09/03/14 19:56:03 0vWWYBF6
「時空の穴で滞空時間を競う奴ら」
あーうざい
いつまでそこにいるつもりだお前らと
唾を落としたら激しく何かを言いたそうな目で上昇してきた
十年振りくらいの火燵タイムを楽しみながら
みかん茶を味わっている時だった
茶碗の底が急に抜けた
吸い込んでも吸い込んでもみかん茶がやって来ない
覗き込んでも下から確認してもみかん茶は零れていない
こんなことがあるんだねえ
おじいちゃん時空の穴が開いたよ
手を突っ込んだら何かドラ〇もんグッズでも取れるかなと
突っ込んだけど突っ込もうにも穴はビミョーに狭かった
おじいちゃん手が手が取れなくなったよ
ぷるぷる震えながらただそのひとは頷いた
お母さんは巨大タンカーを片手で持ち上げる
そのバカ力がやってきて穴をぐわっしと拡げてくれた
高度三万メートルくらいあるのかな
私は雲の上から霞んだ下界を見つめてた
私の後ろからダイバーが三人飛び込んで
風で全身をぷるぷるさせながら落ちていった
おじいちゃんダメだよ逝っちゃうよ
おじいちゃんは他の二人に連行される宇宙人みたいだった
お前ら返せ
私のみかん茶を返せ
私の火燵タイムを返せ
こんなことならいらなかった
珍しい体験いらなかった
でもビデオカメラぐらい回しとくんだった
でも彼らはお互いの手を離してからは
ずっとそこにいて何かを競っているようだった
兄が言った
--よーしK点越えちゃうぞ
弟が言った
--姉ちゃんはいつも僕を中二病扱いするけど
おじいちゃんが言った
--あんたらどこの若衆だったかいの
忘れたいことがあるのに生きてるんだこいつら
忘れるために生きてるんだこいつら
長い付き合いだから私だけにはわかる
こいつらこのまま埋めてしまおう
埋めてとお母さんにお願いしたけど無理だった
お母さんも穴の中に今飛び込んだ
ああ家族って恥ずかしい
ああ早くみんな落ちて死んでくれたらいいのに
ビデオ録画も早々飽きて
私は他人様にバレないように
一生こいつら見守るの (了?)