09/05/16 00:56:01 HU1gdvId
「実家」
夕闇は音もなく過ぎ夜を終えようとする
窓から見える畦道に蛙が重なっている
学生時代の青臭い懐かしみの匂いが
机の上に居座る
比較的澄んだ空気は比較的僕を癒やし
恐らくは病んでいた喧騒を遠ざける
あんなに耳を支配していた車のエンジン音も
聞こえなくなってみるとせつないものになる
淡々と時は通り過ぎていく
かつて僕が過ごした空間は僕が居なくなっても確かに経過していた
家主の居なくなった家はそんなことはお構いなしに存在を続ける
文化の匂いにむせかえり
掴むべき手を放した僕は
誰も居なくなった部屋で朝を待つ