09/05/24 10:58:10
805 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2009/05/10(日) 01:45:31 ID:uTiK1aCJ
這いよれ!ニャル子さん 著者:逢空万太 GA文庫
本作のコンセプトは「萌えクトゥルフ」である。一人暮らしの主人公を守るため闇夜に降り立つのは我らが強壮なる使者、ナイアルラトホテップ。銀髪碧眼の美少女として現出したかの燃える三眼は、主人公と同居しそのデレをひたすら待ち望むのである。
全編にちりばめられた高テンションかつニッチなギャグ。ヒロインの二次元趣味は我々に親近感を与え、そのヒロインが主人公を盲目的に愛する展開は正にラブコメラノベの王道。あちらの需要に応えるためか、ヒロインを狙う百合少女も登場する。
と、ここまで記すと、熱心なクトゥルフファンもとい奉仕種族の方々は眉をひそめられるのではないだろうか。
「適当にネーミングだけ引っ張った、クトゥルフ神話を名乗るに値しない下劣な作品ではないか。」
その認識は人間が邪神に打ち勝てると考えるのと同じくらい間違っている。敢えて誤解を恐れずに言うならば、この本はクトゥルフ神話の一部に数えても全く問題ないと、私は考えている。
作中でも言及されていることであるが、クトゥルフ神話の多くは海外のものであり、日本人がそれら翻訳小説を読みとおすのはそう簡単なことではない。特に中高生にはまず無理だろう。次世代を担うこれら若年層の支持なくして、ジャンルの発展はありえないというのに。
その若年層を暗黒神話の重厚なる世界へ誘うべく世に出たのがこの「這いよれ!ニャル子さん」である。
狐印のイラストに惹かれて本書を手にとってヤングアダルトを待ち受けるのは、ヨグソトース、ハスター、クトゥグアといった異次元の概念と、それに裏打ちされた異次元のシナリオ。
そう、私がこの作品を神話と称した理由がここにある。本作品はラブコメの皮をかぶった怪奇小説、コズミックホラーなのである。