09/03/14 05:09:26 at6ZtlcF
花の匂い
また新しい季節が来たよ
光が無邪気に踊り跳ねまわり
散りばめられた輝きは眠る魂を揺り起そうとする
でも世界から失われた君が僕の胸に戻る事はない
どんな奇跡が世界に溢れても
肉体のなくなった君を僕が抱ける事はもうない
続くはずだった日々は切り取られたフィルムのように突然終わった
せめてさよならを言いたかったのは僕だけじゃない
人づてに聞いた切れ切れの最後のエピソードは
君があまりに平凡な終わり方をしたという事
台詞を省いたドラマみたいにスピーディーに全ては進みそして終わったという事
愛しているなら何度も言った
おはようもおやすみも欠かさず言った
さよならもそんな言葉の仲間だった
そこに含まれる本当の意味を
僕たちは真剣になんて考えなかった
花の匂いが溢れかえる
君の好きだった公園が春に彩られてる
母親に手を引かれた子供たちが真珠のように目を輝かせて叫び出す
噴水は虹を作り世界の素晴らしさを語りかける
そんな風景をベンチの老人たちは目を細めてしわくちゃをさらにしわくちゃにする
君ならどんな顔を僕に見せるだろうか
考える間なく咲き乱れる笑顔
春そのもののような笑顔
終わる季節と終わる世界
いつか朽ち果てる肉体
大切にしなきゃねと声が聞こえた
遅すぎた言葉と裏腹に春はまだ始まったばかりだ