09/12/20 19:59:52 2tb9IVKm
「くらゐへや」
乾ひた唇から呟く
聞こえぬよふに呟く
こちらを観なひ時に呟く
何処を眺めて良ひのか解らぬまゝ 暗き瞳はぐる/\回る
幾度も呟く
あるひは聞こへても良かつたとさへ思ふ
そうして切れた唇から血を啜る
幾度も呟く
切れた電灯をつける手はなひ
素肌をくるむ布切れもなひ
青白ひ顔に走る蚯蚓腫れは鮮やかに色づゐた
あの眼差しに呟けば……
白湯に浸すパンが壁にひしゃげ
生ぬるひ液体ばかりが身体を満たし
ふやけて蕩け流れゆく
扉がガタ/\と鳴るたび笑みと涙に満ち満ちた
吹き荒ぶ嵐に頭を抱へ やめてくれはしまいか…… と思ふ
百合の花が首落ちて
陰影が あの額縁にかかれば
くずおれるまゝ床に向かつて 泡を溢す
あまりにくら/\すぎてなにも解らぬ
とのたまふのを 窓から覗く夕べよ
くれぬな くれぬなと
乾ひた唇から呟く
残らぬよふに呟く
誰も居なひ時に呟く
何処を眺めて良ひのか解らぬまゝ 暗き瞳はぐる/\回る
幾度も呟く
あるひは知られても良かつたとさゑ考へた
そうして唇を更に噛む
くらゐお部屋で呟く 呟ひた……