09/06/19 01:34:45 dFwlKcwg
「巨大甲虫の素揚げ」
「ごめん」
トンカツ屋の厨房に一頭の影
料理人たちが振り向く先に、ぶたさんがいた
熱気に満ちた厨房の空気が冷える
「しばし、検分いたす」
ぶたさんの小さな目が光り、鼻がひくひく動く
ハエ!ゴキブリ!
ゴミ箱から溢れた卵の殻、野菜くず!
使い込んで真っ黒になり、過酸化物価が上がった油!
「店主これは何とした事か、お上にホウレン草せねばならぬ」
「お待ちをぶた様、コーヒーなど飲んでおくつろぎください
今回だけのことでございます、オメコボシを、オメコボシを」
「往生際が悪うござるぞ、おって沙汰を待てい」
「畜生!いけず!ものども出合え、こ奴を三枚におろしてしまえ」
うおー!
ぶたさんは慌てない
かかって来るやつばらに抜き手をきめ、鍋に叩き込む
「く、くそ、こうなったら先生お願いします」
厨房の隅からむっくりと灰色の塊が動く
巨大なゾウムシが現れた!
栄養満点な残飯を喰ってパワー全界だ
ゾウムシが迫る、円らな複眼がネメツケル
抜き手はガチンと跳ね返され、頭突きにも平気な顔だ
ぶたさん危うし!
しゅーっつ、しゅーっつ
巨大ゾウムシが勢い込んで押しつぶそうとした刹那!
ぶたさんは稲妻が閃くがごとく包丁を取って宙を薙いだ
床にはらりと触角が落ちる
ゾウムシはキリキリと回転し、やがてざぶんと鍋に飛び込んだ
巨大甲虫の素上げ一丁揚がり!
「ぶたさん!ぶたさーん!」
いつの間に食事の客がやってきて声援をおくる
今日もまた、街の食品衛生が護られた