09/05/06 16:16:56 PvsANDt/
『抱擁』
船町には今日も
厳しい風が吹く
船乗りは
優しい風を知らない
命を左右するそれに
甘い愛の言葉など
比喩したりしない
舵が効かない程に
荒れる海の背中
飲み込まれる程に
上がる海の叫び
支柱につかまり
身を守りながらも
離さない網目
乗り越えた後の静寂に
大漁の旗が
勇ましくなびく
港で待つ家族の笑顔こそ
唯一の『優しい』
船町には今日も
厳しい風が吹く
船乗りは
優しい風を知らない
船乗りが知るのは
甘い愛の言葉などでなく
肌と肌の温もりに流れる
本当の愛