07/11/09 02:09:35
ウィリアム・ゴールディング「蝿の王」
島で孤立状態となった少年たちのサヴァイバル小説。
物語では詳しく語られることはないが、大きな背景として、近未来と思われる世界で大きな
戦争が起こり、そこから脱出する途中で飛行機が撃墜され、少年たちだけが島に不時着
という設定になっている。
この、背景となっている戦争と、島での少年たちの行動、結果が対比するように
書かれておりとても興味深かった。
背景となっている戦争がマクロの状況で、少年たちの島での生活がミクロの状況となっている。
そして戦争と少年たちの行動を見据えて、人間はなぜ対立し、殺しあうのか、
という普遍的な問いかけが物語の中に含まれている。
答えはないが、団結しようとした決意が崩壊して、混沌とした状況に追い込まれて
いくさまは、背筋がぞっとする。
理屈を越えた、人間の原理とでもいうべき憎悪の芽生え、そして憎悪に飲み込まれ
理性を失い獣と化していく様子が克明に描かれている。
私たちの日常は、法というものに守られ保たれているわけだが、いつなんどき、
憎悪が表面化して法などいとも簡単に消し去り崩壊が起こってもおかしくはない
というようなことを予感させるものがある。
10点