15/11/13 18:16:10.26 .net
残業で帰りが遅くなったとある日の深夜、帰路の途中にある行きつけのゴルフ練習場の横を通り掛かると、仄かな月明かりの中、フェアウェイに佇む人影が見えた。
不審に思った俺は、すぐさま路肩に車を停め、じっと目を凝らすと、どうやらその人影の主は、いつも練習場のフロントで受付をしている80過ぎの爺さんのようだ。
爺さん、閉店後に1人でせっせと集球作業でもしているのか?
それとも、芝の上からコソ練?
もし後者なら役得だなと、ちょっぴり羨ましいと思いつつ、さらによくよく見ると、爺さんはクラブを持っておらず、集球用の機械やボール籠も持たずに完全に手ぶらだった。
じゃあこんな夜更けに爺さんは1人で一体何を?
すると、爺さんは両手を前方にすっと伸ばして「前にならえ」のようなポーズを取り、右腕を2、3度上下に動かした。
その様子を見て、心の中で「爺さんの前職は板前さんかよ」と突っ込みを入れようとした次の瞬間!
レンジに散らばったボールが一斉に宙に浮き上がり、フワフワと空中を漂って、打席裏のボール貸出機の中へと次々に吸い込まれていった。
その不思議な光景を目の当たりにして、呆気にとられていると、耳の中で爺さんの声がハッキリと聞こえた。
「よいか、若いの。五郎丸ポーズでは、こうはいかん。ミラクルを起こしたければ、やはり内村航平ポーズに限る!」