09/03/16 22:00:44 A+BIyLrS
『献身』
(天国ってどこ!)
隅のない
途方もない
真夜中の海に
金切声でさけぶ君
巨大な世界に潰された
小さく
半狂乱な君の
瞳の中には
酷く渇いた
荒野だけが映っていた
眼の奥でしかと見つめる
その荒野は
君にしかわからない
かなしみで出来ていて
それを
撫でることはできても
潤すことは、難しい
質量をもたない
不可思議な世界の中
ぼくはただ
催眠術にかかったように
白目を剥いて
いつまでも掴めない
疫病患者の世話をする
熱にうなされ
口のきけない
助かる見込みの
ない病気の
原因、不透明なかなしみ
その塊を
ただ撫でつづける
決して愚痴を言わず
投げ出さないで
ただひたすらに
愛でもって
やさしく
撫でつづける
いつか回復して
また透明な
いつかの表情を
みせてくれると
そう信じて
どこを見てるか
さっぱりわからない
奥の荒野ばかり見ている眼を
ぼくの存在を
少しも
見ていない眼を
眺めて
涙をながしながら
報いが
あるか知らずとも
撫でる