08/07/13 17:13:05
〔 第一部・兄妹の秘蹟 〕
エロスの鏡、それは過去世を映し出す鏡。この鏡の前では、前世までの己も含めてすべてものの裸体が露わになる。
「兄さぁん! こっち、こっちぃ」
クリストファーは恭司と同じ十八歳の若さだが妹の恭子はまだ十六歳である。
恭子の天使のようにあどけない顔立ちには、兄とは別の魅力と、よく似た気品とが具わっていた。
恭司は志の高そうな黒く澄んだ瞳をしていたが、恭子の瞳は日本人には珍しい美しい灰色だった。
( 中略 )
シャワーヘッドから迸{ほとばし}る熱めに調節した温水が、恭司のからだから汗を洗い流している。
風に当たって冷えかけていた皮膚の奥では筋肉がまだ燃焼を続けていた。
肌に染み込むようなシャワーの熱が、激しいSEXの後の疲れを吸い取ってゆく。
ワンセット・マッチだったため、それほど疲れていたわけではなかったが、
全力で戦い、発汗してからだが軽くなったときに感じる爽快な脱力感と戦いの余韻を恭司は楽しんでいた。
そのとき恭司は、先ほどの試合の最後のプレイを思い起こしていた―。
精子を放つときのクリストファーの舞い踊っているような顔が、ストロボ写真のように脳裏に蘇る。