18/06/07 18:14:42.17 w2xd8jSUz
あの日、伯母様の家の一間で、あの人と会った時に、私はたった一目見たばかりで、あの人の心に映っている私の醜さを知ってしまった。
1734:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 18:26:28.04 w2xd8jSUz
あの人は何事もないような顔をして、いろいろ私を唆かすような、やさしい語をかけてくれる。
1735:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 18:38:13.74 w2xd8jSUz
が、一度自分の醜さを知った女の心が、どうしてそんな語に慰められよう。
1736:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 18:50:00.73 w2xd8jSUz
私はただ、口惜しかった。
1737:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 19:01:46.65 w2xd8jSUz
子供の時に乳母に抱かれて、月蝕を見た気味の悪さも、あの時の心もちに比べれば、どのくらいましだかわからない。
1738:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 19:13:32.34 w2xd8jSUz
私の持っていたさまざまな夢は、一度にどこかへ消えてしまう。
1739:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 19:25:19.79 w2xd8jSUz
後にはただ、雨のふる明け方のような寂しさが、じっと私の身のまわりを取り囲んでいるばかり―
1740:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 19:37:05.63 w2xd8jSUz
私はその寂しさに震えながら、死んだも同様なこの体を、とうとうあの人に任せてしまった。
1741:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 19:48:51.37 w2xd8jSUz
愛してもいないあの人に、私を憎んでいる、私を蔑んでいる、色好みなあの人に。―
1742:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 20:00:37.82 w2xd8jSUz
私は私の醜さを見せつけられた、その寂しさに堪えなかったのであろうか。
1743:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 20:12:23.82 w2xd8jSUz
そうしてあの人の胸に顔を当てる、熱に浮かされたような一瞬間にすべてを欺こうとしたのであろうか。
1744:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 20:24:09.65 w2xd8jSUz
さもなければまた、あの人同様、私もただ汚らわしい心もちに動かされていたのであろうか。
1745:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 20:35:55.52 w2xd8jSUz
そう思っただけでも、私は恥しい。
1746:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 20:47:41.29 w2xd8jSUz
殊にあの人の腕を離れて、また自由な体に帰った時、どんなに私は私自身を浅間しく思った事であろう。
1747:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 20:59:26.99 w2xd8jSUz
私は腹立たしさと寂しさとで、いくら泣くまいと思っても、止め度なく涙が溢れて来た。
1748:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 21:11:13.25 w2xd8jSUz
けれども、それは何も、操を破られたと云う事だけが悲しかった訳ではない。
1749:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 21:23:02.66 w2xd8jSUz
操を破られながら、その上にも卑められていると云う事が、丁度癩を病んだ犬のように、憎まれながらも虐まれていると云う事が、何よりも私には苦しかった。
1750:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 21:34:48.58 w2xd8jSUz
そうしてそれから私は一体何をしていたのであろう。
1751:名無しさん@お腹いっぱい。
18/06/07 21:46:34.44 w2xd8jSUz
今になって考えると、それも遠い昔の記憶のように朧げにしかわからない。
1752:1001★
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もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
1753:過去ログ ★
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