10/02/11 02:28:48 sh/z7F/8
「へびとはな」
溜め息つき 零れた花びら
進むとて沈むもの
手を伸ばしただけで 掴める筈はない
とぐろ巻く双頭の蛇に埋もれる
幸せなんて諦めた なんて嘘
破れた袴 刃を持つ手は誰の手なのか
いますぐ塗りたくりたい 何も見ていない
誰もいないのに人混みに紛れてほくそ笑む
そうして 暮れ雲を見上げれば もはや夜が
双頭に散らばる花びらを 一枚 拾い上げて唇を寄せる
懐かしい味
見るたび思い出す
持ち得た手はもう動かない
とぐろを巻くうろこ に 刃を差し込められたなら
だれも よくはなれない
火葬場へ そして結納へ
涙雨 涙雨よ
なくことも許されぬのに
紅を引く唇が あのお花と同じ色
じっと待つ くれぬのを
とぐろ巻く双頭の蛇に埋もれる
幸せなんて諦めた なんて嘘
指先を かすむ花びら
抜け殻の なんと温かきことかと
低く震える経文の やるせなや
絹越しの視界の恋しさよ
あの紅は誰の色か わたくしは知らぬ
指の根元は喰いちぎられたまま
戻ってはこず あなた
なんて嘘