6PbZ.net
「す、すごい……!」
高出力の魔力で吹っ飛ばす良く言えばシンプル悪く言えば力押しの戦法が中心のティターニアは
ラテのトリッキー且つ鮮やかな手腕にテンプレ驚き役のごとく感心していた。
>「ちょっと前をお願いします。私は一旦、後ろに警報程度の罠を張っときます。
血の臭いで何か集まってくるかもしれませんので」
>「お前……オオネズミ食うのか?わざわざ血まで抜く辺り、さては無類のオオネズミ好きなんだな…」
前を警戒しながら、ジャンの小さな勘違いにくすりと笑う。
魔物の血が魔法薬の素材になることを皆が皆知っているわけではないのだ。
「ジャン殿、それは……まあ良いか。食べてみれば新たな扉が開けるかもしれぬ」
>「そろそろ、何かありそうな気がするんですけどね。壁とか床とか、
古代都市を隠してるなら魔法的な仕掛けがあるのかも……どれどれ」
>「そうだな、見たところこいつらがいた広間が行き止まりみたいだが…あっおい!」
ジャンが何かを発見したようだ。
見れば、偶然にもオオネズミの血が染み込んだことにより、普通なら気付かなかったであろう魔法陣が露わになっていた。
>「……古代都市への入口というより、これじゃ冥界への入口だな」
「ああ、そういえばここにあると噂されておるのは地底都市アガルタ―各伝承によって楽園とも地獄とも謳われておるな。
これは形からいって転送魔術陣のようなものかもしれぬ―この文字……ラテ殿の盾の文字に少し似ておらぬか?」
おおかた雰囲気が似ているだけだったのだろうが、もしかしたら本当に同じ種類の文字だったのかもしれない。
しかしそれを確かめることは出来なかった。
間近で魔法陣の文様を検めようとしたところ―轟音と共に地面が大きく揺れた。
おそらく洞窟に入る前にあったものと同じものだが、震源が近いために遥かに大きい。
天上から礫がパラパラと落ちてくる。
「まずいな……崩落でもしたら……」
そう言いながら上を見上げていると、間髪入れずに次の激震―
今度は立っていることすらかなわぬほどの揺れ。反射的に頭を庇うような姿勢を取るティターニア。
そんな中で、魔法陣から眩い光が迸ったかと思うと、そこから風景が塗り替わっていく―ように見えた。
転移魔法陣が発動したのか、あるいは―それは空間を隔てる結界を繋ぎとめる杭のようなものだったのかもしれなかった。
137:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/18 02:09:56.31 6K4Y6PbZ.net
*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*
気が付くと一行は、黄の宝石で彩られた古代都市に立っていた。
しかしゆっくりと周囲を見回している場合ではなく、まず最初に目に飛び込んできたのは、激しい戦いの様子。
≪何故扉を開き奴らを招き入れた!?≫
「彼らはアクアとクイーンネレイドが認めた指環の勇者―何故分からぬのですか!?」
≪我は認めぬ―奴らは昔から甘いのだ! 非情になれぬ者達に世界を変える事など出来ぬ!≫
黄金色にも近い黄色の竜の翼を生やした金髪の女性―大地の竜テッラと
巨大な狼の姿をした獣、アガルタの守護聖獣フェンリルが、地を揺らし礫巻き上げる戦いを繰り広げていた。
フェンリル、その名の意味は「地を揺らす物」―地震の正体は、この戦いの余波だったらしい。
彼らはジャンとティターニア達に指環を託すかどうかを巡って争っているようだった。
「まさか……内輪もめか……?」
ティターニアの呟きに、大地の竜テッラが答える。
「ジャン様、ティターニア様、お仲間の皆様……お見苦しいところを大変申し訳ありません―とにかく今は加勢をお願いします!
この分からず屋に貴方達の力を見せてやって下さい!」
「仕方あるまい、行くぞ―!」
ティターニアが加勢に入ろうとしたときだった。
荒れ狂っていたフェンリルがはたと動きを止め、一行の方に歩み寄ってくる。
その瞳は、ミライユの方を真っ直ぐと見つめていた。
≪そなた、他の者達とは違うな―冷酷で無慈悲で何よりも純粋―
我は思うのだ、世界を変え得るのはそなたのような者だと。
もしもそなたが指環を欲するなら、力を貸そう―娘よ、力が欲しいか―!≫
ミライユに向けて唐突に発せられた荘厳な問いかけ―
あまりの展開に、ティターニアは息を飲んでミライユの返答を待つしかなかった。
【一応ジャン・ラテ・ティターニア・テッラVSミライユ・フェンリル・(増援3名)
の対戦カードを組んでみたつもりだがもちろんここからどういう流れになるかは皆次第だ!】
138:創る名無しに見る名無し
17/01/18 19:59:44.16 ilVEVhxz.net
埋め
139: ◆6Nqsyb3PfY
17/01/19 13:36:39.22 BUszQBJk.net
「これでいいのかなぁ?」
タイザンら3名はテッラ洞窟の見張りを不意をついて沈黙させ、処遇について話していた。
「二人ほど殺っちゃったけど……残りはどうすんだ? マスター」
「仕方ないなぁ……シュマリは手加減できないの、直した方がいいよ。じゃあさ、そこらの木まで運んで縛ってもらえるかな。
シュマリ、ホロカ。特製スパイスで眠らせておいたから、後は頼める?」
タイザンは二人に倒れた警備兵たち四名の処遇を任せて、二名の犠牲者の処理をしながら、
一人娘、マトイのことについて思い出していた。
懐からメモを取り出し、マトイのギルドNoを確認する。
(『No.1012 マトイ・シモヤマ』 マトイは最近おかしかったね……
向こうのマスターが凄く良い人だとか言ってた。最後に会ったときも笑顔だったけど、
本当に無事なんだろうか……)
死体を埋め、形跡を消して、入り口を封鎖する準備をしている間に、二人が戻ってくる。
「はーい、ありがと。ところでホロカ、ちょっとここで警備兵の服装に着替えて、残ってもらえる?
すぐ終わるからさぁ、どうせ誰も来ないと思うよ」
「えぇ~!? 嫌だぁ、わたしもお姉ちゃんと行く~」
「……仕方ないなぁ、じゃあ、完全に入り口封鎖しとくから、できるだけ前出ないように注意して。行くよ」
タイザンは最後に会ったときのミライユの顔を浮かべながら、僅かに寒気がするのを感じた。
(あの子は有無を言わせないところがあるから……本当に気をつけないと)
―一方、ミライユは―
>「……これは、いよいよ怪しいですね。匂いますよ、お宝の匂いがします」
既にミライユも感じているのだ。この洞窟の奥底にある魔力の流れを。
(しかし、このラテという女もなかなかの使い手のよう。マスター、私、頑張ります!)
「むっ!? あれはオオネズミ! しかも結構大きいですよ……!」
あくまで後方支援とばかりに安全な位置を確保しながら近づいていくミライユ。
ラテの様子を観察する。そうやらピックと毒と剣を使い、何やら仕掛けているようだ。
アサシンギルドの視察でみたようなものだ。
(あんな仕掛けじゃすぐバレちゃいますよ……って……!)
巨大なネズミの首が一瞬で切断され、既にラテはその死骸の片付けやら採集やらをしている。
どうやら侮れない相手であるころは間違いないらしい。
140: ◆6Nqsyb3PfY
17/01/19 13:55:37.56 BUszQBJk.net
「へぇー、ラテさん、これは、大手柄ですよ!
141:!」 適度にラテを褒めておく。 驚きを悟られないように、ジャンと共にオオネズミの肉の処理をした。結構な肉量になりそうだ。 やがて血が魔方陣になるなどの紆余曲折あって、洞窟の床は崩落、 一行は下のフロアに立っていた。 「古代都市……!?」 ティターニアの知識ではアガルタというらしい。 正直、殺しの経験ばかりはあるが、ミライユはこういった遺跡などの知識は殆ど無いに等しい。 彼女がいなかったら自分が何をすれば良いのかも分からないだろう。轟音のような叫び声のような音が響いてくる。 (深入り、し過ぎましたかね……) ミライユは身体を起こすと、ハネた髪に付いた土を払いながら、髪の隙間から見開いた目を覗かせていた。 魔力の居場所が目の前に迫っているのだ。 正直なところ、これだけの深追いをしている自分に驚愕している。 あくまで自分の目的は「ティターニアの監視」なのだから。しかし、指環の在り処の特徴と一致する部分はいくつかある。 恐る恐る様子を見ると、どうやら竜の翼を生やした女と、巨大な狼が戦っているようだ。 自分が必死であることを周囲の三人に悟られないように、集中力を凝らして他の魔力や精霊力を検地する。 と、増援のタイザンたちがこちらに向かってきているのが分かった。 あと二人もいればこの状況で自分の手足になるにはこと足りるだろう。 「……って、三人!?」 泥や土まみれになりながら、タイザン、シュマリ、ホロカがそこには居た。 ティターニア、ジャン、ラテもほぼ同時に彼らが登場したことに気付いていた。 いや、ティターニアあたりは既に感知していたかもしれない。 タイザンたちにはティターニアについては「取材と護衛」ということで表面上は済ませると 伝えてある。ただし裏ではギルドにとっての危険人物であると周知されているのだ。 手っ取り早く紹介を済ませる。 「タイザンさん、お久しぶりです。こちらの方が導師ティターニア様。 あ、ティターニア様。私が急遽増援としてソルタレクから派遣した護衛のタイザンさんです。 ってことでタイザンさん。主に、護衛を、よろしくお願いしますね! ところで……」 「あぁ、うん、ミライユちゃん、よろしく頼むよ」 「"連絡役"は一人用意してあるんですよね?」 「あぁ、それは必要無かったよ」「タイザンマスターがいらないって言ったから!」 「タイザン、"マスター"? あのですね、No.1188・ホロカ・シズカリ。タイザンさんはマネージャーですよ? マスターはソルタレクのギルドマスター一人だけ。分かった?」 ミライユがホロカの黒髪の頭を撫でるようにして、内側から力を加える。 ホロカはやがて涙目になって、その場を素早く離れ、シュマリの後ろに隠れた。 タイザンがため息をつく。 「ほら、だから言ったでしょ。僕はただのタイザンだから。ここからはとりあえず ミライユちゃんの指示に従って」 「怖いよ、お姉ちゃん……」 ホロカがシュマリの後ろに隠れ、ミライユを遠巻きに見る。 (お姉ちゃん……? うっ、頭が……) ミライユは過去の思い出したくもない出来事を思い出していた。
142: ◆6Nqsyb3PfY
17/01/19 14:22:31.22 BUszQBJk.net
「お母様!」
首府ソルタレク。当時まだ12歳だったミライユの屋敷はローブを着た集団によって襲われていた。
魔術師でもあった母はそれらに応戦していた。敵の頭は空中を浮遊する、露出度の高い服装をした魔女だった。
何度かミライユも会ったことがある。それは父の不倫相手でもあったのだ。
いずれはこうなるだろうと予想はしていたものの、あまりにもそれは早くきた。
「ミライユ、護衛のいるメルセデスの部屋に下がってなさい。あなたは脱出するの!
あれは"指環の魔女"よ。私たちを裏切った化け物! あぁっ!」
母が魔女の炎によって焼かれていく。屋敷でも護衛とフードの集団が戦っていたが、流れは見えていた。
メルセデス……ミライユの最愛の姉はギルドに所属していた。15歳ながら剣の腕は確かだった。
「お姉さま、私、どうしたら良いんですか?」
「ミライユ、ここには護衛の騎士もいるし、お父様がきっと私たちのことは助けてくれるわ。
だから、指示があるまで待ってて。あなたはまだ戦えないんだから」
やがて父が現れた。その姿は何かに取り付かれたようで、何も見ていなかった。
「お父様!!」
ミライユが叫んでいる間に、父は次々と見張りの騎士たちを殺していった。
「ミライユ、下がって!」
姉・メルセデスが剣を抜く。そして迫り来る父にその切っ先を向ける。
ミライユの顔に生暖かい何かが大量に散った。
―それは姉の血液だった。どろりとそれを浴びたミライユは、落ちている槍を拾い、振り回していた。
「お姉さま! 嫌アァァァァァァ!!!!――」
そこから先は覚えていない。父は死体となって発見され、いつの間にかミライユは
冒険者ギルドのメンバーのよって助けられていた。
後から聞いた話によると、母が父と不倫相手である"指環の魔女"との関係を察し、
先に冒険者ギルドにも増援を寄越したらしい。魔女の組織はギルドと敵対しており、調度それらは駆逐された。
その後、ミライユは冒険者ギルドの一員となって少しでも強くなるために非正規メンバーとして様々な任務をした。
既に12歳にして「人殺し」になっていたミライユは比較的活躍したが、それでもベテランには到底及ばないものだった。
時には裏通りに呼び出され、収穫物を取られたり、理不尽な暴力を受けたりもした。それはエスカレートした。
当時の冒険者ギルドはまとまりが無く、ギルド員と荒くれ者が混在している状態だった。
任務が終われば取り分をめぐって争いが起こることもしばしばであり、ついに目をつけられたミライユは、
何か気に入らないことがある度に荒くれの男女に取り囲まれ、暴力を振るわれてはモノを奪われた。そしてミライユは心を壊した。
ただ笑うことで感情を押し殺し、我慢するようになっていた。
―しかし、それもある男の登場で変わる。
それが今の「マスター」だった。彼は裏通りの荒くれや、冒険者ギルドに片足を掛ける狼藉者を次々粛清していった。
やがてミライユもその一員になり、報復を行った。そして殺しの快感を覚えてしまった。
そこからは当然のような流れだ。ミライユが受けた分の嫌がらせを相手に対してすることで、自分の気を紛らわす毎日だった。
服を脱ぎ、自分の身体に刻まれた暴力の傷を見るたびに、それを誰かになすり付けたくなる。ミライユの心は荒んでいた―
143:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/19 16:08:12.87 BUszQBJk.net
(はッ、何を考えているんでしょう……私は、今から大事なことが、起こりそうなのに……)
目の前では竜女とフェンリルが言い争いをしていた。
>「彼らはアクアとクイーンネレイドが認めた指環の勇者―何故分からぬのですか!?」
>≪我は認めぬ―奴らは昔から甘いのだ! 非情になれぬ者達に世界を変える事など出来ぬ!≫
アガルタとティターニアが呼ぶ遺跡の住人たちの会話の内容を、冷静になって分析する。
女は恐らく竜……指環を持っているのだろう。そしてフェンリルの方は会話内容からすると、
ついさっきまで仲間として共に行動していたということで間違いない。
「いいですか……彼らが何を話しているか、落ち着いて聞いていてくださいね」
後ろにいるタイザンたちに目配せする。
>「ジャン様、ティターニア様、お仲間の皆様……お見苦しいところを大変申し訳ありません―とにかく今は加勢をお願いします!
この分からず屋に貴方達の力を見せてやって下さい!」
>「仕方あるまい、行くぞ―!」
「お知り合い……ですか?」
ジャン、ティターニアの名前、それを知るタイミングといえば、警備兵に名前を告げたあたりだろう。と普通は思う。
少なくともミライユにはアクアの件を知る由は無かった。
(となると、警備兵を始末するときに、タイザンは持ち物や仕掛けの確認を怠っていた……と)
チッ、と舌打ちが思わずミライユからこぼれる。
頭を抱えていると、何やらフェンリルの方がこちらに向かっている。ミライユの方だ。
あっさり女と停戦するあたりは、未だに交渉の余地があることと思われた。
急過ぎる。さすがの戦闘慣れしたミライユもこれには後ずさる。これだけの高位の魔物はそういまい。
144:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/19 16:13:15.43 BUszQBJk.net
≪そなた、他の者達とは違うな―冷酷で無慈悲で何よりも純粋―
我は思うのだ、世界を変え得るのはそなたのような者だと。
もしもそなたが指環を欲するなら、力を貸そう―娘よ、力が欲しいか―!≫
(力……? 欲しいに決まっているでしょう。
そして世界を変えられるのも、この中には私しかいません。しかし……)
「シュマリ。あなたにこの任務をお任せします。"インカルシペ最高の守護戦士"と呼ばれるあなたにこそ相応しい力。
獣人の誇りというものを、見せてあげなさい! 故郷を助けたのはどこでしたか?」
シュマリは面食らったような表情でタイザンや他の面々の方を見渡した。
タイザンは汗をかきながら、とりあえずといった様子で首を縦に振る。ホロカは混乱していて返事ができる状態ではない。
ティターニアたちの表情からは初対面のシュマリからは何も分からない。
ただ、ミライユの有無を言わさぬ表情が、シュマリを睨んでいる。
「シュマリ。大丈夫、必ず助けてあげるから」
タイザンのその一言が決定打となり、シュマリの覚悟を決めた。
「分かったよ。マスター。オレ、力、欲しい。オレがこの場を動かしてやる。くれよ、力ってやつを……!」
≪仕方あるまい。言われてみればこちらの娘も心は違えど"資質"は持っている様子。
では獣人の娘よ。我が敵、地竜テッラを討ち滅ぼしてみせよ。オォォォ―≫
「ふっ、ぐぁっ、フオォォォォォォ……―ン!!
あぁっ、すげぇよ……すっげぇ力だよぉ、オォォォ……!!」
巨大なフェンリルが雄叫びを上げると、その巨体がオーラの塊になり、シュマリを襲う。
雄たけびのような声と共に、それを受け入れたシュマリの髪が伸び、全身から禍々しいオーラと衝撃波を放った。
思わずミライユたちは吹き飛ばされる。
目は真っ赤に染まり、それはただ一点、大地の竜である女の方を見ていた。
「愚かな……そのような娘に力を与えても、操れる力ではない―」
テッラは突如襲いかかるシュマリの猛烈な攻撃を受け止めた。しかし、フェンリルの強力な打力と魔力にシュマリの速度と鋭さが相まって、
もはや人間形態だけではその攻撃を受け止めきれないようだ。
一撃、一撃がテッラに入るごとに、皮膚が破れ鮮血が舞い、やがて翼の皮膜にも穴が空きはじめた。
限界を察したテッラは呪文のようなものを唱えると、一同へと言い放つ。
「どうやらフェンリルの力を侮っていたようですね。私はこれより真の姿にならねばなりません―
私の能力もやはり理性が飛びかねない膨大な力を要するものです。先にお伝えします。
そこから現れる指環、ティターニア様とお仲間の方々に託します。私がフェンリルを止めている間に指環を取ってそこの
魔方陣から脱出なさい。それと、その娘は―グゴッ、ゴゴゴオゴ……」
145:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/19 16:17:22.92 BUszQBJk.net
テッラが両手を天にかざすと、まばゆい光とともに脇の祭壇が崩れ、そこから
一本の柱がせり出してきた。それは初めは人間の背丈四方ほどだったが、徐々にピラミッド状に伸び、一番天辺に
まさに黄金色に輝く"指環"が現れた。同時に魔方陣も出現する。
巨大な黄金のドラゴンとなったテッラは徐々に押し返し、シュマリをブレスや爪により傷つけていく。
シュマリは何の因縁もないテッラに攻撃することを強要され続けており、既に身体は悲鳴を上げていた。
あばらの何本かは折れているだろう。出血も相当だが、痛みも感じないらしく、尚もテッラに向き直る。
「シュマリ……! もういいから退きなさい、まだやり直せるから……!」
「『助けて』ってずっと言ってる……! お姉ちゃん! もうやめて……!」
ホロカはシュマリの精霊力の変化を感じ取ったようだ。
しかしミライユはそんなものには構わず指環だけを見て詠唱し、指環に向けて勢い良く駆ける。
この点においてはミライユが誰よりも有利だった。
射程内に入ると同時に空間操作魔法が発動し、あっという間に指環はミライユの手に渡った。
アハハ、と高笑いし、それを大事そうに握ったまま、声を荒げてタイザンたちや"ギルド員"たちに指示を出す。
「タイザンさんとホロカは、とりあえず私が魔方陣まで行くのを支援してください!」
「ジャンさん、ラテさん、あなた方もギルド員なら、シュマリの支援にでも向かったらどうです?
彼女、このままじゃ死んじゃいますよ?」
口の端を吊り上げながら、ミライユは"テッラが用意した脱出用の魔方陣"めがけて一直線に駆けた。
(あの三人も用済みですね……マスター、必ず指環を持ち帰って、そして、貴方の望みを……!)
【竜化したテッラと獣化して限界突破したシュマリが戦闘中。テッラが有利。
ミライユは"指環"を奪って魔方陣へ。タイザンとホロカがそれを護衛。
ジャンとラテには不利になっているシュマリを守るように指示。】
【捉え方、選択肢は多いと思いますが、お好きな展開をどうぞ。シュマリはこのままいけば死ぬまで戦います。
タイザンとホロカはこれ以降は好きなように動かしてもらって大丈夫です。】
146:創る名無しに見る名無し
17/01/19 23:24:26.73 h/PzmiO7.net
埋め
147:創る名無しに見る名無し
17/01/19 23:24:44.72 h/PzmiO7.net
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148:創る名無しに見る名無し
17/01/19 23:25:04.72 h/PzmiO7.net
埋め
149:創る名無しに見る名無し
17/01/19 23:25:33.96 h/PzmiO7.net
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150:創る名無しに見る名無し
17/01/19 23:25:47.41 h/PzmiO7.net
埋め
151:創る名無しに見る名無し
17/01/19 23:32:58.20 g3jlfOTj.net
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152: ◆ejIZLl01yY
17/01/20 14:18:29.92 KSHQ0kvW.net
>「お前……
「ひゃいっ!?」
ぎゃー見られた!
洞窟の暗がりの中こそこそとオオネズミの血を採取する所を見られてしまった!
しかもびっくりして変な声まで出た。絶対変な奴と思われたよこれ。
陰気で根暗なレンジャーのくせに黒魔術にも手を出してるヤバイ奴だと思われるに違いないんだぁ。
もうだめだぁ。
>オオネズミ食うのか?わざわざ血まで抜く辺り、さては無類のオオネズミ好きなんだな…」
「へっ?……あ、あぁ、そうなんですよ!
レンジャーやってるとやっぱりお世話になりがちでして……
そのまま癖になっちゃったんですよねー、あはは……」
と思ったらセーフ!いや、これはアウトかも!
少なくともネズミのお肉が大好きな奴と思われて女の子的には完全アウトです!
よく見るとジャンさんもオオネズミの解体してるし。
これは今更「いや、私はオオネズミとか食べませんよ。オークじゃあるまいし、ははんっ」とか言えそうにない雰囲気。
>「ジャン殿、それは……まあ良いか。食べてみれば新たな扉が開けるかもしれぬ」
まぁ良くないです……駄目だ、これはもう誤解を解けるような雰囲気じゃない……詰んだ……
諦めて私も食肉として幾らか回収しておこう……
そして回収したからには食べなきゃと口に運ぶんだろうなぁ。
「あっ、首にピックが刺さってるのは麻痺毒打ち込んでますから、気をつけて下さいね」
いや、まぁ、不味い訳じゃないんだけどね。
ん?食べた事あるのかって?
そりゃあるでしょ、レンジャーですよ私。
森や遺跡や敵陣で、たった一人で何日も過ごす事を前提とした職業なんですよ。
訓練時代、食べられる虫から魔物まで実践も含めて教わりましたとも。
オオネズミなんて余裕でもりもり食べられますよ。
ただオオネズミってどこにでもいるじゃん?どこにでもいるって事は、雑食性って事じゃん?
味がすごいまばらなんだよね。
だけど草食べてようが肉食べてようが、まず間違いなく臭みがある。
この洞窟の場合は……虫とか?
虫って結構栄養があるし、美味しいお肉になったり……してたらいいなぁ。
実際の重量以上に重く感じるオオネズミのお肉を蝋紙で包んで宝箱に収め……さて、探検再開と行きますか。
と言っても、ここで行き止まりみたいだけど、マナの風�
153:ヘ確かにここから感じる。 「そろそろ、何かありそうな気がするんですけどね。壁とか床とか、 古代都市を隠してるなら魔法的な仕掛けがあるのかも……どれどれ」 > 「そうだな、見たところこいつらがいた広間が行き止まりみたいだが…あっおい!」 「ん、何かありました……」 とりあえず壁を検めようかと思っていたら、ジャンさんが驚きの声を上げた。 私はそちらを振り返って、松明代わりの灯火の杖を掲げ……思わず、言葉と呼吸を忘れた。 灯火に照らされた地面に、ネズミの死体から流れた血が魔法陣を描いていた。
154: ◆ejIZLl01yY
17/01/20 14:19:32.69 KSHQ0kvW.net
地面に小さな溝……これは、古代文字?が刻まれていたんだ。
灯火からの明かりを受けて、魔法陣は妖しい紅の輝きを放っている。
>「……古代都市への入口というより、これじゃ冥界への入口だな」
「ちょっとやめてくださいよ。今からそこに潜るかもしれないって時に」
>「ああ、そういえばここにあると噂されておるのは地底都市アガルタ―各伝承によって楽園とも地獄とも謳われておるな。
これは形からいって転送魔術陣のようなものかもしれぬ―この文字……ラテ殿の盾の文字に少し似ておらぬか?」
「あー……この盾ですか?そう言われてみれば確かに……でもこの石版、なんて書いてあるか読めないんですよね。
あ、あ、待って。読んじゃ駄目ですよ。読めなくていいんです。読めない方がいいんです。
見ての通りこの盾、呪われてるみたいで……多分、完全に解読すると……最悪死ぬかも」
なんでそんなもん盾にしてんだって聞かれたら、頑丈だったからとしか……
「ただ……この盾、どうも世界滅亡の予言が記されてるみたいで。
かつて世界の滅びを予言した、古代文明の魔法陣……うーん、穏やかじゃない」
と……また地震だ。今のは結構激しく揺れたなぁ。
>「まずいな……崩落でもしたら……」
ここは自然に出来た洞窟だし、滅多な事じゃ崩れないとは思うけど……怖い事には変わりない。
「ティターニアさん。この魔方陣、解析出来ますか?……もし解析が難しいとして、起動ならどうです……」
っと……言い終わらない内からとんでもない激音!
うわわまた揺れてるよ!ちょっと、これは、立ってられないくらい大きい……!
瞬間、足元の魔法陣から眩い光。
これは……真っ暗な洞窟の景色が、眩く塗り変わっていく。
石とも金属ともつかない、継ぎ目一つなく艶やかな、淡く光を放つ街路。
連なる建物さえもが地面と繋がっている……いや違う。天井にさえも、同じように建物が並んでいる。
そしてそれらを彩る、太陽を封じ込めたかのように煌めく宝石。
私はその光景に目を奪われ、そしてトレジャーハンターとしての感性が、一瞬にも満たない内に理解した。
ここが……古代都市なんだ。
凄まじく高度な魔法技術と、恐らくは大地の竜の加護が、こんな幻想的な街並みを……って、なんかまだ揺れてる!
一体何が……
>≪何故扉を開き奴らを招き入れた!?≫
>「彼らはアクアとクイーンネレイドが認めた指環の勇者―何故分からぬのですか!?」
>≪我は認めぬ―奴らは昔から甘いのだ! 非情になれぬ者達に世界を変える事など出来ぬ!≫
と顔を上げたその先で、竜の翼を生やした女の人と、めちゃくちゃでっかい狼が戦ってた。
えっ、えっ?なにこれ、ちょっと私ついてこれてない。
>「まさか……内輪もめか……?」
ティターニアさんなんでそんな冷静なの?
いや、待って。少し頭が追いついてきた。
冷静になって、状況から事実を逆算すれば、すぐに分かる事だ。
この人達は古代都市が実在する事を、ずっと前から知っていたんだ。
そして恐らくは、指環や、その守護者の存在も。
だからこんなに冷静でいられる。
155: ◆ejIZLl01yY
17/01/20 14:20:48.41 KSHQ0kvW.net
>「ジャン様、ティターニア様、お仲間の皆様……お見苦しいところを大変申し訳ありません―とにかく今は加勢をお願いします!
この分からず屋に貴方達の力を見せてやって下さい!」
>「仕方あるまい、行くぞ―!」
あぁ、もう、色々聞いてみたいけどなんかそういう状況じゃないっぽい!
まずは目の前の状況に集中するしかない……
>≪そなた、他の者達とは違うな―冷酷で無慈悲で何よりも純粋―
我は思うのだ、世界を変え得るのはそなたのような者だと。
もしもそなたが指環を欲するなら、力を貸そう―娘よ、力が欲しいか―!≫
……そうして私が【不銘】を構えたところで、巨大な狼はそう言った。
ミライユさんに向けて。
そして状況は目紛るしく二転、三転と動き回る。
>「ジャンさん、ラテさん、あなた方もギルド員なら、シュマリの支援にでも向かったらどうです?
彼女、このままじゃ死んじゃいますよ?」
ろくに言葉も行動も挟む間もなく、ミライユさんとその増援は脱出の魔法陣へと駆け出した。
その光景に私は……
「……いやいや、おかしいでしょ」
思わず、胸の中に渦巻く暗い感情を、そのまま声にして零してしまった。
なんて言えばいいんだろ。
あー、だめだ。あんまり言葉を飾り立てる余裕もないや。
めちゃくちゃムカついた。
「止めてきます」
ジャンさん達の返事も待たずに、私は腰の宝箱を開いた。取り出すのは爆弾。
魔物の血肉から抽出した魔力を固めて、その過程で軽銀を合成した物。
左手いっぱい、優に十を超えるそれらを【不銘】で放つ。
狙いはミライユさん達じゃない……脱出用の魔法陣だ。
その真上にも周囲にも爆弾が落ちて、爆ぜる。
軽銀が高濃度のマナと反応して、その場に業火の壁を残す。
ただの業火じゃない。魔力を燃料にして燃える炎だ。
排除する為の魔法すら、その魔力を燃やして更に燃え上がる。
優秀な魔法使いであっても、短時間でどうにか出来る代物じゃない。
身体能力増強のポーションも飲めば、十も地面を蹴る頃には、三人に追いついた。
「おや、どうやら道が混んでるみたいですね」
後ろから声をかける。
「……で、いつ助けに行くんですか?」
振り返った、タイザンとか呼ばれてたおじさんを、強く睨む。
「『必ず助けてあげるから』なんでしょう?
『彼女、このままじゃ死んじゃいますよ?』。いつ助けに行くんですか?」
肺腑から喉を通って出て来る声は、自分でも驚くくらい冷たい。
156: ◆ejIZLl01yY
17/01/20 14:23:54.58 KSHQ0kvW.net
「私達を倒さずにってのは、ちょっと無理がありますね。それにその炎、魔法を使ってもそうそう消せませんよ。
私達を倒して、炎を消して、ミライユさんを見送って、目減りした戦力であの狼を倒して、助ける。……出来ますかね。
おっと、ついでに私はレンジャーです。のらりくらりと戦うのはお手の物ですよ」
だけど、これくらいで丁度よかった。
自分でも驚くほどの、この冷たさでも……もう長くは抑えきれそうにない。
「まぁ、もしかしたら私達もあの狼も、あなた達よりずっと弱い、かもしれないですよね。
その炎も、そうそう消せないってのはただの私のハッタリ、かもしれない。
ミライユさんは指環をどこかに隠したら、すぐに戻ってきてくれる、「かもしれない」……」
この、腸が煮えくり返るような怒りは。
「……そんな曖昧な言葉に委ねられるほど、あの子の命は軽いものなのか!なんで助けにいかないんだ!」
私は怒りのままに、声を張り上げた。
「家族なんだろう!?今更ミライユさんに義理立てして何が残る!あの子の命よりも重くて尊い物が手に入るのか!」
宝箱から装備を取り出す。
煙幕、閃光弾、毒を塗ったダガー……持久戦にはどれも役に立つ。
道具はまだまだ沢山ある。全部使ってやるぞ。
「今すぐ私の目の前から消えろ。でなければ、あの子が死ぬまでここで粘ってやる。
あの子が少しずつ力に蝕まれ、弱り、己を失いながら死んでいく、その一部始終を見させてやるぞ」
おじさんと、女の子は、まだ迷っている。
あぁ、もう、本当に……腹が立つ!
「助けに行けって言ってるんだよ!さっさと行け!まだ踏ん切りが付かないなら、こっちから仕掛けてやるぞ!」
感情に任せて怒鳴り上げる。
そして弾かれたように、まず妹が身を翻して走り出した。
おじさんは、一瞬だけミライユさんを見て、だけどすぐに妹ちゃんの後を追った。
……深い溜息が漏れる。怒るのって、めちゃくちゃ疲れるなぁ。
ん?……あぁ、違う違うよ。今のはヒュミントなんかじゃない。
ただの、めちゃくちゃカッコ悪いおじさんと妹への、本心からの怒りだったよ。
もし今のでまだもじもじしてるようだったら、私はさっき言った事全部実行に移すつもりだったさ。
……いや、多分、半分くらいは……まぁ……逃げ出したら追いかけるまではしなかったかも。
でも本当に、それくらいムカついたんだ。
仲間が、家族が、苦しんでるのに、死のうとしてるのに、それに背を向けて走り出す奴があるかよ。
そして……そうなるように仕向けたミライユさんにも、腹が立った。
絶対に懺悔させてやる。償わせてやる。
私は彼女を睨みつける。
「これ」
懐から取り出すのは、武器でも道具でもない。
彼女から押し付けられたギルドの会員証……あの人と、私の、唯一の接点。
157: ◆ejIZLl01yY
17/01/20 14:28:37.13 KSHQ0kvW.net
「やっぱりお返ししておきますね。私には私の家があるんです。あなたとの繋がりは、いらない」
鎖を巻きつけて丸めたそれを、ミライユさんへと投げる。
「……あなたは、生まれた時からずっとそうなんでしょうね。人の情なんて理解出来ない。
だからあなたの傍には誰の心もありやしない。
あぁ、マスターさんとやらは傍に置いてくれているんでしたっけ?」
違う。人を利用し、いたぶり、踏みにじれる人間は……本当は、人の情をよく知っている。
それこそ人一倍に。ゴーレムは好き好んで人をいたぶったりしない。
残酷な事が出来るのは、その人の中にそれを残酷と感じる情があるからだ。
間違いないと断言出来る訳じゃない。そうじゃない可能性だって十分にあり得る。
それでも私は、ミライユさんが「心の中にボタンの掛け違いがあるだけの、普通の女の人」だと信じる。
そう決めた。
「でもそれは、きっとあなたの力に価値を感じているだけ。あなたという人間には、何の価値もない」
そしてだからこそ、私はそれを否定する。
人間は、否定されれば、否定し返したくなる生き物だから。
私は彼女に懺悔させたい。自分の非道の償いをさせたい。
だから、私は彼女の中の「真心」を引きずり出す。
なぜかって?
歪んだ心で懺悔し、罪を償う事なんか出来やしないからだよ。
精々、自分の犯した罪の重さに苦しめばいい。
……別に昨日の夜ご飯とお喋りが、少し楽しかったなんて、そんな理由じゃない。
さぁて、これでどれくらい怒るかな。どれくらい「素」を見せてくれるかな?
仮にめちゃくちゃ怒って襲いかかってきたとしても、まぁ私には当たらないんだけどね。
だって彼女が見ている私は、ただの【ファントム】だから。
つまり【スニーク】の逆。
魔力のハリボテを置き残して、まるで自分がそこにいるかのように見せるスキル。
スニークと併用する事で、まったく別の場所にこっそり移動する事も出来る。
例えばミライユさんの背後に回って、麻痺毒を塗ったダガーで斬りつけるなんて事も出来る。
さっき飲んだポーションの効能で、体の感覚は研ぎ澄まされている。
感覚が鋭くなっているという事は、精神もそれに引っ張られる。
精神が鋭くなれば、魔力の操作も鋭くなる。
見切れるもんか。
気配は絶っていても姿は見せているから、きっとジャンさん達も合わせてくれる……はず!
あ、いや、さっき勝手にブチ切れて先行しちゃったからちょっとヤバイような気も……だ、大丈夫だよね!
【分身の術&バックスタブ】
【NPC3人はどうやってもグダる未来しか見えなかったのでカッコつけついでに隔離させてもらいました
でもお喋りするにしろバトルするにしろミライユさん本人との方がお互い楽しいんじゃないかなぁ】
158:ジャン ◆9FLiL83HWU
17/01/20 21:44:11.35 Xq0kz3CE.net
刻まれた魔法陣が血によって鮮明となり、ティターニアが魔法陣を調べようとした直後。
洞窟全体が崩れそうな勢いで激震が続く中、魔法陣は閃光を放ちながらその力を発動した。
気がつけばジャンたちは、黄土色や橙の宝石で彩られた古代都市の中に佇んでいる。
地底にあるせいか、宝石だけではなく金や銀の割合も多いようにジャンは感じていた。
>≪何故扉を開き奴らを招き入れた!?≫
>「彼らはアクアとクイーンネレイドが認めた指環の勇者―何故分からぬのですか!?」
だが、装飾品の回収は後になりそうだった。
ジャンが近くの家で早速探索しようとした瞬間、その家がどこからともなく聞こえてきた
言い争いと共に落ちてきた岩塊に押し潰されたからだ。
振り返ってみれば竜の翼を持つ女性と、巨大な狼がお互いに凄まじい力を振るいながら口論している。
きっとこの都市の竜と守護聖獣なのだろうが、今までに出会ったそれとは様子がかなり違った。
>「彼らはアクアとクイーンネレイドが認めた指環の勇者―何故分からぬのですか!?」
>≪我は認めぬ―奴らは昔から甘いのだ! 非情になれぬ者達に世界を変える事など出来ぬ!≫
どうやら指環を渡すかどうかで揉めているようだが、先ほどの岩塊のようにとばっちりがこっちに飛んでこないとも限らない。
それに、決着がつく頃にはこの都市が丸ごと壊されかねない惨状だ。
>「まさか……内輪もめか……?」
「口論で手を出すなって親父に教育されなかったみてえだな、あいつらしつけがなってねえ」
一人と一匹に聞こえないようこっそりとティターニアに耳打ちした。
このままでは指環をもらってもそれ以外の儲けが出ない。できる限り早くあの一人と一匹を止めるべく、ジャンはミスリル・ハンマーを構える。
>「ジャン様、ティターニア様、お仲間の皆様……お見苦しいところを大変申し訳ありません―とにかく今は加勢をお願いします!
この分からず屋に貴方達の力を見せてやって下さい!」
口論の内容とこの言い分から察するに、あの狼が指環を渡すことに反対しているようだ。
どうやら世界を変えるような人間に指環を渡したいようだが、ジャンにその気はまったくなかった。
>「仕方あるまい、行くぞ―!」
「ああ、俺の稼ぎが減る前にとっとと止めちまおう」
ティターニアと共にジャンが駆けだそうとしたとき、狼が動きを止めた。
>≪そなた、他の者達とは違うな―冷酷で無慈悲で何よりも純粋―
我は思うのだ、世界を変え得るのはそなたのような者だと。
もしもそなたが指環を欲するなら、力を貸そう―娘よ、力が欲しいか―!≫
159:ジャン ◆9FLiL83HWU
17/01/20 21:44:48.68 Xq0kz3CE.net
この言葉で、全てが狂っていく。
ミライユが連れてきた護衛に狼の力を与え、地竜へと襲わせた。
地竜が真の姿を現し、指環を持って魔法陣へ逃げるよう伝えた。
残った護衛が泣きながらミライユを守ろうとしている。
ミライユは、全てを無視して指環へ走った。ジャンたちへ煽るように一言を残して。
>「ジャンさん、ラテさん、あなた方もギルド員なら、シュマリの支援にでも向かったらどうです?
彼女、このままじゃ死んじゃいますよ?」
信じたくはなかったが、ミライユもまた指環を狙う刺客だった。
その声にまず、ラテが動く。
魔法陣を塗りつぶすように爆炎が広がり、ミライユたちへ脅しをかけて分断する。
さらに一撃を叩きこむべく、どうやったのかは分からないが分身までやってのけた。
おそらく身体強化のポーションも使ったのだろう、凄まじい速さで行われた一連の動作。
その流れの中、ジャンはただ走っていた。鉄の鞘から聖短剣サクラメントを引き抜きながら。
いかなる守りをも貫き、確実に標的へと刃を届かせる教会の必殺武器。
かつて戦った強敵からもらったそれを殺すべき者へと向けた。
(ギルドの一員なら…か。そうだな、ギルドの者どうし助け合わないとな。
だから―あんなことにしちまった元凶を潰さねえとなァ!)
オーク族は傭兵や軍人になる者が多いが、それは生まれ持った体の頑強さや腕力だけではない。
彼らの戦士階級が持つ『戦の掟』と呼ばれるルールが傭兵や軍人にとって大事なものなのだ。
一つ、いかなる理由でも隣に立つ者を見捨てることなかれ。
二つ、いかなる理由でも死は生より恥である。
三つ、ただし一つ目を守るとき、二つ目は恥ではない。
ジャンもまた、冒険の途中において戦うときは常に戦の掟に従っていた。
だからこそ生き抜くために全力を尽くし、味方を守ってきた。
ミライユのとった行動は、それら全てに反するものだ。
隣に立つ者を見捨て、死なせるつもりで連れてきた。
ジャンからしてみれば恥の塊、ここにオーク族の会議があれば両腕切り落としか両足切り落としの
どちらにするかで揉めていただろう。
だからジャンは、真っ先にミライユを狙った。
サクラメントにて心臓を貫き、ミスリル・ハンマーで頭を潰すために。
そしてミライユがサクラメントの投擲距離に入った瞬間、ジャンは吼えた。
「グオォ……グガアアアァァァ!!!」
ウォークライによって怯ませ、増幅された腕力でサクラメントを心臓へ向け思い切りぶん投げる。
続けざまにミスリル・ハンマーもぶん投げ、両の拳で顎をかち割るべく、ミライユへと突進した。
【殺意MAXでハーフといえどマジ切れしたオークが突っ込んできます
NPCと殴り合うのは一方的になりすぎても互角でもつまらないのでこっちに向かわせてもらいました!】
160:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/21 11:42:44.74 QkbALjB6.net
>「口論で手を出すなって親父に教育されなかったみてえだな、あいつらしつけがなってねえ」
単にしつけがなってないだけだったらまだいいのだが―とティターニアは思う。
クイーンネレイドはアクアに忠誠を誓っていたようだが、アクアはイグニスとベヒーモスが一枚岩ではなかった可能性を示唆していた。
もしくは、風の竜ウェントゥスすらご乱心するご時世だ、このフェンリルも何らかの理由で乱心してしまったのかもしれない。
>「シュマリ。あなたにこの任務をお任せします。"インカルシペ最高の守護戦士"と呼ばれるあなたにこそ相応しい力。
獣人の誇りというものを、見せてあげなさい! 故郷を助けたのはどこでしたか?」
フェンリルに白羽の矢を立てられたミライユは、何故かシュマリにその役を任せテッラを迎え撃たせる。
シュマリは戸惑いながらも承諾―というより、もとより彼らに拒否権などなかったのだ。
タイザンとホロカも内心では反対だがミライユに意見することができないという感じであった。
最初にこの3人が追い付いてきた時から違和感があったが、これで確信した。
増援の3人はミライユの絶対的な権力―もしくは、彼女自身の残虐性に怯えているのだ。
こうして、フェンリルの力を得たシュマリとテッラとの壮絶な戦いが始まった。
>「どうやらフェンリルの力を侮っていたようですね。私はこれより真の姿にならねばなりません―
私の能力もやはり理性が飛びかねない膨大な力を要するものです。先にお伝えします。
そこから現れる指環、ティターニア様とお仲間の方々に託します。私がフェンリルを止めている間に指環を取ってそこの
魔方陣から脱出なさい。それと、その娘は―グゴッ、ゴゴゴオゴ……」
人間形態のままではどうにもならないと悟ったテッラは、指環を一行に託し、真の姿を現した。
イグニスやアクアが人間形態のままだったのはこういうわけか―と思うティターニア。
竜の姿になると、人間形態の時のような理性を保てなくなるようだ。
指環が現れた途端に、空間を操作できるミライユがいち早く指環を手に入れてしまった。
そしてこんな指示を飛ばす。
>「タイザンさんとホロカは、とりあえず私が魔方陣まで行くのを支援してください!」
>「ジャンさん、ラテさん、あなた方もギルド員なら、シュマリの支援にでも向かったらどうです?
彼女、このままじゃ死んじゃいますよ?」
タイザンとホロカはミライユに恐怖によって支配されていて、彼女に逆らうことができない。
こうなってしまってはシュマリを放っては置けないが、そちらに加勢に行ってはミライユが指環を持ち去ってしまう。
ティターニアが逡巡している間に、ラテが飛び出した。
>「助けに行けって言ってるんだよ!さっさと行け!まだ踏ん切りが付かないなら、こっちから仕掛けてやるぞ!」
シュマリは見事な啖呵で、最終的に二人をシュマリの加勢に向かわせることに成功した。
ティターニアはその普段との違いっぷりに少々驚きつつ、少し考える。
これが素なのか、それともこれも熟練したレンジャーとしての高度な技術なのか―
まあどちらにせよ同じことか、ミライユに恐怖によって支配された二人の呪縛を見事に解いてみせたのだから。
161:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/21 11:45:34.36 QkbALjB6.net
「……これで3対1だ。そなたに勝ち目はない、大人しく指環を渡すのだ。ここで渡せば悪いようにはせぬ」
何はともあれ指環を回収するのが先決だ。おそらく聞く耳持たないとは思いつつも、降伏を勧告する。
>「あぁ、マスターさんとやらは傍に置いてくれているんでしたっけ?」
>「でもそれは、きっとあなたの力に価値を感じているだけ。あなたという人間には、何の価値もない」
ラテがミライユを煽ってみせる。敢えて怒らせて、本心を引き出して対話しようとしているのだ。
功を奏してくれればいいが―と思いつつミライユの反応を見守っていた時だった。
オークの攻撃性を露わにしたジャンが殺意をむき出しにして襲い掛かっていくのが目に入った。
「ジャン殿……相手は指環を持っておるのだ!」
そう声をかけるも、ジャンが止まるはずはない。
これはまずい―と思うティターニア。何せ大地の指環は今はミライユの手中にある。
この初撃で首尾よく仕留められればいい、しかしミライユは空間を操作する魔術師でもある。
初撃で終わる可能性は低い。
そうなったら、追い詰められたミライユは相当に高い確率で指環を嵌める、という行為に出るだろう。
そうなってしまえば、もう何が起こるか分からない。
それに、ミライユ個人ではなく冒険者ギルドとしてティターニアを狙っているのであれば、縛り上げて情報を聞き出す必要もある。
それにしてもジャン殿―最初は見ていて心配になる程のどこまでも平和主義者のお人よし、といった印象だったが
最近少し、ほんの少しだけ攻撃的になってはいまいか、とティターニアは思う。
普段ならミライユがジャンの譲れない信念に触れてしまったのだろう、で終わるところだが、ティターニアには一つ気にかかっている事があった。
それはジャンに水の指環を持たせていることだ。あれ程の力を持つ指環、持ち主の精神に影響を及ぼしても何ら不思議はない。
見れば、竜化したテッラのごとく完全に理性が吹っ飛んでいる様子。
もともと優しい性格のジャンのことだ、我に返ってから後悔することはないだろうか―
「―ホールド!」
瞬時に以上の思考を経てティターニアが放ったのは、このフィールドでは威力が出やすい地属性の拘束術。
大地から魔力の土がせりあがり、それが相手の全身を覆い拘束する魔術だ。
今回は少しアレンジが加えてあり、拘束土自体の強度を最大まで強化してある。
つまり拘束すると同時に、どこまで通用するかは分からぬが、ジャンの攻撃に対しての防御にもなるということだ。
それは前述のように、諸般の事情を総合勘案した合理的理由によるものである。
こう見えてもティターニアは学者。
決して、昨日の晩餐を美味しそうに食べる様が目に焼き付いているからでも
年甲斐も無く修学旅行の夜のガールズトークに巻き込まれたのが楽しかったからでもない。
少なくとも本人はそう思っているのだ。
【>ミライユ殿
怒涛の展開で予期せぬ1対3になってしまったが中ボスということで遠慮せず派手に暴れてやってくれ!
>ジャン殿
指環が精神に影響、はそういうネタもアリかな、程度なので気にしないでもらっても大丈夫だ!】
162:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/21 11:54:24.34 QkbALjB6.net
【誤植申し訳ない
>146 下から四行目
×シュマリは見事な啖呵で、最終的に二人をシュマリの加勢に向かわせることに成功した。
○ラテは見事な啖呵で、最終的に二人をシュマリの加勢に向かわせることに成功した。
それとホールドを放ったのは当然ながらミライユ殿に対してだ!】
163:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:05:45.20 88unqtu9.net
卯
164:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:06:14.29 88unqtu9.net
目
165:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:06:49.03 88unqtu9.net
右
166:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:07:22.92 88unqtu9.net
馬
167:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:07:59.14 88unqtu9.net
宇
168:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:08:23.81 88unqtu9.net
目
169:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:08:54.54 88unqtu9.net
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170:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:09:20.13 88unqtu9.net
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171:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:09:54.14 88unqtu9.net
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172:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:10:13.23 88unqtu9.net
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173:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:10:53.92 Qv9tlQKT.net
生め
174:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:11:13.93 Qv9tlQKT.net
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175:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:11:49.59 Qv9tlQKT.net
産め
176:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:12:10.70 Qv9tlQKT.net
膿め
177:創る名無しに見る名無し
17/01/21 13:12:42.35 Qv9tlQKT.net
倦め
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17/01/21 13:13:11.20 Qv9tlQKT.net
績め
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17/01/21 13:13:59.76 Qv9tlQKT.net
熟め
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17/01/21 13:14:19.56 Qv9tlQKT.net
うめ
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17/01/21 14:02:02.24 +7hkJdi6.net
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17/01/21 20:57:46.36 twErGvaq.net
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17/01/21 20:58:03.47 twErGvaq.net
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17/01/22 00:35:38.59 a9Hn9Vu1.net
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198:創る名無しに見る名無し
17/01/22 00:41:36.62 vlEzVIn6.net
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199:創る名無しに見る名無し
17/01/22 00:50:54.23 RUfuTQ+n.net
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200:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/23 14:24:21.77 UYM1vaS0.net
転移魔方陣へと素早く駆ける。
使い方は知っている。テッラが出したものとはいえ、ある程度汎用性のある魔術だ。
魔方陣は目の前だ。
しかし―
後ろからようやく現れたタイザンは汗だくで血眼になっており、もはや自分の判断や意思はなさそうだ。
惰性で動かされ、シュマリの身を案じている方に心が動かされているのが丸分かりだ。
その後ろから来るホロカはさらに遅い。それまでに何らかの妨害がある可能性は高いだろう。
(残念ですが……ゴミどもは残して、一人で帰りますね。待っていてください、マスター……!)
そのときだった。
ドゴオォォン…… シュゴォォォ……!!!
魔法爆弾。それも高魔力のものが大量に。
「なっ…… もう少しのところで……っ!!」
魔力の動きから察知し、ラテの行動であることを確認すると、ミライユは
目を見開き、ラテをギロリと睨みつけた。もはや笑顔の彼女の面影はない。
>「……そんな曖昧な言葉に委ねられるほど、あの子の命は軽いものなのか!なんで助けにいかないんだ!」
「家族なんだろう!?今更ミライユさんに義理立てして何が残る!あの子の命よりも重くて尊い物が手に入るのか!」
「助けに行けって言ってるんだよ!さっさと行け!まだ踏ん切りが付かないなら、こっちから仕掛けてやるぞ!」
タイザンが踵を返す。ホロカもそれに続く。
動きが、流れが変わる! ミライユが先ほど命令した仲間たちに、次々と裏切られていった瞬間だ。
>「これ、やっぱりお返ししておきますね。私には私の家があるんです。あなたとの繋がりは、いらない」
「……あなたは、生まれた時からずっとそうなんでしょうね。人の情なんて理解出来ない。
だからあなたの傍には誰の心もありやしない。
あぁ、マスターさんとやらは傍に置いてくれているんでしたっけ?」
「あぁ、やっぱりお前も裏切るんですか……」
目の前にはラテの幻影がおり、斜め後ろに向かってその気配が進んでいるのが分かる。
今から突っ込んで魔方陣の炎を消し、ラテの攻撃を全て弾くことは不可能ではない。
ただし、死ぬ可能性もある大怪我、大火傷を負う覚悟があればの話だが。
(皆殺しにしてあげましょう…… ここでノコノコ逃げるなんて、私とギルドのプライドが許さない……!)
振り返ることなく、投げつけられた会員証を空間操作で弾き、移動していくラテを追尾するように弾き返す。それも高速度で。
さらに、魔方陣全体を覆う炎の壁からも、ラテの居る方向へと火弾を飛ばし、挟み撃ちにする。
裏切られたトラウマを沢山背負っているミライユにとって、ラテの行動は油に火を注ぐように効いた。額に青筋が浮かんでいる。
「丸見えですよ。ラテ。お前は特別に最後に殺してあげます…… いや、これは"粛清"……
不要なギルド員は、始末される定めにあるんです。じっくりと、甚振ってからね……!」
201:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/23 14:25:01.19 UYM1vaS0.net
素早くラテの動きを振り切ると、まずは会員証を一枚スカートから抜き取り、操作して飛ばした。
「待ってなさい、シュマリ、今助けに行くからね!」
その標的は刀を抜き、殆ど狼と化してテッラと戦うシュマリへと向かう、タイザンの腕へと突き刺さった。
思わぬ後方からの不意打ちに、タイザンは刀を落とす。
そして、タイザンの目にはその目に入れても痛くないほど大切な、あの娘の名前とナンバーが飛び込んできた。
『No.1012 マトイ・シモヤマ』
「あぁっ……! マトイ…… そんな、これがあるということは、ミライユが、僕の娘を……!?」
「せいか~い! 『罪状:マスターの部屋に入った』です。彼女、美人でしたもんね。
何があったのか知りませんが、私の聖域に入った女は、死刑……! ハハ、それがソルタレクギルド本部の"裏の"掟なんですよ~
そしてマスターも二人は要りません。あなた、二回も約束、破りましたよね? 殺しますよ?」
グサリ、と刀がタイザンの腹にめり込み、腹からは柄と鍔だけが見えるほどまでになった。
血の滴る長い刀身を背中から生やし、揺らしながら、タイザンは涙を流し、歯を食いしばって、ミライユの方を見た。
「ギィェェェッ……!!」≪グォォォォゥ……!!≫
向こうではテッラの翼の付け根にほぼフェンリルと一体化したシュマリが一撃を放ち、テッラの右翼と肩口からおびただしい量の血液が飛び散るところだった。
大怪我を負わせると同時にテッラの一撃をもろに食らったシュマリはついに倒れ、フェンリルと分離してついに力尽きる。
フェンリルは臓腑が脇から飛び出しており、シュマリもまた、裸で全身に大小の傷を負って倒れている。既に死んでいるか、もしくは瀕死だろう。
タイザンがその姿を見て、口から血を吐き出しながら、ミライユに訴えかける。
「おのれ……マトイのことは死んでも許さないぞミライユ。 僕はこのまま死んでも構わない……
頼みがある……シュマリと、ホロカの命だけは助けてくれないか……!?
それとみんな仲良く…… 僕はね……戦いが嫌いなん……ごほッ!!」
ミライユはタイザンの口を塞ぐように脚で何度も何度もタイザンの腹や頭を蹴り付けた。
「アッハッハッハ! 私ね、そういうの嫌いなんですよ。目の前でこれだけの連中がケンカして、裏切りあって、
勝手に殺し合ってるじゃないですか? 命乞いしてみせなさいよ。クズ、ハゲ! あ、死んじゃったかな?」
やがて事切れたのか、頭を割られて脳漿を流しながら動かなくなったタイザンに、ホロカが涙を流して抱きつこうとした。
「あら、獣っ子、まだ生きてたんですか? ねぇ、お馬鹿、何で言うこと聞かなかったの?……ってことで、あなたも殺します」
ホロカをつまみ上げ、首を締め上げながら操作魔法の力を使い持ち上げる。
「返してよ! マスターと……お姉ちゃんを返してぇぇー!!」
ズキリ、とミライユの心が痛む。この痛みはどれぐらい振りだろうか……
殺戮と裏切り合いの興奮で心が昂揚しているところを、何か鋭く冷たいナイフのようなもので、突き刺されたような気持ちになった。
「うぅ……うわぁぁー!!」
思わず心を揺さぶられたミライユはホロカの腹部に蹴りをかまし、そのまま壁へと吹き飛ばした。ホロカがガクリと動かなくなる。
「さて、大体片付きましたね。次は、テッラ、大物から片付けてしまいましょう。
横に転がっている犬っころも一緒に潰してしまいますね。はい、さようなら……」
タイザンを空間操作で持ち上げ、刀の飛び出している切っ先をテッラに向ける。
そして、魔力を込めてテッラ目掛けて投げ、同時に駆け出そうとした―
202:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/23 14:37:54.19 UYM1vaS0.net
その時だった。横からジャンが物凄い勢いで突っ込んできた。
これまでにこの男のこのような表情を見たことがない。それはまさにオークそのものともいえた。
「グオォ……グガアアアァァァ!!!」
ついに、ジャンまで敵に回ったのだ。
ハーフオークには、昔、酷く痛めつけられたことがある。
(『女を殴んのって楽しいなァおい!』『チビのガキの癖に調子乗りやがって、ほら、立てよオラァ!』
『チッ、もう終わりなのか? 死にたくなかったら四つん這いになってこっちにケツ向けろよ、ゴラァ』)
嫌なことを思い出し、耳や脳裏に声が響いてくる。あれだけ優しそうだったジャンが、今はあの鬼どもに見える。
短剣が物凄い勢いで飛んでくる。それは魔力を帯びたものだった。
「くッ……!」
素早くかわそうとするも、思わぬウォークライの威力でミライユは動きが鈍くなり、
それは脇腹を貫通し、ローブと腰に巻いていたチェインが弾き飛ばされた。当然、その衝撃でミライユ自身の肉体もダメージを受ける。
「うっ……!」
倒れた拍子にスカートの中から会員証やら針、魔法の爆薬やらが飛び散った。
さらにフラついたところに重厚なミスリルハンマーまでもがミライユを襲う。
「ふん、この程度の動きで、ソルタレクの管理者の私を仕留めたつもりですか!?」
ミライユもジャンを睨みながらその攻撃を魔法の浮力で避けようと試みる。
(なっ……この�
203:凾ヘ……!) しかし、困ったことにこのハンマーは飛来する速度が不規則で、おまけに棘までついており、リーチは予想を超えた。 ただでさえラテが後方を攪乱しており、動きを制限されているのだ。 さらにジャン本人が両腕に力を込め、突っ込んでくる。無傷では済まされまい。
204:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/23 14:40:17.72 UYM1vaS0.net
――その瞬間だった。
>「ジャン殿……相手は指環を持っておるのだ!」
ティターニアが不意に動いた。
>「―ホールド!」
これは拘束系の魔法だ。地面から土が盛り上がり、相手の全身を拘束する。
「しめた……!」
ミライユは咄嗟に空間操作を行い、地面から発現する魔力を素早くジャンの移動経路へと操作した。
ゴゴゴ……バシュウゥッ……!
瞬く間にジャンが強力な土の魔法により<ホールド>され、動きを完全に封じられる。
思わぬ同士討ちにミライユは助けられた。
「……ええと、残りは一、二匹……あ、一応三匹だったかな?」
ミライユが起き上がる。と、いうのも、先ほどのジャンの投擲自体は完全に避けきれなかっためだ。
右目はハンマーの柄で潰され、身体を覆うチェインも脇に棘が引っかかってが裂けてスカートごとボロボロになり、傷を負っている。
額や右目、そして脇腹に傷を負いながらも立ち上がり、いつもの調子で言葉を続ける。
「……まさかこの私がこれだけの目に遭うとは……痛いです。女の子の柔肌を痛めて、到底許されることじゃないですよ?
マスターに会ったら、何て言い訳をしたら良いのやら……。
しかも、ティターニアや竜じゃなく、その周りの虫ケラどもにここまで手傷を負わされるなんて……ねぇ……?」
動けなくなっているテッラ、ジャン、そしてラテの居る方向を見比べるミライユ。
「決めた。最初はこのオークにします。ティターニア、ソルタレクのギルド本部の名において命じます。
最後まで仲間割れの好きな人たちで、私、今、凄く楽しいですよ? あなたが言えば聞くでしょ?
とりあえずこの男とあの竜、そして私の後ろにいる羽虫を黙らせて、ギルドに降伏なさい。でないと、この男から殺します。
ま、愛する人を殺されて怒ってるあなた方の顔を見るのも、楽しみなんですけどねッ、アハハハッ!」
口の端を吊り上げて高笑いをするミライユ。その手には血のついたミスリルハンマーが握られ、
背後には魔力により、魔法の短剣、刀が飛び出したタイザンの死体、そして、多数の針と爆薬が浮かんでいた。
「私の傷のことは構いません……フェンリルと私については確かにその女の言う通り内輪揉め……我らの。
あなた方は私を反面教師として……悪しき者を正しいと思うとおりに罰しなさい。ティターニア、あなたに申しているのですよ……!!」
テッラはグォォと呻き、魔方陣の上の炎も徐々に弱まりつつあった。
【タイザン死亡、フェンリル・シュマリ・ホロカ生死不明、テッラ重傷】
【ということで、遠慮せずにどうぞやっちゃってください】