09/05/15 13:42:21 /iUY9N6B
「スープ」
ショーウィンドーに飾られたアンティークは手にした途端色を失ってしまった。
純銀製のスプーンも金色の額縁に入った一枚の神秘も。
老人の目は虚ろにうつ向きいつかのうろ覚えの歌詞を口ずさむ。
彼方の夢も覚めれば褪せていくばかり。
火を着ければ後は灰に成るのを待つだけ。
結末は切ないから何度も繰り返してしまうのか。
「僕」と「君」だけの三人称のラブソングはもう飽きてしまったから終いにしませんか?
今はただカップに注がれた暖かいスープをスプーンでかき混ぜて冷ますだけの、
副産物の憂鬱をすすり移ろう。