09/06/27 00:22:24 QwW7Q0VL
【夏の夜】
涼はふとした夏の夜に
蛙の歌を二分する畦道の
脇に流れる冷や水の音色に
瞬く間の静寂を赦される
平家蛍の慎み深き灯りは
夜空の赤星よりは明るく
夜道を照らす提灯よりは暗い
友は今宵を美しき夏の夜と信じ
しかし私は友に悟られぬようにと
確かな疑念を夜の闇に隠す
友よ
美とはそなたの眼前には存在せぬ
例えば我が手の提灯に飛び込み焼け死ぬ薮蚊の生こそが真の美なのである
友をどのように目覚めさせるか
私の策は今宵の涼よりは具体的で
薮蚊の死よりは抽象的な写像をもって
すでに友の首にその粗縄をかけているのだ