20/08/13 22:20:49.72 8hZd0eJS.net
よく当たると評判の占い師に、未来を見てもらうようになって早三年。
評判通りの腕前で、月に一度は占ってもらっている。
この占い師は、絵に描いたようなポーカーフェイスであり、いつも冷静沈着でニコリともしない。
しかし先月に訪れた際、そんな占い師の顔が一瞬曇って、珍しくしどろもどろな応答をした事があった。
初めて見る無表情以外の顔に、少し緊張して身構えたが、出てきた言葉は「とくに何もございません、いつも通りお過ごし下さい」であった。
僕は首を傾げつつ、本当は何かあるのにわざわざ嘘をつく理由などこの占い師にはないと思ったので、普段通りに過ごした。
そして今、その占い師のところに並んでいる。
何かあったとしたら、ちょっと心配して損しちゃった事ぐらいだ。
自分の前の人の番が来たのに、その人はいつまでもその場に立っていて前に進まない。
不審に思って声をかけようとしたその時、その人がカバンからナイフを取り出して占い師の方へ走った。
僕はとっさに占い師の前へ出て、ナイフを持った人を制止しようとした。
何かおかしい。こんな状況にも関わらず、占い師は至って冷静に、椅子に座っている。
腹部に何かを感じて前を向くと、ナイフを持っていた人が走り去る姿が見えた。
もう一度占い師の顔を見てみたけれど、いつものポーカーフェイスだった。