07/10/13 14:43:34
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? P・K・ディック 10点
先日映画板で主人公がレプリカントか否かという論争が勃発して、その延長で作品のテーマは何かということになった。
そこで原作にまで話がおよび、では読み返してみようという流れに。
本は手元になかったので、ブックオフまで買いに行ったw
再読したのは20年ぶりくらいかもしれない。内容はすっかり忘れていた。
「こんなに面白い話だったか」と、一晩で一気読みしてしまった。
アンドロイドはいかに精巧につくられようとも、人間の持つ「察する」「勘」「あいまいさ」「無意識」
の境地に到達することは不可能ではないか、という境界線をきっちりと提示し最後まで描いてるように思えた。
アンドロイドと対比することで、人間とは何か、を問いているような。
このあたりの対比については、宗教のエピソードあたりで、とくにはっきりと示されているように思う。
アンドロイドは信じるという概念を全く理解できない。
映画の話と混ざって申し訳ないが、テーマは原作と映画ではすいぶん違う印象を受けた。
(映画はアンドロイドの人権?について言及しているように思う)
主人公は仕事を終えて、妻の待つ自宅に帰るのだけど、そこにはささやかだが暖かい何かがある。
物語全体に漂う荒廃した世界観の中で彷徨う人々が求めているものは、その暖かさなのだろう。
一人では生きていけないのだというような。
話の中では、ペットは価値として扱われているけど、本物でないといけないというのは、
やはりそこに生きているからこそ得られる何かがあるから、ということに繋がっているのだろうね。
というわけで、アンドロイドは電気羊の夢は見ない。ということではないだろうか。