08/03/05 22:04:07
『邪神帝国』 朝松健
クトゥルフ神話とナチスを融合させた連作短編集、と言うことですが、クトゥルフ物はこれが初読。
『伍長の肖像』
題名からオチが想像できるのが難点ですが、こういう話は好物です。星新一っぽいとも思いました。
ただ、SS党はないだろうと小一時間(ry
『ヨス=トラゴンの仮面』
ナチ党幹部が魔術で大決戦。ナチスとオカルトの食い合わせは抜群であるらしいと悟りました。
それでも、ヒムラーやヘスが『いあいあ』とか唱える場面では笑ってしまったのですが…
『狂気大陸』
連作のなかで一番ホラーらしい展開ではないでしょうか。
姿の見えない『何か』が迫ってくる恐怖だとか、百パーセントこちらが無力であることとか、最後のオチまで含めて。
『1889年4月20日』
これも題名がオチなんですが、オチに至るまでの展開がすばらしい。
ホラーサスペンスちっくな展開で、どこか夢野久作を髣髴とさせるものがあります。
『夜の子の宴』
HELLSING。いや、だってね、この組み合わせはね。吸血鬼だし、人狼とか出てくるし。
ストーリーは何か腑に落ちない部分が所々ありますが、HELLSINGだと思いながら読めば何か得した気分になります。うそです。
『ギガントマキア1945』
ストーリーは狂気大陸に似てるけど、こちらはよりミステリー色が強くなった感じです。
というか、完全に<伝説>氏の正体ありきの話かと思います。
『怒りの日』
大戦末期のドイツ本国で、原理は分からないけれど人が段々人以外のものになっていくっていう話。
メインのストーリーはそれとは関係ないのですが、どちらかと言うとその状況がメインの話かと思いました。
主人公の周囲が異質なものになっていく恐怖と赤軍が近づいてくる恐怖とファシズム体制の恐怖が全部ごった煮になって
何ともいえない恐怖感が出てていい感じです。主人公も段々狂っていくような描写がなおいい感じ。
総合して、やっぱりナチスとオカルトの食い合わせはいいようです。
総合点…7点(内訳:ニヤニヤ度+ナチ党の怪しさ×作品数-これ正直ホラーじゃないだろ度)