19/02/02 19:34:41.99 dSnoVr0J.net
質問
私はがん患者になって1年が過ぎました。その中で学んだのは、選択される「治療」が患者にとって必ずしも「最善」では
ない、ということです。治療の限界は患者の事を考えつくした結果ではなく、お金の限界、病院の限界、医師の限界、様々な限界の妥
協点として生まれる、という側面もあるのだと考えるようになったのです。(先生がいつも書いている事と一緒のような気がしていま
す)
きっかけは主治医の口癖です。「この病院ではできない。街の総合病院ですからね。」とすぐに口にします。最初に聞いたのは、ファー
ストライン中。減量して骨髄抑制を切り抜けたので、次回もとに戻す選択肢はあるか?と訪ねたら出て来ました。主治医は、私の体の
状態をつぶさに見て答えたのではなく、病院のルール上、できませんと言ったのです。また、他の病院では出来る事もある、という事
を含んでいる事も理解しました。
違う例をだします。
知り合いに医師がいて、肉親ががんになりました。抗ガン剤治療中、その医師は骨髄抑制時に肉親を連れて帰り、自分で診ることにし
たのですがG-CSFの使い方がまるで違っていました。ルールだと3回やって白血球1万を越えれば終わり(?)だった気がします。そ
の医師は肉親の採血を毎日行いました。そして、白血球3~4000くらいをめどに、G-CSFの投与量を変えたのです。半分の量で5
日間とかやっていました。感染しないことが目的なら、1万まであげる必要はないですよね。つまり、G-CSFの投与ルールは、医師や
看護士の労力や手間の限界を考えて作られているということです。負担無く誰でも出来るようにルールが組まれていて、患者にとって
の最善だけをもとめたものではないのだ、と理解しました。
私は批判しているのではありません。これ、社会の仕組みとして当然の事だと思います。しかし、イチ患者としてはここで納得するわ
けには行きません。私の「最善」だけをもとめた治療をしなければならない。そして、何か選択の時には、本当に最善なのか?別の要
因が絡んでいるのではないか?と問いかけるようになりました。実際のところ、私はステージ4ですが、放射線治療を受けていますし、
現在アバスチンがらみ3剤で抗ガン剤治療中ですが、主治医はアバスチンをやってくれないので、別の病院で受けています。
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回答
G-CSF(いわゆる白血球の回復を促進する薬剤については薬物療法専門医以外で良く誤解されているのは本来単なる
好中球減少に対して使うべきではないと言うことです。
2006年の(ASCO)のG-CSFにおけるガイドラインでは,発熱を伴わない好中球減少(AFN)に対し
てG-CSFを使用すべきではないとしている。リンパ腫を含めた固形腫瘍疾患を対象としたG-CSFの無作為化比較試験では,G-CSFは好中球
減少の期間を短縮できたものの,入院の頻度やその期間および抗生物質の投与期間を改善することができなかった。
AFNであっても使用は可能であるが,G-CSF適正使用ガイドラインでは,「たとえば好中球100/μl以下になるような高度の好中球減少の場合
はG-CSFの投与は妥当かもしれない」としているものの,「無熱で好中球減少をきたしている場合にG-CSFの投与を強く勧める
エビデンスは乏しい」としている。ただし,同ガイドラインでは「1コース目に発熱性好中球減少が起こった場合で,2コース目の抗悪
性腫瘍薬の減量が適切でないと判断される場合はG-CSFの使用を考慮してもよい」として,二次的予防投与について一定の条件の下では
使用を容認している。
少しでもリスクを回避できそうな気がするからGCSFを使ってしまう医師が多いのですが、実はそのメリットはないと
されています。
つまり抗がん剤の副作用で白血球減少が起こっても熱がなければ「病気」じゃないので感染に気をつけるだけで良いのです。37.5℃以
上の発熱があれば抗生剤の投与を考えますがGCSFの投与は必須ではありません。
GCSFを使って無理矢理白血球を回復させて,同じ量の抗がん剤を投与すると次回はもっと激しく白血球減少が出現します。感染症を誘
発して逆に抗がん剤治療が予定通り進まなくなる危険性が高くなるのです。
念のために言うとGCSFの投与は逆にQOLの低下につながります。毎日皮下注射のため通院が必要ですし、抗がん剤治療のたびに使用する
場合のコストや手間を考えると貴重な時間の浪費だと個人的には考えております。
また医療者も患者さんの治療成績向上のための手間は惜しみませんが、コスト意識は持つべきだと思います。
まして固形がんのような治癒が難しい場合はいかにきつくなく治療を継続するかどうかが重要なので、無理に抗がん剤を同じ量で継続
するために使うのは論外でしょう。