09/05/11 21:36:02 T/cCyHtU
「ねえ、何か面白い話ないの」
耳の大きなオオカミは、石鹸の香り漂わせてヒツジに問う
牙の鋭いオオカミは、上目遣いで惑わせる
この日のために整えた、毛並みは一人で空回り
せっかく研いだ自慢の爪も、微かにグラスを鳴らすだけ
日曜お昼の喫茶店
客はヒツジとオオカミと、一人ぼっちのカラスだけ
自分が楽しみたいが為、オオカミはヒツジに問いかける
「ねえ、何か面白い話ないの」
昼間は退屈すぎるの、と
独り言のオオカミは、脚を組み替え
我が物にしようと、必死にヒツジの気を引いた
だけど、ヒツジは草を食み、興味なさ気に食み続ける
そんなに草が欲しいのか、ヒツジの草が欲しいのか
別にヒツジの草を分けてもいいが、お前が食べても仕方がない
別にヒツジの草を分けてもいいが、お前の腹は満たされない
エサが欲しけりゃ自分で探せ
オオカミのえさはここにない
ヒツジはタバコを口にして、プラモの雑誌を捲ってる
それでも獣は吠え続ける
「ねえ、何か面白い話ないの」